表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっぱ異世界  作者: えすくん
第2章 日曜日の祝祭
26/90

第23話 濡れ濡れになりたくない!

 こんばんは! 鷹司たかつかさタカシです!

 さぁさぁ、今からぼくのかっこいい無双が始まるよ!

 前夜祭に現れた「む団」とかいう不潔ふけつな不良集団にナンパされて、あやうく胸をみくちゃにされちゃうところだったけど、ぼくは戦う!

 なぜなら、今、ぼくの目の前には、おっぱいの大きな美少女がいるからだ。



 つぶらな複眼、ストローのような口、背中に美しい羽……彼女は蝶に似てる。

 だけど、おっぱいは哺乳類ほにゅうるいだ。

 黒いワンピースに包まれた体は桃色。

 きっと、おっぱいも桃色だろうな。



「ぼくが助けてあげましょう! だから、お礼に、おっぱいをませてね!」



 む団がそわそわし始める。



「それって、レズじゃん」



 しめた!

 ぼくの服をつかんでた不良の手がゆるんだ。

 ぼくはそいつの薄汚い手を振りほどいて、蝶の少女に駆け寄った。

 そして、彼女をかばうように両手を広げた。



「てめぇ……俺達に逆らうのか?」



 む団の皆さん、キレてらっしゃる。



「女だからって、容赦ようしゃしねぇぞ」



 ふん。

 本当は男だもんね!

 今はただ女装をしてるだけ。

 さっきまでは着てるだけで恥ずかしかった白のワンピースだけど、今の状況では、むしろ頼もしいや。

 だって、ほら、こんなにすーすーするんだよ?

 動きやすいに決まってる。



「おうらぁ!」



 まず最初に近づいてきたのは虎人間。

 深い考えなしに、手をぼくに向かって伸ばしてくる。

 ぼくはその毛むくじゃらの手をさっとけて、それから魔錻羅器まぶらきのホックを外してやった。



「えっ、おわ……ふぁ……」



 突然、胸をめ付けから解放された気持ちよさに、彼はビックリしてる。

 どうしてこうなったかも、わからないようだ。



 ふふっ。

 これ、ぼくの得意技なんだよ。

 ブラジャーのホック外し!

 おっぱい勧誘に敗れ続けた結果、自暴自棄じぼうじきになって獲得した奥義おうぎだ。



「何やってんだよ、ガキの一匹や二匹くらいさっさt━━」

「ほい」

「んふぁあ」



 はい、二人目!

 さあ、どんどん行くよ!



「ひゃん」

「やーばぁい」

「ちょ……見ないで!」

「えっちぃ」



 こいつら、不良のくせに、女の子みたいなかわいい鳴き声しちゃってるよ。

 ぼくなんかより、よっぽど女装の素質あるんじゃない?



「はわっ」



 うっかり、ぼくもかわいい悲鳴。

 だって、激しい動きをしてると、ワンピースのすそがひらりとめくれそうになっちゃうんだもん。

 いやんなっちゃう!



「さ、行こう!」

「え……」



 趣味で不良どものホックを外したんじゃない。

 魔錻羅器まぶらきは魔力を魔法に変換へんかんする道具。

 それを外してやった今、魔法で攻撃されたり拘束されたりすることなく、逃げることができるんだ!



「あいつらがホックをはめるのに手間取ってる間に、ほら!」



 これだけ言っても、まだまごついてる少女。

 有無を言わさず、彼女の手を握ると、ぼくは人混みをき分け、全力で走り始めた。

 ん~、柔らかくって、しっとりした手。

 きっと、おっぱいも柔らかくって、しっとりs━━



「逃がさねぇよ!!!」

「あっ! 危なぶぇあっ」



 後方から飛んできた石ころ。

 危うく連れの女の子に当たっちゃうところだったから、ぼくが代わりに顔面で受け止めてあげた。



「魔法なんか使えなくたって、腕力で十分なんだよ」



 あ……確かに。

 これは完全に計算外。



「ひっ」



 手を引く女の子からかわいい悲鳴。

 やっぱり本物の女の子の悲鳴が一番かわいいねぇ。



「だっ大丈夫ですか……? ちっ血が出てますけど……」

「大丈夫大丈夫! それより、頑張って走って。追い付かれちゃうよ」



 絶体絶命のピンチ。

 おまけに、こんなに必死に走っちゃいるけど、ぼく達に逃げ込むあてなんてないんだ。

 それでも……



「この子のおっぱいは誰にもゆずらないよ!」



 せまり来るむ団。

 ちぢまる距離。

 遂に捕まるかとあきらめかけた瞬間。



「水の壁を抜けろ」



 どこからともなく声が聞こえてきて、それと同時に、煙幕が放たれた。

 またたく間に、前夜祭会場一帯が煙に包まれ、人々はきこむ。



「ゲホッゲッホ。何なの? 誰がやったの?」

「めっ目にしっみます……ごほっ」



 少女は蝶に似てる体の仕組みのせいで、どうやら目を閉じることができないらしい。

 かわいそうに。



 逆に、む団のやつらは目を開けてられないようだ。

 今しかない。

 濃い煙の中を、人にぶつかりまくりながら走って、走って、走りまくった。

 もちろん、少女の手を離しはしない。



 やがて、ぼく達は煙幕の範囲から抜け出た。

 だけど、そこで新たな問題が発生した。



「これって……噴水?」



 目の前に現れたのは、どでかい水の壁だった。

 水が川のように流れてるんじゃないよ?

 壁のようにそそり立ってるの!

 縦にも横にも、どこまで続いてるかわからない、そのくらい大きい水の壁。

 これも魔法……なのかな?

 だとしたら、む団による妨害ってこと?



「どうしよう……」

「いっ行きましょう」

「どこに?」

「こっこの壁の向こうは、ちょっ蝶貴妃人ちょうきひじん水製都市すいせいとしです」

「水洗トイレ?」

「すっ水製都市すいせいとしです!」



 蝶貴妃人ちょうきひじん水製都市すいせいとし

 まったく聞いたこともないんだけど、



「そこって安全なの?」

「あっ安全です。ちょっ蝶貴妃人ちょうきひじんというのは、わっ私の人種ですし、こっここが『日曜日の祝祭』の会場になるので……」

「そうか!」



「日曜日の祝祭」が行われる範囲に男性が入れば、去勢。

 それは地底世界において常識らしい。

 ここへ入り込めば、全メンバーが男性であるむ団は追いかけて来やしないだろう。



「よーし、今すぐ、水製都市すいせいとしに入ろう! ……で、どうやって入るわけ?」

「そっそのまま進むだけです」

「えっ……?」



 そんな簡単に?

 流されたりしない?

 防犯性能とかないの?



「なっないです。こっこの水の壁は防犯のためじゃなくて、境界線の意味で設置されているので……」

「なるほどぉ」



 そうだよね、ここから先に男が入ったら去勢だもんね。

 じゃあ、ぼくがこの水の壁に入るのはヤバイよね。

 だってだって、水は壁のように立ったままの状態だけど、確実に流れてるんだもん。

 ここを通れば、メイクとウィッグが落ちちゃうんじゃないかな……。



「待ちやがれませやがれーーー!!」



 あれこれ悩んでるうちに、む団が追い付いて来てしまった。



「あっあの、わっ私、羽に鱗粉りんぷんがあるから、みっ水をはじけます。はっ羽の下に入ってください」

「ありがとう! ぐふふ。失礼しまぁす」



 彼女の綺麗な羽の下に頭を隠すと、わぁ最高!

 目の前に、おっぱい!

 みたい衝動しょうどうおさえつつ、だけど、さりげなく匂いを味わいながら、ぼくは蝶の少女とともに水の壁に飛びこんだ。

 その間際まぎわ、振り返ったぼくの目に入って来たのは、もう少しのところでぼくをつかみそうになってる不良の手。



「いつか絶対、んでやるー!」



 やつらの遠吠とおぼえを背中で聞いた時、ぼくは水の壁の中にいた。

 くぅ~~、冷たい!

 頭には水がかからずに済んだけど、体がびしょれ。

 不幸中の幸い、壁は割りと薄かった。

 水の壁を抜け出て、見えた景色、それは━━



 水。



 水。

 水。

 水。



 一面、水。



 いやいや、別にここに何もないわけじゃないんだよ!?

 むしろ、見える限りでも、家とか階段とか街灯とか道とか、色々あるんだけど……それら全部が水でできてるんだ!

 壁の中は広すぎて、奥までずっと続いているから、きっとまだまだ水でできた景色が続いてるはず。



「……綺麗だね」

「あっありがとうございます。わっ私もこの場所はすっ好きなんです」

「違うよ」

「えっ……えっ?」

「場所じゃなくって、きみが綺麗だってことだよ。……なーんつって! げへへへh━━」



 む団から逃げ切れた安堵あんどのせいで、ぼくはすっかり油断してた。

 やつの襲撃はそんなタイミングだった。



みさせろぉぉおおぉぉぉぉおおおぉ」



 突如とつじょ、水の壁から、一人のカマキリ人間が現れた。

 む団のメンバーの一人だ。



「ひええっ。ちょっとちょっと……きみ、正気なの? 男の人がここに入ったら、男の魂を切除されちゃうんだよ? わかってる?」

「んなこたぁ、わかってんだ。それでも俺はみに来た。ませろ!!」



 筋は通っちゃいないけど、想いは通じるよ。

 こいつは熱が下がらないんだ。

 おっぱいをみたいって考えたら、そのことしか考えられなくなるタイプだ。



「おっぱい勧誘が一番下手なタイプだね!」

「うるせぇ! 黙って、おっぱいを差し出せ! さもねぇとおぎゃぁあ!」



 それは見慣れたビーム攻撃だった。

 何者かが発射した魔法のビームによって、おっぱいを愛する不良はぶっ倒されちゃったんだ。



「男性の侵入を確認。逮捕する」



 飛んで来たのは、大人の蝶貴妃人ちょうきひじん

 綺麗な羽とたっぷりぽよよんなおっぱいに見とれて……いる場合じゃない!

 だって、ぼくも男だもん!

 もし、まあそんなことないと思うけど、でも、もし万が一ぼくが女装をしてるだけの男だってバレちゃったら、そりゃもう大変なことになるよ!



 でも、大丈夫。

 大丈夫なはずだ。

 カーチャンも力石りきいしあねさんも宝百合たからゆりちゃんも、皆、ぼくの女装を完璧だって言ってくれてたじゃないか。

 だから、よっぽどヘマをしない限りは大丈夫……



「大丈夫じゃないかもっ!?」



 水の壁を抜けた結果、白ワンピがれて、布の下がけになってる!

 胸は……ペッタンコだけど、女の子でもそういう子はいるんだし、ギリセーフっしょ。

 だけど、下はヤバイかも……。

 一応、女物のパンツをかされてるんだけど、でも、やっぱりぼくも男の子だからね、男の子の部分がもっこりと自己主張をしちゃってるわけなの。



 ……ヤバイ……。

 大人の蝶貴妃人ちょうきひじんさんに、じっとにらまれてる……。



 少女の後ろに隠れようと思ったけど、何かに怯えてるようで、逆にぼくの後ろに隠れられちゃった。

 仕方ないから、息子を両足ではさんでおこう……。



「そこのきみ!」



 突然、大人の蝶貴妃人ちょうきひじんさんが呼び掛けた。



「ひいぃっ」

「わっわわっ」



 ぼくと少女は一緒にビビった。



「何かあったら、報告するように」

「……はい!」



 それだけのやり取りの後、彼女は不法侵入の変態を背負って、空を飛んで行った。

 ふーっ。

 緊張したぁ……。



 さてさて、今度こそ安心して、お楽しみタイムだ♪



「あいつら、キモかったね~。見ず知らずの他人のくせして、急におっぱいみたいとか言っちゃって。ところで、助けてあげたお礼に、おっぱいませてくれない?」



 すると、少女は辺りをきょろきょろと見た後、ぼくを物陰ものかげに引っ張っていった。

 ……おやおや?

 これって、もしかしてませてくれる感じ?



 水でできた家と家の間のせまくて暗いところで、少女はぎゅっとおっぱいを寄せた。

 黒いワンピースの胸元から、推定Dカップのおっぱいが谷間をのぞかせてる。

 おぉ……素晴らしい……!

 肥沃ひよくな大地の恵みに感謝して、いったっだっきm━━



「おっおしまいです」

「え……?」



 少女はもうおっぱいを寄せることをやめている。



「おっお怪我をなっ治しました」

「え? あっ、さっき石ころを投げつけられたところを……」



 流血までしていた顔の怪我けががすっかり治ってた。

 彼女がおっぱいを寄せていたのは、もしかして、



「魔法を使ったの?」

「はっはい。わっ私……ちっ治癒ちゆ魔法が得意なので……たっ助けていただいたおっお礼の代わりに」

「そっか。ありがとう。お礼はおっぱいでもよかったんだけど……。でも、すごいね」

「いっいえ、たっ大したことは……」



 大したことありまくりだよ。

 魔法を使えるだけでもすごいことなのに、その力を治癒ちゆに使って、こうして人の役に立ってるんだ。

 ぼくより背丈せたけの小さい子だけど、ぼくより断然立派だよ。

 ぼくは何者でもない。



「きみの名前を教えてくれる?」

「あっわっ私は千祚代ちそよともっ申します……。あっあなたは?」

「ぼくは……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ