オケツとサネドゥ
ちょくちょく思うんだけどさ、王様達ってどうやって護衛とか決めてるんだろう?
例えばキルシェの場合、元々居た連中からは選んでいない。
彼女の場合、自分の兄弟達と争っていて、誰が敵で誰が味方か分からなかったしね。
本当に信頼出来る人しか選べなかったというのも、理由としてはあると思う。
ヨアヒムの場合は、強い奴というよりも能力的に防御力が高そうな奴を選んでいそうな気もする。
ちなみに僕達の場合、名目上では蘭丸とハクトがそうなっているらしい。
ゴリアテ達はあくまでも街全体の防衛を指揮していて、僕の専任となると、この二人になるという話だった。
と言っても、ホントに名目上だけなので、今回のように蘭丸が居なかったりするのもしばしばある。
それは僕と兄が認めているからであって、信用していないわけじゃない。
むしろ信頼出来るからこそ、違う仕事を任せられると言った方が良いかな。
そんな護衛という役職なんだけど、かなり重要だと思うんだよね。
じゃあ何故、帝の護衛ってこんなヘタレなんだろう?
自分で選んだんじゃないのかな?
それとも代々護衛を任される、家系なのか?
何にせよ、こんな危険な時代なんだから、もう少し見直さないといつか死んじゃうと思うよ。
サネドゥは守るように、帝の前へと立った。
「よ、よくやった!誰かは知らんが、お前なら私の部下に、アウッ!」
トブユッキーの裏拳で顔を殴られる護衛。
涙目で睨みつけると、逆に睨み返されてすぐさま目を逸らした。
「サネドゥよ、どうして御所に?」
「それは簡単ですよ。私だって騎士ですから。帝のピンチとあらば、駆けつけます」
「いや、そうではなくて。お前は自領の防衛で、精一杯だと聞いていたのでおじゃるが」
騎士王国内モールマン発生の際、全騎士に声は掛けていた。
しかし自領を守るのが最優先だという事は、誰もが分かっていたので、帝もオケツも来ない騎士を咎める事はしなかった。
その中の一人が、サネドゥだった。
「たしかに防衛に苦労はしました。しかし、元々私の領地は小さいですから。守備の決まり事を作れば、簡単です」
「か、簡単ではないから、皆が困っているのでおじゃるが・・・。まあ良い。流石はサネドゥと言っておこう」
「さ、サネドゥ!?貴様、田舎騎士のクセに、帝様の護衛たる私にアウチッ!」
自分を殴ったのが誰だか分かり、強気になる護衛。
再び詰め寄ると、今度はビンタで吹き飛ばされてしまった。
「な、殴ったな!帝にもぶたれた事無いのに!」
「お前、クビでおじゃる」
「な、何故!?」
「護衛のクセに、モールマンからマロを守っていないではないか」
「ハッ!?そういえば、そうでした」
護衛は今更ハッと気付き、立ち上がるとモールマンへ向かっていく。
「朝敵め!めえぇぇぇん!!へぶちっ!」
上段の構えから太刀を振り下ろす護衛だったが、爪で簡単に弾かれるとそのまま頭を爪で叩かれ、顔を地面へとぶつけていた。
「痛い!は、鼻血が!?すいません、止血の為に一度後退します!」
そのまま何処かへ行ってしまう護衛。
帝は改めて思った。
あの護衛はクビだと。
「・・・御所は人員不足なのですか?」
「え?いや、まあ・・・そうでおじゃるな」
過去に居た優秀な護衛は、ハッシマーの反乱の時に亡くなってしまっている。
今にして思えば、確かに人材不足は否めなかった。
「む!少し話をしているのだ。そう急くな」
話をしていると、帝とサネドゥ目掛けて氷柱が飛んできた。
モールマンにとっては関係の無い話なので、攻撃してきても当たり前なのだが、サネドゥの威圧感に押され攻撃は止んだ。
「ところで、ここまではどうやって来たでおじゃるか?外はミミズとモールマンに、囲まれているはずでおじゃるが」
「サネドゥの騎士が、御所までの道を切り開きましたから」
サネドゥの後ろに居る、男とも女とも取れる人物が、サネドゥに話し掛ける。
「お館様、私も外へ」
「分かった」
サネドゥからの許可をもらうと、すぐに姿を消した。
「なっ!?忍びか!」
「そうです。サネドゥは小さいですから。各国の情勢を理解しておかないと、いつどうなるか分かりませんので」
「オヌシ、変わったでおじゃるな」
「そうですね。弟が生きていれば、変わらずに済んだのですが。弟のやり方を学び、今はどの領地にもサネドゥの忍びはおりますよ」
なかなか大胆な発言をするサネドゥ。
その辺りは昔と変わらないなと思いつつ、帝はある疑問が湧いた。
「それって、御所も?」
「え?えぇ、まあ」
「じゃあさ、このピンチ知ってたんじゃないの?」
「・・・」
「知ってたな!」
顔を逸らしたサネドゥに、帝は確信する。
すると言い訳を始めるサネドゥ。
「い、一度断ってから良い場面で参戦すれば、好印象かなって思って。これも過去に、父から教わったやり方ですので」
「サネドゥ家、腹黒いでおじゃるな!」
「領地が小さいもので。こうでもしないと、生き残れませんから」
事あるごとに、領地が小さいと言うサネドゥ。
帝は分かっていた。
今回の帝救出は、かなり大きな功だと。
そしてこの功績に対して、領地をくれよと暗に言ってきているのだと分かっていた。
「サネドゥ、恐るべしでおじゃる。だが、まだ完全に助かったとは言えないでおじゃるな」
「なるほど。奴を倒せというわけですな。分かりました」
ようやくモールマンと向き合うサネドゥ。
そしてモールマンも話が終わったと分かり、サネドゥと対峙した。
その時だった。
「死ねえぇぇ!!キーくんは私が守るぅぅ!!」
モールマンの背後から、突然の雷撃が迸った。
「あっ!私の功が!」
思わず本音を口にするサネドゥ。
モールマンは膝をついた。
「やったでおじゃる!流石はみっちゃん!」
「キーくん、大丈夫だった?」
モールマンの背後から奇襲を仕掛けたオケツ。
彼は地底から、一人戻ってきていたのだった。
「でも、どうして御所に?」
「河童の老人に言われたんだよね。もしかしたら、二重の策があるかもって。だから自分だけ抜けて、戻ってきたんだ」
地底の水路近くで待っていたオケツ達一行。
しかし追撃は無く、ただただ休憩しているだけだった。
そんな時に先代の九鬼嘉隆からそんな話をされ、彼だけ部隊から抜けて戻ったのだ。
「しかもコイツ、色が違う。絶対強いよ」
「その通りだ」
膝をついていたモールマンの背中から、オケツに向かって雷撃が飛んでいく。
思ってもみなかった攻撃に、オケツは反応しきれない。
「騎士王!?」
「アバババ!!」
感電し倒れ込むオケツ。
ビクビクしながら、何かを言おうとしている。
モールマンは何事も無かったかのように、スッと立ち上がる。
「ななな何故?」
「残念。俺には飛び道具は効かないんだ」
その瞬間、苦無を投げるサネドゥ。
モールマンは構えもせずに胸で受けると、それはそのままサネドゥへと跳ね返っていった。
「なるほど。こうなるわけか。しかし、雷をも跳ね返すとは」
「雷だけではない。何でもそうだ。魔族とかいうのが使う、魔法も跳ね返せる」
「魔法も!?凄いでおじゃる」
自分の強さを語るモールマンに、帝は素直に反応した。
オケツは自分の攻撃を食らって、動けそうにない。
それを見ていたサネドゥは、内心でガッツポーズを作った。
「騎士王は動けないだけのようですな」
「ハッシマー戦で倒れたからな。それなりに耐電気能力は上げたでおじゃる」
ハッシマーを倒した時、彼は自らの力で感電した。
あの時を機に、そう簡単に倒れないようにある程度克服していたのだった。
とは言っても、このような状況は考えていなかったので、流石に全て耐えきれるというわけではなかったようだ。
「わわわ私の事はきき気にせず、たたた倒してー」
帝は思った。
バグったゲームみたいな話し方だなと。
「まあ元々バグってるような奴だし、問題無いでおじゃる」
「何を言ってるんです?」
「要は、騎士王は気にせず戦えという事でおじゃる」
「承りました」
ガンガンと自分の拳をぶつけるサネドゥ。
それを見てモールマンも、オケツを無視してサネドゥへと向いた。
モールマンは思った。
後ろで痺れて倒れている男は、大した脅威にはならない。
前の男の方が、なんとなく気になると直感が言っていた。
「さて、私の領地の発展の為に。キミには死んでもらう」
「抜かせ。こちらも同じよ。王の命令を遂行する為、そこの帝という男には死んでもらう」
サネドゥが石を拾い、モールマンに向かって投げた。
石が跳ね返りサネドゥに戻っていくが、それを簡単に避けてモールマンへと向かっていく。
対してモールマンも、サネドゥを迎え撃つべく左爪で氷柱をショットガンのように発射し続けている。
「効かないな!」
両腕で顔をガードし、そのままモールマンの前までたどり着く。
するとその腕の下から、モールマンの爪がするりと跳ね上がった。
首をおもいきり引いて、それを避けるサネドゥ。
しかし両腕がアッパーのような右の爪に、弾き飛ばされる。
「ぬうぅ!」
「チィ!今のを避けるか」
顔に向かって氷柱を撃ち込むと、それを首を捻って致命傷は避けた。
「な、なかなかやる!」
「お前こそ」
サネドゥは気を引き締めた。
領地の為、サネドゥ家の為と考えていたが、余計な雑念は敗北を招く事になりそうだ。
彼は改めて、モールマンを見直す。
しっかりとモールマンを見てみると、彼は他のモールマンと違う点に気付いた。
水色の岩に覆われているのは当たり前だが、それとは別に気付いた事がある。
それは右腕と左腕の長さの違いだった。
右腕を曲げているから気付きづらかったが、左腕の方が右腕と比べると短いのだ。
そして主に左腕から氷柱を発射してくるが、そちらは連射が可能で、右腕は主に大きな氷柱が多かった。
「なるほど。以前戦った男も、似たような感じだったな」
サネドゥはハッシマーの反乱時に戦った、佐藤さんの事を思い出した。
左ジャブと強い右。
パンチと飛び道具で少し違うが、やってくる事は変わらないと感じたのだ。
「そうなると、弱点も同じかな?」
「俺に弱点など無い!この全てを跳ね返すミラーボディに、誰も勝てるものか!」
左爪から氷柱が連射してくるので、それを叩き落としながら近付くと、ガードで見えない角度から右の爪が襲い掛かってくる。
「チクチク邪魔してくると思ったら、見えない位置から必殺の右。やっぱり似てるな」
「ほほう?俺と似た戦い方をする奴が居るとは。なかなか目の付け所が良い奴だ」
「そうだな。でも、お前より洗練されていたけどな」
「何だと?」
似たような奴が自分より強い。
そう言われたモールマンは、再び攻撃を始めた。
同じように左爪から氷柱を連射し、近付いてきたら右の爪で攻撃する。
何度かそれを続けていると、少し違和感を覚えた。
「そろそろだな」
サネドゥの動きが変わった。
氷柱を弾くのは変わらないが、前へ出る突進力が上がったのだ。
モールマンは右の爪で、ロングフックのようにサネドゥの左側頭部を狙った。
それを頭を下げて避けるサネドゥ。
今までは受けていたのだが、避けられたのは初めてだった。
「反撃開始だ!」
「無駄だと言ってる!グハァ!」
サネドゥの左フックを脇腹に食らったモールマンは、身体をくの字にしてたたらを踏んだ。
追い打ちをかけるように、右と左の連打を叩き込むサネドゥ。
「フンフンフンフン!!」
トドメの鳩尾への右アッパーが、モールマンの膝をつかせた。
それを見下ろすサネドゥは、左手を軽く挙げる。
「やっぱりな。あの男もそうだったけど、近付かれると弱いよな。あの男は足も速かったし捕まえるのが大変だったけど、お前はその点動かないし、本当楽だわ」




