表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっぱ異世界  作者: えすくん
第1章 異世界旅話
7/90

第7話 誤解を解きたい!

 いやああああぁぁぁぁああぁあああん!!!

 鷹司たかつかさタカシです!!!

 魔法の力によって空を飛んでいた我が家が、敵の攻撃を受けて、ジャングルに墜落ついらくしました!

 それだけなら、まだしも……



「ぼくの小さな息子を見ないでぇーーっ!」



 下半身がき出しの状態で、ぼくは無数の化け物どもに囲まれた。

 木や茂みのそばに立つ者もいれば、にごった川の中を泳ぐ者、空中を飛んでいる者もいる。

 外見は、ハンペンのようだったり亀のようだったり鳥のようだったりと、様々。

 共通するのは、2本の足が生えてること、人語じんごを喋ることくらいかな。

 つまり、どう考えても人間とは違う生き物なんだけど、地底に来てから初めて出会った甲剛人こうごうじんのように、見た目は変でも心のある生き物なのかもしれない。

 実際、甲剛人こうごうじんの姿もちらほら見える。



「こ、こんにちは~……」



 取りえず、挨拶あいさつをしてみた。



「……」



 返事はない。



「……」

「……」

「……」



 動きもない。

 何なんだ、この膠着こうちゃく状態は。

 どうして、きみ達、黙って半裸のぼくを見つめてるの。

 ストリップじゃないんだぞ。



「カーチャン……」



 この状況で一人は心細い。

 だってだって、宝百合たからゆりちゃんによると、相手は世界を危機におとしいれた悪いやつらだって言うじゃないか。

 ぼく、殺されちゃうのかな……。



「……助けて……」



 一体どうしてカーチャンは家から出てこないの?

 ケガでもしたのかな?

 まさかまだアイスを食ってたりして……。



 もういっそのこと、くるりと振り返って、家に駆け込んでしまいたい。

 でも、下手に動けばすきを見せることになりそうで、ズボンとパンツをくことすらできない。

 一応、股間こかんは片手で隠している。

 両手じゃなくて、片手で十分なのが悲しいね。

 うぅ……。



おくするな!」



 沈黙を打破する一声が、突如、空高くから響いた。

 化け物どもが空を見上げる。

 ぼくも声の主を探して、顔を上げる。



「屈辱を忘れたか!? 悲劇を忘れたか!? 思い出せ! 我らに失うものなど何もないと!!!」



 激しく厳しい演説をぶつのは……鳥!

 肩から腕の代わりに生えている大きな両翼をはためかせ、その鳥は舞い降りる。

 まるでわしにそっくりの顔立ち。

 なのにつんと上を向いた鳩胸。

 そで無しの黒いツナギは体にぴったり密着。

 細い足の先には鋭い鉤爪かぎづめ

 そのすべてが……濡れている!



 あぁ~~~、間違いないよ!

 さっき、ぼくがおしっこぶっかけちゃったやつだよ!

 鳥さんは怒りに満ちた表情で、ぼくに近づいてくる。



「おやおや?」



 尿まみれの鳥が目の前を横切る時、化け物どもが軽く一礼している。

 え?

 もしかして、こいつがボスなの?

 世界を危機に陥れたヤバイやつらのボスなの?

 そんなすごいやつに、おしっこかけちゃったの?



「おい、貴様」

「ひーっ」



 へびにらまれたかえるというのは、これかな?

 ボスの鋭い眼光にさらされたぼくは、今まで以上に萎縮いしゅくしてしまった。



「地上人類であるな?」

「は……はい」

「よし、死刑だ」

「うおおおおおおおおおおお」



 すべての化け物が歓喜する。



「ええええええええええええ」



 ぼくが全力で嘆く。

 いやいや、そりゃあ、おしっこぶっかけは悪かったよ!

 悪かったけどさ……死刑はひどすぎない!?



「いっ、異議あり! 無罪とは言わないけど……減刑してくださぁい!」

「死でしかあがない得ぬ罪であろうが」

「うっ……」



 めちゃめちゃキレてる。

 本当にぼくを殺しかねない剣幕だ。

 考えてみれば、地底世界を恐怖のドン底に落としたり、ぼくんをビーム攻撃で破壊するような危険な集団なんだし、きっと人を一人殺すくらいどうってこと……

 そうだ!



「いっ、異議あり! きみ達の方こそ、ぼくのおうちを破壊したんだから、重罪なんじゃないの!!」



 よし!

 これで喧嘩両成敗けんかりょうせいばい的なことになるんじゃないの!?



「ふん。家などいくらでも直しがきくであろう。……我らは二度と取り戻せないものを奪われたのだぞ」



 二度と取り戻せないもの……?



「何それ?」

「……」

「服なら洗うなり新しく買うなりすればいいんじゃない?」

「……ゲスめ……」



 あ……。

 かんにぶいぼくにもわかる。

 地雷じらいを踏んじゃったようだ。

 一体どんな地雷じらいだったのかは、わからないけど。



「大勢の人を殺してきながらしらを切るか!」



 鷲顔の化け物が、素速く両翼を手前に持ってくる。

 瞬間、ビーム攻撃!



「おわわわっ!!!」



 咄嗟とっさに体が動いた。

 雷と同じくらいの速度で発せられたビーム。

 それを避けられたなんて、運動音痴のぼくにとって奇跡に等しい。



「あ……危なかった……」



 穴がもう一つ増えた家を見て、しみじみ思った。

 ところで……



「ちょ、ちょい待ち! 大勢の人を殺したって? それ何のこと!?」

「ふざけるな!」

「ふざけてないよ!」

「貴様らは、各地で罪無き人々を虐殺しておるではないか!」



 身に覚えがなさすぎるよ!!



「それはきみ達のことでしょ!? っていうか、おしっこの件で怒ってるんじゃないの??」



 今度は無言で、翼を動かそうとするわしさん。

 ヤバイ!

 またビームで狙われる!



「わゃゃ、やめ、やめ、いやめてぇ」



 避けなきゃ避けなきゃ!

 ビームはどこに来る?

 体をくねらせ、足をもつれさせ、手を振り回す。



「……なるほど」

「え?」



 なぜかビームは撃たれなかった。



「魔法を使って防御するでもなし。我らに攻撃するでもなし。貴様、魔錻羅器まぶらきを装着しておらぬな」

「え……ああ、うん……っていうか、おしっこのことで怒ってるんじゃないの?」

「油断したな。魔法を使わぬのなら、貴様らなど地をありも同然」

「ねえねえ、おしっこのことは怒ってないの??」

「やかましい! 小便の屈辱も忘れておらぬわ!」



 ああっ!

 やっぱり!



「滅びよ!! 悪魔!!!」



 だから、それは違うって!!!!

 ぼくの必死の弁明も空しく、鳥の化け物は、躊躇ちゅうちょなくビーム魔法を発射した。

 きっと、もう奇跡は起こらない。

 それはわかってる……わかってるんだ……。

 だけど、生きることを……おっぱいをむことをあきらめられなくて、ぼくはせめて両手で頭をかばってみる。



「ううわぁぁあーーーーー!! カーチャーーーーーーーン!!!」



 敵のボスから放たれたビームが、強い光を発しながら、ぼくをめがけてやって来て……目前で、急上昇した。

 ビームを受けた木が、大きな音をたてて、倒れた。

 えっ……?

 あっ……!

 いつの間にか、ぼくの隣に、



宝百合たからゆりちゃーーーーん!!!」

いてください!!!」



 ぎゃー!

 半裸になってること、すっかり忘れてたよ。

 あわててモノをしまったけど、時既ときすでに遅し、だよね?



「み、見てはいません!」

「小さいってバレちゃったよね?」

「見てないと言っているでしょう!」



 でも、顔が真っ赤だよ?

 まぁ、いいや。

 命あっての物種ものだね

 大人になれば、息子も大きくなるかもしれない。



「ところで、カーチャンと力石りきいしあねさんは?」

「お二方とも、ご無事です」



 ほっ。

 それはそうとして、敵一同がざわついてる。



「敵がもう一匹いやがったか」

「いや、違う。服装をよく見ろ」

「あいつは皇室付きの魔女だろう」



 ぼくよりも、宝百合たからゆりちゃんにおびえてる。

 あれあれ?

 宝百合たからゆりちゃんって結構強い感じ?



「よーし。それじゃ、全員やっつけちゃって」

「お断りします」

「えええぇ!? どうしてぇ?? だって、こいつらは世界中で悪さしてるんでしょ?」



 やや困ったような表情で、魔女っ子は答える。



「いえ、実はてっきりそうだと勘違いをしておりまして」

「え? じゃあ、あいつらは……」

「なぜ邪魔をする?」



 鳩胸の鷲顔がぼく達をにらむ。



「そやつは悪魔であるぞ」

「だから、それはお前達のことだろ!」

「どうやら、わたくし達は、お互いに不幸な誤解をしているようです」



 宝百合たからゆりちゃんは、ぼくとカーチャンが予言の戦士であること、よって、敵ではなくむしろ仲間であることを説明した。



「あなた達の心境はさっするに余りありますが、どうかここはお引きください」



 うーん。

 我が家を壊された立場としては、やつらが敵じゃないとは思いづらいけど、平和に話し合えるのなら、それでいいや。

 だって、こいつらすぐビーム撃ってくるんだもん。

 怖い怖い。



「断る」



 ん?



「まず、予言の戦士なんぞ初耳であるし、仮にそれが事実だったところで、そいつらが地上人であることに変わりはない」



 交渉決裂こうしょうけつれつじゃん!



「それでは皇帝陛下のご命令に逆らうことになりますよ!」



 宝百合たからゆりちゃんが、今までに見たことのない表情をしている。



「民の命を守らぬ皇帝など皇帝にあらず!!」

「ふ、不敬な!」

「我ら、すでに失うものなど何もなし。ただこの身を以て、侵略者を討伐とうばつすることを願うのみ。故に、『復讐連合』を結成した!」



 言ってる内容はよくわからないけど、なんだか、かっこいいぞ。

 これで小便まみれでなかったら最高なんだけど。

 それで?

 これからどうするの?

 方向性の違いってことで、解散かな?



「皇帝陛下より直々(じきじき)にたまわったご命令……放棄ほうきするわけには参りません!」

「ならば貴様も敵だ」



 鳥さんが、翼を天にかかげる。



「殺せ!!!!!!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ