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御所戦闘

 人の好みに種族は関係無い。

 これは何にでも当てはまるんだろうな。


 色という概念があるか無いか分からないけど、ベティと対峙したモールマンは紫色が好きらしい。

 動物によっては、灰色に見えて分からなかったりする。

 人間だって特定の色が見えづらい色覚異常というのもあるし、モールマンが色を判別出来て、更に好みがあるというのはちょっと驚いたかな。

 ハッキリ言って、食欲以外の興味は無いと思っていたからね。

 しかもオケツ達が連れ帰ったモールマンなんか、もっと凄かったし。

 ここまで来ると、人とほとんど変わらない。

 進化と言えば簡単だけど、でも元々生まれ持った衝動を抑えられるっていうのは、なかなか凄い。


 しかし、好みがあるという事は逆もまた然り。

 嫌いなモノも存在する事になる。

 ジャイアントにとってのメメゾは嫌いというよりは苦手意識なのだろうが、苦手と嫌いはまた別だ。

 モールマンもこうなってくると、人間は不味いから嫌いだの魔物は固くて好きじゃないだの、始まるのかな?

 こうやって個性が出てくると、オケツの知り合ったモールマンみたいに、多少は分かり合えるような気もする。








 ベティを避けて逃げたモールマンは、タツザマの下へと向かった。

 そして地底から出た先には、既にベティの姿があったわけだ。

 再び逃げた紫色のモールマンは、次なる目標タケシを目指して進行中である。



「もう面倒よねぇ。こんなのに手こずってると思われるのも、嫌だし」


 ベティはかったるそうな顔をしながら空から降りると、地面に向かって双剣を二本とも刺した。

 両方のクリスタルが光ると、地面の中を大量の水が流れていく。

 大量の水が流れた場所。

 それはモールマンが掘った、穴の中だった。



「さて、いつまで我慢出来るかしら?」


 今のクリスタルは、青色の光の方が強く発光している。

 しかし徐々に、赤色の光も強くなってきていた。



「最初はぬるま湯。段々と湯加減も良くなって、最後は煮える。モールマンの姿煮の完成ね!アッハッハ!」


 大きな声で笑うベティ。

 すると随分と先の方から、叫び声が聞こえた。



「あの辺りか。面白いから、このまま水の勢いを強くしましょ」


「ぐおあぁぁぁ!!熱い!熱いぃぃぃ!!」


 地面の中から出てきたモールマンは、自分に向かって水を大量に浴びせている。

 だがベティは、更に火属性の方を強めた。

 モールマンが出てきた穴から、熱湯が地上へ溢れ出している。



「熱い!熱い!」


「アッハッハ!モールマンが踊ってるわぁ」


 双剣を抜いたベティは空を飛び、モールマンの頭上で高らかに笑っていた。



「こ、この鬼畜がぁ!」


「鬼畜?アタシ、めちゃくちゃ優しいと思うけど」


「何処がだ!嬲っているだけではないか!」


 自分で遊ばれていると自覚している、紫色のモールマン。

 彼のプライドはズタズタになっており、自分を上に見せようなどという言葉は既に見受けられなかった。



「だから言ったじゃないの。アタシは自分より弱い奴には、興味が無いって」


「それにしても酷い!俺様だってエリートなんだ!他の奴等より、そりゃ微妙かもしれないが・・・」


「随分と弱気になったわね。ちょっと幻滅だわ」


 ベティの辛辣な言葉が、モールマンを揺さぶる。

 まだ負けたわけではない。



「俺様の強さが、火と水を操るだけだと思うなよ!」


「あら、奇遇ね。アタシも同じ事を言おうと思ってたの」


「なっ!えっ!?」


 背後から聞こえるベティの声に、思わず振り返るモールマン。

 そこにはナイフを目の前に差し向けた、ベティの姿があった。



「か、完敗だ・・・」


 実力差を悟り、おとなしく敗北を認めるモールマン。

 一度距離を取り、モールマンに戦意が無い事を確認する。



「・・・本当のようね」


「俺様は死ぬのか?」


「それは、アナタ次第じゃない?」


「俺次第?」


「アタシ達魔族とヒト族、そしてジャイアントに危害を加えないと約束出来るなら、生かしてもらえるかもね」


 ベティの言葉を聞くと、モールマンは少し悩んだ。



 王の命令は絶対である。

 確実に勝てる相手以外は、逃げても良いと言われた。

 しかし目の前に居るベティを相手に、逃げ切れるはずも無い。

 次に勝つ為には、ベティの要件を飲む事もやぶさかではない。


 だが、万が一その姿を他のモールマンに見られれば、裏切り者というレッテルを貼られる事になる。

 エリート戦士という地位とプライドが、再び心の中に湧いてくる。


 逃げる為に要件を飲むか。

 プライドの為に死ぬか。



「どうするの?」


「・・・決めた!」


「それがアナタの答えね」


 両方の爪を、ベティへと向けるモールマン。

 ベティ同様に、水と炎を同時に使う考えのようだ。



「ぬあぁぁぁぁ!!」


 両腕から水と炎が、ベティに向かっていく。

 だがそれは途中でぶつかり合い、何事も無かったかのように蒸発してしまった。



「な、何故だ!?」


「だから言ったでしょう?濃い紫色も淡い紫色も、どちらも綺麗よね。でも、どちらも濃くしていけばどうなると思う?」


「し、知るか!」


「赤も青も濃度を上げれば、ほとんど黒くなるのよ。そんなのを混ぜても、より真っ黒になるだけ。今の結果みたいにね」


 お互いにマックスの力でぶつかり合えば、相殺される。

 ベティの言いたい事を理解したモールマン。

 それを理解した上で再び爪を向けたが、既に遅かった。



「ねえ、知ってる?水とマグマがぶつかると、水蒸気爆発が起こる事があるのよ。こんな感じでね」


 真後ろから聞こえた声に振り返ると、その瞬間モールマンの視界はオレンジ色に染まり、物凄い勢いで空へと弾け飛んだ。



「意識は、既に無いわね」


 身体を覆う紫色の岩は全て吹き飛び、モールマンの腕や足は曲がらない方向へひしゃげている。

 辛うじて首は守ろうとしていたが、それも無駄だった。



「当たりどころが悪かったか」


 紫色のモールマンは頭に鋭利な紫色の岩が突き刺さり、即死していたようだ。

 地面へと落下するモールマンを見て、ベティはそのまま振り返らずに城の方へと飛び去っていった。








 時同じくして、御所。

 帝は各領地への、モールマンの対抗策を講じていた。

 御所にジャイアントを集中的に集めている為、他の領地の守りは手薄になっている。

 色々と言われているが、いつまでも対策を講じなければいつ反乱が起きてもおかしくない状況になっているのだ。



「帝様、そろそろ屋敷に入られては?」


「うーん、屋敷に入ると頭が回らないでおじゃる。外で青い空を見上げながら考えた方が、良い案も浮かぶというものでおじゃるよ」


 騎士の一人が帝の身を案じるが、帝はそれを聞かない。

 むしろこのまま庭で空を眺めながら、考えると言い出した。



「帝様、スマジ及びモールマンがいつどのように攻めてくるか、分かりません。ここはやはり、中へ入られた方がよろしいかと」


「いつどのように攻めてくるのか分からないのなら、屋敷の中に居ても変わらないでおじゃる。ならば、外に居ても同じでは?」


「そうは言いますが・・・。何やら外が騒がしいような?」


 騎士は屋敷の外の音が、大きくなってきた事に気付いた。

 誰かがこちらへ向かってきている。

 すると庭に、大慌てで騎士が走ってきた。



「何事か?」


「て、敵襲です!」


「何?スマジか?」


「ち、違います!モールマンです!」


「な、何だとぉ!?ち、地底からか?」


「違います!普通に地上からやって来ました」



 帝は地底からの攻撃は、懸念していた。

 スマジの騎士は西からしかやって来れない。

 もしも御所を攻めてくるのであれば、空か地底の二択だ。


 空はやってくればすぐに分かる。

 対応は自分達でも可能だ。

 しかし地底は、ジャイアント以外はほとんど分からない。

 その為に地底からの攻撃は、一番危険視されていた。

 だからこそ御所を守る戦力として、騎士王であるオケツまで派遣したのだった。

 だが、それが仇となった。



「い、今からキーくん、いや騎士王は呼び戻せるでおじゃるか!?」


「れ、連絡は出来ますが、すぐには不可能です!」


「ま、マズイ事になったでおじゃる。まさか、正攻法で地上の真正面からやってくるとは。いや、ジャイアントが居るでおじゃるな。モールマンの相手は、ジャイアントにお願いするでおじゃる」


「そ、それが・・・」


 言い淀む伝言の騎士。

 その様子にキレた護衛は、怒鳴りつけた。



「ハッキリ言え!」


「ジャイアントは巨大ミミズに手こずっていて、モールマンまで手が回らず・・・」


「巨大ミミズ!聞いていたが、まさかここまで問題があるとは」


「ならば、騎士がミミズの相手をすれば良いのではないか?」


「既に向かったのですが、軽くあしらわれました」


「・・・」


 無言になる帝と護衛。

 ミミズの相手くらいは出来ると思っていた騎士が、思いの外弱かったからである。



「トキド辺りに、御所の騎士も預けようかな」


「他の領地に左遷でございますか。良いですね」


 帝は護衛を見ている。

 ジーッと見ている。

 それに気付いた護衛は、目を合わせない。

 逸らしている先へ歩いていく帝。



「んん?んんん?」


「ゲフン!ゲフン!な、何か?」


「いや、君も一度、行ってもら」


「あー!!それでモールマンの相手は誰がしているのだ!?」


 話を逸らす護衛騎士。

 帝はそれに気付いていたが、護衛の言う事も気になる。



「騎士達が頑張って対応していますが」


「いつまでも耐えられないと?」


 頷く騎士に、護衛は顔が青ざめる。



「どどどどうしますか!?」


「・・・騎士王が戻るまで、耐えられると思うでおじゃるか?」


「私からは何とも」


 騎士は暗に耐えられないと言っていた。

 帝もそれに気付いているが、護衛だけは喚いているだけだった。



「それでは私も外の戦闘に、ぐあっ!」


 外に向かおうとした騎士が、吹き飛んで戻ってきた。



「どどどどうした!?」


「も、モールマンが・・・グッ!」


「見つけたぁ」


 庭に入ってくるモールマン。

 その身体は他の個体よりも大きく、色も特殊だった。



「み、水色」


「水でも出すでおじゃるか?」


「馬鹿にするなよ」


 護衛は慌て、帝は冷静。

 そしてモールマンは、馬鹿にされた怒りを内に秘めていた。



「地底からではなく、どうして地上から来たでおじゃる?」


「地底からは、スマジという地上人を向かわせている。どうせ地上の者は、地底から来ると計算するだろうと、王が仰っておられた」


 確かにそう考えていた帝は、騎士王までも向かわせている。

 裏をかかれたと、珍しく人前で舌打ちをする。



「チッ!では何故、スマジを地底から向かわせて、お前達が地上からなのでおじゃるか?」


「そ、そうだ!どうして逆ではないのだ?」


「簡単な事よ。地底から来ると待ち構えている連中に、地上の重要人物を向かわせる。そうすれば地上人は、見破ったと勘違いするだろう?」


「騙された!モールマンの王め、卑怯なマネを」


「コイツ、馬鹿だろ。兵とは詭道と言うではないか」


「詭道?」


 コイツやっぱりトキド送りだな。

 帝はピンチの中でも、冷静に護衛のクビを考えている。



「奇襲だからな。こんな所に長居するつもりも無い。では地上人の王よ、さらばだ」


 水色のモールマンが爪を向けると、氷柱がショットガンのように飛んでくる。



「危ない!」


 護衛が帝の前に立ちはだかった。

 おかげで帝は無傷で済んだ。

 クビは訂正しようと考えていると、再び爪がこちらへ向いている。



「今度こそサヨナラだ」


 倒れた護衛。

 帝を守る者は誰も居ない。

 はずだった。



「誰だ!」


 拳で全ての氷柱を叩き落とした男。

 その鎧は、光り輝いていた。



「ふむ、間に合ったようですな」









「さ、サネドゥ!?」

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