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おっぱ異世界  作者: えすくん
第2章 日曜日の祝祭
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第37話 もう一度きみと手を繋ぎたい!

 こんにちは。鷹司たかつかさタカシです。

 千祚代ちそよちゃん争奪戦が始まりました。

 それと同時に、宝百合たからゆりちゃん発案の水の龍作戦が進みます。

 ただ一つ気がかりなことが……。



「ねえねえ、千祚代ちそよちゃんはこのままでいいの?」

「敵にとっちゃ大事な存在だからね、殺されはしないさ」

「そうじゃないよ! ほら、見て。あのイケメンクソアイドルったら、千祚代ちそよちゃんとあーんなに密着しちゃってるんだよ。きっと、おっぱいの感触を堪能してるね、あれは。うぅ~~、嫉妬ジェラ!」



 ぼくの本気の心配を、力石りきいしあねさんは鼻で笑う。



「そんなにあの子の胸を揉みたいってんなら、今すぐ助けて揉みゃあいいさ。ま、あんたなんかにゃ無理に決まってるけどね」

「そうでもないよ」

「何かいい考えがあんのかい?」



 その通り!

 ぼくには、この混戦下で人質奪還と治水ちすいと人命救助を一挙に達成できる策がある。

 だけど、具体的な内容を発表することは控えようと思う。

 だって、



「怖いんだもん……さっきみたいに、また誰かを死なせてしまうんじゃないかって……」

「バカタカシ!!!」



 敵から放たれた攻撃を弾きながら、カーチャンがぼくをしかる。



「あんたの考えた混沌こんとん作戦、よかったじゃない。狙い通り、雲の上に来ることはできたんだもの」

「だけど……大勢の命を犠牲にしたよ……?」

「あんたは悪くないわ! あの状況で最善を尽くしただけよ。いつでもそうなさい。じゃないと、守れるものも守れなくなるわよ!」



 そう……そうなんだよ……。

 守りたいんだよ、人の命を。

 だけど、守るための作戦が人の命を奪うかもしれない。

 行動することと行動しないこと、どっちが正解なんだろう?



「そんなに迷うんなら、私が無理矢理決心させてあげる!! 思いついた作戦を言わないなら、ぶん殴るわ!!」

「ひぃーーーーっ!! 言うよ言うよ!! まず水の龍を凍らせて、次にあおをぶっ飛ばすんだ」

「却下よ」

「どうして!」

「そんなことしたら、千祚代ちそよちゃんもぶっ飛んじゃうじゃない」

「それでいいんだよ! そこで奪い返すんだから」

「誰が助けに行くのよ? ただでさえ、人手不足なのに。あんたが駆けつけるわけ?」

「それもこれもすべて解決できる。水の龍に頭を増やせば……ね」



 エリート魔女の宝百合たからゆりちゃんは即座に作戦の狙いを理解してくれた。



「ここまで多くの水を飲ませたことによって、体積が増えましたから、頭を一つや二つ……いいえ、いくらでも増やすことができるでしょう。おさ代理、協力してください!」



 すっかり息切れしてるデブだけど、立場上、宝百合たからゆりちゃんに逆らうことはできないみたい。

 ぶつぶつ文句を言いながら、賛成した。

 さて、こうなったら、もう作戦は始まっちゃう。



「ご安心ください。きっと上手く行きます。あなたは予言の戦士なのですから」

「大丈夫よ、あんたは私の息子だもの」

「成功するだろうよ。おっぱいのためなら頭がえるガキなんだから」



 ぼくの不安を他所よそに、水の龍は氷結され、それと同時に頭が一つ追加された。

 新しい頭はただちに伸びて、伸びて、そしてあおを奇襲した。

 あまりに想定外のことだったんだろうね、氷の龍にどつかれたあおはうっかり緑の縄を手放してしまい、おかげで千祚代ちそよちゃんは解放された。



 だけど、わけもわからず空中に放り出された千祚代ちそよちゃんには、敵の魔の手が忍び寄ってる。



「三個目の頭を追加してください!」

「はぁ……はぁ……はぁい!」



 汗だくのおさ代理が氷の龍に別の頭を生やす。

 宝百合たからゆりちゃんがその頭部を千祚代ちそよちゃんに向かって伸ばす。

 結果、千祚代ちそよちゃんが氷の龍の首にまたがった。



 やった!

 後は、そのまま龍の頭をこちらに向かって伸ばすだけ。

 これで千祚代ちそよちゃん奪還成功だ!



「そうはさせないよ!」



 金髪黒人お姉さんの3回転半蹴りが氷の龍の首をくだいた。

 千祚代ちそよちゃんは再び空中を舞う。

 彼女はまだ亀甲縛りをされたままだから、飛行魔法を発動しようにも、おっぱいを寄せることができない。。

 そうこうしてるうちに、分身した忍者じじいの群れが駆け寄ってくる。



「たっ助けて……」

千祚代ちそよちゃん!!」



 ぼくは走り出した。

 ヒョロガリポンコツ小学5年生のぼくに対して、容赦なく、ジュリエットは攻撃を落としまくる。

 背後から、カーチャンの声が聞こえる。

 よくわからないけど、ぼくをしかってるみたい。

 でも、進むよ。



 誰かに頼まれたから?

 ぼくが予言の戦士だから?

 助けたお礼におっぱいを揉ませてもらえるなんて期待してるから?

 違う。

 友達だから!!!!



 千祚代ちそよちゃんが雲の上に落ちた。

 そこはクッションみたいに柔らかいので、大丈夫、彼女は無事だ。

 ぼくは彼女にからまる縄を手に取って、引っ張った。



「おいで、、千祚代ちそよちゃん!!」

「「「「「うわぁあぁぁぁぁあぁぁ」」」」」

「……え?」



 引っ張った縄に、白人忍者軍団が足を引っかけて転んだ。

 う~ん、ラッキー!



「いざって時に役に立たないわね、ダメ忍者!」

「大人しく蝶貴妃人ちょうきひじんのガキを寄越しな!」



 へらへらおじさんを背負ったジュリエットと、甲剛人こうごうじんファッションの金髪お姉さんが迫り来る。

 千祚代ちそよちゃんは急いで縄をほどいて、ぼくの方に飛んでくるけど……ぼくの手に掴まるより先に、やつらに捕まえられそうだ。

 間に合え……間に合え……!!



「間に合えぇぇぇえぇぇぇぇえぇ!!!!」



 まるでぼくの叫びと呼応するかのようだった。

 氷の龍の頭が四方八方から現れ、地上人テロリストどもの周りをぐーるぐる円を描くように伸びていき、あっという間に漫画うんちょすのような形になった。

 そこにはアリ一匹通る隙間はない。

 犯罪者を閉じこめる氷のおりだ。



「さ、千祚代ちそよちゃん。行こう」



 宝百合たからゆりちゃんが逃走用に用意してくれた氷の龍の首にまたがって、ぼくは彼女に手を差し伸べた。



「あっありがとう……ほっ本当にあっありがとうございます、タッタカシさん」



 こうして、ぼく達は仲良く氷の龍に乗って、カーチャン達の元へ移動した。

 二人の間に、言葉なんて要らない。

 そうでしょ?

 やっとのことで奪還できた千祚代ちそよちゃんの笑顔。

 後ろからぼくにしがみつく千祚代ちそよちゃんのおっぱいの感触。

 これだけで十分じゃん。



「ただいま、カーチャn━━」

「勝手な行動するんじゃありません!!」

「ぎゃぁ!!!」

「心配するでしょうが!」

「ぐわぁ!!!」



 せっかく五体無事で帰還したって言うのに、カーチャンったらぼくを殴ったり抱き締めたりして、敵以上にダメージを与えてくれる。

 その筋肉は凶器だってこと、そろそろ理解してよね。

 それにしても、



宝百合たからゆりちゃん、ありがとう。さすがだね。魔法の天才がいてくれたおかげで、全部上手く行ったよ」

「作戦立案の天才がいてくださったおかげですよ。では、今のうちに人々を救助しましょう」



 またまた氷の龍の頭が増やされて、溺れる人々をくわえては背中に乗せ、くわえては背中に乗せ、という作業を開始した。

 もちろん、全員が全員、膨張して破裂寸前はれつすんぜんの状態なので、丁寧に丁寧に。



 ぼく達はその様子を雲の上から見守った。

 助けられた人達の中には、揉む揉む団のメンバーもいた。

 ぼくの胸を揉もうとしたやつだ。

 もう去勢されちゃったのかな……?

 いや、股間の部分もふくらんでる。

 きっとまだ息子も生きてるはず。



 そうして、どんどん救助が進む。

 いろんなことがあったけど、千祚代ちそよちゃんは取り戻せたし、テイラーは捕獲できたし、洪水こうずいを止める手立ては整った。

 混沌こんとん作戦で、人をたくさん死なせてしまったことはとてもつらい。

 忘れちゃいけない出来事だ。

 だけど、これだけは言える。

 ぼく達は勝利したんだ。



「あら、あいつ、いつの間にか死んじゃったのね」

「……え? あっ……」



 目に入ったのは、あのイケメンアイドルあおの死体だった。

 膨張してはいるけど破裂はしてなくて、全身があざだらけなので、地上人テロリストどもに殺された後、毒の水に落ちた……ってことかな?

 ムカつくやつだったけど、死なれたら辛いもんだ。

 できれば命は助けてやりたかった。

 ぼくは誰の悲しみも見たくなかった。



「どうして……こんなはずじゃ……」



 赤毛のテイラーがカーチャンのごつい腕の中でうじうじめそめそしてる。



「泣いても無駄だよ。決着はついたんだから。さあ、大人しく毒雲魔法を解除するんだ」

「さっさとしなきゃ殺すわよ!」



 カーチャンがただでさえ怖い顔を更に怖くする。

 この筋肉ゴリゴリマッチョなら本当に殺してもおかしくないからシャレになんない。

 ねえねえ、あねさんもカーチャンに何か言ってやってよ。



「……あたいは……偉そうなことを言える立場じゃないんだけど……でも、どうかこいつg━━」



 あねさんが切なげな目をテイラーに向けたちょうどその時、視界のはしに違和感が。

 何かのかたまりがいくつも飛び散ってきた。

 ……ああ、これ氷だ。



 直後、どでかい音が耳をつんざいた。

 氷の龍がくだけ散ったんだ!

 とんでもない量と大きさの氷が飛んでくる。



あねさん、こいつを任せるわ!!!」



 カーチャンはテイラーをあねさんに渡すや否や、立派な大胸筋をがっつり寄せた。

 ビームでぼく達全員を包むような魔法。

 だけど、氷の勢いと数が凄まじすぎて、カーチャンのフィールドをすり抜けちゃいそう。



「ぐぉぉっ!!!」



 猛獣のようなうなり声を上げながら、カーチャンは両手で両胸を鷲掴み。

 そのまま思いっきり寄せた!

 それはかつて胸を痛めることになった危険な行為。

 魔力の大量消費だ。

 フィールドが大きく、分厚くなって、すべての氷のかけらを押し留めることはできた。

 でも……



「カーチャン、大丈夫!? 痛くない???」



 ぼくは、魔法を解除して大きく息を吐くカーチャンに近寄り、尋ねた。



「平気よ」



 カーチャンはいつものように笑うけど、苦しんでいるところを他人に見せない人だから、心配しちゃう。

 それにしても、氷の龍がブッ壊れるなんて……



「皆さん、お気をつけください! やつらに氷のおりを突破されてしまったようです!!」

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