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おっぱ異世界  作者: えすくん
最終章 おっぱ異世界
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第64話 汚い光を祓いたい!

 おはようございます。鷹司たかつかさタカシです。

 死にます!

 リッキーを守るためなんです。

 たくさんの人がつないでくれたぼくの命。

 今度はぼくが人を救う番ですから。



 ……。

 …………。

 ………………??



 とんでもない量の魔法の直撃を体で感じたけど……恐る恐る目を開けたら、目が見えた。



「ぼく、生きてる」



 耳も聞こえる。

 リッキーは無事だ。

 よかったね。

 もうおびえなくていいんだよ。

 さあ、人々の避難を誘導しつつ、ぼく達もシェルターに帰ろう。



「……ぅ……う……うわああ! ごめんなさぁい!!」

「……どうして謝るの? 困ってる人がいたら、手を差し伸べるのは当たり前じゃないか。ほら。早くここから移動s……」



 あれれ?

 体を上手く動かせないぞ。

 ふらつき。

 目眩めまい



 おっぱいを寄せる力も入らなくなって、ぼくはリッキーを抱きめたまま、空を落ちて行く。

 リッキー……。

 おっぱいやわらかいね。



「タカシィィーッ!!!」



 シェルターの中からミコちゃんが飛んできて、ぼくとリッキーをキャッチしてくれた。



「おい、平気か? おめぇ……平気なのか!!?」

「うん」

「うんって……。自分の状態がどんなかわかってんのか?」



 確かに全身が痛いけどさ、そんな大騒ぎするほどのこと?

 岩のシェルター内に帰還。

 すると、ミコちゃんだけじゃなく、みんながぼくを驚愕きょうがくの表情で見つめてきた。



「も~、どうしてぇ~?」

「ど、どうしてはこちらの台詞せりふよ……」

「??」

「あなた、どうして生きてるの?」



 死ねってこと?

 お願いだから、汚物を見るような目で見ないでよ、瘤瘤こぶこぶ



「だって、あなた、穴がある……」



 そりゃ、まあ、穴のひとつや二つくらい、ぼくにだってあるさ。

 などと思いながら、ふと自分の体を見下ろすと、あらびっくり。

 穴がある。



「ど、ど、ど……どうしてぼく生きてるの……」



 ひとつや二つじゃない。

 無数の穴が身体中に空いてる。

 いや、頭にも顔にも!

 はははっ。



「笑い事じゃねぇだろ……」



 顔をひきつらせながら、ミコちゃんがつっこむ。



「回収作業は進んでる?」

「無理矢理、話題を変えるな」



 こういう時って、当事者の方がむしろ落ち着いてられるもんなんだね。

 生き残った人々の避難が完了しつつあると確認したけど、



「まだまだ安心しちゃダメだ。次世界統一連合軍と地底人の争いを止めなきゃ」



 ここで事態が急変。

 世界統一連合軍のヘリコプターから、拡声器でメッセージが発信された。

 そのメッセージの主は、



《日本国総理大臣・藤原澪奈ふじわられなですよ》



 思わず、この場にいる全員の動きが止まる。

 ミコちゃんの翻訳魔法のおかげで、総理の発言内容が地底人にも理解できる。



《昨夜、何の前触まえぶれもなく、突如とつじょとして悪魔が空からっていて、人類が滅亡の危機にひんしてますね。でも、人はあきらめないんです》



 藤原総理は声に力を込める。



《簡単に死ねやしないんです。死ぬまで頑張るんです。生きようと必死にもがくんです。なぜなら、それが生きとし生ける者達の唯一無二の悲願だからですよ。生きろ! 産め! 地上を人の命で満たせ! そのために……死んでください》



 不穏な気配。



《より大勢の命を救うために、犠牲になってください。あたしも共に死ぬからさ。落とすよ……》



 一呼吸を置いて、彼女は告げる。

 悪魔の名前を。



《核兵器》

「ふざけるな!!!!!!」



 かーっと怒りが込み上げてくる。

 ぼくは全身が穴だらけなのも忘れて、岩シェルターの出入り口から身を乗り出した。



「そんなの間違ってる! 超法規的措置とか正当防衛とかの次元じゃない! 度を越してるよ! 核兵器をここに落とすって? それじゃあもう……ただの虐殺だ!」



 拡声魔法を使ったから、ぼくの声は総理大臣にまで届いた。

 彼女からの返事は、だけど、ぼくと相容あいいれない。



鷹司たかつかさタカシ……でしたっけ? バカな子供ね》

「きみほどじゃない!」

《あんたにあたしを批判する資格はないよ。あんたは人を救う力を持っていながら、それを行使する勇気を持たないんですもん。あんたさえその気になりゃ、あたしが核を使うこともないんです》

「自分の国の民を殺す選択肢なんて、あってたまるか! そんなのリーダー失格だ!」

《あんたは議員ですらないのに、何さ》

「ぼくは国を造ったぞ!」

《国を? へぇ。王様気取りですか?》



 いいや、違うよ。

 ぼくは偉くなりたかったわけじゃない。

 ただ人の命を━━すべての人の命を守りたいから、多くの人を結集しただけだ。



「出自とか、肌の色とか、年齢とか、体力とか、おっぱいの大きさとか、そんなことに関係なく、誰もが参加できる国だ。国の名は『全人類の里』!!! ぼくは王様じゃない。おさだ!!!!」



 言っとくけどね、自分にってるんじゃないよ。

 これも作戦。

 今この瞬間にも、このシェルターに向かって運ばれてる人達がいる。

 彼らを回収するまでの時間稼ぎ。



《あんた素質ないですね》



 ふるぁ?!



《政治の先輩として忠告しといてあげます。あたしゃ決意してるんです、政治家になった時に。どんな汚れ役でも引き受けるって。それが政治家の責任。あんたに足りないものですよ》



 クリーンな政治家を目指しなよ。

 そうツッコミを入れたかったのに、ミコちゃんに邪魔された。

 ぼくの両肩をつかんで、叫ぶんだ。



「話し合いなんてあきらめろ! 逃げるぞ!」



 それから、瘤瘤こぶこぶに全速力で移動するよう命令。

 あのねー。

 リーダーはぼくだよ。

 それに、まだ全員の回収作業がんでないじゃない。



「黙れ! 地上人のおめぇなら核兵器のヤバさがわかんだろ!」

「え……それって何なの? 魔法? 武器? どこに逃げるわけ?」



 戸惑う瘤瘤こぶこぶ

 そっか。

 地底じゃ核兵器が存在してないんだ。

 ちょくちょく地上を偵察してたミコちゃんは知ってるんだね。



「でも、まさか本当に使うわけないんj━━」

「寝ぼけんじゃねぇ!!! 今さら人間のおろかさを知らねぇフリすんじゃねぇよ!!!」



 シェルターが動き始める。

 戦場を突っ切って。

 空を飛んで。

 やめろ……。

 まだぼくの友達が回収されてない……。



「間に合わねぇ! おい、タカシ! 俺を使え! 俺の全身が魔力だって言ったよな!? 俺の魔力を消費して、シェルターをカッ飛ばせ!!!」

「嫌だ!!!! まだ友達g━━」

「バッキャロォォオオォォ!!!!!」



 総理大臣の声が遠くでひびいた。



《人類に栄光あれ!》



 直後、ぼくは光を見た。

 シェルターの出入り口から飛び立とうとするぼく。

 それを止めるトーチャン。

 シェルター内で飛び交う怒号。

 そのすべてを包み込む大きな大きな光。



 直ちに爆音と衝撃、熱風が発生した。

 このシェルターが七手土吐人ななたはばきじん特製の素材でできてなかったら、一瞬ですべてが消し飛ばされてたかもしれない。

 シェルターが揺れる。

 全身にとてつもない負荷がかかる。

 ぼく達は必死で何かにしがみついてないと立ってすらいられない。



 テレビや教科書でしか知らない大量破壊兵器。

 その威力は想像以上で、無力なぼくにはまったくすべがない。

 突きつけられるのは、単純で、だけどむごい事実。

 強さとは、とても大きくて、とても強いってこと。



 青い空に堂々とそびえ立つ……キノコ雲。



 脳が処理を拒否する。

 目の前の現実を理解したくない。

 でも、心がそれを許さない。



「た」



 見えたんだ。



「す」



 爆発の直前に。



「け」



 クラスメイトが、お年寄りが、おっさんが、おっぱいの大きなお姉さんが。



「て」



 ぼくに助けを求めた。



「っあ゛あ゛あ゛ぁあ゛ぁあ゛あ゛ぁぁぁぁあ゛あ゛ぁ!!!!」



 ぼくは頭をかかえた。

 助けられなかった悔しさ。

 精一杯のことはやったじゃんという自己弁護。

 どうして……どうして……。



「地上人は悪魔だ」



 ぎゅうぎゅうめのシェルター内で、誰かがつぶやいた。



「あいつらはとんでもなく恐ろしい武器を造った。そして、使った」

「それどころか、自分達の仲間を平気で巻き込んだ」

「かつて地上人は神様に裁かれて、地獄行きになったとのことだが……神様は正しかったのだな」

「いや、神様なんていないんじゃなかったか? 皇帝が言ってただろ。神話なんて作り話だとか」

「でも、悪魔はいるし、地獄は地上にある」



 地底人のざわざわを、地上人が聞き逃さない。



「俺達が悪魔だと? 笑わせるな!」

「勝手にこの世界に現れて、勝手に人を殺しまくるお前達の方こそ、悪魔じゃないか!」

「お前達さえいなければ、こんなことには……」



 一触即発の状況に、ぼくはうんざりする。

 直前に、大勢の人の死を見たはずなのに。

 自分達も死にかけたのに。

 まだ争い足りないの?



「神がいるかは知らねぇ。が、悪魔がいるとしたら、それはおめぇだぜ……タカシ!」



 流れを変えたのはミコちゃん。

 え?

 そんな方向に話を持ってく?



「ぼくは悪魔なんかj━━」

「見ろ、おめぇら! これが証拠だ!」



 ミコちゃんが指差したのはぼく……の体?



「あっ」



 自分の体を見下ろして、気づいた。

 身体中に空いた穴ぼこがどんどんふさいでる。



「これはこいつに備わってる自己修復機能さ。ってか、それ以前に、穴だらけになって生きてられる人間なんているかよ」



 ぼくの機能……?

 自分で自分に治癒魔法を発動した覚えはない。

 でも、おっぱいがほとんど消費されちゃってる。

 宝百合たからゆりちゃんからもらったおっぱいが。



「いや、だからって、悪魔呼ばわりはひどいんじゃないかなー……なんて……はは」



 話しても無駄か。

 みんなドン引きだもん。



「いいか。よっく聞いてくれ。こいつぁ魔法道具だ! 世界中で、こいつだけが、世界を救う力を持ってる。それなのに……」

「やめて!!!!」



 トーチャンにそれを聞かれたくない。

 もしトーチャンにぼくが魔法道具だって認められちゃったら。

 もしお前は実の子じゃないとか言われたら。

 ぼくは……ぼくは……。



「トーチャン、言ってよ。ぼくが人間だって。ただの非力な小学5年生だって。……トーチャン!!」

「……」



 トーチャンが両目を押さえて、うずくまってる。

 いつもの無言とは様子が違う。



「トーチャン……??」

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさか、このオッパイ異世界で核が出てくるとは… トーチャンは何を知っているんだ(´;ω;`) カーチャンは?
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