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おっぱ異世界  作者: えすくん
第2章 日曜日の祝祭
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第31話 この手を離したくない!

 こんにちは! 鷹司たかつかさタカシです!

 ぼくは千祚代ちそよちゃんの秘密を知りました。

 本当は、親がまだ生きていて、しかもその親というのは蝶貴妃人ちょうきひじんおさ夫婦だそうです!



 よかった。

 身寄りのない可哀想な千祚代ちそよちゃんはいないんだね。

 でも、親に愛されてないのは可哀想。

 もしぼくがカーチャンに愛されてなかったら、すっごくつらいもん。



「ごっごめんなさい……うっ嘘をついて……」



 涙をぽろぽろこぼしながらあやま千祚代ちそよちゃん。

 ぼくはどんな言葉をかけてあげればいいんだろう。



「うぇ~~~~い。きみを窮屈きゅうくつな世界からき放してあげちゃうよ、キュートガール☆ ぼくと一緒に遠くへ行こうよ!」



 ぼくを後ろからかかえるあおが軽い口調で千祚代ちそよちゃんを口説くどこうとする。

 空気を読みなよ!



「ダメダメ。こんなチャラいやつ、信用できたもんじゃない。ぼくんにおいでよ!」

「……」

「……」

「……」



 空に浮かんだぼく達に沈黙がおとずれた。

 え?

 なんか千祚代ちそよちゃん、迷ってない?

 一夜を共にしたぼくを即決できないってことは、じゃあ、こういうチャラいやつがタイプなの!?



「あっありがとうございます。……こっこんな私のことをさっさそってくださって……。でっでも、わっ私はただ自由になっなれればいいってわけじゃなくて……」

千祚代ちそよちゃんはどうしたいの?」

「……わっ私は……」

「正しい人は救われますからねー!」



 千祚代ちそよちゃんの母親━━水製都市すいせいとしおさ代理の演説がうるさい。



「家のために、家族のために、故郷こきょうのために、頑張ってる人が正しいんですよぉぉおおぉぉぉ!!」

「わっ私は愛されたいんです!!!!!!!」



 千祚代ちそよちゃんが華奢きゃしゃな体から精一杯せいいっぱいの大声を出した。

 その気持ちにこたえてあげたい。



「きみの治癒ちゆ魔法を愛してるよ、キュートガール!!」

「一緒にいて楽しい! 羽が綺麗! 千祚代ちそよちゃん、大好き!!!」

「タッタカシさんといっ一緒に行きます!!!」



 わぁぁああぁぁぁぁぁあぁぁあぁい!!!!

 イケメンアイドルに勝った!

 ありがとう、千祚代ちそよちゃん。

 これからもよろしく、千祚代ちそよちゃん。

 そんな喜びもつか



「じゃあ、ちからずくでうばっちゃうね」



 顔がイケメンなやつは心がみにくいに違いない。

 あおはぼくをポイ捨てした。

 ここ、水のやぐらの屋根より高いところだよ!?

 あまりの恐怖と落下感覚に、キンタマがきゅんとちぢんじゃう。

 しかも、あおは群衆に向かって、



「懸賞金つき指名手配犯のお裾分すそわけ~ぃ」



 当然、人々の注目はぼくに集まった。

 やだ、そんなぎらぎらした目で見ないでよ!

 千祚代ちそよちゃんはぼくを助けようと動いてくれたけど、呆気あっけなく、あおに抱き止められてしまった。



「きみも利己的な本性ほんしょうさらけ出しちゃいなよ、キュートガール」



 落下!

 落下!

 落下!



 ぼくは人生の終わりを覚悟した。

 せめて痛くなければ、それでいいや。

 一瞬で死ぬとか、やわらかいところに着地するとか、そう、例えばおっp━━



「ぬぉぉぉぉおおぉぉおぉぉ!?」



 地上に向かって落下していたぼくの体、今度はいきなり空高くに向かって上昇し始めた。

 何これ!?

 と思ったけど、おっぱいを寄せて飛んでくるカーチャンと宝百合たからゆりちゃんを見たら、一発でわかった。

 これは宝百合たからゆりちゃんの浮遊魔法!



 上昇してすぐ千祚代ちそよちゃんのところまで接近した。

 ぼくはどうにか彼女の手をつかもうとしたんだけど、



「子猫ちゃんは渡さないよ」



 あお千祚代ちそよちゃんをかかえたまま逃げる素振そぶりを見せた。



「あんたは逃がさないわよ」



 あと一瞬でも遅れてたら、間に合わなかったかもしれない。

 すさまじい速度で移動したカーチャンがあおの後ろを取った。

 すかさず、こめかみグリグリ攻撃!



「悪いことする子には、お仕置しおきしなくちゃいけないもの!」

「ぐあぁああぁぁぁあぁあぁぁ!」



 あおの力がゆるんだ瞬間に、ちょうどぼくと千祚代ちそよちゃんの手がつながった。

 ぼく達はそのまま一緒に、雲ひとつない青空へと舞い上がっていった。



「うっぐぬぅ……キュートガール! 戻っておいで」

「有事に際して、場を乱す行為はおひかえください!」



 追いついた宝百合たからゆりちゃんがえる。



「これ以上、迷惑を及ぼし続けるとおっしゃるのであれば、容赦ようしゃは致しません」

「あいだだ……どうしてぼくに勝てると……いだっ……思えるんだい?」

「わたくしは皇帝陛下より参勤さんきんを許されし宮仕みやづかえの魔女! そして、あなたをグリグリしておられる方は予言の戦士なのです!」



 浮遊魔法が途切とぎれて、ぼくはまた落下しそうになったものの、さっと千祚代ちそよちゃんがお姫様抱っこしてくれたので助かった。

 ぼくを支えるやわらかい腕。

 ぼくの腕に密着するやわらかいおっぱい。

 やっぱり女の子に抱かれるのはいい気分だね。



 ところで、そんなやわらかい女の子がふるえてるのは、きっと宝百合たからゆりちゃん達の会話のせいだ。



「タッタカシさんの母上はよっ予言の戦士なんですか……!? わっ私……そっそんなすごい方にうっ嘘をついてしまって……」



 うーん。

 あんまりあやまられると、ぼくの方が申し訳なくなっちゃう。

 だって、



「実は、ぼくも嘘をついてたんだ。ぼくはネアンデルタール人の女の子じゃない……」



 ウィッグネットを脱ぎ捨てた。



「ぼくは男で……地上から来た予言の戦士なんだ」

「うっ嘘……」

「本当。ねえねえ、千祚代ちそよちゃん。ぼく達二人とも、嘘がバレないやしないかって、ずっとひやひやしてたんだよ。なんだかバカみたいだね」

「…………ふっ。ふふふふ」

「ふふふ」

「へっ変ですね、ふっ二人して」

「そうだn━━わわわっ!?」



 下からの突風。

 それもただの風じゃない。

 目に見える風がぼく達の体にびせられた。



「何なの、これ!? またあおが攻撃してんの??」

「あっ、ちっ違います。こっこれは『文字送りの』です。ねっ願い事を文字にしてそっ空に飛ばすと、ねっ願いが叶うって言われてます」



 な~るほど。

 これも祝祭の一部か。

 言われてみれば、確かに、それは文字だった。

 ただし、全然見たことない文字。

 どれだけ体に当たっても痛くないや。



千祚代ちそよちゃん、ぼく達もやろうよ」

「えっ? いっいいですけど……なっ何か願いがありますか?」

「ぼくはやっぱりおっp……」

「……」

千祚代ちそよちゃんには何かないの?」

「わっ私は……あっ愛されたいと……」

「愛されたい? 誰に?」



 文字をびながら、もじもじしつつ、千祚代ちそよちゃんは、



「だっ誰でもいいんです」



 と言った。

 親には治癒魔法の才能しか愛してもらえないから、誰かに自分自身を愛してもらいたい、と。

 ぼくは首をかしげた。

 だって、ぼくにとって、とっくに彼女はかけがえのない友達なんだもん。



 いや、ぼくだけじゃないよ。

 カーチャンだって、千祚代ちそよちゃんのことをいとしく思ってる。

 それは、両親を亡くした可哀想かわいそうな女の子だって信じてたというのもあるけど、それだけじゃない。

 あの人は単純だから、かわいい子供をすぐ好きになっちゃうんだよ。

 つまりね、きみのその夢はもうかなってるよ。



「じゃっじゃあ……わっ私はタカシさんと」

「ぼくは千祚代ちそよちゃんと」



『いつまでも一緒にいられますように』



 願いを乗せた文字が空を舞い上がった。

 ぼくには読めない文字。

 だけど、すごく綺麗だ。



「出ますよ~、水の龍!!!」



 水のやぐらの屋根の上で、太っちょのおさ代理がでっかいおっぱいを寄せた。

 すると、何もないところから水が現れて、それがどんどん大きくなる。

 人々が見守る中、徐々に水が巨大な龍の形を作っていく。



「こっこれが『あまつ龍の』で、しゅっ祝祭のめになります」



 どうやら、皇帝が心配してたテロは起こらず、平和に祝祭が終わりそう。

 いて異常事態を挙げるなら、あおとかいう変人がうざがらみしてきただけ。

 ぼくが誘拐犯だと誤解してたんだろうけど、それにしても、世界的なアイドルにしちゃ軽率なんじゃないの?

 実際、ぼくは冤罪えんざいだったんだしさぁ。



 ところで……なんだか、さっきから薄暗くなってきたような。

 見上げれば、大きな雲が太陽をおおってる。

 いつの間に、こんな大きな雲が流れてきてたんだろう?



「わっ綿わた

「ん?」

「わっ綿わたが……ほっほら、タッタカシさんのほっぺに」



 それは、たんぽぽの綿わたに似てる。



「こんなのいつからくっついてたんだろ?」

「さっさっき下から飛んできましたよ」



 ……下から?

 上に向かって?

 上には……雲がある。

 雲は……全然動いてるように見えないぞ。



「これ……もしかして……」

敵襲てきしゅう━━━━━━━━━━━━っ!!!!」



 水のやぐらから、あねさんが急発進した。



「そいつは魔法の雲だ! 雲の上には当然……『やつ』がいるはず!! 殺戮さつりくが始まるから、愚民どもを避難させな!!!」

あねさんはどこ行くの!?」



 すれ違いざま、ぼくはたずねた。

 返事はなかったけど、復讐ふくしゅうに決まってるよね。

 そんな危険なことはさせたくないし、他人の命を奪わせたくもない。

 でも……きっと、その想いは通じない。

 今のぼくにできることは避難を呼び掛けること。



「皆ーっ! 危ない人たちがやって来たよーっ!」

「わたくしは宮仕みやづかえの魔女です。こちらは予言の戦士達。おさ夫婦のご令嬢もいらっしゃいます。何より、これは皇帝陛下のご命令なのです。さあ、早く避難を!」

「あんた達、さっさと避難しなきゃお仕置しおきするわよ!!」

「はっ早く逃げてー」



 ぼく、宝百合たからゆりちゃん、カーチャン、千祚代ちそよちゃんが声を張り上げた。

 結果、ダメだった。

 どれだけ口をっぱくして言っても、群衆は水のやぐらの前から一歩も動かない。



「あっあの人達は、みっ水の龍にさわるとびょっ病気が治ると信じてますから……」

「う~ん……そうだ! 宝百合たからゆりちゃんの浮遊魔法で全員浮かせて移動すればいいんじゃない!?」



 ぼくは千祚代ちそよちゃんに降下こうかしてもらいながら、宝百合たからゆりちゃんに提案した。



「さすがに、これだけの人数は困難です」

「じゃあ、取りあえず千祚代ちそよちゃんだけでも、ここから離れたらいいよ」

「そうはいっかないんだよねぇ~☆」



 カーチャンにぐりぐりの姿勢で捕まったままの状態で、あおはふてぶてしく振る舞う。



「キュートガールを苦しみから救ってあげるのがアイドルの仕事だからね!」



 そう言うや否や、あおっぱいを寄せて、大量の煙を噴出した。

 前が見えない。

 カーチャンの驚く声。

 何かが素早く動く感じ。

 もうすっかり慣れた感覚━━落下感覚。



「タカシ!」



 カーチャンが捕まえてくれなかったら、危うく死ぬところだったよ!

 いや、今はそんなことより、



千祚代ちそよちゃんがあお拉致らちされちゃった!」



 煙が晴れて、よく見える。

 ぼくの大切な友達がイケメンアイドルにさらわれる様子が!

 やつは雲の上に向かった。



「ごめんなさい。うっかり逃がしちゃったわ」

「避難は宝百合たからゆりちゃんとカーチャンに任せた! ぼくは千祚代ちそよちゃんを助けに行く!」

「あんた、飛べもしないくせに何言ってんのよ」

「そうだった」



 でも、じゃあ、どうすればいいって言うの!?

 カーチャンは余裕をかました様子で、



「ねえ、宝百合たからゆりちゃん。あのわからず屋さん達を避難させるの難しいわよねぇ。でも、世界の敵から守るための避難なんだから、そもそも、その世界の敵をやっつけちゃえばむ話じゃないかしら?」

おっしゃる通りです」

「じゃあ……行くわよ、雲の上!!!」

「ダ・メ・よ」



 色っぽい声とともに、頭上からビームが放たれた。

 さいわい、ビームはカーチャンが当たり前のようにり飛ばしてくれた。

 ビームってり飛ばせるんだ!



 それより、誰がビームをったの?

 見上げれば、そこには金髪、赤の全身ラバースーツ、ボインボインおっぱいの女性がいた。

 彼女の手には、高級そうなパーティーバッグ!



「久しぶりねぇ、ガキンチョ」

「あの時のお姉さん!!」

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