魔王ってバレた!?
【やった!やった!肉食える!】
まだ肉と決まったわけじゃないけどね。
米かもしれないじゃない?
【この際どっちでもいいよ!腹一杯食べられるかなぁ・・・?】
猫の獣人である猫田さんのススメで、僕達は彼の村に行く事になった。
「じゃあ行こうか?準備はいいかい?」
「はい。このリュックに全部入れてあるので」
以前、草で編んだ鞄をリュックサックに改良して、背負えるようにしておいてよかった。
「ちなみに村まではどれくらいかかりますか?」
「走ればそんなに時間かからないけど、歩くとちょっと遠いかな?どうする?」
「走りましょう。きつくなったら声を掛けるので」
「分かった。そこまで速くは行かないようにするから」
猫田さんはそう言って森の中へと走り始めた。
気を使ってくれているのか、そこまで速度は出ていない。
走り始めて十分経ったくらいで、猫田さんは横に並び話しかけてきた。
「小さいのに随分と速いね。身体強化はしてないけど、ついてこれるとは思わなかったよ。もう少し速度上げても平気かい?」
「まだ大丈夫だと思います」
身体強化とかあるのか。
魔法か獣人特有のスキルかな?
でもそこそこのスピードを出してるっぽい言い方だったな。
更にスピード上げたにもかかわらず、魔王の身体のせいか特にきついとか無いんだけど。
この身体、魔法だけじゃなくて身体能力もチートなのかもしれない。
更に十分ほど走って、ようやく村と思われる場所に着いた。
「じゃあ一緒に来てくれ。まずは村長に挨拶しに行こう」
猫田さんは村の中を目的地に向かって、どんどん進んでいく。
周りを見渡すと様々な獣人達が居るのが分かる。
犬の獣人を筆頭に、鼠や猿、カバに亀も居る。
言ったら怒られるけど、ちょっとした動物園みたいだ。
「此処だ。大丈夫だとは思うが、失礼の無いようにな」
中に通されると、靴を脱ぐようだ。
外側は洋風に近いけど、中は和風っぽい作りになっている。
なんか現代日本の住宅に似ている気がする。
一番奥の部屋の戸を開けると、そこは和室だった。
何で異世界で和室なんだよ!
その和室の上座には、犬の獣人が座っていた。
思ったより若そう?
「お連れしました。この子がそうです」
「お前が無詠唱で魔法を行使出来るという少年か。本当に小さいな」
無詠唱?
何の話だ?
「初めまして。阿久野と言います」
「私は前田家当主、又左衛門利家。この村を治めている」
「前田利家!?」
【前田利家って戦国武将だよな!?俺でも知ってるぞ!】
何故こんな異世界で武将の名前が使われているんだ!?
猫田さんでも驚きなのに、こんな有名な名前出されると思わなかった。
「なんだ。私を知っているのか。まあ獣人の中では有名な名前かもしれんがな」
「い、いえ。名前だけしか聞いた事はありません」
「ところでおぬし、魔法を使えるというのは本当かね?」
「はい、使えます。とは言っても、一つしか使えませんが」
「見せてもらっても構わぬか?」
部屋の中を見渡してみるが、使ってもよさそうなものが無い。
仕方ないので、リュックの中からおたまを取り出した。
「おたま?何に使うのだ?」
目の前でおたまを小さい短剣に作り変えて見せる。
その様子を見ていた前田さんは、驚愕の表情をしてみせた。
というか獣人の表情が分からないので、そんな気がするってだけだけど。
「こ、これは!いや、ありえない!」
何がありえないのだろう?
おたまが短剣に変わった事かな?
手品だと思われたのかな?
癪なのでもう一回やっておこう。
「じゃあ今度はこっちの皿で」
次に木で出来た皿を、木馬の置物に変えてみた。
無駄に首を振れる赤べこ仕様だ。
色が赤くないのが少し寂しい。
「お、おぉ!これは・・・魔法の無詠唱じゃない!この魔法は!」
「あぁ、はい。創造魔法です」
そう言うと、前田さんは上座から勢いよく降りて、こちらに頭を下げてきた。
えっ?えっ?どういう事?
猫田さんもよく分かってないらしく、頭を村長と僕にワタワタと振っている。
「魔王様!先程までのご無礼!平に!平にご容赦さいませ!!」
何だこの状況は・・・。
前田利家と名の付く村長が、ただの子供に頭を下げている。
思考が一瞬止まってしまった。
「頭を上げてください!困ります!」
「許していたただけるのでしょうか?」
「許すも何も無いですよ。特に何も分かっていないのに・・・」
声を掛けるとようやく頭を上げてくれる前田さん。
ちょっと涙目のようにも見えるが、喜んでいるようにも見える。
あ、尻尾振ってるから喜んでるわ。
しかし何故魔王だって分かったんだ?
「魔王様は、先代の御子なのでしょうか?」
先代も何も、この身体自体が先代です。
なんて言えるはずもなく、どうしようか迷う。
【別に知りませんでいいんじゃね?さっき親は知らないって言っちゃったし】
そういえばそうだった。
もう頭がテンパってるから助かるわぁ。
「先代というか、私は親は知りません。生まれた時から親が居なかったもので」
「先代様の子ではないと?では何故、創造魔法が使えるのでしょう?その魔法は代々、初代様以外は魔王のみが使用出来る血継魔法なのです。なので、それ以外の者には使用する事が出来ないはず」
あー、そんな説明受けた気がするね。
言われるまで全く頭の中に出てこなかったわ。
【知らんものは知らんで、押し通しちゃえ】
押し通せるものなのか?
まあいい。説明出来ないものは出来ん!
「しかし、先代の魔力に似てるような気もするんですが。でも少し違うというか・・・混ざっている?」
うおぉぉぉ!!!
犬鋭いぃぃぃ!!!
別に隠しているわけではないけど、冷や汗が出てきた。
【でも隠しておいた方がよくないか?これが先代魔王の身体で、俺等が使ってるってバレたら・・・先代の身体を返せって襲われない?】
ありうる・・・。
これは隠し通そう。
しかしどうやって誤魔化そうか。
【任せろ!】
「あれれ~?おかしいな~?僕、魔王に魔力が似ているとか言われた事無いんだけどな~」
(おい!何を言っている!)
いいか?
俺達は今、あの有名な少年探偵と同じだ!
だから同じような事を言えば何とかなる!
(ば、馬鹿だコイツ!)
馬鹿って言うな!
「ま、魔王様?何を言ってるんですか?しかし魔力の質が似ているようで少し違うのです。もう少し詳しく調べてみたいのですが?」
馬鹿な!?
あれれ~?おかしいな~?が、通用しないだと!?
(馬鹿はお前だ!)
「あ、はい。痛くしないでくれるなら・・・」
(もう駄目だ・・・)
「それは困りましたな。ちょっと痛いので、もっと大きくなってからにしましょう」
回避!
危機回避!
俺はやれば出来る子!
(馬鹿だ!兄も馬鹿なら、犬も馬鹿なのか!?もう何言いだすか分からないから交代!)
怖いわ~。
この兄に重要な場面を任せるのは怖い。
ちょっとおバカな前田さんにまた話を戻される前に、話を反らそう。
「ところで、さっきの言葉で気になる点があったんですけどいいですか?」
「私が分かる事ならば何なりと」
「この魔法が血継魔法なのは分かりました。でも何故、初代魔王は使用出来なかったのですか?」
「あぁ、それは初代様はヒト族なのですよ」
ヒト族?
初代魔王って人なの?
というか人間は魔法が使えないのか?
「ヒト族は魔法が使えないんですか?」
「ヒト族は基本的に魔法は使えません。稀に使える人間も生まれますが、大抵の場合は魔族との混血ですね」
魔族とな?
また新しい単語が出てきた。
「魔族とは、どのような種族なのですか?」
「魔族は種族というより総称ですかね。獣人もですが、エルフやドワーフ、妖精族等の魔法を使用出来る種族がそう呼ばれます」
なるほどなるほど。
しかし、そうなるとおかしな疑問が出てくるな。
俺達を召喚したのは誰なんだ?
「ヒト族は魔法が使えませんが、代わりに工業には特化しております。最近では重工業に力を入れて、近代化?というものをしているそうです。そして魔族と比べると、圧倒的に人口が多いです」
近代化か。
裏に日本から来た召喚者が居るな。
この世界では戦士かエネルギー扱いと聞いていたが、例外もいるようだ。
「なるほど。近代化というのはよく分かりませんが、ヒト族は脅威となりえるんでしょうか?」
「以前はそうでもなかったのですが、10年ほど前からでしょうか。ヒト族の国であるドルトクーゼン帝国が急に力をつけてきて、周囲の国家に対して宣戦布告しています。それはもう、ヒト族魔族関係無く武力行使をしているようで、今では北の大半は帝国の領地となってしまいました」
帝国凄いな。
しかし日本人を道具として扱っているような国だ。
いつかは敵対する事に変わりは無い。
それに僕達の魂も帝国で使われているはず。
この身体に慣れて通用すると分かるまでは、まだ無理は出来ない。
「ちなみにこの村はどの辺りなんですか?」
「この村はほぼ最南端と言ってもいい場所ですね。過去に初代魔王様に仕えた初代前田又左衛門利家が、こちらの領地を与えられたと聞いております」
初代魔王に仕えた初代前田利家?
「初代魔王はヒト族なんですよね?何故、魔族が仕えたんですか?」
「初代魔王様は、この世界にやってきた初めての異世界人と言われております。名は織田信長。ヒト族でありながら、魔族を導いて歴史上初めて天下統一をなされた方でございます」
「織田信長!?」