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遺跡

 遺跡の内部は大分荒れ果てていた。

 魔物のほかに倒壊の恐れもある。いつもより警戒して進む。


 ハリエットは遺跡についても詳しかった。

 エルフの祖先がここで治療をしていたらしい。

 薬や魔法の解明がまだ進んでいなかった頃に、この遺跡で儀式をしていたらしい。

 だからなのか、ダンジョン的な迷路にはなっておらず、一本道で両サイドに部屋がある程度だった。

 楼台はあるが、火がともっていないので、かなり暗い。

 純也はファイアを使い指に小さな灯をともし、進んでいく。


 問題なく最奥の部屋にたどり着く。

 円状で広い部屋だ。天井が高く吹き抜けのようになっているため、火の光が入っている。廊下より大分明るい。

 真ん中に石のベッドのような祭壇がある。ここで儀式をしていたのだろう。

 一通り部屋を調査してみたが魔物はいないようだ。

 ゴーレムは何を守っていたのだろうか。

 純也は考える。

 守るものがないがゴーレムが守っている遺跡。


 これはまずいかもしれない。


「ハリエット、この遺跡には裏口はあるのか?」

「ありません。出入口は一つです」


 これは罠の可能性が高い。

 ゴーレムの召喚者が外にいる場合、袋の鼠だ。

 場合じゃない。ここにいないのだから外にいるのだ。

 カツカツと靴の音が廊下から聞こえてくる。


「二人とも、構えろ!」


 二人は純也の命令に素直にしたがう。

 純也もボウガンを構える。

 暗い廊下から来訪者が姿を現す。天井から刺す光が来訪者を照らす。

 男のようだ。軽装の防具を身に着けている。


「私は敵ではありませんよ」両手を挙げて進んでくる。「一足遅れてしまったようですね」

「誰だ!?」純也は威嚇する。

「君と同じ勇者ですよ」光に当たる自称勇者の顔がにやりと笑う。

「勇者様、暗くて怖いです」自称勇者の後ろから連れであろう女の子が現れた。

「ほら、アルマダ、さっきのあれ、出してやれ」

「は、はい」


 自称勇者にアルマダと呼ばれた女の子は鞄から赤く光る宝石のような石と、グロテスクな塊をこちらに放り投げた。


「ゴーレムの魔石と、魔女の心臓だ。君たちの戦利品を奪うわけにはいかないからね」自称勇者が手を下げる。「信じてくれたか?」

「ああ、信じよう」純也はボウガンを下ろす。


 二人もパフォーマンスとして警戒を解く。しかし神経は尖らせている。


「ただここでは都合が悪い。一度外に出よう」


 純也がそういうと、わかったと言って自称勇者は廊下を先に進んだ。


「だ、大丈夫かしら」ソフィーが不安そうに言う。

「信じるしかない。とりあえず外に出よう」


 ハリエットからも緊張を伺える。


「君たちはどこの街の冒険者なのかな?」廊下を歩きながら自称勇者が聞く。

「アーガルムだ」

「あの見極め帽子のあるアーガルムか。君も能力を見てもらったのかな?」

「ああ。俺には秘めた能力がないってさ」

「秘めた能力がない?」自称勇者は純也の言葉を効いて考えこんでいる。「なるほどね。まあ、物は言いようだね」

「何が言いたい?」純也は自称勇者の見透かしたような態度を少し不快に思った。

「いやいや、君がそういうことならこちらからは何もないよ」自称勇者はにやにやとしている。


 会話が終わったところで、遺跡の外に出る。

 広いところに出たということで、さっきほどの緊張感は解けた。


「それじゃあ私たちはここらへんでおいとまさせてもらうよ」自称勇者が手を挙げる。「いずれ私も見極め帽子を体験してみたいと思っている。アーガルムに行った際には挨拶させてもらうよ」

「ああ、わかった」

「それじゃあ」手を挙げで自称勇者が去っていく。

「待ってください!!」連れのアルマダと呼ばれた女の子が付いていく。


 警戒心を持ったまま二人を見送る。


「何だったのでしょうか」ハリエットが首をかしげている。

「ほんと焦ったわ……」ソフィーは胸を撫でおろしている。


 一体何のために現れたのだろうか。

 考えられることとしては、自称勇者がゴーレムの召喚者であるということ。

 しかしその場合、なぜあの儀式の場で戦闘とならなかったのか。

 自称勇者とゴーレムが無関係の場合、ゴーレムの召喚者の存在が不明ままだ。


「ま、これで依頼は達成ね」ソフィーが満足そうにしている。

「ありがとうございました。これでユーテラスも安全になったと思います」ハリエットが頭を下げている。

「ああ、そうだな……」


 今回の依頼は一応達成となるだろうが、不完全だ。

 不明点が多すぎる。それになんだかいやな予感がする。

 追跡調査を無償でするしかない。

 心残りを持ったまま、帰路につく

 途中、魔女の小屋に寄ってアイテムを物色した。


 ユーテラスに着くころには夕方になっていた。

 けがをした男が熱い抱擁で迎えてくれた。嫌だった。

 酒場で宴会が開かれ、純也一行は称えられた。

「私はいずれ名剣士になるソフィーよ! 覚えておきなさい!」

 テーブルの上に立ち、ソフィーがジョッキを掲げると、男たちが「おー」と言って興奮している。

 純也は酔っ払いが嫌いだ。

 早く帰って眠りたかった。

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