3 晩餐
お待たせです。
仮想通貨は、宇宙開発後にブレイク?!
人の世では、どんなに恵まれていても不満の一つもあるだろう。ましてや、不遇な人たちにとっては日々の物事一つ一つが不満だらけであっても驚きはしない。
「ええー、今日のお仕事って」
『そう、ユキに料理を作って貰うんだよ』
材料は既に手配済み、後はユキが仕上げて、お客様に提供すれば今日のお仕事は完了だ。まあ、簡単なお仕事で助かるよ。
「そ、その料理が問題なのよ!」
『うーん、確かユキは和食だけでなくトルコ料理やフランス料理、それに中華料理もマスターして世界三大料理を制覇しているはず。得意の中華料理なんだから問題はないと僕は思うんだけどなあ』
「それは、そうだけど・・・・・・
食材が、蚕とか普通のお客様は召し上がらないわよ、本当に大丈夫なの?」
『ああ、そっちか。大丈夫、これは裏の仕事だから。依頼人の強いリクエストだよ、どうしても彼に食べさせてあげたいと。箸が進まないようなら僕たちにアシストするよう依頼されているから』
「もう、お客様に美味しく食べて頂けるように私はいつも精一杯努力するだけよ! いつ、お客様はいらっしゃるの?」
『そうだね、僕が直々に迎えに行くから。あと一時間で食事が始められるようにしてもらえると助かるよ』
「・・・・・・ わかりました。ネコ、いってらっしゃい」
『うん、じゃあまた後で』
中華鍋に生姜とネギと一緒にボイルしたカイコの蛹を鶏油で素揚げして、青梗菜、ピーマンとニンジンを油通ししてと・・・・・・
ピーナッツ油と鶏油を混ぜたもので唐辛子を炒めて香り付けして、水溶き片栗粉を加えて炒めた野菜と素揚げしたカイコの蛹をとろみがつく位に炒めると完成ね。
あとは、メインにはトルコ料理、ハトの腹に米と野菜を詰めたものをローストしてと。まだ時間があるからイギリス料理の応用で、豚の血のプディングをデザートに、よし。
血塗られた紅い茶わん蒸しの完成ね、きゅうん。
僕は、指定されたターゲットを捕獲すると運転席に座らせた。偽装用の覆面と拘束衣を着せると眠っているとは思えないドライバーが車を運転する姿の出来上がりだ。僕は黒子に徹して、助手席で丸くなって僕のハンドラーである斎酒の待つ部屋に車を走らせた。
ターゲットを座らせて、五分もしないうちに斎酒が彼の前に料理を並べる。うーん、良い腕だ素材を知らなければ美味そうだ。
そろそろ依頼者からのメッセージを見せようか。
『お前のやってきた悪事のお陰で、何万人の人が飢えて亡くなったのか。お前は気にも留めていないのだろうな、そんなお前でもわかるように今夜の晩餐に招待しました。ごゆっくり、召し上がれ。地獄に行く前の最期の晩餐を楽しんでね!』
正面のスクリーンには女の告発メッセージに合わせて、昆虫を争う様に奪い合う人々の姿が映し出されていた。
「どうぞ、お客様お召し上がりください。まずは、蚕の炒め物ですよ」
斎酒が、無理やりターゲットの口に蚕を入れた。ターゲットの咀嚼を助けるため顎を動かす神経に電気信号を流してサポートしていく。
「あ、ごめんなさい。うっかり臭み消しの紹興酒を入れ忘れたわ。でも、今回のは復讐の料理法だから、これで構わないのよね」
ターゲットは、涙を流しながら料理を食べ進めメインディッシュ、そして最後のデザートまで食べ切った。
「人間って、不思議ね。こんな復讐があるなんて・・・・・・」
『まあ、そういうもんさ。何だっていいんだよ。自分の気が済みさえすれば、何だってね、ユキ』