燃えるオーサコ城
友達や仲間とは、何処から呼びますか?
例えば学生時代、クラスが同じだった人を友達と呼ぶ?
でも一年間同じクラスなのに、話した事が数回あるか無いかの人だって居るよね。
そういう人も友達って呼ぶのかな。
こういうのって、人それぞれだと思うんだよね。
一度遊んだから友達。
電話番号交換したから友達。
でもこういう考えもある。
友達が呼んだから一緒に遊んだだけで、特に話したわけじゃない。
聞かれたから交換しただけで、こっちからは連絡していない。
要は、自分から望んで友達になったわけじゃない人も居るわけだ。
ハッキリ言って、僕は友達が少ない方だと思う。
さっき言ったような、一回遊んだだけとかで友達とは呼ばないし、そういう人にはいきなり番号交換なんてしない。
その場限りの付き合いだと思ってる。
そういう人は浅く広くなイメージなのだが、僕の場合は狭く深くの付き合いなのが、友達と呼べる存在かな。
でもね、一度でも戦場で背中を預けたような人達なら、それはもう戦友と呼んでも良いと思うんだよね。
それこそオナキギャワは、オケツと一緒に戦ったという意味で戦友だろう。
ハクトも今回の件で、オナキギャワとの仲は深まったと思う。
タツザマと出てきたモールマンは、太田よりも大きかった。
岩の色は普通のモールマンと変わらないのだが、明らかにサイズが異常である。
見た感じ、太田より二回りくらいは大きい。
なので相手をしているタツザマと比べると、子供がちょっと大きな人形を掴もうとしているように見える。
「城が!」
今の馬鹿でかいモールマンが出てきた事で、一階部分が半壊した。
気のせいかもしれないが、城が傾いたように見える。
「タツザマ殿!」
太田が腰の手斧をモールマンへ投げつけると、左腕でそれを軽々と払った。
太田が持つ手斧は、普通の人からしたら両手で持つサイズの斧だ。
僕と比べると首くらいまでの長さがあり、ハッキリ言って手斧と呼ぶには大きい代物だ。
そんな手斧を簡単に払い落としたモールマン。
それは太田にとっても、予想外の展開だったようだ。
「タツザマ殿、こちらへ!」
「す、すまない!」
逃げるように走ってくるタツザマ。
速さでは到底敵わないモールマンは、一気に距離を空けられる。
最初は追う姿勢を見せたモールマンだったが、こちらを一瞥すると先程のレモン色のモールマンと同じく、この場から立ち去った。
「あ、危なかった!」
「奴等は何処から来たのですか?」
タツザマに質問する太田。
しかしタツザマも、詳しくは知らないらしい。
「ベティ殿と拙者は、トキド殿を抜いて先に到着したんだ。すると色々な階から悲鳴や叫び声が聞こえたので、拙者は下の階を。そしてベティ殿は上の階に行ってもらう事にした」
「そこでモールマンと出会したと?」
「そうだ。しかし気になった点もある」
タツザマは来た当時を振り返ると、不審な点があったという。
「どういう点ですか?」
「拙者達が来た時は、まだ火の手は上がってなかった。既に火は付いていたのかもしれんが、弱かったのだろう」
「それが気になる点?」
「違う。まだ燃えていなかったから分かるのだが、城は外側から、何処も壊されていなかったのだ」
入り口が破壊されていない?
「入り口からわざわざ入ってきたでござるか?」
「そんなわけないでしょ」
「そう。拙者の考えでは、オーサコ城は秘密の抜け道があると思っている」
秘密の抜け道かぁ。
よく聞く話ではあるかな。
井戸の中に地下通路があったり、茂みの中に階段が隠されていたり。
世界は違えど、こっちも同じ考えなんだろう。
というか、僕達も城ではないけど、同じように地下通路を作って、フランジヴァルドと繋げているしね。
「では、城の中にはモールマンが大量なのでは?」
「大量かは分からないけど、確実に居るよね」
そうなると、さっき逃げた連中も城の中に戻った?
でも既に城は燃えてるし、わざわざ危険を冒すかな?
【地下通路があるなら、そこからまた逃げれば良いだろ。煙は上に行くんだから、下に逃げれば問題無いだろうし】
燃えてる方へ逃げるの?
【変わった色のモールマンが多かったんだ。特殊個体で火には強いのかもしれないぞ?】
なるほど。
確かにその可能性もある。
むしろ城が壊れても、問題無いと考える方が自然か?
「あ!」
「どうした!?」
「上の階に、トキド殿のような人が中へ入ったような気がしたんですが」
「何?」
太田が示した方を見ると、確かに大きなワイバーンが近くを飛んでいた。
アレはトキドの国江に違いない。
「今回のモールマンは特殊な個体が多い。どんな力があるかも分からないから、複数で動くんだ」
「了解!」
複数と言っても、今動けるのは四人か。
マルテはこの状態で戦力には加えられないし。
「タツザマは、トキドが見えたって辺りから入ってくれる?」
「承知した」
「太田と慶次、タケシは三人で動くんだ」
「承知したでござる!」
「分かりました」
「任せろ!」
これで特殊なモールマンにも、対応出来るだろう。
「僕は火を消すから、頼んだよ。行け!」
久しぶりの人形姿。
ちょっと身体が重く感じる。
「燃えてるのは主に下の階か。トライクに乗る必要は無いな」
「乗る必要無いって、どうやって移動するのさ」
「こうやってだ!」
僕の首根っこを掴むと、兄はバッグの中に無造作に入れた。
バッグを手に取り背負うと、兄は城の周りを走り始める。
「俺も久しぶりだからな。身体を動かす準備運動も兼ねて、走ろうと思う」
「それなら火の強い場所を探しながら、走ってみてよ」
「任せろ」
横を見ながら走り始めた兄は、火が強い場所を見つけては速度を落としている。
僕はそれに合わせて、水魔法で消火をしていった。
しかし変な感じだ。
バッグから上半身を出しているからか、子供に肩車をしてもらってるような感覚だな。
視線が微妙に高いんだけど、大人と比べると低いし。
僕がそんな事を考えながら消火をしていると、兄が突然話し掛けてきた。
「俺達も、城の中に入った方が良いかもしれない」
「どうして?」
「よく見ると、下の階は殺された騎士が所々に居るんだよ」
殺されているのは分かるのか。
炎の中で動かない騎士が、見えるんだろう。
怪我さえしていなければ、多少は抵抗も出来ただろうに・・・。
「まだ生き残りが居るかもしれない。俺達も中に入って、消火をしながら助けよう」
「・・・」
兄はこう言うけど、どうしたものか。
「どうした?何か不満があるのか?」
「不満ではないんだけど、煙がね」
僕は人形の姿なら、酸素も空気も水も必要無い。
だから炎の中でも、活動出来る自信はある。
でも兄は違う。
煙を吸えば呼吸器に問題が生じるし、炎に巻かれれば焼死の危険もある。
言ってしまえば、心配なのだ。
「大丈夫だ。俺を誰だと思っていやがる。俺は天下の魔王様だぞ?」
「ハハッ!それを言ったら僕も魔王だ。そうだね、魔王が常識に囚われてちゃ駄目だね」
そうだよ。
この身体は、魔王の身体なんだ。
煙とか炎に負けるほど、ヤワじゃない。
「行こう」
「そう言ってくれると思ってたぞ」
兄は僕の答えを聞く前から、既に城へと走り始めていた。
トキドは身体に炎を纏い、城の中を歩いていた。
この姿になると、煙が身体を避けていくからだ。
どういう仕組みか分からないが、炎の中に居ても呼吸も普通に出来る。
「見つからんな」
トキドは不意打ちを嫌って、壁や扉を見つけると慎重に行動をしていた。
「うぅ・・・」
「生き残りが居たか!?」
壁際に隠れながら進んでいると、トキドは呻き声を耳にした。
助けなくては!
焦る気持ちから顔を覗かせると、目の前には大きな爪が迫ってきていた。
「ぬあっ!あっぶねぇ・・・」
咄嗟に頭を下に引っ込めたおかげで、頭スレスレを爪が通り過ぎていく。
よく見てみると、変わった色のモールマンが立っていた。
トキドはそれを見て、一旦距離を取った。
「ん?この色、普通のモールマンじゃない?」
一見すると茶色っぽく見えなくもないが、炎の照り返しで茶色っぽく見えているだけだった。
「・・・お前だけか?」
「何だ、俺一人じゃないと戦えないってか?」
「クク、一人なら好都合。お前を俺の糧にしてやろう」
モールマンはトキドへと、ゆっくりと近付いていく。
しかし、そこに異変が起きた。
天井が崩落したのである。
「ナメんじゃないわよ!このクソがあぁぁぁ!!」
「え?」
天井の崩落と言ったが、実際はベティが上の階から突き破ってきたものだった。
一瞬だけだったが、モールマンを押し込んでいたようにも見えた。
「・・・」
「・・・行くぞ!」
トキドとモールマンの間に、微妙な空気が流れる。
ベティ達のおかげで、一触即発だった空気が変わってしまったからだ。
それを無理矢理戻そうと、モールマンはトキドに向かって走り始めた。
その瞬間、モールマンの足下が崩れ落ちた。
下の階に落ちていくモールマン。
トキドは落ちた場所を恐る恐る覗き込むと、穴は更に下の階へと続いていた。
「・・・この城、もう駄目かも」
一人呟くトキド。
彼はオレンジ色のモールマンと生き残りを探して、再び城の中を歩き始めた。
ベティは苛立っていた。
目の前のモールマンを見て、嫌悪したからだ。
「アンタ、金色の岩とか趣味悪いわね」
「フフ、気持ち悪い奴に言われてもね」
売り言葉に買い言葉。
ベティとモールマンは、この一言だけでお互いが嫌いだと理解する。
「何を食べたら、そんな色になるのかしら?馬糞?」
「何を食べたら、そんな気色悪い性格になるのかしら?ジジイに餌でも、撒いてもらってる?」
お互いの額に、青筋が見える。
「テメェ、調子乗ってんじゃねえぞ」
「少し言われたくらいで、素が出てんじゃねえよ」
「ブチ殺す!」
「それはこっちのセリフだ!」
お互いの言葉をキッカケに、前へと詰めていく。
双剣を抜いたベティが、地面を蹴った。
両手の爪を前へ突き出すモールマン。
「死ねや!ゴラァ!」
「お前が死ねえぇぇ!!」
双剣と爪が交差すると、甲高い金属音が響き渡る。
ベティはそのまま壁を蹴ると、部屋の中を飛び回り始めた。
「目障りな虫め。あ、鳥じゃなく虫だったか」
「鳥人族を馬鹿にするとか、地獄に落とすだけじゃ足りないわね」
部屋の中を縦横無尽に飛び回るベティ。
モールマンは目で追いきれず、上から下から右から左からと、色々な方向から斬り刻まれている。
だが、モールマンは余裕を崩さなかった。
「痛くも痒くも無いな」
「馬鹿みたいに硬いわね!あ、そのお堅い頭と同様だからなのね」
「誰の頭が堅いって?」
モールマンも爪を振り回すが、ベティに一切触れる事は出来ない。
そこでモールマンは、ある方法を取った。
突然歩き始めるモールマン。
斬られていてもお構いなしに、どんどんと突き進んでいく。
壁際まで来て背を向けると、モールマンは大きく構えた。
「これなら前からしか来れないだろう」
「アンタ、やっぱり頭堅いわね」
空を飛ぶには狭い空間だが、突き破れば関係無い。
ベティは天井を突き破ると、上の階から勢いよくモールマンの頭上に向かって双剣を振り下ろした。
「死になさ、何でこんな硬いのよ!ホント、馬鹿みたいに硬過ぎ」
双剣での攻撃は通じなかったが、モールマンの足下が崩れた。
「そのまま下に落ちて、落下死しなさい」
「落ちているのはお前の品性だけで十分だと思うぞ」
「ナメんじゃないわよ!このクソがあぁぁ!!さっきから耳障りな文句ばっかり言いやがって。絶対に許さないわ」




