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騙し騙され?

 騎士と言っても多種多様なのかな。

 元々字のままで捉えるなら、本来は騎乗して戦う者という意味になる。

 タツザマは騎馬に乗って戦っているし、トキドなんかはワイバーンに乗っている。

 オケツやウケフジ達も騎馬には乗れるので、騎士と呼べるだろう。


 だけど、今回話に聞いたヌオチョモはどうなんだろう?

 まず騎士と呼ばれる人の主な武器は、やはり剣と槍だ。

 しかし彼は、拳銃だというではないか。

 もしかしたら拳銃ではなくて、ライフル系の武器の可能性もあるけど、それでも一つ気になる点がある。

 馬の背中に乗っていると、どうしても上下に動いてしまう。

 彼はそんな中で、拳銃を持って狙いを定められるのか?

 もしそれが可能なら、ヌオチョモという男は天才の部類に入るだろう。

 ウチに居る水嶋っていう爺さんなら、簡単にやってのけるけど、アレは能力だからね。

 彼と比べてはいけない。


 しかし、何故拳銃なんだろう?

 剣とか槍じゃ駄目なのか?

 騎士王国の人間というと、オケツや帝は変わり者のイメージだけど、ヌオチョモという男。

 彼もかなり興味深い部類に入る。

 場合によっては、お友達になりたい人かもしれないな。








 やっぱり無い無い。

 あったらおかしいもん。

 というか、売ってる理由が分からない。



【おい】


 普通に考えたら、その辺に落ちてるゴミと変わらないからね。



【おい、現実逃避するな】


 何が?



【あるってよ】


 いやそんなまさか。

 あるわけが



「あるの!?」


「うーん、少し形が違うから、もしかしたら別物かもしれないけど」


 彼が取り出してきたのは、ちょっと高いお菓子とか入っていそうな、綺麗な箱だ。

 しかし中は別物。

 ガラクタと思われるような物が、バラバラに入れられている。



「この箱は?」


「お菓子の箱だよ。娘が色々な所で、気に入った物を拾ってくるんだ」


「売り物なんでしょ?娘さんに許可は?」


「あの子も商売上手だからねぇ。この中の物が売れたら、お小遣いをあげるんだよ」


 なるほど。

 遊びを兼ねた、目利きの勉強って感じかな。

 娘が拾ってきた物が価値のある物なのか、見極めているんだろう。



「えーとね、コレかな?」


 箱の中を見ながら、色々と避けていくと僕が手渡した物と似たような物が姿を現す。



「確かに似てるでござるな」


「あの小さな石、何なんですか?」


 慶次達も店員が取り出した物を見ているが、秀吉だけはそれが何なのか理解していない。



「ちょっと持ってみても?」


「どうぞ」


 僕がそれに触れてみたが、特に何かを感じる事は無い。

 やはり偽物?



【あ、コレは俺の魂の欠片だわ。力を感じるぞ】


 は?



【何で売り物にされてるのか分からないけど、こんな簡単に手に入って、ラッキーだったな】


 意味が分からない!

 魂の欠片が売ってるとか、意味が分からない!



「コレ下さい」


「毎度ありがとうございます!」


 悲しいかな。

 クリスタルやオリハルコンと比べ、兄の魂の欠片は銅貨五枚だった。








 欲しい物も手に入り、僕としてはもう満足のヌオチョモ領。

 もうヌオチョモに会ったら、すぐに出発しても良いかなと思えた。



「ところで、何故他の店は閉まっているのかな?」


 秀吉が突然、街の様子に関しての質問を始める。

 確かに疑問だな。

 クリスタルやらオリハルコン、果ては魂の欠片まで売ってるような街だ。

 普通であれば、もっと活気があってもおかしくないのに。



「お客さん、外から来たんだよね?だったら分かるでしょ」


「モールマンの事ですか」


 太田が店員の問いに答えると、彼は無言で頷く。

 その顔はモールマンに対して、かなり忌々しく思っているようだ。



「お客さん達は傭兵や冒険者を雇わず、旅をしているくらいだ。強いんだろうね。でも、普通の人は違う。誰かを雇わないと外へ旅に出られないから」


「モールマンのせいで、外からのお客さんが激減したと?」


「お客だけじゃないさ。商人だって同じだよ。だから外からの仕入れが、一切無くなってしまったのさ。見てみなよ。休業中のお店は、大半が輸入物を取り扱うお店だから」


 なるほど。

 そういう事だったのか。



 ヌオチョモは外から、色々な物を仕入れていた。

 それを特産品として、騎士王国内でも独自の路線を行っていたんだろう。

 彼が他の騎士から攻撃を受けないのは、倒して自領に組み込むよりも、取引相手としての価値の方が大きいからかもしれないな。


 だけど今は、こんなご時世だ。

 売る物も無ければ、買う人も来ない。

 大半の店はそんな状況で、この店以外にやっているのは、ほとんどが飲食店だった。



「ちなみに飲食店もね、メニューは限られるよ。王国から入ってこないから」


 ここでも王国の野菜とか扱ってるのか。

 とは言っても、普段扱わないような野菜が入ってこないだけで、大半は何とかなるみたいだけど。

 それでもメニュー数を減らしたり、少しずつ野菜を減らしたりしてるみたいだ。



「ありがとう。色々助かったよ」


「毎度あり!今後も私の街をよろしくね」









 さて、買い物も終わったし、そろそろヌオチョモに会いに行くとするか。



「ヌオチョモの屋敷って、何処なんだろう?」


「それはやはり、街の中心地ではないでしょうか?」


 太田が言うには中心だというけど、この街ごちゃごちゃしていて、中心地が何処か分からない。

 中心地への行き方も同様だ。

 こうやって考えると、他の領地は城があるから分かりやすいな。

 領主が何処に居るのか分からないという意味では、敵も混乱するかも。



「街の人に聞いてみようか」


 ハクトが声を掛ければ、女性ならすぐに教えてくれる。

 はずだったのだが、アテが外れた。

 歩いてる人が居ない・・・。



「仕方ないですね。このまま奥へ進んでみましょう」


「そうでござるな。このまま人が来るか待っていても、仕方ないでござる」


 しかし奥は、裏通りのようになっている。

 更に人通りも少なくなりそうだ。

 しかも昼間なのに少し暗いし、あまり良い印象ではない。



「マルとタマは、太田の肩に乗りなさい」


「うわあ!高〜い!」


「凄〜い!」


 うむ、やはり子供には肩車が一番だな。

 僕達が見えない所で、悪い奴に連れ去られたりしても困るし。

 手を繋ぐにしても、太田だと手が届かない。

 僕やハクトが手を繋ぐという手もあるけど、それはそれで変な輩が絡んできそうだ。

 だったら確実に絡んでこない、太田を押し出した方が良い。


 と思っていたのだが、いきなり変な奴に出くわしてしまう。



「オイオイオイ、何やってんだこんな所で」


 曲がり角を曲がった瞬間、ナイフを片手にした男が立っていたのだ。

 しかもその目は赤く、少し興奮しているのか涙目である。



「ここの領主に会いに行きたいのだが?」


「ああん!?」


 下から上へ見上げるように見てくる輩。

 値踏みされてるようで、軽くイラっとする。



「こ、怖い!」


 タマが男の様子を見て怯え始める。

 太田の額に青筋が立っているが、両手はマルとタマで埋まっているので、手は出さないはず。

 慶次も向こうから手を出してこない限り、攻撃はしないようだ。



「ちょっと待ってろ!」


「いや、お前の都合なんか知らんから」


「少し待てって言ってんだろ!」


 持っているナイフを見せてくると、慶次が構えた。

 すると彼は、僕達を置き去りにしてちょっと小走りに行ってしまう。



「な、仲間を呼びに行ったのかな?」


 ハクトの言う通り、ギャングか何かの仲間を呼びに行ったのかもしれない。

 しかし、僕達の考えは杞憂に終わった。



「今終わらせるから、ちょっと待ってろ。ぬおぉぉぉ!!」


「は、速い!」


 奴は持ってきたまな板の上の玉ねぎを、高速で切り始める。

 どうやらみじん切りのようだ。



「ほあちゃあ!店長、みじん切り終わったっす!ちょっと俺、道案内してくるんで。休憩入りまーす」








 ごめんなさい。

 本当にごめんなさい。

 人は見かけによらないとは言うけど、ここまでそれに当てはまる人も少なくないと思う。



「さて、待たせたな」


「う、うん。本当にありがとうね」


「拙者、コレをあげるでござる」


「私もコレを」


「だったらワタクシも」


 皆、僕と同じ事を想像していたんだろう。

 バツが悪そうな顔をして、飴やちょっとしたお菓子を、男にあげている。



「休憩なんだろ?甘い物を食べると、疲れが取れるって言うからさ」


「アンタ達、良い人だな!」


 それはこちらのセリフです。

 危ない人どころか、こんな親切な人はそうそう居ませんよ。



「いや〜、ヌオチョモ領に人が来るのも久しぶりだけど、魔族に会うのも久しぶりだからな」


「何でこんなに優しいの?」


 マルの質問は、僕達全員が頷いた。

 普通は知らない人の為に、休憩時間を使ってまで案内しないだろう。

 なのに彼はそれをしている。



「うーん、こんな時だから?」


「どういう意味?」


「今って、モールマンとかいう奴等のせいで、街全体が暗いだろ?外から人が来るのも久しぶりだけど、せっかく来たのにヌオチョモ領がつまらない場所って、思われたくないじゃん」


「それだけ!?」


「店が開いてなくて残念かもしれないけどさ、こんな人が居たなって思い出してもらえれば、ヌオチョモ領って悪い場所じゃなかったって思うでしょ?」


 泣いた。

 何という心の持ち主。

 見た目がコワモテで損してるけど、めちゃくちゃ良い人だ。

 フランケンシュタインも真っ青だぞ。



「お兄さん!後で絶対に、お兄さんの店に食べに行くからね!」


「オウ!ありがとうな。ちなみにここが、領主様の屋敷だ」


 彼の話を聞いていたら、すんなり着いてしまった。

 彼は案内を終えると、すぐに小走りで店に戻っていく。



「あんな人居るんだね」


「しかもあんな裏通りなのに、変な輩に会わなかったでござるな」


「もしかしてワタクシ達の勘違いで、治安がよろしいのではないでしょうか?」


「あり得ますね。あんな良心の塊、悪人の中に囲まれていたらカモですよ」


 皆の話を聞く限り、本当にそんな感じがした。

 普通ならこういうデカイ街になると、貧富の差が出てくる。

 そうなるとやはり治安が悪くなるのだが、意外とそうではないのかもしれない。



「そういえばいきなり訪ねちゃったけど、アポとか必要かな?」


「商人気質なら、もしかしたら必要かもしれないね」


「どうでしょう。領地に来る客人も少なそうですし、意外と大丈夫なのでは?」


「それもそうか。じゃあ秀吉、よろしく」


「え?」


 初対面の者が訪ねてくるより、やはり知人であった方が会える確率は上がると思うんだ。

 だからここは、秀吉が来た事にしよう。



「しかしタツザマ殿の書状もあるのなら、関係無い気もするんですけど」


「分からんよ。タツザマとヌオチョモじゃあ、性格が大きく違うし。タツザマの紹介より、自分の知り合いの方を優先しそうじゃない?」


「はあ・・・まあ良いんですけどね」


 納得したような、していないような顔をする秀吉。


 彼が屋敷の扉を大きく叩くと、中から使用人らしき人物が出てくる。



「どちら様でしょうか?」


「いきなり訪ねてきて、申し訳ありません。私は長浜国から参りました、長浜国前領主の木下と申します。ヌオチョモ殿にお会いしたいのですが」


「長浜の!?少々お待ち下さい!」


 やっぱり秀吉が出て正解だったわ。

 使用人が慌てて中へ入っていったもん。

 これが僕なら、何だこのガキ?みたいな感じで、対応が遅かったかもね。


 そんな事思ってたら、すぐに戻ってきた。



「ど、どうぞこちらへおあがり下さい」


「ありがとうございます」


 秀吉を先頭に、僕達が後ろに続くと、離れに案内された。

 しばらくすると、扉をノックする音が聞こえる。



「どうぞ」


「木下様、お久しぶりでございます」


 中に入ってきたのは、口は老人っぽいが見た目は若い男性だ。

 というか、この人・・・。



「私達は、まんまとやられたみたいですね」


「ハッハッハ!騙したわけではありませんぞ。先程は良い商売が出来たでしょう?」









「さっきの店員さんだよね?えっと、もしかして貴方がヌオチョモさん?」

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