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帝とオケツ

 良いコンビ?

 ウマが合わない?

 上の階と地下を捜索する為に、兄と交代したんだけれど、兄は秀吉と組む事になったんだよね。

 僕としては、冷静な秀吉と組んだ方が兄は動けるかなと思ってたんだけど。

 なんか少し違うかもなんて、後になってから気付いてしまった。


 兄と秀吉が話したりする事は、過去にもあった。

 だけど二人きりとなると、今までの経験上無かったみたいだね。

 ただ、兄が権六と組んでいたとしたら、僕の中では太田と変わらない気がしたんだ。

 権六は控えめな性格だから、兄の言う事をハイハイ聞いちゃうだろうし。

 勢いだけで後先考えない兄の行動に、権六だとそれは違うとは言えなかったと思う。


 じゃあオケツと組んでたらどうなの?

 そうなると前にも言った通り、残った方は羽柴秀吉と柴田勝家でしょ。

 いや〜、僕の中ではこの二人が組むのは、何か起こりそうで怖かった。

 個人的な感想だけど、喧嘩とかしたら嫌だなあって思っちゃいました。

 そしたら、オケツと権六が微妙な感じになってるのかな?

 慌てた様子の電話が、掛かってきたみたいだけど。







 帝が死んだ?

 オケツの声からすると、そういう事だよな。

 その話を横で聞いていたメイドさんも、顔が青ざめている。

 しかし、電話の話だけだとよく分からないな。



「冷静になれ。お前は帝が死んでるのを、確認したんだな?」


「だって帝の服を着た男が、首斬られてるんだ!もう・・・」


「そうか」


 帝、殺されてしまったのか。

 俺達の作戦が悪かったのかもしれないな。

 包囲なんかしないで、隠密行動で助け出していれば。



「それ、本当に本人ですか?」


「え?」


「首は確認しましたか?」


「だって服は帝の物だって言ってるし」


「影武者の可能性もありますよね」


 あ・・・。

 やっぱり秀吉は冷静だなぁ。

 俺が悲しんでいる間にも、秀吉は違う可能性を考えていたんだから。



(いや、それはまず疑うべき点だよ。特に帝みたいな偉い人ならね)


 あーあー、何も聞こえない〜。



(コイツは・・・まあ良いや。僕が何か言わなくても、秀吉が代わりに言ってくれそうだし)


 クソー、ちょっと頭良いからってそういう事ばかり言って。

 兄とは違うのだよ!って、言いたいのかね。



「それで、どうなんです?」


「・・・」


 電話の先は無言だ。

 権六もオケツも反応が無い。



「おかしいですね。首が無いです」


「権六、オケツの様子はどうだ?」


「ちょっと冷静になってますが、やっぱり首が無いと言って泣きそうです」


 泣くのかよ!

 この二人、そんなに仲良かったのか?



「考えられるのは何点かありますね。一つは、ハッシマーに首を持ち帰った。もう一つは、帝が死んだ事を私達に見せる為に外へ持ち出した」


「他にもまだあるのか?」


「最後に、帝の死を偽装した。という可能性もあります」


 死を偽装する?

 何の為に、そんな事をする必要があるんだ?



「待ってくれ!その偽装、誰が何の為に!?」


「オケツ殿、落ち着いて下さい。その場合、二つの視点が考えられます」


「二つの視点?どういう意味だ?」


「一つは、私達を欺く為。そしてもう一つは、帝国軍を欺く為」


 はー、話聞いてもサッパリ分からん。

 俺達を欺くのと、帝国を欺く?

 死んだフリをして、どうするってんだ。



「私達を欺きたいのは、帝が死んでいる事で私達に帝が利用出来ないと思わせる為です。しかも御所に踏み込んだ私達に、その罪をなすりつける事も出来ます」


「おおう!それはヤバいな。これはむしろ、俺達がハメられた可能性があるって事か」


「だからか!ここに帝国兵は少なかったんだ」


 その通りだと頷く秀吉。

 オケツ達も、今の状況がそれに当てはまると分かっているらしい。



「もう一つは?」


「そっちはもっと簡単です。帝国軍に死んだと見せかけて、帝が逃げる為ですよ」


「それだ!そっちにしよう!」


「そっちにしようって、別に私達が選べるわけじゃないですよ」


「あ、そうか」


 とにかく、首が見つからない事には帝の死は確定じゃない。

 俺達はそれが分かっただけで、まだ負けていないはずだ。



「俺達も上に移動した方が良いかな?」


「そうですね。下にはいらっしゃらないようですし、合流するのが得策だと思います」


「ま、待って下さい!」


 俺達が部屋の外の様子を伺っていると、メイドのメイドさんが呼び止めてきた。

 一緒に連れて行けって話かな?

 綺麗なメイドさんなら、エブリバディカモーン!



「わ、私の予想だと上には居ないと思います」


「は?」


「帝様が生きておられるのであれば、まだこの地下にいらっしゃると思います」


 ちょ、ちょっと予想外の話で、俺の頭がこんがらがってきたよ。

 秀吉も興味深く聞いているけど、どういう意味だろう。



「どうしてそう思うんですか?」


「帝様の死体だと思われる者が、発見されたんですよね?私と一緒に逃げ出して、私をここに隠して上に行きました。それは他の帝国兵も見ています」


「だったら尚更」


「だからです。あの方はわざと上に人を集中させて、この地下に隠れていると思われます」


 裏をかいて、また下に戻ったって事かな。

 でもそうなると、俺は気になる点がある。



「それじゃあ、発見された帝は?」


「私の予想ですけど、帝国兵の誰かではないでしょうか?」


「なるほど。殺した帝国兵に自分の服を着せて、首を刎ねた。そうすれば、帝は死んだ事になる。なかなか頭のキレる方ですね」


「秀吉が褒めるほどか。帝って凄いんだな」


「そうです!帝様は、こんな所でお亡くなりになるはずがありません!」


 メイドさんが急に興奮してきた。

 余程信頼しているようだ。

 というか、帝の力を知っているからこそ、そう考えられたのか?



「もしメイドさんの言う通りであれば、帝は帝国兵に紛れている。という事になりますね」


「そ、そうです。あの方の事だから、一番上から一番下に降りて、何食わぬ顔で帝国兵と一緒に居ると思うんです」


 す、凄い奴だな。

 その話を聞くと、自分を殺そうとしているかもしれない奴等の中に、自分一人だけ紛れているようなもんだぞ。

 誰か強い護衛でも居るならまだ分かるけど、一人でっていうのが考えられんな。



「もう一度、上と連絡を取りましょう。オケツ殿にも相談した方が良いかと」






「というわけなんだが。オケツはこの話を聞いて、どう思う?」


「・・・めちゃくちゃあり得る。むしろ帝国兵側から泣いている私達を見て、笑ってそうな気がしてきた」


 なんだその感想。

 帝の性格が悪いにも程があるぞ。



「オケツ殿もメイドさんと同じ考えだという事は、その可能性は高いというわけですね」


「だったら俺達は、予定通りに地下三階に向かった方が良さげだな」


「それなら私達は、本当に別人かどうか、死体を調べてみます。オケツ殿なら、帝の特徴を知っておられると思いますし」


「そうだな。権六、頼んだ」


「御意」





 帝は生きている。

 その可能性が高くなった。

 メイドさんを発見したのは、運が良かった。

 彼女が居なければ、オケツは怒りに任せて帝国兵をぶった斬りまくってたかもしれない。

 下手したら、当の本人だって斬り殺してたかもしれないんだからな。

 もしそんな事になっていたら、ボブハガーに続いて帝を失って、オケツの精神は崩壊していただろう。

 ただでさえ、あんなに発狂していたんだから。



「この階段を降りれば、地下三階になります」


 メイドさんの案内で、下へと降りる階段はすぐに見つかった。



 問題は、どうやって帝を見つけ出すかという点だ。

 メイドさんが出てくれば、もしかしたら名乗り出るかもしれない。

 でもそれは、帝国兵の中で自分が帝ですと名乗り出るわけで、ハッキリ言って自殺志願者にしか見えない。

 うーむ、やはり分からんな。

 俺には無理!



「秀吉、どうやって帝を見つけ出す?」


「そうですねえ、それが一番難しいんですよね。特に向こうも、名乗り出れる状況じゃないですし。何かお互いにしか分からない暗号とかあれば、楽なんですけど」


「そんなの初対面の俺達に、あるわけないからな」


「難しいですねえ」


 やはり秀吉でも思いつかないか。

 官兵衛ならもしかしたら・・・。

 電話してみるか。



「どうしました?」


「いやね、こういう事情があって、帝を見つけたいんだけど。どうすれば良いと思う?」


 電話の先でしばらく無言が続く。

 官兵衛でもやっぱり無理か?

 すると、官兵衛から返答が来た。

 どうやら無言だったのは、別の携帯で権六と連絡を取っていたらしい。



「地下三階に降りたら、みっちゃんと言いながら敵を倒して下さい」


「みっちゃん?」


「誰かがキーくんと言って攻撃をしてきたら、その人が帝です」


「意味が分からないんだけど」



 官兵衛が言うには、このみっちゃんとキーくんという呼び名に意味があるという。

 みっちゃんというのは、オケツが帝を私的な場で呼ぶ名前らしい。

 そしてキーくんというのも、帝がオケツに対して呼ぶ時の名前だという。



「これを知っているのは、本人同士と一部の方だけのようです。お二人がそれを知っているとすれば」


「私達はオケツ殿の知り合いだと、帝に気付いてもらえるというわけですね」


「ご名答です」


 素晴らしい。

 これなら俺達が味方だと気付いてもらえるし、向こうも俺達に自分が帝だと伝える方法を思いつくだろう。

 流石は官兵衛だ。



「メイドさん、一応一緒に来てもらえる?メイドさんが俺達に従ってるのが分かれば、向こうも俺達が敵じゃないと、まずは疑ってくれると思うから」


「分かりました」


「ちなみに、帝の特徴って何かある?例えば、頭禿げてるとか」


 騎士王国の連中って、強い奴ほど禿げてるんだろ?

 だったら帝だって、禿げてるんじゃね?



「帝様は毛髪が普通にあります」


 なんだよ、生えてるのか。

 帝国兵の中で禿げてるのを探せば、候補は絞れると思ったのに。



「強いて言えば、背が小さいです」


 分かりづらい特徴だなぁ。

 まあ良い。

 官兵衛のアドバイス通りに、実行するとしよう。






 やはり地下三階には、帝国兵がわんさか待機していた。

 逆に地下二階は手薄で、階段を見つけて降りるまでに、他の帝国兵には見つからなかった。



「来たぞ!」


 階段前で待機していた兵が、廊下の方へ叫んでいる。

 部屋の中からも出てきたが、この廊下で戦おうとしているのか?



「お前達、ここで戦うと自分達が不利って分かってる?」


「何を言って、おぶっ!」


 良いねえ。

 瓦礫を顔面にぶん投げたら、額が割れて倒れた。

 死んだか分からないけど、全く動かなくなったのでしばらくは起きないだろう。



「みっちゃ〜ん!みっちゃ〜ん!出ておいで〜!」


「そんな猫を呼ぶみたいに」


「だって、奥に居る帝国兵にも聞こえないと、俺達の存在が分からないだろ。みっちゃ〜ん!」


 俺がみっちゃんと叫びながら瓦礫を投げていると、盾を持った連中が現れた。

 瓦礫では対応出来ないな。



「吹き飛びなさい」


 風魔法で、廊下の奥まで飛んでいく帝国兵。

 最初から秀吉に任せた方が、早かったんじゃないか?



「その先はちょっとした広間になります。帝の訓練所です」


 メイドさんの言う通り、吹き飛んでいった兵はそこに固まって倒れていた。

 風で飛ばされただけなので、普通にピンピンしている。



「みっちゃ〜ん!親友が呼んでるよ〜」


「オケツ殿は親友なんですか?」


「知らん」


 アイツ、友達少なそうだからな。

 帝が親友でもおかしくない。

 そんな時だった。

 俺達に、一人の兵が斬り掛かってきたのは。






「何者だ、貴様等!訳の分からない事を騒ぎやがって。この俺が帝国の誇りとキーくんに賭けて、貴様に鉄槌を下す。覚悟しろ!」

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