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おっぱ異世界  作者: えすくん
第1章 異世界旅話
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第5話 飛ばない家で暮らしたい!

 おはようございます……鷹司たかつかさタカシです……。



「タカシ! 起きなさい!」



 カーチャンが居間からうるさいけど、もう少し……寝る……。

 だって昨日は色々あって、寝るのが遅かったんだもん。



 夕飯はそれまでに食べたこともない絶品ぜっぴんで、ついつい食べ過ぎちゃったし、夜にはき火を囲って皆で語らったんだ。

 で、なーんかいい雰囲気になれたと思うたび、おっぱい勧誘をしてみたんだけど、すべて玉砕ぎょくさい

 別に甲剛人こうごうじんの硬そうなおっぱいをみたかったわけじゃないんだよ。

 ただ、誰のでもいいからみたかっただけなんだ。

 妥協だきょうしたっていうのに、なぁ~にが



「あんたみたいなガキはお断り」



 だよ!

 子供の夢を壊すなんて、それでも大人かよ!



 その上、酔っぱらった力石りきいしあねさんにウザがらみされて、まとわりつかれて、ぼくが眠いからもう寝るって言っても、ついてきちゃって……



「おわーーーーーっ!!!」



 あわてて飛び上がり、ベッドから床へと転がるように降りた。

 あーー忘れてた!

 睡魔と甲剛人こうごうじんの腕力にかなわず、ついつい一緒の布団で寝ちゃったんだった!

 危ない危ない……

 …………

 一応、着衣の乱れを確認してみたけど、うん、大丈夫。

 何も間違いは起こってない。



 ったく、力石りきいしあねさんときたら、気持ち良さそうに寝ちゃってるよ。

 いや、それぼくのベッドだからね!?



 甲殻類こうかくるいみたいな女と一夜を共にしてしまったショックは大きいけど、とにもかくにも目は覚めた。

 ぼくは自室を出て、居間へ続く廊下を歩く。

 おやおや?

 家の中が薄暗いぞ。

 居間へ入る手前で気付いたが、そこにも明かりはついていないようだ。



「カーチャーン、なんで電気つけn」

「はっはふはあはふうふあふふあふあふっふ」

「ひーっ」



 気でも狂ったの?

 カーチャンは机の上に並べた大量のアイスをドカ食いしている。

 最近少し暖かくなってきたとは言え、まだ春だよ?

 今朝は肌寒いくらいだよ?



「タカシ、遅いわよ! あんたもアイス食いな!」

「嫌だよ!」

「あら、どうしてよ!」

「どうしてはこっちの台詞だよ!!」



 大きめの氷菓をつるんと一飲み。

 そんな離れ業をやってのけると、カーチャンは深刻そうな表情を浮かべて語り始めた。



「実はね、この家が地中に落下した時に、電線も水道管もガス線も切り離されちゃったみたいなの」

「そりゃそうだ」

「だから、電気も水道もガスも使えないの」

「……あっ」



 その結果、生じた第一の危機が冷蔵庫の中の食べ物だった。

 常温での保存が確実に不可能な食品がある。



「だから、ほら」



 机の上に並ぶ消費期限間近の食品……アイス……刺身……牛乳……これが……



「今日の朝御飯よ」



 無茶苦茶だよ!

 朝からこんな意味不明なメニューを食すのはきついよ!

 心もお腹もきついよ!

 ……まぁ、お腹空いてるから、食べるけどさ……。



「いただきます……」



 情けない食事を口に放り込みながら、地底世界に来てしまった我が身の不憫ふびんをしみじみ感じるのだった。



 だけど、まぁ、よっぽど変な世界じゃなくてよかったな、とは思う。

 甲剛人こうごうじんの子供達ともちょっとは仲良くなれたし、地平線がくっきり見える平地も嫌いじゃないんだ。



 今日はどんな一日になるのかな……?

 少しわくわくした気持ちで、窓の外を見た。



「…………」



 窓の外を……



「………カーチャン」

「んー?」

「そ……外が……」

「外……? あー、そうね、すっごくいい天気だわ」

「そうだねぇ、上々の天気で……いや、そうだけど! そうじゃなくて! 外が!! 空だよ!!!」



 昨日までは平地が広がっていた窓の向こう。

 それなのに、今はただ青空だけが広がってるじゃないか!

 どういうことなんだ!?

 薄々その原因に気付きながら……でも、そうであってほしくないと願いながら、ぼくは窓にけ寄った。



「!!!」



 不安、的中。

 我が家は空を飛んでいた。

 遥か下には地面が見える。

 でも、それは昨日までの景色とは違う。

 木がたくさん生えていて、大きな川が流れていて、まるでジャングルだ。

 しかも、景色の流れる速さからして、並大抵なみたいていの速度ではない。



「な……な……な……」

「あら、まだ言ってなかったわね。そうなのよ、うち飛んでるのよ」

「なんで呑気のんきなの!?」



 カーチャンくらいの世代的には、家が空を飛ぶことは普通なのかな……?

 いや、そんなわけない!!



「そう言えば、タカシは飛行機に乗ったことないんだっけ?」

「……え?」

「んふー。ふふふ。思い出すわ。あたしがトーチャンと初めての旅行に行った時のこと。トーチャンったら、あの頃から寡黙かもくでねぇ。旅行なんてガラじゃないのに、急に旅行に行こうだなんて言って。あの時だったわね、トーチャンと初めてチューしたのは……」



 いやいや、今その話どうでもいい!

 飛行機に乗ったことあっても、家が飛んだら驚くよ!

 っていうか、親のそういう話、聞きたくないから!



「そんなことより、なんで家が飛んでるの!?」

「そりゃぁ、あんた、魔法よ」



 そうそう、地底世界の人々は魔錻羅器まぶらきとかいうブラジャーを着けることで、魔法を使えるんだ。

 そして、物を浮かせて動かすことのできる魔法使いと言えば……

 思い当たるのは一人。

 我が家の屋根上から飛び降り、ふわふわと空中をただよい、静かに着地した魔女。



宝百合たかりゆりちゃーーーん!」

「はい?」



 返事は台所から聞こえた。

 急いで行ってみれば、宝百合たからゆりちゃんは流し台の前で突っ立っている。



「おはようございます、タカシさん」



 彼女は、窓の外に顔を向けたまま、こちらを振り返らない。



宝百合たからゆりちゃん……きみがうちを飛ばs……今日もいいおっぱいだね」

「ひーっ」



 途端に、家が前のめりになる。



「た、宝百合たからゆりちゃん! 安全運転してよ!」

「タカシさんのセクハラのせいです!」



 もしかして魔法というものは、精神状態と深く関わりがあるのかな?

 深呼吸で落ち着いた後、宝百合ちゃんが操縦そうじゅうを乱すことはなかった。

 魔女から説教、カーチャンから拳骨げんこつを食らって反省したふりをした後、ぼくは疑問をぶつけた。



「やっぱり宝百合たからゆりちゃんが家を飛ばしてたんだね」

「わたくしは浮遊魔法が得意ですから」

「でも……どうして家を飛ばすの? どこへ向かってるの?」



 魔法少女は、やっぱり窓の向こうを見つめたまま、ぼくの質問に答えた。



「カーチャンさんにはすでにご説明しましたが、わたくしは皇帝陛下におつかえしております」

「皇帝~~~!?」

「はい。この地底世界のすべての領域を支配されているお方です」



 地底のすべてをべているってか……。

 そりゃすごいや。



「この度のあなた方の到来にも、皇帝陛下が関わっておられます。まず、予言を得意とする皇族人が、戦士の到来することと、その場所を予言したのです」



 で、ぼく達が本当に予言の戦士かどうかを確かめるために、甲剛人こうごうじんに戦ってもらった、というのはもう聞いた。



「この後は、皇帝陛下にお会いして頂き、陛下より直々(じきじき)にご指示をたまわる栄誉によくしていただきます」



 ……ん?



「よくわかんないけど、要するに、ぼく達はその皇帝に会いに行くってわけ?」

「そういうことです」

「ええええぇぇぇぇええ~~~???」



 何だよぉ、それ!

 せっかく甲剛人こうごうじんの子供達と遊ぼうと思ってたのにー!



「偉いやつだからって調子に乗っちゃってさ! そんなに会いたいなら、自分がこっちに来ればいいじゃんか!」

「コラ! タカシ! 文句を言うんじゃありません!」



 居間からカーチャンの怒声がひびく。



「今後しばらくこちらにご迷惑になるんだから、挨拶あいさつしておくぐらい当然でしょ!」



 カーチャンは相変わらず引っ越し気分なのか……。

 絶句するぼくに、Eカップが優しく言葉をかけてくれる。



「地上世界に帰るためにも、皇帝陛下にお会いして損はないかと思います」



 どうして?



「タカシさんは、地底に生きるわたくし達と言葉が通じることを不思議に思いませんでしたか?」

「!!」



 言われてみれば、確かに。

 地上と地底。

 二つの世界には、おそらく何の交流もないはずだ。

 それなのに……

 なんでこいつら日本語しゃべってんだ?



「にほん……語……。そういう言語があるのですね」

「きみが今しゃべってる言葉だよ」

「いいえ。実は、わたくしはずっとギュシュダ語を使用しています」

「!?」



 聞いたことないよ、そんな言語。



「わたくしには、あなたがギュシュダ語をしゃべっているように聞こえているのですよ」

「えっ……あっ! それって魔法!?」

「そうです」



 地底世界では、どんな言語を使用しても、お互いに意思疎通が可能ってことだ!

 そして、それは



「皇帝陛下による魔法なのです」



 皇帝……すごい……。

 皇位を世襲しているだけの世間知らずじゃないんだ。



「ですが、タカシさん、それだけではないのです」



 どことなくほこらしげな様子で、宝百合たからゆりちゃんは語る。



「空気と太陽。人間が生きるために必要不可欠、だけど普通なら地底に存在しない物です。これらもまた、皇帝陛下を始め、皇室の方々による魔法のおかげなのです」

「それじゃぁ……皇帝達がいなかったら、この世界は……」

「破滅、です」



 トップの人間が世界を根底から支えている。

 形式的にではなく、実質的に。



「そのように、けた違いの魔法使いであらせられるお方ですから、もしかすると、お二人を地上に戻す魔法もご存じでいらっしゃるかもしれません」



 なるほどね。

 その話が有意義だってことは、よくわかった。

 でも……でもねー……



「皇帝はどんな人なの? 能力が素晴らしくても、性格がクソなやつなら会いたくないよ。あと、おっぱいの大きさは?」

「……」



 軽蔑の表情を浮かべる少女。



見目麗みめうるわしい女帝です。胸も……大きいですよ」

是非ぜひとも会いに行きます!」

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