第24話 女の子のおうちに泊まりたい!
こんばんは! 鷹司タカシです!
揉む揉む団の魔の手から逃れようと走ったぼく達。
「日曜日の祝祭」が開催される水製都市にやって来ました。
ここで自己紹介タイム。
美しい羽とDカップの桃色おっぱいを持つ彼女の名前は千祚代ちゃん!
そして、ぼくは、
「鷹司タカシだよ!」
大きな声で元気よく自己紹介しよう。
「小学5年生の元気いっぱいな男のk━━」
危なーーーい!!!
「だっ男性なんですか?」
「いやいや! まさかまさか! そんなわけ……そんなわけないじゃん! もちろん女の子だよ。女子。うんうん。女子小学生。あはあは。男なわけないよねぇ。女だよ。おっぱいはぺったんこだけど。女」
ここ水製都市は「日曜日の祝祭」会場になってる。
なんだか知らないけど、男子禁制の場所で、もし男が侵入しようものなら、その刑、なんと去勢。
「そっそうですよね……。でっでも、なっ何か変わってますよね?」
「!!?」
ぼくはさりげなく息子をきゅっと両足で挟んだ。
「じっ人種はネアンデルタール人ですよね……? そっそれにしては、あっあまり皮膚が白くないような……あっ、すっすみません。しっ失礼でしたよね。ごっごめんなさい」
なるほど。
地底世界にはネアンデルタール人の末裔が存在してるけど、宝百合ちゃんを見ればわかるように、結構色白なんだな、これが。
ぼくはホモ・サピエンスだし、黄色人種だから、違和感を持たれるのは仕方ない。
「あー……うん。日焼けしたんだ」
説明はめんどくさいもんね。
「ところで、千祚代ちゃんは一人で前夜祭に行ってたの?」
「……えっ?」
「家族や友達は一緒じゃなかったの?」
「あっ、そっそれは……かっ家族は死んでしまって、わっ私はひとりぼっちなんです」
なんてこった!
親がいなくなるなんて、どれほどの苦しみだろう。
ぼくよりも小さなこの子にとっては、なおのこと。
「ごめんね、辛いことを言わせちゃって」
「いっいえ、いっいいんです」
「それで、一人で生活してるの?」
「はっ……はい。そっそうですね……」
「そっかぁ。ぼく、送ってあげるよ」
ぼくは千祚代ちゃんの手を握って、歩き始めた。
ふふふっ。
優しさアピール大作戦。
かわいそうな少女を守ってあげられると同時に、おっぱいを揉むチャンスをつくれるんだから、ぼくって頭いいなぁ。
「家はどっちなの?」
「えっええ!? えっえっと……あっあっちです。あっ、いっ行くなら、しょっ植物の上を歩いてきましょう」
そう言いながら、千祚代ちゃんは植物の上に乗った。
おっ……パンツが……。
ぼくはまだ水の中に立ってる。
この状態だと、ちょうど千祚代ちゃんパンツ略してチソパンが見えそうな見えなさそうな……。
「みっ道になってるんです」
「水玉模様かぁ」
「あっあの、きっ聞いてますか?」
「あ、ごめんごめん。聞いてるよ。何の話だっけ?」
「しょっ植物は道としてつっ使われてるんです」
水製都市は水浸しだ。
だって、ここは壁も家も道路も街灯も何もかもが、水でできてるんだもん。
こうして歩いてるだけで、靴の中はびっちょびちょ。
見た目は美しくても、不快指数が半端じゃないよ。
ところが、ここには至るところに植物が生えてる。
道路の上はもちろん、家の壁や屋根、街灯など、どこを見ても植物の葉っぱと蔓が這ってる。
だけど、地面━━というか水面の下に土は見えないし、根っこは水中をぶらぶらしてるだけだ。
一体どういう現象なんだろう?
「わっ私達、蝶貴妃人は、昔から植物栽培に長けてまして、そっそれはこの特別な水のおかげなんです」
「農家なんだ?」
「やっ野菜とか果物とか精油とか、じゅっ需要のあるものを幅広く生産してます。でっでも、こっこの道のように、にっ日常的に役に立つからっていう理由もあるんですけどね」
栽培が得意で植物がありあまってるから、道路を植物で賄ってるってことね。
確かに、見渡してみれば、水の中を歩く間抜けなやつはぼく以外にいない。
生き物の上に乗っかるなんて、なんとなく抵抗があるけど、郷に入れば郷に従え。
ぼくも千祚代ちゃんの後に続いた。
植物でできた道は意外としっかりしてて、歩きやすい。
何より、濡れないで済むってのが最高だね。
たくさんの人とすれ違う。
地底世界の各地から、様々な人種が集ってる。
明日のお祭りが目当てだろうね。
……その割りには、どの人も梅雨みたいなじめじめした表情。
みんな女の人だ。
「ぼくの心、お祭り開催中!」
「えっ?」
「だって右を右を見ても左を見ても、おっぱいがいっぱいなんだもん。ん~。今すぐ揉んじゃいt……」
「……」
「……星が綺麗だなぁ」
「はっはぁ……?」
ヤバイヤバイ。
おっぱいがいっぱいだからうっかり本音をぽろりしちゃいそうになっちゃう。
「あら、千祚代様じゃありませんか」
道の向こうから、太っちょなおばさん蝶貴妃人が近づいてくる。
「知り合い?」
「いっいいいいいいいえ、しっしししししし知らないです」
その言葉とは裏腹に、おばさんは千祚代ちゃんに親しく話しかける。
「まあまあ、こんなところにいらっしゃったんですか。前夜祭にでもお出掛けに? 今は一刻も早く家にお帰りくださいな」
「やっぱりこの人、知り合いなんじゃない?」
「ちっちちちっちちち違います」
ぼくの後ろに隠れる千祚代ちゃん。
「ちょっと、あんた、邪魔だよ。そもそも、あんたは誰なんだい?」
失礼なおばさんだ。
ぼくは下心なんて一切持たない紳士なんだぞ。
「どうかしらね。どことなく、いかがわしい雰囲気もあるようだけど。変なのがくっついていると、千祚代様のご両親も不安を抱かれるだろうよ」
「こいつぅ。傷口を抉るようなことを言っちゃって。千祚代ちゃんのトーチャンとカーチャンは死んじゃったんだぞ」
「失礼なことをお言いでないよ」
おばさんはぼくの頭頂部をボコッと殴った。
「千祚代様のご両親は健在だよ! きっと、今も水の櫓で、明日のお祭りの準備をしていらっしゃr━━」
「タッタカシさん、いっいい行きましょう!!」
大人しめの少女が急に大きな声を出して、ぼくはびっくり。
背中を強く押されて、怒濤のチェイスが始まった。
「お待ち!」
ぼくの顔面を鷲掴みにしようとするおばさんの手をかわし、植物の道の上を全力疾走。
わっ……わっ……わぁぁ~~~~~~~!!
ぶつかっちゃう!
蔓につまずいてこけそうになる!
「ねぇ、千祚代ちゃん! やめよう、危険運転!」
「……」
「千祚代ちゃぁん!?」
人を避け、右に曲がり、左に曲がり、水の道路に落ちそうになったところをどうにか回避し、勢い余って人の家に飛び込んでしまったおばさんを引き離し、それでもなお、ぼく達は走り続けた。
それから何分経ったかな。
千祚代ちゃんがやっと止まってくれたのは、人も家も見当たらず、ただ鬱蒼と植物が生い茂るだけの場所だった。
おまけに、街灯が少なくて薄暗い。
ぼくは荒い呼吸をしながら、周囲を見渡す。
木のような大きさの幹を持ち、サッカーボール大の実をつけた草が所狭しと生えてる。
「何、ここ?」
「はっ畑です」
「ふーん……。ねぇ、どうして、ここに来たの? どうしてあのおばさんから逃げたのさ?」
千祚代ちゃんはぼくの質問から逃げるように、どでかい草の密林を進んでいった。
どこに行くんだろ?
ちょっと怖い気もしたけど、こんな不気味なところに置いてけぼりにされる方が怖いや。
そそくさと千祚代ちゃんの後を追っかけた。
そして、圧倒された。
さっきまでとは打って変わって、キャベツのような背の低い植物が栽培されてる畑。
暗がりを舞う無数の光。
これって、
「ホタルだ……」
「せっ正確にはアタマホタルという種類の、あっ頭が光る珍しいホタルなんです」
「綺麗……。でも、ホタルにキャベツを食べられちゃわない?」
「だっ大丈夫です。よっ幼虫のホタルは肉食ですし、せっ成虫のホタルは何も食べませんから」
「そっかぁ~」
ぼく達は無言でアタマホタルに見入った。
ほんのりと輝く緑の光は、どことなくあったかい。
そう言えば、ホタルは綺麗な水がなければ絶滅しちゃうって聞いたことがある。
このホタルの存在が、水製都市の清らかさを証明してるね。
畑道を歩きながら、ぼくは両手を宙に差し出した。
ホタルが留まってくれないかと期待して。
「アッアタマホタルは人に馴れませんから」
「そうじゃないよ。きっと、こいつらは飛ぶのが好きだから、休みたくないだけなんだ」
やがて、街灯の光もホタルの光も届かない真っ暗な場所に来た。
そこに一軒の家が建っていた。
「……こっここが私のいっ家です……」
「こんな不気味なところが!?」
よく言えば、納屋。
ありのままに表現すれば、廃屋。
その水の家は山盛りの植物に隠れていた。
今までに見てきたような建築物とは違って、ちょっと蔓に覆われてるなんてものじゃなく、もう植物そのものになっちゃってる。
この子、顔に似合わず、よっぽど苦しい生活を送ってるみたい。
「あっあの、おっ送ってくれて、あっありがとうございました。……そっそれじゃ」
「それじゃ家に入ろっか」
「はっはい。……えっ?」
独り暮らしの女の子の家に上がり込むのはいけないことかも。
だけど、許してね。
だって、こんなとこまで来ちゃぁ帰り道がわかんないし、真っ暗で怖いし、って言うか、もう疲れちゃったんだもん。
「そっそうですよね。たっ助けてもらったんだし。ひっ一晩泊めるくらい普通ですよね。おっ女の子同士ですし」
「……うん。女の子同士だし」
ありがとう。
そして、ごめん。
罪悪感を胸に抱きつつ、ぼくはまた千祚代ちゃんの羽の下に頭を隠して、水の家の壁を通り抜けた。
まーた、服がびしょ濡れだ。




