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おっぱ異世界  作者: えすくん
第2章 日曜日の祝祭
33/90

第30話 本当のきみを知りたい!

 おはようございます! 鷹司たかつかさタカシです!

 交渉こうしょうむなしく、「日曜日の祝祭」が開催されることが、蝶貴妃人ちょうきひじんおさ代理によって宣言せんげんされました。

 どうして……?



「皆さんが心配する気持ちもわかるんですけどね。んふふ」



 蝶貴妃人ちょうきひじんおさ代理が理由を語った。



「『日曜日の祝祭』には、すっごく重大な意義があるの。うん。皆さんもごぞんじでしょうけど、今からたった60年ほど前まで、人種の垣根かきねを超えた交流はほとんどなかったんです。ですけど、女性の権利向上運動がり上がると、あらゆる人種の女性達が手を取り合ったんです……ここ、水製都市すいせいとしで」



 その後の長い長いお話をまとめると、こうなる。

 昔、世界中から集まった女性運動家の会合が毎週日曜日に水製都市すいせいとしで行われた。

 結果、女性の権利拡張けんりかくちょうに大きく寄与きよしたので、蝶貴妃人ちょうきひじんはとってもえらい。

 今では、毎月第2日曜日に女性だけが参加できるお祭りを開催して、かつての栄光を語りいでる。

 ここ数ヵ月は帝都政府の要請ようせいしたがって自粛じしゅくしてきたけど、補償ほしょうも出ないし、何より素晴らしい伝統行事なのだから、今月は絶対に開催するぞー!

 ……ってことらしい。



「それでも、人の命に関わることですから、やはり中止なさった方がよいのでは……?」



 ぼくの言いたいことは、宝百合たからゆりちゃんが代わりに言ってくれた。

 だけど、おさ代理は折れない。



「んふ。それはもう、安心安全に開催できるよう、必要な対策をこうじたいと思ってますから」

こうじたいと思っている……? もしや、まだ何もされていないのですか?」

「……どんなことが起こっても対応できるよう、万全をくします。んふっふ」

「具体的には、どのように?」

「……」



 無責任なトップに、力石りきいしあねさんが追い打ちをかける。



「いくら質問したって無駄さ。そいつの本音は銭儲ぜにもうけなんだからねぇ」

「ん? それって、失礼じゃないですか? 何か証拠でも?」

「ふふふ。しらばっくれんじゃぁないよ。かつては精油せいゆ王としてさかえたあんたらも、安い医薬品やら安い芳香製品やらに負けて、もうすっかり零落れいらくしちまった。保守反動団体を水の龍で追っ払った気高い精神はどこへやら。水の龍にれたら病気が治る……そんな都市伝説に乗っかって、『信者』から『お布施ふせ』を集めんのに必死こいてやがる」

「うんー。それで? 無理矢理、祝祭を止めるんですか? それって、自治権の侵害になるんじゃないかな?」



 ここで、あねさんは立ち上がった。

 もしかしたら、ぶん殴るのかもしれない。

 うんうん、わかるわかる。

 デブが金粉きんぷんオイルでテカテカして、ダイヤモンドでできてるピカピカのくついて、ドレスが電飾でんしょくでピカピカ光って、ペチャクチャしゃべってると、なんかムカつくよね!

 やっちゃえ、あねさん!



「むしろ、それを守りに来たのさ」



 !?



「あたいは祭りを止めやしないよ。むしろ、開催してほしいもんだね。そうすりゃ、地上人のクソッタレどもがおそいかかって来るだろうから……返りちにしてやれる」



 突然の裏切りに、カーチャンも狼狽うろたえた。



あねさん……気持ちはわかるわ。あなたもすごくつらい思いをしたもの……。だけど、他の人に同じ思いをさせないためにも、お祭りを中止してもらって、人々を避難ひなんさせるべきじゃないかしら」

「あんたの言ってること、正しいと思うぜ。だけど、人間ってのは理屈りくつより感情で動く生き物なのさ。あたいは……たとえどれだけの犠牲ぎせいが出るとしても……復讐ふくしゅうたす!」



 カーチャンとあねさんがにらみ合う。

 ヤバイ……。

 筋肉ゴリゴリと皮膚ひふバキバキの二人が戦ったら、敵がやってくる前に水製都市すいせいとしが無茶苦茶になっちゃうよ!

 どうしよ……こっそり逃げようかな……。



「そろそろ、お時間です」



 緊迫きんぱくした状況の中、秘書とおぼしき蝶貴妃人ちょうきひじんが水の壁を通り抜けて入室し、おさ代理をかした。

 それにしても、この蝶貴妃人ちょうきひじんの女性……



「どこかで見たような気が……。ねえねえ、千祚代ちそよちゃん、あの人、誰だっけ? ……千祚代ちそよちゃん?」



 千祚代ちそよちゃんはぼくのワンピースにしがみついたまま、無言で顔をせてた。

 秘書のおばさんが話を続ける。



「それにしても、ご息女そくじょ誘拐ゆうかいされたっきり、まだ見つからないのは残念ですこと。おさ代理様におかれましては、どうか、お気を確かに」

「んふ。そうね。あれにはしっかりかせいでもらわないと」



 おさ代理がそう発言した瞬間、千祚代ちそよちゃんが大声でさけびながら走り出した!



「ああっ、千祚代ちそよ様!!」



 秘書が驚きの声を上げた!

 思い出した!

 ぼくはカーチャンのかげからひょいっと顔を出して、



「ぼく達を追いかけ回した変なおばさんだ!」

「そういうあんたは誘拐犯ゆうかいはん!」

「タカシ! あんた、どこの女の子を誘拐ゆうかいしたの!?」



 カーチャンがぼくの頭をはたいた!

 ウィッグが遠くに飛んでった!

 ウィッグネットをまとった頭部!

 水で崩れたメイク!

 水にれたせいでけて見えるもっこりパンツ!



「「「こいつ男じゃねぇか!!」」」



 警備員どもが一斉いっせいにぼくにおそいかかる!



「今のうちに始めちまいな!」



 あねさんの言葉にしたがって、おさ代理がさけぶ!



「『日曜日の祝祭』を始めまーーーーーーーーす!!!!!!!」



 彼女がおっぱいを寄せると、途端とたんに強風が吹き、水の壁がすべてはじけ飛んだ!

 ヒョロガリで体重の軽いぼくは吹っ飛ばされちゃう!



つかまりなさい!」



 カーチャンのごつい手をつかもうと手をばし……かけたところで、突然現れた女性達に目をうばわれた!

 彼女達は頭の上から足の下まで全身黒の布でおおわれてる!

 ただし、胸元をのぞいて!



「うっひょおおぉぉぉおおぉぉ、おっぱいだあああぁぁぁぁぁあぁあ」



 黒ずくめの女性達は水のやぐらはしに向かって移動しながら、くねくねおどり始めた!

 れるおっぱいに見とれて、手じゃなく鼻の下をばした結果、ぼくは水のやぐらの外へと吹き飛ばされてしまった!

 そこで目に飛びこんできたのは……



 熱狂のうず



 水のやぐらかこう何千の人々が大歓声をあげてる。

 よっぽど、お祭りが好きなんだろうな。

 あれだけお願いしても断られたんだし、これだけ喜んでる人達がいるんだし、こうなったらお祭りを楽しんじゃおっか?

 さて、そろそろカーチャンが助けに来てくれるはず……あれ?

 全然来ない……。

 ……ヤバイ……死んじゃう!



「ひいぃぃぃぃぃ……うわぁ!?」



 助けてくれたのは千祚代ちそよちゃんだった。

 蝶貴妃人ちょうきひじんには羽があるから、自由自在に空を飛べるんだ。

 即座そくざにありがとうと言おうとしたけど、彼女の目からあふれる涙を見ると、嬉しい気分は消えせた。



 なんとなく直視するのが怖くて、考えないようにしてたことがある。

 千祚代ちそよちゃんは両親を事故で亡くしたって言ってた。

 つらいことがあるから、水製都市すいせいとしを離れたいと言ってた。

 そして、水のやぐらで聞いた蝶貴妃人ちょうきひじん達の会話。

 たくさんの点がつながって、ひとつの線になっていく。



千祚代ちそよちゃん、きみはもしかしとぅをおぉぉおっ!??」

「うぇ~~~~~い♪ お久しぶりーっす!」

「ああっ! あお!!!!」



 さっきカーチャンとあねさんにボコられて逃げたアイドルのあお

 どこからともなく現れて、ぼくを千祚代ちそよちゃんから引ったくりやがった!

 おい!

 ぼくは男にかれて喜ぶ趣味はないぞ。

 さっさと、千祚代ちそよちゃんのやわららかい腕の中に返せ。



「そうはいかないよね。誘拐犯ゆうかいはんさんには、ちゃんと罪をつぐなってもらわなきゃいけないっしょ」

「ゆゆゆゆゆ誘拐ゆうかいなんてしてないよ!」

「してんじゃん。だから指名手配されてんだし」

「……誰を誘拐ゆうかいしたってことになってんの……?」

「そりゃ、もちろん、そこのキュートガールちゃん!」



 じゃあ、やっぱり……



千祚代ちそよちゃん、きみは……」

「ごっごめんなさい、タッタカシさん。わっ私は……うっ嘘をついてました……」



 ぽろぽろ涙を流しながら、千祚代ちそよちゃんが告白する。



「おっ親が死んだというのはうっ嘘です……。わっ私はあっあの人達が嫌いで……だっだから、いっ家出しようとしっしてました……」



 人が真剣な話を聞いてるってのに、群衆のはしゃぐ声は一際大きくなった。

 何がそんなに楽しいんだろうと辺りを見渡したところ、視界に入ってきたのは、水のやぐらの屋根の上に立つおさ代理の姿だった。

 空のてっぺんにのぼった太陽の光をびて、おさ代理は輝きをしてる。



 それと同時に、全身黒ずくめの女性達が段々うすくなって……消えちゃった!

 どうして!?

 たくさんのおっぱいがならんだあの壮観そうかんを返してよ!!



「聖地に集まってくださった女性の皆さーーーーん、世界をおおやみはらわれましたーーーーーー!!」



 おさ代理が演説をぶち始めた。

 デブは体だけじゃなくって、声もでかい。



「どんな嫌なことがあっても、どんなつらいことがあっても、不安にならないでください。ええ。大丈夫です。蝶貴妃人ちょうきひじんが光になります。んふ。昔、女性達が困難を克服こくふくしたように、どんなガラスの天井てんじょうも打ち破ってみせますから。私達はあなた達の味方でーーーーーす!!!」



 き上がる大歓声の中、泣きっ面の千祚代ちそよちゃんと満面の笑みのおさ代理の目が合った。



「わっ私は、ちょっ蝶貴妃人ちょうきひじんおさ夫婦の……ひっ一人娘なんです」

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[良い点] 千祚代ちゃんが良い子すぎて、宝百合ちゃんのヒロインの座が危うく……
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