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始・STAGE2 of player  作者: 泉 碧惟
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04話 君じゃない

「ふんふんふーん」


 のんきに鼻歌を歌いながら真っ暗闇を凄まじい速度で走っているのはそう俺である。(はた)から見たらマジでやばいと思う。

 こんな奴に夜出くわしたらたまったもんじゃないね。

 間違いなく夜一人でトイレ行けなくなるもん。


 そんな俺はある街に向かっていた。

 「ビィ厶街」である。特別用事がある訳では無い。

 本当に用事があるのはこの国の都心である。


 田舎モンの俺が約10000kmある都心まで足を運んでやっているのだ。偉いであろう?


 成人男性の歩く速度は平均時速5kmと言われている。

 まあ2000時間歩けば着くのだが、どっかの誰かさんが洞窟に寄り道してしまってな!大変である。


『寄り道したのは我が君です』


 もう!うるさいな。というか我が君って呼ぶのやめろ。気持ち悪い。


『では「主人(マスター)」でよろしいですか?』


 …。


 よくはないがさっきよりマシになったので了承した。


 そろそろ着きそうか?


『はい』


 この返信無感情野郎が俺のスキル《イア》である。

 色々と助かってはいるのだがなんせ愛ってものが無いからな。


『多少はあります』


 そうですかそうですか。そりゃあいい事だ。

 本人(いわ)く、理性は無いそうな。理性無かったら()はないっちゅうの。


「着いたな」


 ここが「ビィ厶街」か。なんとも特徴のない街だ。

 The街って感じ。


 まあいい。ここに用はないんだ。宿(やど)を探してとっとと寝よう。


 んー。看板的にこれかな?

 木の看板にベットが模されていた少しこじんまりとした家に入っていった。




「はぁ!?空いてないだと!?」


 すいません。と小さな声でつぶやく受付のお姉さん。


「他を当たってください」


 受付にあったボードにはここの宿の見取り図があり、今日宿泊する部屋には赤く「済」とかいてある。そして全てを埋めるように赤く「満員」の文字。


 受付嬢は今もペコペコと頭を下げてくれている。


 ぐぬぬ…。可愛いから許そう。


 次だ次!


 次の所は…あったあった。




「空いてない…だと…?」


 申し訳ありません申し訳ありませんと言う若い男性。


「他を当たって下さい」


 可愛くないから許さん!絶対に許さん!

 ぶっ飛ばす!!


 とはいえ俺の心はとっっっっても広いので許してあげた。


 次次!



「空いてない!?」



「空いてない!?」



「空いてないだとぉぉぉぉ!?!?」


 行く宿全部満員とかどうなってんだよ。

 何今日はめちゃくちゃ宿使う人多いdayなの!?


 まあいい。良くは無いのだが。



 次でこの街最後の宿だ。それで空いてなかったらこの街吹き飛ばしてやる。



 あった。



 宿の扉の目のまで来て、唾をゴキュッと飲み込み、扉を開けた。




「本日満席です。」


 終わった。

 野宿確定だ。


「すいませんね。」



 カウンターにガゴッと肘をつき頭を抱えた。

 


「あれ?あのマント…」


「ん?どうしたの?…ってあれは!」


 思わぬ方向から声がした。


 俺は反射的に顔を向けるとそこには女の子が二人立っていた。


 一人は完全に陽キャ中の陽キャみたいな印象だ。


 ダボッとした部屋着を着てこちらをみたいる。

 目は淡い金色のような色をしていて、青髪ショートの元気っ子ってとこかな。


 もう一人はどうかと言うと、めちゃくちゃ可愛い。


 部屋着なのは変わらないが、ちらっと見えている足首からしてとても色白だ。金髪ロングのヘアーに(あお)く大きい目、そしてダボダボでも分かるスリムボディ。そして何よりも整った顔!


「…」


 大きい目が合った気がした。

 年齢はどうだろう。俺より1個下か、同じくらいだろうか。


「あの、何をされているのですか?」


「ええーっと宿を探しています。探しているんですが回った宿全部満員みたいで…」


 少女二人が顔を合わせる。なにか小声で話しているようだが…?

 

 …?

 同時に(うなず)いた。なにか決まったようだが。


「そうだったんですね。もし良ければ私たちの部屋一緒に使います?」


 …。な、なんだってぇぇ!?どんな神イベだぁ!!??最高ではないか!!!!


 言葉に甘えたいところだがなんというかその…いかがわしいことされるかもとか言う心配は無いのか!


するつもりは無いがな?


 というか最初にマントが…とか言ってたな。

 もしかしてカオスドラゴン討伐に参戦する人達か?

だとしたら仲良くなっておいて損は無いな。


 ここは一緒にシェアさせて頂こう。



 下心とかないからね?



「え?いいんですか?」


「うん!私達も部屋が空いてなくて、入れた部屋が4人部屋だから全然大丈夫だよ!」


 そう満面の笑みで答える少女達。

 最高である。


「それじゃあお言葉に甘えて…」


「了解です!着いてきて下さい!」


 階段を登り、右側に進んだ所に彼女らの部屋はあった。


 219号室か。


「遠慮せずに入っちゃって!」


 ガチャ


「4人部屋ということもあって広いですね!」


 白い壁に覆われた縦に長い長方形の部屋。

 正面から見て右手と左手側に大きなベッドが2つずつならんでいる。


 見回してみると、剣やリュックなどの私物が結構散らばっていた。


 壁には彼女らが着ていたであろう洋服が干されていた。


 なっ!あれは着た洋服か!こんなところに干すなんて!

 干してある洋服を見た瞬間パンツを探してしまったのは内緒だ。


 勿論無かったのだがな!


 部屋の奥まで行こうとしたした瞬間、彼女の口が開いた。


「早速で申し訳ないのですがそのマント…討伐生ですか?」


 やっぱりそうか。包み隠さず言おう。


「はい!そうです!もしかしてあなたがたも…?」


「そうだよー!」


 こんな可愛らしい女の子を狩りに出すなんて最低だ。

 俺が許さない!


「僕をこの部屋に入れてくれた理由はそれですか?」


「その通りです!行き道もこれから一緒だと思いまして、仲良くなりたいなーと!」


 全く同じ意見だ。

 これって運命じゃない?


「私たちはもうお風呂に入りましたので入っちゃってください!」


「ありがとう。使わせていただくよ。」


 荷物を置いて早速風呂に入った。


 …。


 可愛い子が入ったあとの風呂!


 最っ高だぜ!


 なんか知らないけどいつもより顔が熱い。のぼせてきたかな。


 いつもならもうでている頃だろうがじっくりと堪能(たんのう)する。


 こんな機会もう出会えないかもしれないしな。


 ここぞと言う時にじっくり堪能(たんのう)する。俺ってば天才?



 さすがに入りすぎたな。お湯はぬるいし考えることも無くなってきた。


 もう出よう。




「いい湯だったよ」


 いつもの三倍ぐらいの時間をかけて入った。


 何やら彼女らはジェンガをやっているようだ。


 「あ!おかえりなさい!」


 あー。こんなふうにお家に帰ったら言われたい。

 そうしたらどんなに幸せか。


 てか俺まだ俺まだ彼女らの名前知らないんだけど?


 名も知らない奴にお風呂をあげるってどれだけ肝座ってるんだ。


「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名は「イオ」だ。」


「えっと、今16歳で、Lv16だ。」


 「よろしくたのむ。」


 なんとも言えない平凡な自己紹介をした。

 あと、一応Lv16ってことにもした。


「えっ!()()って言った!?」


 え。まあ。うん。


「そ、そうだけど…?」


「どうかしたのか?」


「い、いや僕たちの学校で()()って人が『魔法 修復』を使ったって噂で……」


 うああああ!まじかよ!

 さすがにまだバレてないと思ってたぞ。


 バレてるのか…

 ここを切り抜ける方法は…


 平常心を装いつつ、他人であるような素振りをする…と言ったところか?


「あ、ああ、き、きき聞いたぜ?うちのが、学校でもゆ、有名さ。」


「いやぁ最初は同じ名前でびっくりしたよー。」


 これでも本気の演技なのだ。笑いたければ笑えよ!


「そ、そうなんですか?」


「ほんと、ビックリしましたよ」


 にこやかスマイルで誤魔化す俺。行けるのだろうか?


「怪しいなあー?」


 ジロジロと見られる俺。美少女に見られると恥ずかしいのだ。きっと俺の目は泳いでいるだろう。


「確か情報によると、イ()()さんは黒髪に黒目、揃えているとしか思えない黒い洋服。別名『黒の修復マン

』とか呼ばれてましたけど?」


 確かに俺は黒で染めている。どこまでも目立ちたくないからな。


 しかし!


 『黒の修復マン』とはなんだ!ダサいな!

 もっとマシな名前つけろ!


 今は部屋着で水色の洋服だが、旅用の洋服はもちろん真っ黒なんだ。バレるのは時間の問題か?


 こんなに追い詰められるのは初めてだ。『スキル 脳支配』使えば解決だろうが、そんなことを少女達にやる趣味は持ち合わせていない。



 あくまで他人で、自分では無い振りを……



「ああ!知ってる知ってる!!黒ずくめすぎてこっちではゴ〇ブリとか呼ばれてたわ!」


 ここで満面な(えみ)!完璧だ。

 自分のことをゴ〇ブリというのは心が苦しいが仕方ないな。


「ゴキ…ブハッ! もう無理もう無理!」


 そう言って爆笑する青髪の女の子。何やらツボらしい。


「ゴ、ゴキさんですか。少し可哀想ですね…」


 心配してくれる!優しい!神!天使!



「えっと、それじゃあ自己紹介続きやろうか、僕の名前は「リミ」だよ!」


 よし!乗り切った!さすが俺!


 で。この陽キャで初対面からタメ口が()()ね。完全に把握した。


 「同じく年齢は16歳で、Lv19だよ!」


 「よろしくねん!」


 16歳でLv19とはなかなかやる方である。


「私は「ソフィ」と言います」


「私も同じく16歳で、Lv20です」


 釣られて彼女も自己紹介をした。


 ほうほう。このどちゃくそ可愛い子が()()()ね!

 この先絶対忘れない自信がある。


 「よろしくお願いします」


 「おお。みんな同い年か!」


 「そうだね!」


 同い年の集まりってなんかいいよな!


 「私は"剣"を使います。」


 そう言ってソフィはバッグの中から私物の剣を取りだした。


 まあいい出来の剣だ。

 星5個中の星2個を贈呈したいところだが、ソフィが可愛いから星50000個である。


 「僕はね、"魔術師"だから特に武器はないんだよねー」


 魔術師ねぇ。

 まあ分かると思うのだが、武器を捨ててスキルで戦う戦闘スタイルだ。


「俺も同じく"剣"なのだが…。」


「だが…どうされたんですか?」


 このビームソードを"剣"と言っていいのか分からない。

 今出すのは危険だ。なんでも切ってしまう。


「いいや。なんでもない。剣を使っている」


 2人にはクエスチョンマークが出ている。

 申し訳ない。説明するのが難しいのだ。


「そ、そうなんですね!同じ武器どうし頑張りましょう!」


「そうだね!」


 ああ。頑張るとも!

 いくらでも頑張るとも!!


「なにそれー。僕が仲間はずれみたいじゃん!」


 ふっふっふ。悪いなリミ!

 俺たちの運命なのだ!


 

 その後はみんなでトランプしたり、ジェンガしたりして時間を潰した。とっても楽しかった。




 最後にやるのは―――




「これ負けたら罰ゲームね!」


 調子に乗ったように言うリミ。

 すっかり2人とはもう仲良くなった。

 

「罰ゲームってなんなの?」


 この質問をするということは意外にソフィも乗り気なのではないだろうか。


「ふっふっふ。それはね…」


 ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた気がした


「…」


 焦らすリミ。そんなに凄い罰ゲームがあるのか?

 ジュース買ってこいだのお菓子くれぐらいだろ?


 リミは立ち上がりこう言った。


「負けた人は、好きな人を言う!!!」


 そっかー。俺いない…と思ったけどいるわ!全然いるわ!


 リミは立ったまま腕を組み、天才じゃない?みたいな顔をしている。

 ソフィはというと、な、なんだってーみたいな顔をしている。

 そして少し経つと顔が赤くなった。恥ずかしいのかな?


「ふーん?」


「ソフィ。前までいないとか言ってたのに、出来ちゃったの?」


 煽るように言ってるリミ。仲がいいのはいい事だが。


「い、いません!…ですがそれは昔の話です。今はいます。」


 そっと横を向き、赤くなった顔を隠すソフィ。


 キタキタ!めっちゃ聞きたい!ホントに聞きたい!


 これだけはリミに感謝せねば。


「イオ君は?いるの?」


「んー、まあ。いないと言ったら嘘になるかな。」


 動揺してない感じを出しつつ、少し興味を示す。


 チラッと横を見るとソフィがキラキラした目で見ていた気がする。俺が好きな人いるのは意外なのか?


「そういうリミはいるのか?」


「もちろんさ!いなきゃこんなゲームしないよ!」


 ソフィは本気の目になってるし、リミはワクワクしているのか、うずうずしている。断る理由もないし、やるか。


「決定!じゃあババ抜きね!」

 「よし来い!」


 シュッシュッ


 自分の前にカードが撒かれる。このゲームで将来が決まると言っても過言ではないだろう。


 俺はだいたい4ペアぐらい揃っているのがあった。


 みんなの手札を見ると俺がいちばん少ないようだ。

 勝気しかない


 「よし!最初はグージャンケンポン」


 そういえばこの世界でもじゃんけんはあるらしい。


 「よし!」


 俺が勝った。ババ抜きはあんまり順番関係ないのだがな。


 「ここは必ず勝つ!」


 「僕も負けないよ!」


 俺は隣にいたソフィからカードを一枚とった。


 K!きた!ソフィから受け取ったハートのKと最初から持っていたスペードのKを捨てた――











「まけたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 そう叫んだのは残念ながらのリミ。


 俺が求めていたものではなかった。

 はっきり言って嬉しくない。


 まあ、聞くだけ聞いてみるか。


「残念だったな!で?誰なんだい?」


 結局俺は一抜けだった。

 途中からもうソフィが負けることしか願ってなかった。



 が、願いは届かず――



「はぁ。しょうがないな。自分が決めた罰ゲームをやる羽目になるなんて…。」


 リミが少し間を開けて


()()()()さん!」


 そう叫んだ。


 というか前世の俺と名前が一致か…。

 偶然か?


「ヴィクト??」


 俺の疑問に答えたのはソフィだ。


「ヴィクトさんは、とっても昔に亡くなった人なんですけど、とっても強いお方なんです!」


「どれくらい強いかと言うと…私たちが今から倒すカオスドラゴンを軽く40匹ぐらい倒している人です!」


 ほう。なかなか強い…と思う。

 カオスドラゴンじゃあんまり強さがわからん。ワンパンできるし。


「それは強いな!」


 適当に驚くことにした。

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