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(帝国アルティア編)2


「ちょっと!三春ちゃん、大丈夫か?」


 そこには機械兵二体を同時にチョップで叩き割っている天然パーマのおばちゃんがいた。


「いや、誰⁉︎」


 三春は大声で叫んだ。


「誰って・・・あぁ、この顔やと分からへんか。ならこれやったらどうや?」


 出てきたおばちゃんはその場で一回転した。するとそこには人間サイズのガマガエルが現れた。


「えっ、お花さん⁉︎」


「そう。みんなの頼れる賢母こと、下呂のお花です。呼び出しに応じて参上しました。それでなんやけど・・・」


 お花は周囲を見回す。


「かなちゃんはどこにいるん?私を呼び出したんやったら近くにおるはずやねんけど。」


「あっ、奏多ならあっちです。」


「やべ、ばれた!」


 三春は奏多が隠れている椅子を指差した。それに気づいた奏多は直ぐに椅子の後ろから飛び出して、別車両への扉に向かって走り出した。


 お花は奏多の姿を確認すると口を大きく開けた。するとお花の口の中から勢いよく長い舌が奏多に向かって飛んでいき、奏多を捕らえた。


「かなちゃん!これは一体どういうことですか⁉︎女の子ばっかりに戦わせて・・・。三春ちゃん液体塗れややないの!」


「違う!それは三春が勝手に」


「口答えしなさんな!」


「ひぃ!」


「どんな状況においても女性より最前線に身を置いて戦う。それが倭国の誉れある男児というものです。そこは武士も陰陽師も貴族も変わりません!・・・というわけで我が主人であり、あなたの母上である静香様の命に従って罰を与えます。」


「えっ⁉︎ちょっと、まっ待って」


「問答無用!」


 するとお花は高速で舌を巻き、そして奏多をゴクッと飲み込んでしまった。


「私の胃の中で反省しとき。まったく・・・。」


 お花は三春に近づいた。


「ごめんなー。三春ちゃん。うちのかなちゃんが頼りない男で。ほんまに苦労かけるわ。」


「いや、大丈夫です。それよりどうしてお花さんがここに?」


「あぁ、それねー。静香様の命なのよ。いくら天皇の勅命やからといってもかなちゃんは何をしでかすかわからへんやろ?だからかなちゃんがしっかりと倭国の陰陽師として命を果たしているか監視し、そしてもし相応しくない行動をしてたら罰を与えなさいって命じられたんよ。」


 お花はゲコゲコと笑っている。


「そうだったんですね。」


「それより三春ちゃん、あんたいつまでそこに寝転がってんの?」


「・・・ってあぁぁ!忘れてた!」


 女性は急に取り乱し始める。


「お花さん!お願いします!この気色の悪い黄色い液体を剥がしてください!これのせいで僕、立てないんですよ!」


「あぁ、なんか少し動きにくいなと思ったらこれが原因やったんか。けどこんなんに苦戦するなんて三春ちゃんもまだまだやなー。ゲコゲコ。よし、ちょっと待っとき。」


 するとお花は口を動かし始めた。クチュクチュという音が鳴っている。


「あの、お花さん。一体何を?」


「何って溶解液準備やがな。粘着質のものには溶解液をぶっかけるのが一番やさかいにな。」


「待って!それ以外の方法でお願いできませんか⁉︎」


「何で?」


「だってゲロじゃん!またゲロじゃん!何で僕、最初っからこんなに汚物塗れにならないといけないといけないんですか⁉︎」


「大丈夫や。三春ちゃん。私はちゃんと毎朝毎晩、歯磨きしてるしガマガエル族のゲロは薬にもなるほど神聖なものなんやで?」


「ゲロは歯磨きで解決しないし毒だから薬になるんですよ!お花さん、お願いします。それだけは」


「問答無用!体は溶けへんように調整しているから安心し!オロロロロロ!」


 お花の口から紫色のいかにも毒々しい液体が三春に向けて放たれた。


「ぎゃーーー!」


 それを三春は悲鳴をあげながら浴びた。液体はさっきの言葉通り三春を溶かさず黄色い液体だけを洗い流していく。


「ほぉら、可愛い顔が綺麗になったやん。よかったね。ゲコゲコ。」


「うぅ、グス。僕もうグス、お嫁に行けない。」


 三春は泣きながら立ち上がった。


「ゲロをぶっかけられただけならまだいい方だろ。」


 声の方に目をやるとそこにはぐったりと虚な表情で横たわる青年の姿があった。言わずもがな、びしょびしょである。


「奏多・・・お前。」


「あら?間違えて一緒に出たみたいやね。」


 奏多は虚な表情のまま話し始めた。


「お花さん・・・あんた昼に何を食べた?」


「昼は確かー・・・、鬼百足と八岐のトンボを一匹ずつ、あと神切り蟻と冥府蜂をそれぞれ100匹ずつ丸呑みしたと思いますけど。」


 それを聞いた瞬間、奏多は直ぐに起き上がって怒り出した。


「あんた、そんな中に主人の息子を投げ込むなんて正気かよ!」


「別にそんなに危険やなかったでしょ?現に今、生きてはりますし。」


「めちゃくちゃ危険だったわ!怪獣大戦争という蠱毒の中をあの手この手で必死に逃げまわってたわ!だから俺は呼びたく無かったんだよこのクソガエル!そもそも使い魔のくせに」


「あらあら、それはかなちゃん。ずいぶん楽しんできたようやないの。ほなもう一回行きますか?そのクソガエルの胃袋の中へ。」


 お花は口を大きく開けた。口の中からは魑魅魍魎の鳴き声が聞こえる。


 奏多は直ぐに両手で口を塞いだ。


「はぁー。まったく、あんたらそんなんで」


 その時、お花の体が光り出した。


「ってもう時間みたいやわ。まぁ、とにかく。かなちゃんは倭国の陰陽師として恥のないように勅命を果たしてくださいね。三春ちゃんも武士らしくあるのはええけどたまには女の子らしいこともせなあかんよ。」


 時間と共にさらに光が増していく。


「あと今回は静香様の呪力によって私、顕現できましたけど、それが無くなった今、これからは簡単に私を呼び出せると思わんようにね。ほなこれで!」


 そしてガマガエルことお花は消え、一枚のお札が奏多の元にひらひらと落ちていった。


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