ゴーレム
森の奥の遺跡。かつて何かをやっていたところ。
この遺跡に関して記述をした資料が見当たらなかったのでわからない。ユーテラスにはあるかもしれない。気が向いたら目を通してみよう。
遺跡の入り口にはゴーレムがいた。
動いていた。
魔女とは関係なかったようだ。同時に現れたということだ。
偶然かどうかは調べる必要がある。
ゴーレムはなかなか大きい。見た目は全然違うけど、天空の城にいそうなあいつくらいある。
「私の風攻撃が有効だと思います」
「そうだな。期待している。物理攻撃には耐性がありそうだな」
「そうね。私の攻撃は効きそうにないから、かく乱するわ」ソフィーが残念そうにする。
「いや、風攻撃でもろくなったところに最後の一撃を食らわせろ」
「それがいいですね。とどめは結局剣で刺すのがいいでしょうね」
物騒だが確実なのはそれだろう。
「わかったわ。任せてちょうだい」ソフィーが嬉しそうにする。
感情がころころと変わる。一人で賑やかな性格だ。だからこそ一緒にいても楽しめるのだけど。
「それじゃあ討伐しますか」
純也がそういうと、三人は立ち上がった。
「エアーウェーブ!!」ハリエットが杖を高く上げる。
先手必勝。
突風が吹きゴーレムがよろける。
攻撃として効いているのかは不明。
しかし隙ができている。
「エアー」純也も矢を放つ。
矢はゴーレムに当たると、突き刺さらずに地面に落ちる。
予想はしていた。
純也としてはゴーレムの関節部分の隙間を狙ったつもりだったが、細かい命中はかなり難しかった。
突き刺さらなくても矢に乗せた魔法の効果があると思っていたが、そうではなかったらしい。
しっかりと刺さらないと矢に乗せた魔法は効果を発揮しないらしい。
これは純也の準備不足。下調べが不十分だったと言える。
「まいったな……」純也がつぶやく。
一度手を止めて考える。
その間、ハリエットは風をゴーレムにぶつけている。
ゴーレムはよろめいているが、効いているようには見えない。
風属性が土属性に強いのは風化があるからだ。しかしゴーレムは風化しているように見えない。
ソフィーはゴーレムの周りを駆け回り、かく乱している。
ゴーレムは大きな腕を振りソフィーに攻撃する。
剣で防御するがゴーレムの攻撃の勢いは強く、ソフィーの身体は飛ばされる。
「きゃああ」ソフィーは遺跡の柱に当たり、地面に落ちる。
かなりのダメージだったと思われるが、ソフィーは剣を握ったままだった。
さすが名家の剣士。後で褒めてあげよう。
純也はソフィーの元に駆け出した。
□◇■◆
「ち……ちくしょう……」
ソフィーは立ち上がろうとするが、力が入らない。
こんな言葉遣いをしたらお父さんに怒られてしまうけれど、それくらいの気合を入れないと負けてしまう。
だめだ。全然だめだ。
たった一撃でこんな状況になるなんて。
純也の前でこんなの恥ずかしい。
「ソフィー大丈夫か!?」来てほしくない純也が来た。
来てほしくないのに来てくれて嬉しい。
「純也……」
「ちょっと待ってろ」純也が鞄をごそごそと漁っている。「ほら、ポーションだ」
純也に抱きかかえられ、ポーションを飲まされる。
効果は十倍くらいになったんじゃないかと思うくらい、身も心も回復していく。
この間にハリエットが風魔法で時間を稼いでくれている。
「ありがとう。もう大丈夫よ」ソフィーは立ち上がる。
剣を構えなおし、ゴーレムに対峙する。
「ハリエット! ありがとう。私はもう大丈夫よ!」
「よかったです」
「これから反撃よ!」
その瞬間、地面が揺れた。
大きな地震だ。
立っていられない。
ハリエットも攻撃を止め、地面に手をついている。
純也も手をついている。
這って純也の元まで戻る。
「大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ」
収まる気配はない。
ゴーレムは揺れに耐えようとしているが、重心が高いのか大きく傾きやがて倒れた。
座って耐えるというヒトの持つ防衛策をゴーレムは持っていなかったのだろう。
ゴーレムはばらばらに崩れた。
すると地震は収まった。
ゴーレム死んだのかはわからないが、個々になったのならただの岩だ。
砕くのみ。
ハリエットも同じように考えていたのか、立ち上がり、杖を振っている。
「エアーウエーブ!!」
岩が風化していく。
「はっ!」もろくなった岩をソフィーが剣で突き刺す。
剣が岩を砕く。
純也も矢を放っているが剣のようには刺さらない。
諦めたのか、短刀を取り出し、一個づつ粉砕している。
ハリエットが手を止めたので、ソフィーも攻撃をやめる。
「こんなもんでいいでしょ。やったわね」
「お疲れさまでした」
「いや、まだだ。完全に砂にして風で飛ばしてしまおう」純也が両手をかざす。「エアー」
ハリエットより数段弱い風魔法だ。何時間かけるつもりだろうか。
「エアーウエーブ」ハリエットが続く。
多分純也の弱々しい魔法を見ていられなくなったのだろう。
ソフィーも剣の柄を使って物理的に細かくしていく。
「よし、これでいいだろう」純也が手を止めた。
「ここまでやれば安心ですね」
「それじゃあ遺跡の奥を確認しておこう」
「そうね。このゴーレムが何を守っていたか確認が必要ね」
ポーションで回復し、万全の準備をして遺跡に入った。




