05話 そんなのあり?
「ですよ……きて…きて…」
「朝ですよ!起きてください!」
「んー…」
ガバッ
はっ!もう朝か。
「あ!おはようございます!」
元気に笑顔で起こしてくれたソフィ。
向かいのベッドを見るともうリミも起きている模様。
以外にこいつは早起きなのかもしれないな。
「お。ソフィ。おはよう」
寝っ転がっていた体を起こし、起こしてくれたソフィに言う。
そうするとソフィは茹で上がったように顔が赤くなり、そっぽを向く。
今日も可愛いなー。
なんて思っていたら奥の方でリミがくすくすと笑っていた。
そして
「お盛んですなー」
と一言。俺はハッとし、直ぐにソフィとは逆の方向に顔を折った。
「リミも…おはよう。」
何をやっていいか分からなかったので挨拶をした。
「はいはい。おはようおはよう」
くそう。何か煽られている気がする。
「てかソフィもリミも着替えてるんだね」
近くに魔物でもいるのかってぐらいガチガチな装備で固めている2人。
「当たり前よ!イオくんが起きてからじゃ遅いからね!」
この部屋で着替えたのか…?そうだとすれば…。
それ以上はやめておこう!そうしよう!
「ほらほら!もう出るよ!イオくんも早く着替えて!」
「あいよ」
そう言って2人はドタバタと部屋から出ていった。
部屋を見渡すとシーツや乾かしてあった洋服などは綺麗に片付けてあり、残るはお前だけだよと言わんばかりであった。
『スキル 解放』
『スキル 収納』にしまっておいた洋服を出して、着替えるのがだるいので――
『スキル すり替え』
『すり替え』というスキルはそのまんまの意味だが、持っているものとすり替えることが出来る。
なんとスキルは便利なのでしょう!
今回は来ていた部屋着と冒険用の服をすり替えることによって即座に着替えができるという前世俺が見つけたすごい技である!
「よし。着替え完了…っと」
動きやすい真っ黒の半袖Tシャツにハーフパンツ。
それに校長から貰った紫のラインが入っているマントを着ている。
そういえばソフィやリミは何色なんだろうか。
今思えばこの色に意味はあるのか?
まあそんなこと考えてもわかんないよね!
と考えることを放棄し、ドアへと歩き始めた。
そういえばシーツって畳まなきゃダメなのかな?ソフィやリミは畳んでいるが…
いっか。
そう思い、ドアに手をかけ廊下に出た。
昨日来た廊下の経路を思い出しながら階段をおり、外に出た。
「お待たせ」
「あ!イオ君!」
扉の近くで待っていた2人を見つけたので声をかける。
笑顔で声を返してくれるソフィに、手を振ってくれるリミ。
二人とも可愛いのである。
「随分早かったね?」
ギクッ!
痛いところを責めてくるじゃないかリミ。
しかし俺は言い逃れの神であると自負しているのだ。
「まあ部屋着はあんま重ねてきてないし、冒険する時も薄着だしね。」
そう言ってハーフパンツの裾をヒラヒラとして見せた。
ほんとかなぁ。とか小さい声で聞こえた気がしたが、触れない方がいいのである。
自ら地雷を踏みに行く馬鹿では無いのでね!
そんなふうに思いながらソフィに視線を向けると目をまん丸にして興味津々に俺のマントを見ている。
「イオ君は紫なんですね!」
ヴァイオレット?なんじゃそりゃ。
『主のマントの"色"を示していると思われます。』
は?色?でもイアさんはユカリとか言ってなかった?
『はい。時代によって読み方が異なることがあるようです。』
へ、へー。俺の前世は"色"なんてなかったけどな。
『ありましたが。』
ほんとに?どこで?
『神です。』
神か…
『神は7人いることを知っているかと思います。その7人にはそれぞれの"色"が定められております。』
7色あるってことか。
神については詳しく知っているつもりだったが、知らない情報が飛び込んできた。
まだイアは知っていることがあるだろうから後で聞き出す必要があるようだ。
「ああ。色のことだろ?ソフィやリミはなに色なんだ?」
あたかも知っていますよ風を装い聞き出す。
「ええと、私は黄です!」
ゲルプってかっけぇ!
マントをリュックから出すと、広げて見せてくれた。
全く俺と同じ造形で、黄色のラインが入っていた。
「えっとね!僕は緑だよ!」
リミも広げて見せてくれた。
そう言って2人はマントを着けた。
せっかく可愛い顔がマントで隠れてしまった。
まじか。
俺は戦闘中や冒険中はソフィの顔を拝むことが出来ないのか。
悲しいな。
なんて思っているとソフィが痛いとこを突いてくることになる。
「あれ?イオ君、剣や持ち物はどうしたんですか?」
ギクッ!
俺は『スキル 収納』に食べ物や洋服などが全て入っているため、持ち物が全くかさばらない。
いいことなのだが、このスキルはあいにくLv40からだ。
その為、バレたら即終了なのであった。
ちなみに剣だけは外に出してある。
いつどこで奇襲されるか分からないからな。
どこにあるかと言ったら右手側の腰にかけてある。
剣とはもちろんビームソードだ。
外から見たら銀色の筒がぶら下がっているようにしか見えないだろう。
「ああ!宿に置いてきちゃった!」
しまった!とゆう顔をしながら言う俺。
そして何事も言わずに後ろを向いて宿へと走る。
勿論宿に帰っても何かある訳ではなく、どうするか迷った末にとりあえず逃げることを決意した。
そうしてもう一度部屋へと戻ってくると『スキル 解放』を使って手頃なナップサックを出す。
その中に携帯食や水、回復薬などを入れて部屋から出てもう一度外へと出る。
自分でも思うだろう。馬鹿だと。
「いやぁごめんごめん。冒険が楽しみすぎて忘れるところだったよ!」
だから早かったのかな?と紐付ける様なことをほざいている。
「大丈夫大丈夫!気にしないで!」
笑って許してくれているリミ。ソフィが続く。
「それじゃあ早速行きましょう!」
これからぼっちじゃない。美少女2人との冒険が始まった―
――――遅い!
どう考えても歩くのが遅すぎる!
女の子は歩くのが遅いと聞いたことがあったが本当みたいだ!!
最初の方は街中だったから店とか見てるのかなと思っていたが、なにも無い野原に来てもスピードが変わらない。
こんなんでは目的地まで恐ろしい程の時間を要するだろう。
最初は俺も商店街や武器屋を眺めていたがさすがに飽きた。
街から出た頃にはもう思考がないに等しかったのだが…
《イア》からとんでもない提案が出された。
内容はこう
俺はスキル《創造神》を持っている。このスキルは前紹介した通り、自分が想像したものが現実化する。
しかし、想像している時間がもったいないとゆうことで、保存しよう。とゆう提案だ。
想像とゆう事は、そのものを考える時間がかかる。しかし、保存することによってその時間をなくそうとゆう魂胆だ。
また、時間短縮だけでなく、制度や強度等も同時に強化されるようだ。
悪い提案でもないので、保存することにした。
さすがのイアさんでも保存は3個が限度のようで、それ以上は保存不可能とのことなので、じっくり考える必要がある。
しかし、俺にはたっぷり時間があるんだ!
この時間を無駄には出来ないとゆう事で3個の技を考えることにした。
まず1つ目は守りを固くしようと思い、透明壁を作ることにした。
そうしてイアさんに頼んでできたのは《完璧透明壁》である。
縦は3m、横は4m、厚みは1cmのちょっと丸みを帯びた長方形だ。
人を守るにはちょうどいいくらいの大きさになった。
当初は球状にするつもりだったが、そうすると自分しか守ることが出来ないため、長方形にした。
すごいところはなんと言っても《ウルトラスキル》の領域に達したことだ。
この世界にウルトラスキルは3つしかないんじゃないか?とイアさんに聞いたところ、
『なかった。それだけです。』
『新しく産まれたので4つめとなります。』
などと言っていた。う、産まれたからしょうがないのかな?
そして2つ目。
これは殺傷能力が高い攻撃技にしようかと思う。
そう決めたらイアさんにお任せだ。
それでできたのは《破壊光線》である。
こちらもウルトラスキルになっているようだ。
手のひらから放たれるこれは、速く、長い。
また、光線はできる限り細めてあり、その分魔力密度が高い。申し分ない攻撃力だ。
洞窟で蛇に喰らわせたのと似たようなやつだ。
最後の3つ目。
これはかなり悩んだ。
それは範囲攻撃系か足場用かである。
範囲攻撃はさておき足場用というのは、地面から飛び、自分の足元に魔力で足場を創って、そっからまた飛ぶことによって、自由に空を駆けることが出来るのではとゆう発想だった。
選んだのは前者。
これまたイアさんにお任せ。
そして出来たのは《超新星爆発》である。
地球の記憶だと、超新星爆発とは、太陽の約8倍にもなる星が終わる時に生じるとんでもない爆発なのだが―
そんなことが可能なのか?
『可能です』
…。
もう何も言うことは特にないよ。
あまりにも有能すぎる。
チートだ。
そうしてから現実に意識を戻すとソフィ達の声が聞こえてくる。
「それでさぁ?ゾンのやつ空振りしちゃってさー」
「そうなんだー。大変だねー」
さっきまではイアさんとの会話で手一杯だったからか、無性に良く聞こえる。
「それでー、アイツ怒っちゃってさ―」
「リミ!前!!!」
ソフィがいきなり大声を出した。
俺はその声に少し驚いてすぐさまソフィを見た。
ソフィは足元をガクガクと震わせて前を指す。
その様子にまたもや驚いた俺はすぐさま前を見ると―――
そこにはLv23のクソでかい蜂がいた。
体長2mはあるだろうか。地球のスズメバチをそのまま大きくした様な個体だった。
蜂はバチバチと羽音をたてて俺たちを凝視する。
Lv23だと、今のふたりには少し厳しい相手だ。
リミもその蜂を見て少し驚いたような素振りを見せる。
しかしリミは立ち直り俺の前に立ち塞がった。
ソフィも一緒になって俺の横に立って剣を抜く。
あ。そういえば俺は弱い設定なんだったな。
「イオ君は下がってて!」
とても頼もしい声だった。
しかしやはりリミたちだけで勝つのは少し荷が重いな。
そう考えた俺は、
「俺は大丈夫だよ」
と言って前にいたリミを横切り、持っていたナップサックを捨ててビームソードを腰から抜き、ボタンを押した。
やはりビームソードはキレイだな。
ついついビームソードに見とれてしまった。
って、今はそんなことを考えている場合ではないな。
そう思って前へと進み始めた
「ああ!イオ君!危ないいですよ!?」
俺の強さを知らないソフィが声をかけてくれる。
さすがソフィ。
優しいな。
対してリミは
なんだあの光ってる剣…
なんてこんなにピンチな時に変な言葉を言っているが気にしない。
「大丈夫だよ」
そうソフィに言うと、俺は蜂に向けて剣を構えるのであった。