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おっぱ異世界  作者: えすくん
第2章 日曜日の祝祭
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第27話 あいつを逃がしたくない!

 おはようございます! 鷹司たかつかさタカシです!

 わけわかんないアイドルに決闘を申しこまれて、わけわかんないうちに足を粉砕ふんさいされました。

 だけど、頼みのつながやって来てくれました!



「タカシ!!! あんた、その足、どうしたの!!?」

「こいつらにやられた! やっつけちゃってよ!!」



 カーチャンは即座そくざに群衆の方を向き……顔をほころばせた。

 え?

 ぼくがボコされたのが嬉しいの?

 両足の骨を折られてるよ?



「うちの子がお世話になったって本当かしら?」



 デカブツの登場にすっかり気を抜かれた人々だけど、はっとしたように興奮を取り戻した。



「そうだよ、バーカ」

「お前のガキかよ。ちゃんとしつけときな」

「死んであお様におびしなさいよ」



 本当はこいつらにやられたわけじゃないんだけどね。

 しを前にした人間は理性を失っちゃうから、都合がいいや。

 わかるよ。

 ぼくも大好きなおっぱいの前では理性も社会性も人間性も失っちゃうから。



「あらぁん、ありがとうございます。それじゃあ、私の方から、きっちりお礼をさせてもらわなきゃいけませんわ」



 ニッコリ笑顔のまま、だけど、カーチャンは全身の筋肉に力をこめた。



「全員、拳骨げんこつ一発ずつね」



 それからというもの、カーチャンは強かった。

 せまり来る多数の熱狂的ファン達に、その攻撃はあっさりかわしつつ、素速く頭頂部へ硬いこぶしを打ちこんでいった。

 ばったばたと倒される人々。

 ちょっとかわいそう。



「つっ強い……」



 初見さんを必ずドン引きさせるのがカーチャンのすごいところ。

 千祚代ちそよちゃんも、その例外じゃないってわけね。

 だけど、秒で群衆数十名を倒したカーチャンは、ちょっと不満げだった。



手応てごたえないわねぇ。本当にこんなのにケガさせられちゃったの? 私が見たところ、この場で一番強そうなのは……」



 カーチャンは、口元をぬぐあおに目を向けた。



「そこのあなたなんだけど」

「いい勘してんじゃん、グラマラスガール」

「いやぁだぁ。そんなお世辞せじを言ったって、お仕置しおきはやめてあげないわよ」



 そう言うや否や、カーチャンはアイドル蝶貴妃人ちょうきひじんに向かって駆け出したけど、それと同時にあおしおいた。



「あっ危ないです!」



 優しい千祚代ちそよちゃんはカーチャンに向かってさけんだ。

 普通の人間はあんな攻撃を喰らえば重傷を負っちゃうもんね。

 普通の人間は、ね。



「むんっ」



 カーチャンはしおてのひらでいともたやすく受け止めると、そのまま進み続け、あおの頭に拳骨げんこつを振り下ろした。

 けど、間一髪かんいっぱつあおはひらりとそれをけ、地面にしおいた勢いでカーチャンとの距離を取り、続けざまにもう一発潮吹しおふき攻撃をカーチャンにかました。

 そして、カーチャンがそれをてのひらで受け止める。



 すごい戦いだ。

 カーチャンは本当にすごいよ……。

 ぼくなんて、両足をぶっつぶされただけで、それ以上どうすることもできなくて……。



「あっあの、タッタカシさん」

「……ん?」

「あっ足のケガはだっ大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫。さっきまでは痛かったけど、今はもう感覚ないから!」

「だっ大丈夫じゃありませんね!」



 きょろきょろと辺りを見渡した後、千祚代ちそよちゃんはぼくの目の前でおっぱいをむぎゅっと寄せた。

 おおっ!

 ……おおっ?

 それは頑張ったぼくに対するご褒美ほうびじゃなく、魔法による治療だった。

 またたく間に、両足の感覚が戻って、自由に動かせるようになった!



「わぁ……やっぱりすごいね、千祚代ちそよちゃんは。ありがとう!」

「いっいえ。そっそれより、にっ逃げましょう。あっ歩けますか?」

「いいよ」

「……えっ?」

「カーチャンが来たからね、もう逃げる必要なんてないよ」



 だって、ほら、カーチャンがあおを圧倒し始めてるじゃんか。

 貴族のような服装が、今やボロ雑巾ぞうきんみたいになっちゃってる。

 あおはきれいな羽をはためかせると、一気に空高くへと浮上した。



「オーケーオーケー……。ぼくの負けね。ここは一旦いったん引いてあげちゃうよ。それじゃ、また会おうぜ」



 散々(さんざん)カッコつけておいて、逃げる気だよ、こいつ!



「ヘイ、蝶貴妃人ちょうきひじんガール。もしやっぱり、ぼくと遠くに行きたくなったら、いつでも言ってよね。きみを自由にしてあげちゃうから☆」



 最後の最後に女の子を口説くどこうとする辺り、本当にみっともないや。

 ぼくだったら、おっぱい勧誘を断られた時、あっさりとあきらめて……あきらめ……あきらめられないな。



「カーチャン、頑張ったら飛べるでしょ! あいつムカつくから、追いかけてとどめを刺しちゃってよ!」

「私が行くまでもないわ」

「え? それって、どういう……あ!」



 ぼくを驚かせたのは、あおよりもはるか上空から、すさまじい速度で落下する者の存在だった。

 それは人間……硬そうな皮膚に全身を覆われ、上半身は魔錻羅器まぶらき一丁の露出狂……力石りきいしあねさんだ!



 あねさんは、一直線にあおに向かいつつ、ビーム魔法を連発した。

 標的を外したビームは、水の道路や水の建物に激突した。

 けるのに必死なあおは、あねさんが水飛沫みずしぶきの陰から迫っていることに気づかない。



 そして、間近からあねさんのフルスイングパンチ!

 あおはすんでのところで両腕を胸の前で交差して、打撃を防いだ……はいいものの、吹っ飛ばされ、着水。



「ぐぅ……」



 やったぁ!

 ざまぁみやがれアイドル!

 だけど、その状態から全速飛行であおは空の彼方かなたへと消えてしまった。



「チッ……。すまないね。逃がしちまったよ」



 着地したあねさんが悔しがった。



こぶしわせば、相手の人となりがわかるってもんだが……あいつはろくな人間じゃないね」



 そうだそうだ!

 もっと言ってやれ。



「調子に乗ってんじゃないの!」



 カーチャン、激怒げきおこだ。



「黙って勝手にいなくなるなと言ったでしょう!」



 もちろん怒鳴どなるだけじゃまない。

 カーチャンはこぶしで説教するタイプだもん。

 ……あ、あれ?

 カーチャンは振り上げたこぶしを停止させている。



「ひっひぃぃいいぃいぃぃ」



 顔の怖さとポージングが相まって、まるで仁王像におうぞうみたい。

 千祚代ちそよちゃんがガクブルになるのも無理はない。



「本当はどつきまわしたいけど……タカシ、足はどうなの? 痛む?」

「なんだい、あの胸糞むなくそ悪い若造わかぞうにやられちまったのかい? ……だけど、どこを?」



 無骨ぶこつな二人がぼくを心配してくれる貴重な瞬間だ。

 ふふふ。

 二人とも、落ち着いてよ。

 ぼくのケガなら、千祚代ちそよちゃんのおかげで、もうすっかr━━



「あっあわわわわふわぁっはっ初めまして、わっ私、ちっ千祚代ちそよです!!」

「……あら? こんにちは。かわいい子ねぇ」



 唐突に、自己紹介を始めたのはコミュ症だからなの?

 なんだかわかんないけど、取りあえず、ぼくはそれぞれを紹介してあげた。

 そしたら、もうカーチャン大泣き。

 千祚代ちそよちゃんに、親がいないなら自分を親だと思いなさいだのなんだの、大声で泣きわめくんだもん。



「だけど、まずは水のやぐらに向かうよ」

「何それ?」

「『日曜日の祝祭』が行われるところさ。そこには蝶貴妃人ちょうきひじんおさがいるからね、宝百合たからゆり様が説得に向かってる」



 宝百合たからゆりちゃんの姿が見当たらないのはそういうことか。

 ぼく達は水のやぐらに向かって移動を始め、



「あんた、歩けてんじゃないの! だったら一発説教を喰らわすわ」

「ぎゃー」

「今度勝手にいなくなったら五千発殴るわよ」



 と暴力をはさみつつ、話を続けた。



「で、ここのおさにどんな説得をするって言うの?」

「そりゃ決まってんだろ。『日曜日の祝祭』を中止するよう要請するのさ」

「えー、なんでー? ぼく、お祭り楽しみにしてたのに」

「楽しい祭りも死人が出ちまえば楽しくないだろ」

「だけど、無理矢理中止ってことにはしないのね」



 カーチャンが首をかしげた。



「自治の自由やら表現の自由やらを侵害するこたぁできないからね、中止を強要することはできないのさ。あくまで、中止してくれってお願いするだけ。ルールってのは、時々かったるいもんだ」



 力石りきいしあねさんの説明をまとめると、蝶貴妃人ちょうきひじんおさが納得しなかったら、お祭りは開催されるってことだ。

 じゃあ、おさに頑張ってほしいな。



「バカ! 悪い人達が襲撃するかもしれないのよ!」

「いいや、そのガキの言い分もわからないでもねぇんだ」



 怒るカーチャンを、力石りきいしあねさんがなだめる。



「何てったって、中止の見返りは特にないんだからね。『日曜日の祝祭』ってのは、いわば蝶貴妃人ちょうきひじんの誇りなんだけど、それとは別に莫大ばくだいな収入を見こめる観光資源でもあるのさ」

「あら、補償ほしょうはないの?」

「ないんだな、これが。あちこちに自粛じしゅくを求めちゃいるが、皇帝陛下は誰にも何にもお慈悲じひを恵んでくれやしねぇ。むしろ自粛じしゅく続きで財政が厳しいとかで、今度増税するってうわさだぜ」

「どこも変わらないわねぇ」



 大人はどうしてこう小難しい話をしちゃうんだろう?

 おっぱいみたいよねーとか、おっぱいって最高だよねーとか、そういう楽しい話で盛り上がれないものかね?

 人生、損してるよ。

 例えば、ほら、千祚代ちそよちゃんの歩くたびにたぷたぷれるおっぱいなんて、最高じゃないか。



「タッタカシさん」

「ぐひひ」

「あっあなた達は『日曜日の祝祭』のちゅっ中止を要請しに来たんですか? そっそんなすごい任務をになうなんて……なっ何者です?」

「あたい達はね━━」



 あねさんが不用心ぶようじんに口を開く。

 子供の素朴そぼくな疑問に答えちゃいけないよ!



「正体を明かしたら、ぼくが男だってバレちゃうよ! 予言の戦士が大人の女と子供の男っていう組み合わせなのは、結構広まってるんでしょ!?」

「ふん。別にあんたが去勢きょせいされたって、あたいは困んないよ」

「ぼくは激しく困るよ!」

「ったく……。じゃあ、えーと、あたい達は……あー、体の疲れをいやしにね、んー、水の龍をびに来たってわけさ」



 完璧な答弁に納得した様子の千祚代ちそよちゃんは黙りこくった。

 息子を喪失そうしつする危機からだっしたところで、カーチャンが化粧直しをしたいと言い出した。

 これは妙案みょうあん



「ぼくも一晩経って、そろそろ化粧を直さなきゃいけないと思っt━━」

「その化粧じゃなくてね」



 要するに、うんちょすのことらしい。

 偶然、近くに公衆トイレがあるとのことで、千祚代ちそよちゃんがカーチャンを連れて行ってくれた。



 その間、ぼくとあねさんは待ちぼうけ。

 本来なら、こんな甲殻類おばさんと二人きりなら気まずくってしょうがないところだ。

 だけど、今は違う。

 むしろ好都合だ。



あねさん……折りってお願いがあるんだ」

「おっぱいなら、カーチャンのをませてもらいな」

「おっぱい勧誘じゃないよ!! ……ぼくに稽古けいこをつけてほしいんだ」

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