表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
756/1299

オーサコ城乱戦

 暇潰しに何をするか。

 これって結構、難しいものがあるよね。


 九鬼の爺さんがやろうとしていたのは、相撲だった。

 河童は相撲が好きとは聞いてるけど、暇潰しでやろうって考えがよく分からない。

 河童からしたら、暇さえあれば相撲するのか?

 普通、暇だからって相撲は無いでしょ。

 これが文化の違い?

 僕なら本を読むとか、考え事をするんだけど。

 地底の場合は本なんか読めないから、考え事かなぁ。


 しかしこの暇潰し、冒頭でも言ったが意外と難しい。

 例えば宿直のような仕事。

 見回りの時間以外は暇だったりする。

 待つのが仕事という感じになるが、その待っている間の時間潰しが難しいのである。

 最初は暇なんだから楽だなと思っていても、いざこれが続くと苦痛で辞める人も居るらしい。

 そもそも何もしないって、辛いよ?

 家に居ても何もしない時間って、あんまり無いと思うんだよ。

 何もしてないと言っても、実際は寝てたりするわけで。

 本当に何もしないでボーッとしてる時間って、一日に何時間もあるわけじゃない。


 特に何が言いたいかってわけじゃないけど、暇だから相撲しようと言えるだけ、爺さん達は時間を潰すのが上手いのかなって思った。









 オナキギャワは、ベッド横の信号弾を奪うように取ると、慌ててベッドから出ようとした。

 しかし血が足りないからか、フラフラとしながら窓辺へ向かっている。



「やらせるかよ」


「それはこっちのセリフだよ!」


 フラフラのオナキギャワに突進するモールマン。

 ハクトはモールマン以上のスピードで走り、間に割って入ると、ナイフをモールマンに突きつけた。



「甘いわ!」


 ナイフを素手で掴むモールマン。

 ハクトはナイフを引き抜き、モールマンの手を引き裂こうとする。

 その瞬間、ナイフに異常な熱を感じたハクトは、ナイフを手放してしまった。



「熱っ!と、溶けてる!?」


 手放したナイフで攻撃をされないように注意して見ると、ナイフは柄の部分を残して落ちていた。



「お前は焼けてもらっては困る」


「っ!?」


 抱きつこうとしてきたモールマンの脇の間をすり抜けて、間一髪避けたハクト。

 再びモールマンと対峙すると、オナキギャワが外に向かって信号弾を打ち上げたところだった。



「ハクトくん、キミはここから逃げるんだ!」


「駄目ですよ!まだ怪我が治っただけで、戦える身体じゃないんです!」


 太刀を構えるオナキギャワだが、まだ力が入らないのか切先は震えている。

 それを見たモールマンは、鼻で笑った。



「ハッ!地上の連中にやられるような雑魚に、本気出すわけねーだろ。食う価値も無い奴は、さっさと死ね」


 大きく開いた手のひらが、オナキギャワの顔を掴もうとしている。

 伸びてきた腕を、峰打ちで叩き落とすオナキギャワ。

 しかし岩を打った事で、その反動からか太刀を落としてしまう。



「うぅ・・・」


「オナキギャワさん!」


 オナキギャワはフラッと倒れそうになると、そこをモールマンが前に出た。

 両手で肩を掴むモールマン。



「うわあぁぁぁ!!」


 服が焼け落ち、その下の肉が焼ける臭いが部屋に充満する。



「やめろ!」


 ハクトは水魔法をモールマンとオナキギャワ目掛けて放つと、部屋中に水蒸気が発生してしまった。



「しまった!」


 視界が悪くなった部屋の中で、モールマンはオナキギャワを捨てハクトへと近付いていく。



「捕まえたぁ!アレ?」


「誰が捕まるか!」


 ハクトは部屋の中の音を聞き、モールマンが何処に居るのかを把握していた。

 自分の後ろから近付いてきている事に気が付くと、彼は咄嗟に前へと大きく出ていた。



「仕方ない。こんな手は使いたくなかったが」


 水蒸気が部屋の窓から抜けていった頃、ハクトは見てしまった。

 オナキギャワの首を掴み、持ち上げているモールマンを。



「このままへし折られたくなかったら、お前から近付いてこい」


「ひ、卑怯な!」


「卑怯で結構。全ては勝てば良い。負ければただの肉と化すだけだ」


 力を込めるモールマン。

 オナキギャワの首から、聞こえてはいけないような音が聞こえてくる。



「来ないなら仕方ない。コイツを殺して次へ行くとしよう」


「え?」


 次へ行くという言葉に反応するハクト。

 何が狙いなのか、サッパリ分からなかった。



「お前は魅力的だが、別にお前だけが狙いではない。こんな所で時間をかけていられないのでな」


「何が狙いだ!」


「馬鹿か?言うわけが無いだろう」


 モールマンの腕に、より大きな力が入る。

 オナキギャワの顔が、赤から青くなってきた。



「仲間に見捨てられたな。死ね」


 モールマンがトドメだと力を込めた。



「お前が死ねえぇぇ!!」


 モールマンは背中からおもいきり蹴り飛ばされて、部屋の中央へと飛んでいった。

 誰かが窓から飛んできたのだ。



「だ、誰だ!?」


「その手を放せっつーんだよ!」


 太刀を腕の岩の隙間に突き刺すと、モールマンはオナキギャワを掴んでいた手を放した。



「と、トキドさん!」








 トキドは信号弾が上がった地点へ、国江を最速で飛ばした。

 まだ飛ばした地点から、煙が残っている。

 急ぎ煙の下を辿っていくと、そこにはモールマンが背中を向けて、ハクトと対峙している姿が見えた。

 そしてそのモールマンの手には、誰かが首を掴まれているのを確認する。

 彼はそれを見て、後先考えずに勢いよく窓から飛び込んでいった。



「その手を放せっつーんだよ!」


 前のめりに倒れたモールマンに剣を突き刺し、手を放した事を確認する。



「ん?オナキギャワ?」


「た、助かりました・・・」


 ハクトに引きずり出されると、オナキギャワは彼の背後へと回る。

 トキドはそれを見ていると、モールマンに足を払われた。



「うおっ!?」


「前後を挟まれたか・・・。ならば!」


 床に手を当てるモールマン。

 すると床がオレンジ色へと変色して、溶けていく。



「アチッ!」


「さらばだ」


 モールマンは床を熱で溶かして、下の階へと逃げていった。

 トキドはそれを見て、すぐに溶けた場所へと飛び込もうとする。

 だがその直前になり、ハクトにモールマンの事を尋ねた。



「っと!行く前に、奴の狙いは何だって言ってた?」


「分かりません。ただ、狙いは僕だけじゃないみたいな事を、言ってました。それと時間を掛けていられないとも」


 考えるトキド。

 だが無駄だと判断し、すぐに穴へと飛び込んでいった。



「お前達は外へ避難しろ。出来れば、怪我人を全員連れてな」


 去り際にそう言っていくと、すぐに何処かへ行ってしまった。



「歩けますか?」


「もう大丈夫だ」


 頭に血が上ったからか、彼はしっかりと立っていた。

 走れはしないものの、歩く事に問題は無いないと言い、辺りを見回してから部屋を出ていく。



「何処へ逃げるんだ?」


「上に行きましょう。さっきモールマンは、下に行きました。見た感じ翼は生えていなかったし、多分空から来たんじゃないと思うんです」


「なるほど。だが、上に逃げた後は?」


 考え込むハクト。

 助けが来なければ、上に行っても時間稼ぎにしかならない。

 トキドという救援は来たが、彼以外は見当たらない。


 どうするのか迷った結果、仲間を信じる事にした。



「とにかく上へ行きましょう。トキドさんが来てくれたんです。他にもこっちに向かってくれていると思うんです。僕達は上の階の怪我人をまとめて、最上階へ避難しましょう」








「し、城が燃えてる!?」


 下の階から所々、火の手が見える。

 そして城の近くに来ると、人の焼ける臭いが外まで漂っていた。



「マルテ殿は水魔法が使えたでござるな?」


「えぇ」


「ならば拙者と一緒に、城の周りを飛ぶでござる」


「だったら、火の手が強い場所へ向かってくれる?一気に消火するわ」


「承知したでござる」


 慶次は下降していくと、火の手が強い場所へとトライクを向けた。



「何か来るわよ!?」


 水魔法で消火しているマルテが、城の中から人影が飛び出してくるのを見た。

 その瞬間、何かがフライトライクへと飛びついてくる。



「ぬおっ!?落ちる!」


 飛びついてきた何かに、トライクから振り落とされる慶次。

 マルテもその後に来た何かに飛びつかれ、同じように下へと落とされていた。



「この!」


 掌底で飛びかかってきたモノを弾くと、それが淡い黄色をしたモールマンだと気付く。



「初めて見る色でござるな」


「ククッ!当たりを引いた」


 爪をこちらへ向けると、その先から電撃が飛んでくる。

 慶次は慌てて飛び退くと、マルテが鮮やかな水色の岩で覆われたモールマンに、マウントポジションを取られている事に気付いた。

 動かないマルテを見て、慶次は慌てて槍を伸ばす。



「おっと!」


 槍は簡単に弾かれてしまったが、マルテの顔が見えた。

 まだ食われてはいないが、もうそれは間近に迫っている。



「魔族を食べるのは初めてだ。いただきます」


 大きな口を開ける水色モールマン。

 慶次はそれを邪魔しようとするが、レモン色のモールマンが邪魔をしてくる。



「マルテ殿!」


 口がマルテの頭を齧ろうかという時だった。

 空から大きな影が降ってきた。



「お逝きなさい」


 太田がバルディッシュを全力で頭目掛けて振り下ろすと、モールマンの岩をも砕き、そのまま左右真っ二つになった。



「う、う〜ん」


「気を失っていただけみたいですね」


「太田殿!」


 慶次がホッとするのも束の間、すぐに目の前のレモン色モールマンへと意識を切り替えた。

 だがモールマンは、何も言わずに背を向けて走り始める。



「に、逃げた!?」


 思わぬ行動に唖然とする慶次だったが、マルテと太田と分かれるのは得策ではないと考え、追うのを踏み留まる。



「おーい!」


 上から降りてくる太田のトライク。

 しかし、乗っている二人はそれどころじゃなかった。









「馬鹿野郎!お前のトライク大き過ぎて、僕じゃ運転出来ないんだぞ!」


「マジで勘弁して下さいよ!いきなり飛び降りるから、コレも落ちていくし。墜落するかと思ったわ」


 タケシの協力でなんとかなったが、危うく落ちて死ぬかと思った。

 タケシの奴は怪我がすぐに治るんだろうけど、僕はそうもいかんぞ。

 兄と交代すれば死にはしなかったとは思う。

 それでも無傷とはいかなかっただろう。



「すいません。マルテ殿の危機が目に入ってしまい、飛び降りてしまいました」


「う、うん。分かれば良い」


「俺も。むしろマルテを助けてくれて、サンキュー」


 落ち込む太田に、僕達はこれ以上文句は言えなかった。

 現に太田が飛び降りなければ、マルテは食われていただろうし。

 でも、せめて言ってから飛び降りてほしかったな。



「しかし魔王様」


「分かってる」


 太田が視線を向けたのは、オーサコ城である。

 下の階から燃えていて、段々と黒い煙が上がっていた。

 もう少し遅かったら、信号弾ではなく黒い煙で異変に気付いていただろう。


 これで分かった。

 信号弾は、モールマンに襲われている事を示唆していた。



「魔王様、マルテ殿が倒れた今、消火出来るのは魔王様しか居ないでござる」


「そうだね。そしたら僕が、トライクに乗りながら消火しよう」


 魔法を使うだけなら、人形でも問題無い。

 この状態を見る限り、兄にトライクを運転してもらい、僕が消火に専念するのがベストだろう。



【久しぶりに俺の出番か】


 敵の位置も僕より察知出来てるし、期待してるよ。



「我々はどうしますか?」


「そうだなぁ。というより、トキドとタツザマとベティはどうしたんだ?」


 先に行ったはずなのに、三人の姿が見当たらない。

 もしかして、他で交戦中か?



「ま、魔王様!」


 再び城の中から、何かが飛び出してきた。







「クソッ!何だこの馬鹿力は!拙者では到底・・・皆!あ、太田殿!このモールマンの相手を代わってはくれぬか!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ