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(帝国アルティア編)3


 そしてガマガエルことお花は消え、一枚のお札が奏多の元にひらひらと落ちていった。


「・・・。」


「・・・。」


 奏多と三春の二人はしばらく固まっていた。しかし


 プルプル、プルプル、プルプル


 突然、車内に着信音が響き渡った。その音で二人は我にかえる。


 二人が音の鳴っている方へ目を向けるとそこには列車電話があった。


「奏多、これって。」


「あぁ、この状況でこの場所。たぶん例の人からだろうな。」


 二人の間に緊張が走る。


「どっちが出る?」


「・・・ここは俺が出るよ。ちょうど言いたいこともできたし。」


「言いたいことって?」


「とりあえず出るぞ!」


「あっ、待って奏多!」


「何?」


「くれぐれも慎重にね。」


「・・・あぁ、わかってる。」


 奏多は受話器を手に取った。


「やっと出たか。とりあえずここまでごくろ」


「おーい!てめぇ、クソ野郎!全然計画と違うじゃねぇか!少なくとも今日一日はバレることは無いなんて適当なこと言いやがってよ!おかげでこっちは虎の子であるカエルババァを使う羽目になって、しかもゲロ塗れになったんだぞ!このクリーニング代は出るんだろうなぁ!おい!聞いーてんーのーゴフゥ⁉︎」


 三春は罵詈雑言を並べる奏多を殴り飛ばした。そして落ちた受話器を手に取る。


「うちの者が失礼しました。ですが元々の計画と違う流れに僕も含め、少し戸惑っているんです。それに次の定時連絡はここでは無く、駅の公衆電話でする予筈では?」


「あぁ、当初はその予定だったが想像以上に敵の動きが早くてな。お前らの密入国の痕跡が直ぐに発見されたんだ。そして今この形で連絡をかけたことについてだが、それはお前らに至急重大なことを伝えるためだ。」


「重大なこと?」


「今から十分後にその汽車に目掛けて雷帝が落とされることになった。」


 その言葉を聞いた瞬間、三春は驚愕した。


「どうして⁉︎ここは帝都の中ですよ⁉︎雷なんか落とせばインフラが停止してパニックになる筈なのに⁉︎」


「お前らはすでに違法亡命者から国家テロリストとして更新されている。だから国はいかなる手段を用いてでもお前らを捕縛しようとしているんだ。だが安心しろ。こういった場合を想定して、こっちはすでに別のプランを用意している。」


「別のプラン?」


「あぁ。だがプランといってもお前らがすることは至極簡単だ。」


「・・・何をすれば?」


「今から三分後丁度だ。三分後きっかりにその列車から飛び降りろ。お前らがすることはそれだけだ。」


「はぁー⁉︎」


 その言葉を聞いた瞬間、さっきまで吹き飛ばされて沈黙していた奏多が急に起き上がった。そして三春から受話器を取る。


「お前、飛び降りろって言うけどここがどんだけ高いのかわかってんのか!」


「あぁ、当然わかっているとも。だがお前らにとって最悪な事態は死ぬことでは無く、政府に捕まってしまうことだ。それだけは何としても避けなくてはならない。・・・それにいつ俺が地面に着陸しろと言った?」


「はぁ?」


「時間が無い。とりあえず、あと二分十五秒後に飛び降りろ。いいな。」


 向こうがそう言い終わると、電話はプツリと切れてしまった。


「おい!もしもし?もしもーし!」


「切れたみたいだね・・・。」


「くっそー、絶対にクリーニング代だけは払わせてやる。」


「そこかよ。まぁ、とりあえずは」


 そういうと三春は壁に近づいた。


「穴を開けないとね。」


 三春は刀を振る。その刹那、壁の一部が崩れ、大きな穴ができた。強風が車内に入ってくる。


「三春!お前まさか本当に飛び降りるつもりじゃ」


「飛び降りるに決まっているだろ。だってさっき聞いたでしょ、もうすぐ雷帝が降ってくるって。いくら不死の身体を持っていても超高電圧の電流が体に流れればしばらく動けなくなるんだから。」


「あいつの言ってたこと信じるのか?」


「信じるも何も僕らが今、頼りにできるのは彼しかいない。ならもう僕らは彼の指示に従う他ないだろ。」


「ぐぬぬ。確かにそれはそうだけど。」


 すると


 ドン、ドン、ドン。


 天井の穴から新たに三体の機械兵が降ってきた。


「コロス、コロス!」


「カタキハトッテヤル!」


「ヨウシャシネーゾ!」


「ってマジかー!」


「くそ、新手か!奏多、まだ飛び降りるまでには一分三十秒も時間が残ってる。ここはどうにかして時間稼ぎしないと。」


 機械兵たちは口を水鉄砲状に変形させた。


「・・・前言撤回!今すぐ飛び降りるよ!」


 そういうと三春は反転し、奏多の首根っこをがっしりと掴んだ。


「ちょっ⁉︎」


 そして奏多を引きずりながら穴に向かって走り出し、躊躇なく飛び込んだ。二人は遥か高くの高架線路から地上目掛けて急速に落下していく。


「えぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」


「ふぅぅっぅぅぅぅぅ!」


「お前マジか!マジでか!」


「仕方がないだろ!あの状況だったら!」


「だからっていきなり飛び降りる奴があるか!どうすんだよ、予定より早く飛び降ちゃったけど!」


「もう信じて待つしかないだろ!それに最悪、地面に激突しても僕たちは死にはしない!」


「いや、でもこれ相当痛いぞ!それにこれ、どんだけ再生に時間がかかるんだよ⁉︎」


「そんなとこまで僕、知らないよ!」


「いやだー!痛いのは嫌だー!やっぱり天皇の勅命なんか無視して家でネトゲしとけばよかった!」


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