01話 誤魔化せない強さ
「おーい、ちゃんとやれー」
「はぁーい。」
ここは一風変わった高校。
勉強を全くしない。だが今のこの世界だとそれが至って普通であり、それ以外はありえない。
何故ならSTAGE2の至る所に魔物が出現するからだ。
この世界で出る魔物にはLv付けされており、草むら、山、海、道路や街など本当にどこにでも魔物が出る世界なんだ。
人間にもLv付けされており、一応Lv1~99までがある。
人間の平均Lvは25。
人間は大体1歳歳をとるとLvが上がって、25歳で大概がLv最大になり、そっからは減少するのが一般的らしい。
彼のLvは16。
という設定である。この学校にいる人は生徒、先生を含めて1番Lvの高い人はLv26だ。
1番は剣道部の顧問で、剣道部の生徒側も優遇されている感じである。
何故前世の記憶がある彼がそんなに弱いかとゆうと、この世界ではLvが低すぎると高校では退学になるのだ。
ほとんど地球と同じシステムだな。
ホントならこのSTAGE2上なら神を除いて最強なのにだ。
「おい!お前何ボーッとしてんだ!死ぬぞ!」
「あ、はい。」
「ったく。」
校庭で今修行している人はLv15~17である。
いわゆる下級クラスである。
修行と言えるか分からないが、某剣道部顧問に素振りさせられたり仲間と剣で戦ったりしている。
「お願いします!」
「あ、はい。」
今日のメニューはLvの近い人と剣で戦うようだ。
相手はクラスの優等生だ。顔は整っており、肌は白く、メガネを掛けている。身長は178cmと言ったところか。
いわゆる爽やかイケメンだ。同じ下級ランク生であり、メニューの総当たり模擬戦で当たったのだ。
「では、行きます!」
模擬戦での剣は自分の剣を使ってもよく、優等生の剣は紅色に染っており、柄の部分は黝く染まっている。
対して彼は学校貸し出しの剣を使っている。攻撃力も低く、重さは軽い。
初心者向けの剣である。
『スキル 身体能力上昇 脚』
この世界にはスキルがある。
覚えるためには『スキルブック』からSPを消費して習得が出来る。
SPはLvが上がる事にそのLvに応じた量SPが貰えるのだが、SPには基本的に限りがある。
慎重に使わなくてはならない。
まあSPや消費したらなんでも習得可能かと言われれば否であり、大きくLv帯によって習得可能なスキルが分けられ、最初から最強スキルは使えないようになっている。
「よっと」
「ッ!?」
剣と剣が交わり鉄特有の音が鳴り響く。
剣に対してスキルを使ってないただの剣速なので特別凄い音が鳴る訳でもない。
ただ剣で守るだけで驚かれるのにはもう充分慣れてきた。
俺がどれだけ強いかしらないんだな!!
「ふっ」
「お、おっと、」
交えた剣を降って相手のバランスを崩した。
こんなことを警戒しないでただ力で押そうとするなんて。
本当は崩れたところを追い討ちするべきなのだが、そうすると先生から目をつけられやすくなる。
強くなれば地を出て討伐を求められるので面倒なんだよ。
最近は強い魔物が増えたらしく、Lv18からはもう出世があるらしい。そんなのは真っ平御免だ。
追い討ちせずに、剣を構えるだけで牽制しよう。
「一筋縄では行きませんか…」
「なら!」
『スキル ファイヤーエッグ』
「はい!」
手のひらを天に向け、炎を出す。
ものすごく初歩的なスキルだ。
この技は赤子でも覚えられるような初歩的な技すぎて逆にみんな使わないのに!!
SPを使うだけ無駄なんだよね。
ちなみに何故ファイヤーエッグと言うかは、手のひらに出した時、卵の形に似ているからだそうだ。
これ、わざと当って弱いアピールした方がいいか?
でも暑いの嫌だな。
「…。」
「え。」
向かってきた炎を剣で切ってやった。
めちゃくちゃ驚いておられますね。
そういえば俺はこの試合を負けたいんだった。
この好機を逃してどうやって負けよう。
そうだ。剣に魔力をかけると壊れる。魔力が暴走して制御不可になるためだ。
この世界には魔力も存在する。
スキルを使うために毎度必要な自分の筋肉みたいなものだな。
魔力は空気中、物体中、液体中至る所に微小ながら存在しており、我々はそれを操ることによって様々なことができるのだ。
これを利用して、いかにも火で溶けました感をだして、降参しよう。
魔力を流して…ってこれは流しすぎか…?
「スパァァン!」
あ。やっちまった。
壊れる寸前の剣は赤い光を放ち、「キュパァーン」という音を出して無残に散っていくの見るのは中々に虚しいものであった。
いやどうしよう。
ま、まあ、こういう優等生真面目系は反論できないから適当に誤魔化すか。
「…。い、いやー君の攻撃や魔力に押されて剣が壊れちゃったか。これじゃ戦えない。僕は降参するよ。」
待って。凄い雑。
自分でも吹き出さないのが不思議で、今にも笑いだしそうである。
優等生くんは一瞬迷いや困惑を顔に出したが、直ぐに受け入れることが出来ている。
流石と言うべきか。
「そ、そうか。」
「ありがとうございました!!」
よし乗りきった。天才だな。俺。
総当たり戦1回戦負け
いつもと同じパターンだ。
これで今回もランク上がることは無いだろう。
よかったよかった。まあスキル一回も使ってないし今回も安泰だろう。
今までバレなかったし大丈夫だよね?
と思っていれたのもつかの間…。
「おいお前。前から思っていたけど手抜いてないだろうな?いっつも1回戦負けだしスキルも魔法も使ってないよな?」
は?
安定の剣道部顧問の声が聞こえた、さっきからなんなんだ。
この顧問まじで心読めるのかな。
どうしよう。こういう監督系は勘が鋭いってのが世界の理だからな…適当に誤魔化してもバレたら元も子もない。
しかし本当のことを言う訳にも…。
なんかめっちゃ睨まれてるんですけどー。
面構えが違うとはこのことか。
でもはっきり言うとこの威圧(?)は全く怖くないな。
前世に経験した魔王の威圧『魔王覇気』とかを体験してる俺からしたら全く怖くない。
なんか面白いから俺から威圧しようかな?
『スキル 魔王覇気』
その瞬間とんでもない威圧を放った。多分、本気を出したらそこら辺の人間なんて耐えきれずにバラバラになっていただろう。
校庭内いた人はもれなく失神。
こんなのは当たり前だった。
修行をしていた約180人の生徒及び教師が全員気を失ったのだ。
えっとー。
制御して弱めにしたんだが。
まだ3%ぐらいしかやってないのに!
某剣道部顧問を脅そうとしただけなんだけどな。
学校の放送で流れる音を聞いて絶句した。
チャイムだ。
あれ。この音って…。
そういや、この後ってLv18以上の上級クラスの人たちが来るんだったな。
あと、国から配属された幹部のLv40級の人も。
そうなると校庭に倒れたこいつらを見たら何かがあったのはわかる。
そして俺のみが生き残っていたら俺に質問責めや、俺が犯人と疑われてもおかしくない…!?
誰かに見られている可能性があるが、そんなこと言っている場合じゃない!
『スキル 修復』
このスキルを放った次の時にはもう、威圧する前のいつものと言わんばかりの光景があった。
「あれ。俺は…」
なーんてほざいてる奴も出てきたが、
「そんなとこで寝てんじゃねぇーよ。」
とか言って良い奴ぶったが、本音はバレないように必死である。
某剣道部顧問も
「あ、あれ、俺…」
「どうしたんですか先生?」
「あ。いやなんか記憶が…」
「え?(笑)あの寛大で天才で尊敬している貴方様が記憶喪失ですかぁ?(笑)」
「い、いや!なんか俺の間違えだったようだ!別に!寛大で天才で尊敬される俺が記憶喪失なんてするわけなかろう!!」
…と。意外とちょろかったのである。
ま、まあ?俺って?天才?的なね?HAHA…
とりあえずどうにかなったことを喜ぼうか。
「セイ!ヤ!ハイ!」
「はい。今日の訓練終了!解散!」
ふう。やっと終わったわ。
「ソフィー!お疲れ様!一緒に帰ろう!」
「あ。リミ。いいよ、帰ろう。」
「ねえねえ聞いた?下級クラスのイオって人が『修復』使ったらしいよ!」
「え!ほんと!?確か『修復』ってLv40以上じゃなかった?」
「そうそう!Lv40以上は確定だよね…」
「Lv40以上って上位2%なはずだけど…」
「何らかの理由で隠してるんだろうね」
出世できるようになれば世界から認められて良いことしかないはずなのに隠すなど、ありえない事だ。
「明日からここの上位クラスのところ来るのかな」
「さぁー?でも来たらレベルが違いすぎて混乱しそうだね」
確かに。私はかなり優秀な方だがそれでも比にならないの強さということが現時点でもわかる。
まだ本気じゃない可能性もあるのに。
「負けないように頑張ろうね!」
「そうだね」
「ああ。すまんみんな。明日から上位訓練士に新しい人が入る。そしてそいつは頭がおかしいんだ。みんな頼んだぞ」
頭おかしいって?そりゃあLv40以上だからそうか。 だけど言い方考えたらいいと思う。
とゆうか自分より強い相手を頭おかしいって…。
罰当たりそう。
「なあイオ。お前『修復』使ったんだってな?」
「よし!」
「明日から上位ランク生に入れるぞ!!」
…。
(やっちまったァァァァァ!!!!)