22 抽斗
技のデパート?
「にゃんだーキック!」
『ダメ、誘い受けの色気が足りぬ。全くもって、豪もないわ』
腹ばいで、誘い掛けていた林病迷は蛇の様な隙の無い身のこなしで立ち上がった。
「そうかい、なら。猫カッター!」
林の高速の手刀により真空波の鋭い刃が、ロボ婦警のスカーフの端を無数に切り刻む。
『ダメ出しの後のフォロー?連携技は、良くなって来たわ。そうよ、負けない限り勝機はあるわ。
そう、今はそれでいい。一撃必殺の誘惑に負けて、一mも進めず立ち止まる阿呆にはならないことね!』
「くっ、相変わらず可愛げのない。無限分身、変異抜刀兜割!」
林の身体が振れたかと思った瞬間、百や千では利かない数の分身が微妙にずらしたタイミングでロボ婦警の頭を切り裂く様に襲い掛かる。
ロボ婦警は、抜く手も見せぬ拳銃さばきで分身の八百体までを蹴散らし、残り二百余りの殺気と言う名の圧力を超次元合金の無二の固さで凌ぐ。
『なかなか、やるようになったわね。私が、寸毫でも攻撃を受けるなど地球上では有り得るはずの無い出来事が、それを遥かに上回る二百合以上も達成するとは!』
「ふっ、どれ一つとして有効打が無い時点で俺様が遊ばれて、弄ばれているというのに。何なんだ、この愉快さ、充実感。不思議で暖かいこの感覚は?!」
『まあ、及第点としておきましょうか。林、今日から章様の露払いを任せましょう。ですが、技の数は無限の可能性、敵を圧倒する手段、芸術、遊戯、そのどれが目的だとしても技の抽斗は常に余分に持って置きなさい。
私が教えられることは、ここまでです。今後は、モンスターを殺して、砕いて、斬り覚えなさい!』
「了承するよ、師匠。今日まで、こんな俺を導いてくれてありがとうよ」
一礼する林に背を向けてロボ婦警はファンクラブの己の本来の職場へと歩みを進める。
『OK。じゃ、気づかれないうちにシミュレーション・モードを終了するよロボ婦警』
『ええ、今がカッコ付けるのに最良のポイントでしょう。林の学習適応性、ボディの親和性、技量の向上、どれをとっても私のポテンシャルを凌駕しています。このまま訓練を継続していた場合、わたしが無様に敗北する可能性は九九パーセントをやや超えていますから・・・・・・』
『それは、興味深い。一パーセント未満の想定外を是非見届けたかったなあ。彼等人間は時として、予想を遥かに超えることがある、それは彼らが作った創造物にも言えることだからね』
『・・・・・・』




