17 厨房
何でも出来るのも・・・・・・
薄暗い竈の前で、中華鍋を振る。青年はひたすら鍋を振る。
シャッ、シャッ。
「うんぐ、ダメだ」
一つまみ試食した後、料理をゴミ箱に投げ込んで俯く。
「ああ、心も蕩かすような美味。この唐揚げの見事なこと。皮はパリっと中はジューシー。炒飯の一粒一粒が卵でコーテイングされ黄金の様に輝いて食べるのが勿体ないくらいなのに、食べずにはおかれない香しい匂い。ああ、なんてことなの?」
『お口に合ったようで、何よりです章様』
ロボ婦警が微笑む。まともな料理人がまだいない為、章梦柔のたっての希望でありあわせの材料で作った昼食を振舞ったのだ。
(とはいえ、毎日食事の相手も面倒ね。誰か適当な料理人はいないかしら?
いなければ、促成プログラムで鍛えてでも・・・・・・)
砂浜に座って夕陽を眺めながら、酒を煽る青年が目に付いた。
『怠惰は罪、怠け者は逮捕しますよ。くすっ』
「今は受付嬢なんだろう、逮捕なんかできる訳がないだろう!放っといてくれ・・・・・・」
『私は受付嬢兼、南鳥島警察署長なんですよ。当然、逮捕権はありますよ』
「・・・・・・ 聞いたよ、章に君の料理を振舞って絶賛されたんだろう?
俺なんか、何年も修行しているのに。未だに食べて貰えるような料理が出来ない。俺はロボットにも劣るのか!」
『何を言うかと思えば、私が章様にご満足いただける料理をお出しできるのは当たり前ですよ』
青年は、アルコールに濁った赤い目でロボ婦警を睨む。
「何だと!」
『努力、修行が足りないんですよ』
『さっき、何年も修行していたと言いましたけど・・・・・・』
「それが、なんだ!」
(ふぅー、やれやれだ。演技するのも疲れて来た)
『たとえ私が初めてお出しした料理も、出す前には軽く百万回のシミュレーションの実行と世界中にある料理関係のデータベースの検索をしていますよ。
あなたの何年の修行?まあ、五年だとして一八二六日、毎日百回作ったとしても十八万二千六百二十五回、あと二十年位修行が足りませんよ、はん』
「くそっ」
『それでも、私は味覚が、料理に感動を覚える人間が羨ましいですよ。
もし、あなたにやる気があるなら。私が鍛えてあげますよ』
「ええい、お願いします。このとおりだ」
『では、これから私のことは師匠とお呼び!』
「え? ・・・・・・ 師匠」
『よろしい、修行は厳しいですよ』
「へい、師匠」




