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森での生活

「さてと、練習しながら何処か向かうとしようか」


【何処かって何処行くんだ?】


「特に決めてない・・・。とりあえず食の確保が出来そうな所が良いね」


【それなら目の前の川に魚が見えたと思ったけど。この辺を拠点にして、何か他に食べられる物を探しに行かないか?】


「そうだね。じゃあその辺の木に果物が生ってないか探しながら、魔法の練習だ!」



 二人で話し合いながら僕は左手で枝を拾い、創造魔法の練習をする。

 さっきは鍋を作ったからなぁ。

 今度はメシの時に使える物にしよう。

 そんな事を考えながら発動した魔法は、左手に箸を作っていた。



【なぁ、思ったんだけどさぁ、魔法を二人同時で発動って出来るのかな?】


 兄さんが突拍子もない事を言い出した。

 確かに気になる!

 これが出来ると、作れるスピードも上がりそうだ。

 それに一人が行動に専念しながら、もう一人が魔法を発動させる事も出来るだろう。

 しかしとんでもない事を思いつくものなぁ。



「身体はバラバラに動かせるし、頭の中で二人同時に物事を考えてるよね。多分出来るんじゃない?」


【何か簡単な物を同時に考えてみよう。例えばお前は左手で何かを。俺は右手で作るとかね】


「面白いね!じゃあ鍋に使うおたまと、皿でも作ろうか?左手を地面に触れるから、兄さんは右手で木に触ってよ」


【OK!よーし!やってみよう!】



 僕達はそれぞれの創造をしてみた。

 結果、いとも簡単に完成。

 まずおたまを見回したが、特に作りが悪いとかも無かった。

 むしろ出来るかなって安易な考えで、おたまの柄の部分を木材に変更してみたが、上手くいったようだ。

 結構な力作である。

 対して皿の方だけど、これも普通に出来ていた。

 自分で想像したわけではないので、思ったより大きいなとは感じたけど。

 出来自体は悪くないんじゃないかな。


【案外上手くいくもんだな!この調子で練習しようぜ!】


「ちょっと試したい事があるから代わろう。兄さんは果物探ししてて」


 目の前の草むらに手をかざし、草で編んだ鞄を創った後に彼は自ら入れ替わった。





「じゃあ森の中に入って探してみるわ。お前も気付いたら教えてくれよ」


 危険な動物が居ないか、周りを見渡しながらゆっくり歩いていく。

 5分もしないうちに第一果物?発見!

 形は果物っぽいのだが、色がなぁ。

 赤とか黄色、オレンジならまだ分かるんだけど、真っ青なんだが・・・。

 まだ熟してないのかと思ったりもしたけど、良い香りがするので捥いでみる。

 せっかくなので、鞄の中に入れておこう・・・ってなんじゃこりゃぁ!!


「おい!知らぬ間に鞄の中にナイフとかフォーク、包丁まで入ってるじゃないか!こんなのいつ作ったんだ?」


(あー、それね。試しに地面とか木に触れないで出来るか試したんだよ。歩きながらこっちで勝手に作ったんだけど、気付かないもんだね)


 いきなり鞄に入ってるから、ちょっとした手品にでも引っ掛かった気分だよ。

 しかし直接手も触れずに作れるのか。

 コイツ、よくこんな事思いつくな。


「お前が作ってる間に青い果物見つけたぞ。まあ見てたと思うけど」


(見てたけど食べられるのかな?毒味・・・って、自分の身体でもあるんだった。一口食べてみようよ)


「まあ匂いを嗅ぐ限り、いきなり死ぬとかは無いだろ。最悪は一日中腹痛ってところかな」


 そう言って思い切って口にしてみた。

 敢えて言おう!

 めちゃめちゃ美味いと!!


「美味いな!色と違って瑞々しいぞ!柑橘系の見た目なのに、味は梨に似てるのかな?」


(これは当たりだね!何個か持って帰ろう)


 その後も散策を続けた結果、数種類の果物を見つける事が出来た。

 美味そうに見えて、食べたら苦かったり酸っぱかったりといくつか外れもあったが、食べられる物が見つかっただけでも助かったと思う。

 果物を入れた鞄を持って、再び川に戻る事にした。


 川に戻った俺達は果物を齧りながら、魚釣りへと興じた。

 釣りなんて、子供の頃にお父さん達とキャンプに行って以来かな?


(こうやってマッタリと釣りをしていると、太公望って感じがする)


 弟は弟で、違う感想を持ってるようだ。



 夕方になり、釣った魚を串に刺して焼いてみた。

 鮎と似たような気持ちで口にしたが、むしろ秋刀魚に似た味で普通に美味い!

 これは刺身でもイケるのか?

 大学生活で二人暮らしをしてたおかげで、魚を捌くくらいは俺でも出来るしね。

 時代は便利なもので、スマホを横に置いてネット動画を参考にしただけで、ある程度は出来ちゃうから。


「さっき作った包丁もあるし、まな板作って刺身でも作ってみるか?」


(おぉ!ナイスアイディア!)


 俺は魚を捌いて、皿には盛らずにそのまま食べてみた。

 うん!美味い!

 が、やはり刺身と言ったら醤油。

 新鮮だしそのままでも美味しいとは思うが、日本人としては刺身には醤油が欲しいなぁ。



 その後食事を終えた俺達は、川の近くで一番大きい木を探し、魔法でログハウスを想像し作ってみた。

 しかし構造が正しく分かってなかったのか、思っていたのとは違う。

 なんというか、掘っ立て小屋?

 俺の想像力の問題か?


(僕が作るよ。と言っても、僕もログハウスの作り方を詳しくは知らないんだけどね)


 そう言って目の前の掘っ立て小屋を、再び作り変えていた。

 ほう・・・。流石だな。

 俺が作ったのより、はるかにログハウスっぽいぞ。

 早速、中に入ってみよう。

 入口の扉を開けようとした瞬間・・・



 ギ、ギイィィィ!バターーーーーン!!!!



 ログハウス・・・では無いな。

 ログハウスもどきは倒壊した。


「あっぶねー!入る前で良かったわ」


(やっぱりちゃんとした物は作れないか・・・。仕方ないからこっちにするよ)


 再び倒壊した元ログハウスもどきを、今度は簡素な物へと作り変える。

 あぁ、コレなら俺も作れる。

 完成したのは、大きな犬小屋だった・・・。


「もう寝るだけならこれでも良いか」


 小屋の中で草と木で作ったベッドを準備し、記念すべき異世界生活初日を終えた。



 翌日も朝から同じように、果物と魚を取って生活。

 やっている事がテレビで見た無人島生活に近いなと思ったが、こっちは本物のサバイバル。

 危険な野生動物も棲息していて、気が抜けない。

 何度か大きな肉食獣みたいな動物や、ウサギのような姿の草食系の動物もちらほら見かけた。

 草食動物だと思って近付くと、牙をむき出しで威嚇してきた動物も居たり・・・。

 日本の常識にとらわれると、命の危険もある。


 そして魔法の方も、練習として時間短縮と完成度を高めていた。

 初日と比べるとかなり早く完成するようになってきている。

 やはり想像力の問題か、俺の場合はバットを作る場合はすぐに完成するが、他の物だとやはり時間がかかってしまう。

 弟が作る場合は、少し完成まで時間が掛かるが完成度は高い。

 日用品は確実に弟の作った物の方が使い勝手が良かった。

 数を作る以外のもっと効率的な練習方法が分かればいいんだけどなぁ。



 そんな生活を一週間ほど過ごしていたが、俺達にとうとうある限界が近づいていた。

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