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入山

 翌日の朝。

 昨日はハリエットの家で聞き取りをした後、必要なものを揃えた。

 ふもとの集落で作ってもらった矢を少し強化してもらったり、ポーションを上質なものに変えたりなど。

 その後宿屋に泊まり、今朝を迎えたわけだ。


「純也が早起きなんて気合入っているじゃない」

「やるときはやるんだよ」テキトーなことを言っておく。

「それじゃあ期待しているわよ」

「いやいや、ソフィー大剣士のその武勇を目に焼き付かせていただきます」


 二人で宿屋を出ると、ハリエットがもうすでに待機していた。


「お、お待たせ」

「いえ、お気になさらず。それでは行きましょう」


 ハリエットを表現するならば、「無駄がない」だろう。行動、言葉、思考、これらに無駄というものがないのではないだろうか。

 一方純也は無駄ばかり。

 なかなか疲れるかもしれないなと思った。

 先を歩くハリエットについて純也とソフィーも続く。

 村を出るときにけがをした男が「絶対に帰ってこいよ!」と言って手を振っていた。

 森を進むハリエットはやはり無駄がない。魔女の住む小屋の位置はけがをした男から聞いていたのだろう。なんのためらいもなく進んでいく。


「あ、この草ってかなりいい素材だったわよね」ソフィーが純也に言う。「依頼にはないけど採ってもいいかな?」

「そうだな……」純也は思案する。「ちょっとまて」


 ハリエットが付いてくることに、監視的意味があるのかもしれない。

 純也一行が森や遺跡に入り貴重なものを取ったりしないか監視しているのではないだろうか。


「ハリエット、ちょっと歩くのが早い。俺らは森を歩くのに慣れていないんだ……」

「そうでしたか。申し訳ありません」ハリエットがこちらを向き、頭を下げる。「一度休憩されますか?」

「そうだな。休もう。少しでいい」


 川沿いだったので、岩に腰を掛ける。


「ハリエット、ついてきてくれてありがとう。迷うことなく魔女の小屋に行けそうだ」

「いえ。その方が効率がいいと思ったからです」

「確かにそうだな」純也は小さな石を拾い手で遊ぶ。「ところで、ハリエット。俺たちの依頼の内容なんだけど」

「調査ですよね?」

「ああ、そうだ。だけど、素材の回収もできたらしてほしいと言われている。サブミッションみたいなものだな」

「そうだったのですか。それは聞いていませんでした」怒っているのかよくわからない表情と口調でハリエットが言う。

「うん、元々素材の回収についてはやる気がなかったから、言わなかったんだ。ただ今回、ハリエットが付いてきてくれるとなったので、やろうかなって思ってね」

「私が付いてきたから?」

「ああ。この森についてハリエットは詳しいだろ? 採っていいものと採ってはいけないものの区別がつくんじゃないかって思ってね」

「なるほど。基本的には何も採ってほしくないのですが……。まあいいでしょう。討伐が成功した後であればお付き合いしましょう」

「ありがとう」


 そりゃそうだろう。討伐の失敗は死を意味する。討伐前に回収しても意味がいない。それに荷物も増えてしまう。

 さっきソフィーは今すぐにでも採りそうな勢いだった。ちゃんと考えて行動してほしいものだ。


「それじゃあもう休憩はいいわね? 行くわよ」ソフィーが立ち上がる。


 純也は遊んでいた石を川に放り投げ森を進んだ。

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