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おっぱ異世界  作者: えすくん
最終章 おっぱ異世界
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第57話 銃に怯えたくない!

 おはようございます! 鷹司たかつかさタカシです!

 ぼくは決意しました。

 魔法で人の命を救うと。



「漠然としてんじゃねぇか」



 建物の残骸の陰にひそみ、周囲を警戒しながら、ミコちゃんは毒づく。



「地上には百億人くれぇ人間がいるんだろ? そんだけの数の人間をどうやって助けるって?」

「そこだよ、問題は。ねえねえ、ぼくって伝説の超すごいSSRチート魔法道具なんでしょ? だったら、なんかとてつもないスキルとかあるんじゃない?」

「……知らん」



 は?



「おめぇに関して俺が知ってんなぁ、おめぇが莫大な魔力を蓄積・消費できるってことくれぇだ」

「そんだけ?」

「バッキャロ! これだけでも半端はんぱねぇ力なんだぜ? なんせ、あのドでかい転移魔法は、おめぇがいなきゃ発動できなかったんだからよ」



 これにはうー人が大喜び。



「うーける」

「こいつ、大したことない」

「人助け、失敗しろ」

「失敗しろ」

「うー、もっと死体見たい」



 カスうー人め!

 でも、確かに、ぼくって大したことないや。

 自分が人間じゃないって言われて……ほんの少し期待してたのにな。



「ちなみに、ミコちゃんには何か能力とかあるの?」

「あらぁ」



 自信満々って感じの表情だ。



「皇族人には全身魔力の特質があるんだぜ」

「全身魔力ぅ??」

「普通なら胸だけが魔力だろ? でも、皇族人は胸以外のすべての部位が魔力としt━━」

「あっあっこんなところでおしっこしちゃダメだよ」

「聞けよ」



 忍者コスプレが台無しだ。

 ボケ老人がズボンも脱がずにおしっこしちゃった。

 びしょ濡れが気持ち悪いのか、わんわん泣いてる。

 赤ちゃんみたい。



「おい、介護してる場合か」

「ごめんごめん。ところで、おむつ持ってない?」

「持ってねぇよ」



 うー人のじじいいじめを注意しつつ、じじいをあやしつつ、ぼくは耳だけでミコちゃんの話を聞く。



「皇族人は全身が魔力。当然そうなりゃ、他の人種よりもたっぷり魔力を持ってるってことにならぁな?」

「うんうん」

「おめぇ、帝都で全緑景樹ぜんりょくえいじゅを見たろ?」

「うんうん」

「あらぁ皇族人の死体の塊だ」



 思わず、ぼくは視線をミコちゃんに向けた。

 帝都の空をおおってて、今は皇帝と一体化した、あのでっかい樹木。

 あれが死体……?



「俺達皇族人はよ、死んだら全身まるごと全緑景樹ぜんりょくえいじゅの一部になって、最終的には皇帝の体に取り込まれる仕組みになってんだ」

「永久機関じゃん」

「ってこたぁ、つまり、あのバカデケェ木も魔力のかたまりってことにならぁな。んじゃ、その木と合体した皇帝をやっつけるには、どうすりゃいい?」



 莫大な魔力を一気に消費できるぼくを活用する!

 ……って言わせたいんだろうけど、その手には乗ってあげない。



「そもそもやっつける必要ないじゃない。民主的なやり方で解決してこ」

「敵は強大だ。魔力がいっぱいあるってだけじゃねぇ。見てな」



 そう言うと、ミコちゃんはおっぱいを寄せるのを止めた。

 ただ突っ立ってる。

 背筋いいね。



「何してんの? あっ、今は言葉が通じないか。バーカバーカ」

「通じるぜ」

「うぇえ?!?」



 なんでなんで?

 どうやってんのさ?

 今、間違いなく、ミコちゃんはおっぱいに指一本触れちゃいない。

 ぼくには翻訳魔法なんて小難しそうなことできないし、それは見るからにポンコツそうなうー人とじじいも同じだろう。

 どゆこと!?

 マジック!?

 何これ魔法!!?!?



「魔法だな」

「そりゃそっか」

「こいつが皇族人のもうひとつの特質━━胸を寄せなくても魔法を発動できる」



 そう言いながら、ミコちゃんは忍者レイヤーの股間を見つめる。



「あっ」



 と言う間に、じじいのびしょ濡れズボンが乾いてしまった。

 これは?



「乾燥魔法だ」

「超便利……」



 これにはじじいもニッコリ笑顔。

 うー人は幸せそうな老人につばいてるけどね。

 それにしても、



「どうして、おっぱいを寄せないでも魔法を使えるのさ?」

「知らん」

「なんにも知らないんだね」

いて言えば、胸の辺りにグッと力を込めるようにすると、魔法を発動できるんだな」



 あやふやな説明だ。



「ま、とにかく、おめぇは皇帝を打倒できる唯一の存在ってこった」

「じゃあ、治癒魔法を頑張ろっと」

「そうはならねぇだろ!」



 ぼく達は移動を再開する。

 ところが、おらし忍者がのろいのろい。

 じじいはミコちゃんにケツの穴にツッコミをされ、カーチャンにはボコられ、挙げ句、高いところから落下して右足を粉砕骨折。

 もう身体中ズタボロなんだよ。



「よぉし。そりゃっ」



 ぼくは想像しながら、おっぱいを寄せた。

 治癒魔法だ。



「どう?」

「あー。うあー。きゃっきゃ」

「うんうん。喜んでるね」

「だが、完治はしてねぇな」



 ミコちゃんがらんことを言う。



「治癒魔法は難易度が高ぇんだ」



 もし簡単にできるんだったら、日曜日の祝祭があんな大人気になってるはずないだろ、と。

 言われなくったって、わかってますよーだ!



 再び歩き出す。

 どこまで行っても、悲惨な景色が広がってる。

 リードのちぎれた飼い犬が悲しげに鳴く。

 青い空、黒い煙、赤い炎、深紅の血液。

 家だった物が瓦礫がれきになってる。

 何気なく通りすぎようとして、ふと、ある考えが思い浮かぶ。



「この瓦礫がれきの下に人がいるかも」



 可能性は高いんじゃない?



「やめとけ。瓦礫がれきだらけだ。キリないぜ」

「……片っ端から瓦礫がれきをめくってみよう!」

「皇帝を殺した方が、よっぽど大勢の人間を助けられらぁ。偽善者めが」

「……偽善……? いや、ぼくは━━」



 やり取りを中断させたのは銃声。



「近ぇな」

「うー、人殺し、見たい!」

「行ってみよう!」

「あうあー」



 というわけで、現場に急いだ。

 魔法じゃなくって銃を使うって、それ地上人なんじゃない!?

 生き残りがいるのかも……。



「うふふ。殺しなさい、殺しなさい」



 いた!

 そこには、銃を手にした大男、はしゃぐお年寄り、そして、地にす狼人間。



「やめろぉ!!!」



 考えるより先に体が動いちゃうのはいつものこと。

 銃を持ってるだとか、ガタイがいいとか、相手のステータスは関係ない。

 とにかく、噛みついてでも止めなきゃ。



「誰だっ!」

「ぎゃぼら」



 大男に裏拳をかまされて、ぼくはあっさり吹っ飛んじゃった。

 ひどいひどいひどすぎる!

 いたいけな小学5年生だよ?



「おぉっと、すまん。ガキだったか。だが、大人の仕事を邪魔するガキには、厳しいしつけをしなきゃいけないぜ」

「怖くないもんね。修羅場はくぐってきてるんだ」



 この上なくかっこいいシーンを、大男は笑った。

 コラ!

 何だよ何だよ、きみなんかモミアゲ伸ばしまくってるくせに!

 でかいおっさんは、ぼくの抗議をものともせず、しゃくれたあごをかくかく動かして笑い続ける。



 一方、白髪の老人はにこやかな表情で、ぼくに語りかける。



「うふふ。きみも国の有事に張り切ってるんだね? ん?」



 有事を起こしてるのはきみ達だろ。



「それにしても、坊主、よく生き残れたもんだ。親はどうした? エイリアンに殺されたか?」

「エイリアン?」

「今、かたきを取ってやるぜ」



 モミアゲ中年は、急に冷酷な表情になって、銃を構える。

 いけない!

 咄嗟とっさにおっぱいを寄せて、銃を空中へと浮遊させた。



「な……っ!?」

「どういうことですかな!?」



 困惑する2人を放置して、ぼくは負傷者に駆け寄る。



「大丈夫!? 見たらわかるけど、一応聞いてあげる!!」



 はい、大丈夫じゃない。

 だって、狼さんは血をどくどく流してるし、言葉もしゃべれないんだもん。

 急がなきゃ!



「おい、坊主。お前もエイリアンなのか!?」



 くだらない質問は聞き流そう。

 ぼくは治癒魔法を発動する。

 むむむ。

 やっぱり難しいや。

 どうにか出血を止めるのが精一杯。



さわさん、このガキを殺しなさい!」

「おい、坊主! 止まれ!!」



 ジャンプして銃をキャッチしたおっさんが、ぼくに銃口を突きつけた。

 なんてバカなんだ。

 今やるべきことは争うことじゃないだろう。



「脅しても無駄だよ。言ったでしょ、修羅場はくぐってきたって」

さわさん、さっさと殺しなさい。有事なんだから、殺したって正当防衛ですよ。私が法廷で証言してあげますから」



 さわと呼ばれた大男は、険しい表情で、人差し指を引き金に……



「指が……動かねぇ……!!?」

「ミコちゃん、来て」



 魔法でおっさんを金縛りにしておいた。

 とことこやって来たミコちゃんに拘束はお任せする。



「ひいぃっ!? エイリアンだらけじゃないか!」



 うじゃうじゃ押し寄せるうー人に、白髪老人が泡を吹く。



「大丈夫大丈夫。うー人はこーんなに可愛いんだから」

「可愛いか!? と言うか、可愛かったところでエイリアンはエイリアンだぞ!?」

「可愛いって言え!」

「可愛くない!」

「ミコちゃん、こいつも縛って。きつめに」

「やめっ……ぐあぁぁ」



 生意気なお年寄りの悲鳴をBGMに、狼さんの治癒に専念してると、さわっておっさんが恐る恐るたずねてきた。



「坊主、お前さんの名前を聞いてもいいかい?」

「泣く子も笑う鷹司たかつかさタカシだよ」

「ふっ……やっぱりな」

「?」



 よくわかんない会話に、ミコちゃんが割って入る。



「で、どうすんだ? おめぇのこったから、どうせこいつらのことも殺すないじめるなって騒ぐんだろ?」

「当然でしょ! って、それより、狼さんが危篤きとくだ。どうしよ。ぼくの実力じゃ、これ以上は治せっこない」



 加えて、ここにいたら、いつ地底人に襲われるかわかったもんじゃない。



「ねえ、おっさん達。どこかに安全な場所はないの? 例えば、地上人の生き残りの避難場所とかさ」

「地上人……?」



 さわが眉を寄せて、



「妙な言い方をする」

「きみだって、エイリアンとか言ってたじゃんか」

「突然、空から降って来たんだ。宇宙人の襲来と考えるのが妥当だろ?」

「空から……?」



 ぼくは地中から飛び出てきたんだけど。

 ミコちゃんの説明によれば、



「おめぇ以外はみんな穴になった太陽から出現してんだよ」



 だってさ。

 すでに太陽は穴じゃなくなってるから、わかんなかった。



「ま、とにかく、エイリアンじゃなくって地底の人達だから。詳しいことは後ね。避難場所はあるの?」

さわさん、言っちゃダメだよ」

「いくつか隠れ場所がある」

さわさん!!」



 素直なモミアゲ大男が言うには、彼は逃げ遅れた人達の避難に協力してたらしい。

 この白髪老人も避難場所に連れてく途中だったとか。



「把握できていないだけで、隠れ場所は他にもあるかもしれん。だが、その中でも最も規模が大きく且つ安全なのは、女神の楽園だ」

「女神の楽園?」

「世にも美しい女神様が負傷者を助けてかくまってるそうだぜ」



 なるほど。

 女神って呼ばれるからには、よっぽど綺麗でしかも美乳に違いない。

 行こう。

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