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猫は七度死ぬ  作者: ぶらっく3だ
1章 ネコふたたび
11/24

11 箱舟

 紅の災害後に出現した箱舟のエコシステムは、大きく二つの柱から成る。

 一つ目は、太陽光発電だ。元は巨大ビルだったものを紅の魔女が救済船として魔改造したときに壁面パネルを高効率の太陽電池とバッテリーに変化させたのだ。

 二つ目は、潮汐発電プラントだ。これは地球政府つまり日本の技術力で箱舟の底面に後付けで接合した発電プラントだ。太陽光発電は便利だが夜間や嵐のときに供給電力が低下する。これを補うために後付けで潮汐発電プラントを箱舟に実装したのだ。

 そして、生物にとって食料と同じくらいに重要な飲み水についても二種類の発電プラントで生産した電力を使用して組みだした海水を一ナノメートルよりも小さな穴が多数空いた特殊な逆浸透膜のフィルターを通すことによって塩分を取り除き、飲料水を手にしている。

 このようにして、箱舟では一見何不自由なく暮らすことが出来るようになっているが、箱舟の住民に不満が無い訳では無い。

 それは、生活インフラを地球政府が運営、維持保守する代わりに現代の人頭税とも言われる税を負担させているからだ。

 彼らに言わせれば、難民なのになぜ搾取されるのかという憤り、真に理解不能な自分勝手で不思議な論理だった。

 地球市民の立場から言えば、世界を核戦争の危機に陥れた戦争犯罪者だというのにどの面を下げて権利を主張するのかと、まあ、臆面もなく権利だけを主張する文化が確かに昔は幅を利かせていたのだが・・・・・・


『じゃあ、決心が着くまで少しお相手してあげるよ。まあ、早く決めた方が楽なことは保証するけどね』

「たかが、化け猫の分際で人間様に無礼でしょうが!」

 章梦柔(チャン・モンロー)は、怒りに任せて起爆装置のスイッチを押した。

 パンっ、という乾いた音とともに五色の炎が突如真昼から暗転した夜空を彩る。『結構な火薬の量だね、本当なら僕の半径十メートルは跡形もなく吹っ飛んでいただろうね。僕が細工をして熱エネルギーを各種の波長に変換減衰させて即席の花火にしてみたんだけど。どうだい、結構綺麗なんもんだろ?』

「そ、そんなはずが・・・・・・」

『あるはずない、かい?現に目の前にある現象を有るがままに捉えるのが科学者たる君の立場じゃないのかなあ』

「もし、そんなことが出来るとしても。火薬の質量分析とエネルギーの最適な干渉を導き出して爆発を花火に変えてしまうなんてこんな短時間じゃスーパーコンピューターでも無理なはずなのに・・・・・・」

『そうか、まだ知らないんだよね君たちは。あの伝説のネコ船長が発見した異星の量子コンピュータ技術、それを利用させてもらったんだよ』

 章梦柔は、いつの間にか取り出した拳銃をネコに向かって発射した。弾丸は過たずネコの右目に突き刺さるはずだった。

 ぽんっ。

 銃口からは、まるでおもちゃ拳銃のようにカラフルな万国旗が飛び出した。

「あ、ははは。もう、無駄に説明しなくてもわかったわよ。弾丸を構成する物質を万国旗に変換したのね。たしか、陽電子加速装置の応用だったかしら?」

『ほう、そっちの方は情報をつかんでいたのかい。流石だよ』

「負けたわ。もう、好きにしてちょうだいな」

『まあ、あっけなかったね。こんな遠くまで来た割にはね。でも良かったよ、お互い時間は有効に使わないとね』

「・・・・・・」


『ユキ、出張の仕事も終わったよ。お客さんを連れて帰るから、食事は三人分用意しといてね』

「わかったわ。お疲れ様、ネコ・・・・・・」

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