表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
495/1299

vsボブハガー

 ボブハガーがオケツに話を振ったんだけど、意外と他の人を見ているんだな。

 歳上との関わりが苦手だと言う割には、誰が誰と仲が良いとか、悪い噂を聞いているとか、細かい情報を知っていた。

 関わりたくないからこその、人間観察なのかもしれない。


 でも、ボブハガーはやっぱり怖い。

 ちょっと言い渋っただけで、激怒してきた。

 ジヴァが来てどうすれば良いかって、そんなの僕でも分かるって。

 顔見せて無事だと教えれば、向こうはすぐに手を引くというのに。

 怒ってばかりで、自分で考えるのをやめてるんじゃないの?

 まあ本人には、絶対に言えないけどね。


 そんな考えをしていたのが悪かったのか?

 官兵衛の凄さを見せつけたところ、官兵衛を借り受けたいと言ってきた。

 ハッキリ言ってお断りだ。

 僕達の仲間だからというのもあるが、それ以前に彼等が傭兵である官兵衛をどうするか分からないからだ。

 それこそちょっと予想が外れただけで、いきなり斬られる可能性だってあるわけで。

 そんな奴の下に、官兵衛をやれるわけがない。

 そう言った直後に、拳銃を出してくる始末。

 ボブハガー、自分の思い通りにならないと癇癪を起こすタイプかもしれない。






 僕達の選択肢は、頷くしかないというボブハガー。

 太田が居れば普通に断ったが、ここには長谷部と権六しか居ない。

 まして、僕が魔法を使える事が分かっている彼に、少しでも怪しい素振りを見せれば、その人差し指は動くだろう。



 賭けで土壁を頑丈に作ってみるか?

 しかしそれが貫通されたら、官兵衛は撃たれてしまう。

 官兵衛の命を一か八かの対象にするのは、間違っている。

 やはり確実な方法を取るしかない。


 というわけで、出番ですよ。



【・・・俺か!?】



 他に誰が居るってんだ!

 今回ばかり頭にきた。

 人を物のように借りたいというボブハガーもそうだし、それに反対しなかったオケツもムカつく。

 ジヴァはどんな人か分からないから何とも言えないけど、賛同した時点で同罪。


 だから、本気でやって良い。

 それこそ、実力の差を見せつけるくらいに。



【アイツ、本当に撃ってくるかな?】


 撃ってくる。

 傭兵なんかの命だ。

 味方にならないと分かったら、すぐに始末してくるよ。

 それにここで手伝ってみなよ。

 いつ終わるか分からない戦争に、何処まで付き合うつもり?



【そりゃそうだ。戦争って言ったら、俺達だって帝国の脅威があるからな。そうだった。俺達の目的は、越前国でクリスタルをゲットする事。あわよくば、越前国と協力関係を結ぶ事だったわ】


 分かったなら良い。

 全力でぶっ飛ばせ!



【オーライ!】






「どうした?ワシもいつまでも腕を上げているのは辛いのだ。返事が無ければ、是と受け取って良いな?」


「だから断るって言ってんだろ」


「馬鹿な童だ」


 ボブハガーの腕に力が入った。

 引き金を引くつもりだろう。

 だけど、この距離なら俺には関係無いな。



「何っ!!」


「バーカ。俺がただの魔法使いだと思ったか?」


「お館様!」


 俺は足へと強化を集中して、高速でボブハガーの面前に迫った。

 すぐに腕を掴むと、そのまま力任せに後ろへと張り倒した。



「貴様!」


「俺の姿を目で追えなかった奴が、俺に攻撃が当てられると思ってるのかよ」


「貴様でなくとも良いわ!」


 ジヴァの狙いは官兵衛だ。

 しかしそこに立ちはだかったのは、権六だった。



「どけぃ!デカイの!」


「どきませんよ。貴方、彼に何をするか分かったもんじゃないし」


「クッ!貴様もか!」


「私が力で負けるわけがないでしょう?」


 権六はジヴァのベルトを掴むと、そのままがっぷり四つの状態になった。

 向こうも同じく、権六の服を掴んでいる。

 力比べをしている二人の間で、筋張った腕と骨が軋むような音が聞こえている。

 長谷部はオケツを警戒しつつ、官兵衛から離れない。

 後ろの襖からも来るかもしれないので、その考えは正解だろう。



「小僧、ワシを魔法使いだと謀ったのか?」


「あん?謀った?意味が分からん」


「魔法を使っていたではないか!」


「あー、そうね。俺、魔法も使えて近接戦も出来るの。あーゆーOK?」


 弟と入れ替わりだが、向こうからしたらそんな事分からないし。

 どうせこんなら状況になった段階で、もう会う事も無いだろう。

 嘘だけど嘘じゃないし、別に関係無いかな。



「ふざけた小僧だ。しかし、まだだ!宿れ、獅子よ!」


「え?うおっ!」


 両手で抑えつけている拳銃を持つ手が、段々と力強くなってきた。

 何をしたんだ?

 しかもコレ、ボブハガーだけの事ではないらしい。



「宿れ、巨熊よ!」


「ほう。これが噂に聞く、闘気法というヤツですか」


「ム!ケルメンの騎士でもないのに、よく知っているな」


「私の知り合いも使えるんですよ」


「そうか。闘気法は選ばれた者のみが使える。長年の努力の末に会得する者。そして、天賦の才だけで行使出来る者だ!」


「ぐぬぬ!なかなか強い。太田殿もこれくらい強かったのだろうか?」


 強いと言いつつも、目の前で戦っている者以外の名前を挙げる権六。

 それを聞いたジヴァは、激怒する。



「命のやり取りの最中、他人を考える余裕があると思うな!」


「ぬおおぉ!!」


 腕を締め付けるジヴァは、権六の腕をへし折ろうと関節を極めたまま投げようとした。



「んぎぎ!何故だ!何故動かない!」


「すいません。予想以上に強かったので、ここからは本気で行きます!」


「グアアァァ!!」


 投げようとしていたジヴァの腕を掴むと、権六は逆に関節を極めたまま逆背負い投げを決める。

 左腕が伸びきっているのを見る限り、ジヴァの関節は外れたのだろう。

 同じ柴田の系譜でも、ジヴァでは権六の相手は力不足だったみたいだな。



「よそ見をしている余裕はあるのか?」


「あるよ。現にアンタ、起き上がれないじゃん」


「ジューベー!」


「ははははい!や、宿れ麒麟よ!」



 何だと!

 オケツまで使えるのか!?

 さっきのジヴァの話だと、長年修行した人か天才だけしか使えないって言ってたのに。

 え・・・。

 そうするとコイツ、天才なの?

 って、マジかよ!



「イテッ!」


「お館様!」


「良くやった」



 まさかオケツに吹き飛ばされるとは。

 それよりも驚いたのは、オケツのスピードだ。

 油断してたとはいえ、見失ってしまった。

 気付いた時には、自分が地面に尻もちをしてたし。

 力は相当弱いけど、俺くらいのガキンチョを吹き飛ばすだけなら、弱くても関係無いってか?



「まだやるか?」


「当たり前でしょ。だってまだ本気じゃないし」


「それはこちらとて同じよ」


「どれ、じゃあお試しに」



 俺はいつものように、鉄球でボブハガーの顔面を狙った。

 大半の連中は、この顔面鉄球で顔がぐちゃぐちゃになって即死する。

 たまに避ける人も居るけど、肩や胸に当たって逆に苦しみが長く続くだけなんだけど。


 コイツは違った。

 首を軽く傾げて、簡単に避けている。

 多分、普通に目で追えていると思われる。

 二球目を投げても同じ事だろう。



「どうした?もう終わりか?」


 一球しか投げなかったからか、ボブハガーから挑発的な言葉を掛けられている。

 ムカつくが無駄球は投げられない。



 ここはオケツの城の中であって、外ではない。

 砂鉄からほぼ無限に作る事が出来るわけでもなく、部屋の中に鉄製の物が沢山あるわけじゃない。

 むしろ鉄なんか、何処にも見当たらなかったけど。

 故に、いつも携帯している鉄のインゴットを使っている。

 しかも数は一つのみ。


 理由は簡単だ。

 弟が二個以上になると、重くて持てないんでね。

 むしろ邪魔と言われているが、アイツと違って俺は魔法使えないんだから。

 飛び道具は、基本鉄球しかないのだ。

 その鉄球が効かないとなると。



「仕方ない。剣で戦うか」


「ほう?魔法が使えて素手でも戦え、更には剣までも扱えるとな?神童というヤツか」


「そうです。俺ってば天才なんです。ナハハハ!だから負けを認めろ」


「阿呆が!ワシの太刀の錆となるが良い!」







 前言撤回しよう。

 剣は無理!

 もう逃げる以外、俺に手は無い!


 なんだよアイツの刀。

 めっちゃ斬れ味おかしいんだけど。



「どうした?逃げるだけか?」


「仕方ないだろ!」


「さっきまでの威勢は何処へやら。神童は言い過ぎだったわ」


 くそー!

 言い方がムカつくー!


 でも無理なものは無理。

 だって俺の剣、アイツの刀に斬られて、刃の部分全部無くなったもの。

 野菜切ってるんじゃないかと勘違いするくらい、スパスパと俺の剣は切れていった。



「剣で負けただけで、俺は負けてない!」


「バカタレ!腕が良ければ刀身は残っておるわ!」


 ちくしょー!

 正論っぽくて言い返せないじゃないか。



「ジューベーよ」


「何でございましょう?」


「お前がトドメを刺せ」


「そそそ某が!?」


「悔しいが奴は強い。神童と呼んでもおかしくない。ワシが奴の動きを制限する。お前がそこへ、斬りかかるのだ」


 ふむふむ。

 そういう作戦なのね。



「何だよ。ちゃんと神童って、認めてくれちゃってるんじゃないの」


「聞こえていたのか!?」


「勿論ですよ。だって俺、まお・・・じゃなかった。孫市ですから」


「この地獄耳めが。しかし聞こえていたのなら、話は早い。ジューベーよ。お前は力は無いが、奴くらいならどうにかなる。一撃で殺さなくとも、重傷は負わせられるはずだ」


「御意」



 ふーむ、俺ちょっと気付いちゃった。

 オケツの奴、案外ボブハガーから信頼されてるのね。

 もっとバカにされてるかと思ってたわ。



(余裕あるけど、対策出来てるの?さっきオケツの動き、見えなかったんでしょ?)


 アレは本当に油断しただけ。

 集中すれば見える。



(いやいや!ボブハガーを相手にしながら集中って。出来るの?)


 出来る!

 とは思えんなぁ。

 どうしよ。

 あっ!

 思いついちゃったけど、多分怒りそう。



(何よ。言ってみなさい)


 では、こんな作戦はどうでしょう?






「行くぞ!」


 ボブハガーは俺に斬りかかってきた。

 その斬撃は凄まじく、部屋の中のありとあらゆる物が切れている。

 当たったら一撃でヤバいのは、分かっている。

 だからこそ、奴も動きが制限出来ると言ったんだろう。



「ツエェェイ!!」


 危なっ!

 今のは当たるかと思った。



「ジューベー!」


 あ・・・。

 ボブハガーに集中していて見忘れた!



「ごめんなさい!」


 背後からそんな声が聞こえた。

 やっぱり後ろからだったか。



「やったか!?」


「それ、フラグって言うんだぞ。知らんのか?」


「ピンピンしてるだと!?ジューベー!」


「ま、間違いなく斬りました!手応えもありましたから」


「どうなっとるんだ!」


 怒鳴るボブハガーだけど、そんな事をしたらちゃんと斬りつけたオケツが萎縮しちゃうぞ。



 そもそも、何故後ろから斬られると分かったか?

 オケツは俺達と仲良くなってしまった。

 これがもしジヴァとかシッチだったか、その辺の歳上おっさんなら、問答無用で斬ったと思う。

 でも、俺達にはそれがやりづらかった。

 だから顔を合わせない、背後から斬りつけると予想していた。



「背後の鞄に、何か入れておるな?」


 ボブハガーの奴、正解したぞ。

 まさか、こんな簡単に見破られるとは。



「バレてしまっては仕方ない。俺の相棒を見せてやろう」


 背中に背負ったバッグを下ろし、俺は魔王人形を取り出した。



「人形?その辺りは童よの」


「しかし、某の剣を防ぐ人形となると・・・」


「そうだった!その人形、ミスリルか!?」


 アレ?

 どうして分かったんだろう。

 普通はまず、鉄製か?って聞くでしょ。

 ん?






「ああぁぁぁ!!人形に傷付いてるぅぅぅ!!オケツ、テメーその刀、普通のじゃねーのかよ。ミスリル製なのにパックリ胴の部分に割れ目が入ってるじゃねーか!俺、弟に怒られるよ。こんな作戦立てやがってって、怒られる・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ