魔女
「ここら辺から警戒をしてください。そろそろ魔女のテリトリーです」ハリエットが杖を構え言う。
ソフィーは鞘から剣を抜き構える。
純也もボウガンを手に持つ。
「なんだか寒くなってきたわ」ソフィーが身体をさする。
氷使いの魔女が近くにいると言うサインだろう。
しばらく警戒しながら進むと、小屋が見えた。
話で聞いた小屋で間違いなさそうだ。
恐らく小屋にいるのだろう。明かりがともっている。
「ここは俺に任せろ」
純也は矢筒から矢を取りボウガンに装着する。
「大丈夫なの?」ソフィーが不安そうにしている。
「大丈夫だ」純也はソフィーに言うと矢を放った。「ファイア」
飛んで行った矢は小屋に突き刺さると、めらめらと燃え始め、小屋に引火した。
「いつの間にそんなのできるようになったの?」驚くソフィー。
「昨日の練習中に覚えた。だけど、まあ、まぐれだな」
ソフィーが純也の攻撃に目を輝かせていると、小屋から魔女が出てきた。
聞かされていた通り、つばの広い帽子にローブと杖。魔女とみて間違いない。
「貴様らかッッアア!!」魔女がこちらに気が付いたようだ。
怒っているようだ。家を放火されたらそりゃ怒るのも当然だ。
顔は途中で下に折れた長い鼻と、シュッとしたあご、人の寿命を超越したかのようなしわしわの肌。絵にかいたような魔女だ。
「アイスストォォオオーン!!」魔女が杖を振る。
勢いよく氷の塊が数個飛んでくる。
「やばいわよ!!」ソフィーが身をかがめる。
純也もソフィーに合わせる。
「エアーバリア」ハリエットが杖を掲げる。
風のバリアが現れる。バリアに当たった氷の塊は砕けた。
「おお。すごいわね」
「ありがとう」
「いえ、でもこれでは守る一方です」ハリエットがバリアを張りながら言う。
「そうね。それじゃあ私が行くわ」ソフィーが魔女の攻撃の隙を見て飛び出す。
ソフィーは足が速いなと今しなくていい関心をしてしまった。
距離としては五十メートルくらいだろう。
ソフィーは足だったら三秒くらいだろうか。
剣を振りかぶりソフィーが飛びかかる寸前。
「アイスロックゥゥゥゥゥウウウ!!」魔女が杖をソフィーに向ける。
反応速度は速いようだ。
魔女の反撃を喰らいソフィーの動きが止まる。
「きゃあ」ソフィーが悲鳴を上げる。
下半身が凍っている。
魔女が腰から短刀を取り出し、ソフィーに切りかかる。
ソフィーは上半身を反らし、剣で魔女の攻撃を弾く。
物理攻撃は苦手なのだろうか。魔女は弾かれた反動で少し怯んでいるように見える。次の攻撃に入るまでのモーションが長い。
その隙に純也は魔女に矢を放った。
矢は魔女に突き刺さったが、大したダメージにはなっていないようだ。
「たいしたことのない奴らだなぁぁぁああ!」魔女は矢を抜くと放り投げる。
続けて純也は二本の矢を放った。
それらはソフィーの下半身の氷に突き刺さった。
みるみるうちに氷が解ける。
「くっそぉぉぉおおお! アイスロッ……」魔女がもう一度杖を振ろうとした。「ああ、熱い……。熱ゥゥウウい!!」
魔女が燃える。
純也の矢の火が大きくなったようだ。
ちゃんと引火していてよかった。
「ソフィー! 今のうちに魔女の首を落とせ!」
「わかったわ!」
魔女は炎を払っている。隙だらけだ。
ソフィーは勢いを取り戻し、ホームランバッターよろしく身体全体を使い剣を横に振った。
剣の芯で魔女の首をとらえる。
ぴかぴかに磨き上げられた剣の切れ味は見事で、きれいに頭と身体は切り離された。
魔女の首が落ちると、立っていた身体が倒れる。
ソフィーは剣に着いた血を拭くと、その場に座り込んだ。
すぐにでもソフィーのところへ駆け付けたいところではあるが、燃える小屋と魔女の消火が優先だ。
「ウォーター」
簡単な魔法だ。呪文もダサいと思っている。しかしこれがこの世界の理だから仕方がない。
小屋は半焼と言ったところだろうか。帰りにこの小屋も捜索してみよう。何かいいアイテムや素材が見つかるかもしれない。
消火活動をしている間、ハリエットがソフィーの治療していた。
「純也! すぐに駆け付けてよ!」ソフィーが口を尖らせている。
「はいはい。ごめんごめん」
こういう時は反論や言い訳をしない。おつかれさまと言ってソフィーの頭を撫でる。
「ま、まあいいけど」
「ハリエットもありがとう。あのバリアは助かったよ」
「いえ、私よりも勇者様の的確な行動によるものが大きいと思います」ハリエットが謙遜する。
「そうね。あんな攻撃ができるなんて思わなかったわ」
「矢に魔法を乗っけただけだよ」純也は頭を掻く。
「それにしてもどうやって私の氷を解いてくれたの?」
「火と水の矢を放った」
「火と水ですか? 二本放ったのは確認していたのですが、どちらも火だと思っていました」
「氷を解かすだけなら火だけでいいと思うけど、ソフィーが燃える可能性があるだろう」
「げっ……」ソフィーが眉をひそめる。
「解凍するときって、流水の方がいいんだよ。だから水。冷たい水よりお湯の方がいいだろうと思って火と水の矢にした」
「な、なるほど」
「賢いのですね」
二人が感心している。
ソフィーはハリエットの治療とポーションのお陰で大分回復しているようだ。
純也とハリエットはポーションを飲み、МPの回復をする。
「それでこれからどうする?」純也が二人に聞く。
「どうするって、ゴーレムの討伐でしょ?」
「それ以外あるのですか?」
「一度村に戻るって選択があるだろう」
きょとんとする二人。
「え、だって、魔女がゴーレムを作ったなら、もう動かないはずだから村に戻っても問題ない。魔女とゴーレムが無関係なら、一つ仕事が片付いたので村に戻っても問題ない」
「こういうときって、普通、いっぺんにやらない?」ソフィーが腰に手を当て睨みをきかせる。
「ゴーレムが動いている場合、犠牲者が出る可能性があります」ハリエットも少し語気が強い。
「おっけー。ゴーレムの討伐に行こうではないか……」
純也は苦笑いをしながら拳を挙げた。




