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おっぱ異世界  作者: えすくん
第2章 日曜日の祝祭
29/90

第26話 モテる男に勝ちたい!

 おはようございます!

 朝になったら指名手配されてました!

 鷹司たかつかさタカシです!



「そこの犯罪者のきみぃ。ぼくと決闘しようよ。……そのかわいい蝶貴妃人ちょうきひじんガールをけて、ね」



 懸賞金けんしょうきん狙いの群衆をき分けて現れたのは、西洋貴族のような服に身を包んだ蝶貴妃人ちょうきひじんだった。

 服も青、ブーツも青、羽も青……。

 とっても目を引く姿だけど、それ以上に特徴的なのが、



「きみ、男の人じゃん!!」



 だって、その胸にあるのはおっぱいじゃなくてっぱいなんだもん!

 言ってる内容がイッてるやつだけど、同じ男として、去勢きょせいの刑にしょされちゃうのは黙って見過ごせない。



「あっあの、だっ大丈夫なんです」



 千祚代ちそよちゃんが早口で言う。



「だっ男性でも、ちょっ蝶貴妃人ちょうきひじんであれば、いっいていいんです。きょっ居住者ですから」



 なーんだ、こんな変人を心配して損しちゃった。

 それじゃあ、こんなのは放っておいて、どうやってこの状況を切り抜けるか考えよう。

 ……ん?

 やけに人々がざわめいてる。

 その注目は青い男性の蝶貴妃人ちょうきひじんに集まっていて……。



「ねえ、もしかして……」

「似てる似てる」

「本人!? 本人なの!?」

「ヤッバ!」

「この人、あの有名な……」



 変人はもったいぶった所作しょさで、自己紹介した。



「そうでぇ~す! ぼくはアイドルのあおちゃんでぃす!!」



 途端とたんに人々から歓声かんせいき起こった。



「「「「「「あお様ーーーーー!」」」」」」

「行こっか、千祚代ちそよちゃん」

「はっはい……」

「待て待てーーーーーい」



 さりげなく逃げることはできなかった。



「どうしても待たなきゃいけないの?」

「もちろんろん。無理矢理、逮捕……ってのも悪くないけどね、ほら、ぼく優しいじゃん? だから、きみにもほんの少しのちょっとだけチャンスをあげちゃいましょ~」

「よくわかんないんだけど、そんなことして、ぼくは何か得するの?」

「きみがぼくに勝てば、この場は一旦いったん引いてあげる。ぼくがきみに勝てば、きみは牢獄ろうごく行き、かわいいガールはぼくと結婚ってわけ☆」



 途端とたんに、大きなどよめきが生じた。

 お似合いのカップルだの、嫉妬しっとしちゃうだの、やけにうるさい。



「しっ仕方ありませんよ。ゆっ有名なアイドルですから」



 千祚代ちそよちゃんが耳打ちしてくれた。



「そうなの?」

「しっ知らないんですか? あっあおさんと言えば、せっ世界中で有名ですけど……。うっ歌とか、えっ映画とか」

「んー。あー、知ってる知ってる」



 アイドルだから、こんなに女性からキャーキャー言われてるってわけか。

 ……ゆるせないな。



「じゃっじゃあ、どっどうにかして逃げましょうk━━」

「その決闘、受けて立つよ!」

「タッタカシさん!?」



 大体、アイドルだのイケメンだの、そういうやつらは気に食わないと常々思ってたんだ。

 このあおってやつは蝶みたいな顔をしてるからわかりづらいけどさ、皆からちやほやされてるってことはイケメンなんでしょ?

 イケメンはおっぱいみ放題なんでしょ?

 やっつけてやる!



「で、どんな決闘なの? 勉強なら割りと得意だけど。でも、音楽は苦手だから勘弁かんべんね」

「体育会系の決闘に決まってっしょ」

「それは一番苦手だから、やめて!!!」

「かわいいガールをけた決闘に、男が命をけないでどうすんの~?」



 あわてふためくぼくとは対照的たいしょうてきに、千祚代ちそよちゃんは精一杯、か細い声を張り上げる。



「かっ勝手にけないでください」

「安心しちゃいなよ。……窮屈な世界からき放してあげちゃうよ」

「……っ!」



 気のせいか、あおの言葉に、千祚代ちそよちゃんが揺れてるように見えた。

 千祚代ちそよちゃんもこのイケメンのこと好きなの!?

 えっ……じゃあ、ぼくが決闘する必然性なんてなくない……??



 気ままなあおは道に生えた実をみ、空に投げた。

 これ、映画で観たことあるやつだ。

 投げた物が地に落ちた瞬間、戦いが始まるんだよね。



「うぇ~~~~~~~~~い!!!!」



 水に落ちた実がちゃぽっと音を立てた瞬間、やつは攻撃に出た。

 ぎゅっとっぱいを寄せると、何もないところから大量の水を生じさせ、ぼくに向かって撃ちこんできた!

 まるでクジラの潮吹しおふきだ。



 直撃の瞬間、どうにか飛び上がってけられたのはいいものの、えぐられた植物の道を見たら、ぼくはもう完全に戦意喪失せんいそうしつ

 いやいや、勝てるわけないじゃん?

 あおはただの自信家じゃない。

 服の上からでも伝わる大胸筋だいきょうきんあつみは、この潮吹しおふき魔法を何発でも撃てるってことを主張してる。



 一方、ぼくにはおっぱいがない。

 っぱいもない。

 体力もない。

 魔法に関する知識もない。

 魔法を使った経験もない。

 ついさっきから戦意もない。

 何にもない。

 ……よし。



「ねえねえ、ぼくたち友達だよね?」

「違いまぁ~~~~す!!」



 友達作戦は失敗に終わった。

 あお容赦ようしゃなくしおを吹きまくる。

 だけど、一応、ぼく以外の人には当たらないよう注意してるみたい。

 その優しさをぼくにも向けてもらいたいもんだ。



 けてばかりじゃ話にならない。

 そんなことしてたって、いたずらに体力をけずっちゃうだけだ。

 ぼくの体力のなさをめるなよ。

 どうにかして距離をちぢめることができれば、ホックを外してやれるのに。



「あ……それじゃダメだ」



 む団との一件を思い出した。

 ホック外しを喰らわせて魔法を使えなくしても、腕力であっさり対抗されちゃったってことを。

 そんな絶望的な事実が脳裏のうりをよぎったと同時に、肉体にも絶望が訪れた。



 水魔法、直撃。



「あ゛ああ゛あ゛ぁあぁぁあ゛ぁぁあぁぁあ゛ぁぁぁああ゛あ゛あ」



 激しい痛み!

 こんなに痛いの初めて!

 涙とうなりが止まんない。

 死にそうなくらいの痛みだけど、むしろ目が覚める。

 きっと、まだ永遠の眠りにはつかないでいられそうだよ……。



 だけど、両足は完全にへし折れちゃってる。

 ぎりぎり皮一枚でつながってる……。

 もう一歩も動けない。



「素敵ーーーーーっ!!」

「結婚おめでとう!」

「結婚しないでぇぇえん」

あお様、こっち向いてーーー」

「大好きーーーーーっ」



 ……外野がうるさい。

 これだけ女の人に騒がれる人生なんて、さぞかし楽しいんだろうな。

 地面にいつくばったままの姿勢で、ぼくはあおを見上げた。



「ふぅ……美味うまい」



 嘘……でしょ……。

 ぼくがこん……っなに苦しんでるっていうのに、あおのやつ、優雅ゆうがにグラスで飲んでる。

 勝利の美酒びしゅってやつ?



 あれあれ?

 もしかして、皆、ぼくの存在を忘れてる?

 ぼくのこと覚えてる人いない??



「もっもうやめてください!」



 さけんだのは千祚代ちそよちゃんだった。

 ぼくの倒れているところへけ寄って、そっとかばってくれた。



「タッタカシさんはこっこれ以上戦えません! おっ終わりにしましょう」

「フゥ~~~~~。優しいガールは嫌いじゃないよ。あー、ね、じゃ、結婚しよっか」

「…………」

「もう一発そいつに喰らわしちゃおうかなぁ?」

「けっ結婚します! しっしますから……もっもうやめて……タッタカシさんは私のとっ友達なんです……」



 千祚代ちそよちゃん……。



「んー。友達とか、そういうのはどうでもいいんだけどー、なんかさー、やっぱ言葉だけでは信用できないじゃん? 本当に結婚してくれるの? ちかいのキスとかしちゃわない?」

「……そっそうしたらタカシさんを、こっこれ以上いじめないですか?」

「ダメだ、千祚代ちそよちゃん!!」



 ぼくは声を振りしぼった。

 でも、案の定、無視。

 あおは一歩、また一歩と千祚代ちそよちゃんに近づく。



 群衆はあお千祚代ちそよちゃんの接近に嫌だのやめてだの言いながら、だけど、行動には移さず、ただじっと見てる。

 しのアイドルじゃないの?

 不安や不快感より、チューを間近で見られる期待の方が大きいの?

 それでいいの?



 ぼくは違う。

 大切な人のためならあきらめない。

 誰の悲しみも見たくない。



「それじゃあ、婚約のあかしとして、かわいいガールのくちびるを」



 あお千祚代ちそよちゃんのあごをくいっと持ち上げる。



「い~~~ただきまぁ……」

「えいっ」

「ほぐぃ!?!!?」



 ふっふーん。

 綺麗なお顔をゆがませてやったよ。

 のこのこやって来たやつの股間の真下で、頭をき上げた。

 キンタマ粉砕!



「おっ……おふ……あ、あわわー」



 またに意識を集中させるあまり、グラスを水の道路の中に落っことしてしまったあお

 すごくあわててやがる。

 ざまぁみろ。



千祚代ちそよちゃん! 今のうちに逃げて!」

「タッタカシさんを置いては行けません。いっ一緒に……」



 だけど、千祚代ちそよちゃんに持ち上げられただけで、ぼくの足に激痛が走る。

 痛い痛い痛い!

 無理無理無理!



 ぼく達がぐだぐだ手間取てまどってる一方、あおは水の道路にストロー状の口を突っ込んで、ごくごく飲んでる。

 そんなにのどが乾いてたのかな?



「……あれあれ?」



 それは一瞬のことだったけど、見間違いじゃないと思う。

 かっこつけアイドルの服のそでからのぞいた腕は、まったく若者のそれには見えなくて、むしろおじいちゃんのようなしっわしわの腕だったんだ。



「どっどうしましょう……」

「何を?」

「みっ皆さんが怒ってらっしゃるみたいで……」

「えっ? ……あっ!」



 ぼくはあおの腕を食い入るように見ていた。

 水を飲めば飲むほど、腕のしわしわは収まっていく。

 若返っていく。

 あおはぼくの視線には気づかず、水分補給を続ける。



「ゴラーーーーーーー!!」

「てめぇぇええ、あお様のあお様を攻撃しやがって!!」

「殺したるぅ!」



 んぁ!?

 あおファンの群衆がキレ散らかして、ぼくに向かって走ってくる。

 ヤバイ!

 千祚代ちそよちゃん、きみだけでも……と思うけど、とっても優しい彼女はぼくをしっかりつかんで、あくまで運命をともにする気だ。



 守ってあげたい。

 きみの悲しみを見たくない。

 できれば、おっぱいみたい。

 だけど、足をズタボロにされた今、ぼくは自力で立ち上がることすらできない。



 ぼくにできることは最後の望みにけること。



「助けてぇぇぇえぇ、カーチャーーーーーーーン!!!」



 どこかにいるカーチャンに向かって叫んだ。

 きっと、届くはずのない願いを。



「ラ---------」



 …………。



「ラーーーーーーーーーーー」



 ……んぇ?



「るるぁっ!!!!!!!!!!!!!」



 地面が揺れるぅ。

 突如とつじょとして空から舞いりた、大きなえ声、大きな着地音、大きな図体ずうたい

 これは……



「カーチャン!!!!!」

「ひっ、ばっ化けm━━カッカーチャン……?」

「ぼくのカーチャンだよ!」



 群衆もどよめいてやがる。

 どうだどうだ!

 ぼくのカーチャン、怖いだろ。



「タカシ!!! あんた、その足、どうしたの!!?」

「こいつらにやられた! やっつけちゃってよ!!」

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