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この世界を愛し生きていくと決めた記念日  作者: 平和男/タイラカズオ
第1章:禁断の森「ソーン樹海」
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Ep5:「豪勢な料理」

居間へとついた青年はその質素な部屋にあるローテーブルに腰かけた。


「いや、それ椅子じゃねぇから。」


突っ込まれる青年。


「…ぉう」


「…」


すっと床に座り込む。


黙ってレンは台所に向かい始めた。


また少し不安になってきた。


ハハッハハッブリブリハハッ


するとレンは奥からいろいろな料理を持ってきた。


なんと豪勢な料理だろうか。


「す、すごいな…これ全部お前が作ったのか??」


口から溢れ出るヨダレを必死に啜り、垂れるのを抑えながら青年はレンに聞いた。


「ああ、そうさ。まあこの村の人間は大概料理はできるけど昔からよくみんなに褒められたな。人一倍料理に関しては上手いんだろうな。」


そう言いながらどんどん持ってくるレン。


エビなのかなんなのか、巨大な甲殻類を中心に、色とりどりの野菜が並べられている。


その甲殻類はその大きさもさることながら真っ赤な殻がさらに食欲を掻き立てる。


プリプリと見た目だけで伝わってくる弾力はまるで飲食店のイメージ図のように、写真詐欺などなんのその。


身の上にはとても美しく輝く金箔が入ったタレがかけられていた。


よく見ると周りの野菜も見たことがない。


そのほかにも何かの骨つき肉がある。


生肉は嫌いな俺だが、その肉はしっかりと焼いてある。


しかし、これまた見た目で柔らかさがひしひしと伝わってくる。


分厚く切られたその肉の上には付け合わせにブロッコリーのような野菜やトウモロコシ(これはトウモロコシ)が載っている。


お肉の横にはまたタレが置いてあり、チリソースのような見た目をしている。


お次は魚料理。


煮付け、刺身、焼きと三種がまこと見事に綺麗に一つのお皿に並べられている。


しかしお皿をわざと傾けさせたり、仕切りを使用して互いが互いに干渉しないような工夫がなされている。


刺身はとても上手に皮が引かれており、銀皮がしっかり残っている。


脂も載っていそうで、言うまでもなく見た目で弾力があるのが伝わってくる。


煮付けは…焼きは…もう言うまでもない。(実況がめんどくさくなるほどの料理の数々。)


そして何より…白米!


なのかわからないが、米と思われるものが食卓に並んでいる。


自分が知っている白米より幾分か丸い気がする。


米の一粒一粒がしっかり立っており輝いている


この異世界にきて白米を食べれるとは正直思っても見なかったが嬉しい誤算だ。


「おい。いつまで見つめてんだよ。早く食べようぜ。」


「あ、あぁ。」


必死でよだれが垂れるのを我慢してずっと見つめていたらしい。


青年は少し顔を赤らめ肯定した。


「あ、なにでたべる?箸か?スプーン?フォーク??」


「ん…ああ、箸で。………え?」


「オッケー。箸だな。」


何気なく聞かれたその問いに素直を答えた後、おかしな感覚に一瞬包まれた。


その後に気づく。


この世界には箸があんのかよ。スプーンも。フォークも。


おかしなところはない…


しかし今までの出来事などからここは全く別の世界で、こと衣食住に関しては弥生時代やら縄文時代の暮らしを想像していた。


不思議な感覚に包まれ、疑問に感じたのち、冷静になり考えてみた。


(妙なところで地球の文化と一致してる部分があると思ったけど…つまり食事の食べる方法に関しては、行き着く先は箸やスプーン、フォークってわけか。)


そう自分を納得させた。


「ほら。箸。」


目の前に急に出される箸。紛う事なき箸。手作り感満載ではあるが箸。箸である。


「箸だなぁ。」


「箸だよ。ほら」


青年は箸を受け取った。


「んじゃどんどんだべていってくれ!おかわりもあるぞ!」


もう我慢はできなかった。


吸い込むがのごとく目の前の飯にがっつく。


「おぉ!!すごい食いっぷりだ。料理人として嬉しいねぇ。」


ニヤニヤしながらこちらを見ているのがわかる。


そして横でレンも同じように食べ始めた。


…なんて美味しいんだっ!


こんな料理始めてだ!


空腹が一番の調味料とはよく言うが、それにつけても美味い!


「ばぁ、ばんべボンパッ…うぅっ。びぶ!!びぶ!!!!」


胸を掻き毟る動作をしながら必死にレンに伝える。


「びぶ…??なんだそれ。ゆっくり食えよ。喉に詰まるぞ。」


絶望。この人生の中でこれほどまでに一口二方程度の水を欲した事があっただろうか…いやない!!


「ぶばっへんばょ!!ほぼび!ぼうぶはっべんぼっ!!!」


ああ、もったいない。口からご飯が飛んで行く…しかし構ってられない。詰まっている事をわかってもらえなければ。


死ぬ。


あ、あぁ。やばい。やばいぞこれは。


ハハッ。ハハッハハッハハッはぁはぁっはぁはぁっっ。


どんどん遠くなっていく。音も景色も…


こんなところで…


「ブヴァボへッ!」


喉に大量の水が流れ込んできた。



おかしい…おれは今殺されかけた。


すでに物が詰まってる感覚は全くなく、奴の水で胃へと流された。


「おまえ!おれが苦しんでるのをみて楽しんでたろ!」


「な。何言ってんの。そんなわけないじゃない…!」


「本当に死ぬところだったんだぞ!」


「あんなんで死ぬなんて貧弱だなぁ!」


怒りと同時に吐き気に襲われた。


「うっぷ、食べ過ぎた。。吐いちまう。一旦休憩だ。」


五分ほど経ったのち、これまた同時にご飯にがっつき始めた。


「しかし美味いな。これ。」 


「だろ。みんなに褒められるのはなにもお世辞じゃないんだぜ。」


見た目や皿にもこだわり食材の鮮度もよくわかる。


味付けも薄すぎず濃すぎずちょうどよい。


おかわりも奥の台所にたくさんあり、テーブルの上のものがなくなるたびに持ってきてくれたが、そこをついた。


しかし満足。ちょうどいい…いや食べすぎた。だけどどんどん入っていくのだ。不思議と。


先ほどの疲れが嘘のように、取れていくのがわかった。


そもそも貧血で瀕死だったところをこいつは世話して飯まで食わせてくれたんだ。


俺を殺しかけたけど。


いい奴なんじゃないだろうか。


俺を殺しかけたけど。


「んじゃ布団敷くから退けてくれ。」


一通りお皿やらなんやら片付けたレンは青年に言った。


「ん、おう。」


素直にどいた青年はふと気になったことを聞いてみた。


「なぁ。レン。お前はここに1人で住んでるのか??親とか兄弟とかはいないのか?」


そう青年が聞くと、レンは一瞬動きが止まったように見えた。


「ん、あ、あぁ。兄弟はいないし、親父もこの島を出て行ったきり帰ってこないんだ。俺が小さい時のことだからかなり前のことになるな。」


レンはつづけた。


「それからは親父がかわいがっていたガンさんのところでお世話になった。まぁ兄弟はいないったけど、ショウが兄弟みたいなかんじだな。ガンさんは第二の父親だ。」


笑いながらレンはそう答えた。


「フーン。。。さみしくないのか?」


「寂しくないか寂しいかで言ったらそりゃ寂しいよ。親父に会いたいと思うことはまぁよくある。だからこそこの島を出たいのさ。」


「初耳だな。出りゃあいいじゃねえか。」


それを聞いたレンはフフッと笑ってこう答えた。


「間違いないなぁ。でもこの村の掟やいろいろあるのさ。出れない理由がさ。」


「でもお前の親父さんは出たんだろ?」


またしてもレンは笑いながら答えた。


「その通りだよ。核心を突くなぁ。」


「まぁおいおい話すさ。さ。布団も敷いたし、今日は寝るぞ。」


するとレンは当たり前のごとく部屋の明かりを魔法で消した。


青年はもうすでに見慣れていた。


「じゃぁ明日は島の案内。と、まぁ魔法のこととか基本的なことを教えよう。おっと、質問は明日だ。お休み。」


一方的に終わりを告げられた青年はふてぶてしくもそのまま寝落ちた。


寝落ちる瞬間青年はふと思った。


-お母さんはいるんだろうか。。。-


しかしそれを聞く前に青年はいびきをかき始めた。

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