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五武将の実力5

 人の美醜って、それぞれ違うと思うんだよね。

 見た目だけで判断する人も居れば、その人の行動を見て美しいと言う人も居る。

 心が綺麗な人が、一番美しいんだよ。

 そんな事を言う人は、僕はあんまり信じられないかな。


 ハッキリ言って、他人の心の中なんか見えないだから、綺麗か汚いかなんて分かるわけ無いんだよ。

 笑顔でボランティアをしてる人だって、実は世間体を気にして参加してるだけかもしれない。

 握手会に出ているアイドルが、全員に心から笑顔で対応してるとも思えないし。

 なんて事を言うと、お前の心は荒んでいるとかボロクソ叩かれるんでしょう。

 疑い深い性格なんだから、仕方ないでしょ。


 そんなナルシストな偽蘭丸の心をへし折った後、僕はようやく佐藤さんを見つけた。

 偽者のくせに強いのかと思ったら、囲まれてリンチにあってるじゃないか!

 佐藤さんを助け出した僕は、まずは味方との合流を選んだ。

 これだけ時間が掛かったんだ。

 兄の方から、こっちに来てると思うんだよね。

 なんて思ってたけど、全然合流出来る気配が無かったわ。






 ぶっちゃけ言おう。

 金仮面の実力は、大した事は無いと思う。

 俺の鉄球を避けたけど、おそらくは本当にギリギリだったんだんじゃないかな?



 鉄球が飛んできた事に全く気付かずに亡くなった、偽又左くん。

 顔がおっさんだから、偽又左くんって呼ぶのもおかしいか。

 偽又左さんだな。


 そんな彼を卑下する金仮面だけど、俺からしたらどんぐりの背比べって感じなんだよね。

 ちなみにアデルモだと、普通に避けるか弾くレベルだ。

 召喚者でもないヒト族でも、強い人は強い。

 だけど、彼等は違うと断言しよう。



 別に弱いから、使えないと言っているわけじゃない。

 金仮面の強みは、個人の強さよりも統率力なんだと思う。

 俺を馬で連れてきた様子を見る限り、かなり連携も取れている。


 イッシー達は、同じ境遇にある同志といった感じだ。

 上司部下というよりも、横並びの関係に近い。

 それに対して彼等は、完全に上下関係がハッキリしている。

 この辺は軍人っぽいところかもしれない。



「ところで、何をしに来たんだ?」


「酷いな。手こずってるって聞いたから、手伝いに来たのに。すぐに終わったけど」


「理不尽な強さの一端を見た。子供のくせに、召喚者のそれよりも上に思えるわ」


 そりゃ魔王なんで。

 魔王が召喚者一人と同じくらいの強さなら、今頃は魔族滅んでるよ。



「又左レッドさんは倒したから、また同じようにやってくれない?」


「乱戦狙いだな。分かった」


 金仮面はすぐに立ち去ると、再び周りの敵を攻撃し始めた。

 部下達も一緒に行ってしまい、俺一人だけ残されてしまっている。

 あ、又左レッドさんが一緒だったわ。

 動かないけど。






 俺は太田を探しながら、少しある事を考えていた。

 又左レッドとの関係を聞く限り、金仮面の連中って帝国軍人なわけだ。

 それなのに、何故ああも簡単に裏切ってくれたのだろうか。

 国よりも髪が命?

 イッシーとは違って、部下は薄いとか無いわけじゃないと思うんだよ。

 それでも裏切った隊長を慕う理由は何なのだろう?



 そんな事を考えながら歩いていると、太田を発見した。

 今は金仮面については、蓋をしておこう。


 太田、苦戦してるなぁ。

 相手の体格は太田より、二回り以上小さい。

 おそらくはヒト族かな。

 同じくバルデッシュを使っているけど、扱い方が全く違う。

 太田が力任せに振り回しているのに対し、彼は演舞でもしているかのように振り回す。

 隙を突いて的確にという言葉が、よく似合っていた。


 それに四方から魔法も飛んできている。

 全く意に介していないけど、火魔法や風魔法が目眩しにもなっているから、目障りくらいには思っているかもね。



「太田、苦戦してるな」


「キャ、キャプテン!?」


「鎧の色を見る限り、アンタが太田イエロー?」


「いかにも。ワタクシが太田イエローを名乗っています」


 うわぁ、話し方そっくり。

 真似するなと言ってるけど、確かにコレは真似してるとしか思えないな。



 それにしても太田イエロー、只者じゃないぞ。

 ヒト族だとは思うけど、あの太田相手に無傷なのだ。

 自慢じゃないが、太田は俺が育てたと言っても過言ではない。

 ・・・痩せさせただけだから、過言かな。



「キャプテン、ワタクシはまだ負けておりません」


「まだ挑んでくるのですか?無駄だと思いますが」


「黙りなさい。ウロチョロと邪魔な蝿が気になって、貴方の攻撃を食らっているだけです」


「その割にはワタクシに、一撃も当てていませんよ」


 紛らわしい!

 淡々と話す二人に、こっちがイライラしてくる。



「太田、勝てるのか?」


「勝ちます!」


「お前が手こずってる間に、他が迷惑を被るんだが。その辺は分かっているな?」


「う・・・」


 分かってなかったな。

 ぶっちゃけ太田がさっさとコイツを倒していれば、俺が又左レッドさんに手を下す必要なんか無かったんだよ。

 他にもまだ佐藤ブルーと慶次ブラックが居る。

 あ、蘭丸シルバーとハクトピンクもだった。

 そう考えると、敵多いな。



「時間が掛かるなら、俺も協力する。自分の名前を騙る奴を、自らの手でどうにかしたいのは分かる。でも、それで周りに迷惑を掛けちゃ駄目ブッ!な、何だぁ!?」


 俺の脇に何か当たったぞ。

 少し熱かったから、もしかして火魔法?



「キャプテン!向こうから佐藤殿が!」


 俺は魔法だと思われる物が飛んできた方を見ると、佐藤さんが弟を振り回しながら走ってくるのを見つけた。

 手を繋いでいるのかな?

 見た目はおもちゃをガンガンぶつけながら、走ってるだけのような気がする。



「うおぉ!見つけたあぁぁ!!」


「佐藤殿?」


 目の前を素通りする佐藤に、この場に居る皆が唖然としている。

 その後ろからは、クリスタル内蔵の武器を振り上げて追い掛けている連中が再び素通りしようとしていた。



「お、太田!倒せ!」


「魔王様!?御意!」


 バルデッシュを振り回し、追っ手が吹き飛ばされた。



「な、何だ!?誰だ!」


「誰だって、お前が誰だよ。うーん、その色は・・・佐藤ブルーだな!?」


「佐藤さんストップ!太田がやってくれたよ」


「やった!もうランニングはこりごりだよ」


 なるほど。

 佐藤さんは佐藤ブルーに、追い掛け回されていたのか。

 ん?

 それって、佐藤さんも倒せてないんじゃないか!



 ヤベッ!

 太田にお前が時間掛けてると、他の人に迷惑だぞって言ったばかりなのに。

 むしろこの人、敵を増やして更に面倒な事を起こしてくれてるわ。



「太田殿、助かったよ」


「無事で何より、とは言えないですかな」


 太田も佐藤ブルーに気付いたようだ。

 流石に太田イエローと同じような、真っ青な色をした軽鎧を見れば気付くよな。

 そして佐藤さんも、向こう側にバルデッシュを持った真っ黄色の鎧を着た人物を見つけていた。



「お互いに偽者が強いみたいだねぇ」


「いやいや!佐藤殿に比べれば、ワタクシの相手はそうでもないですよ。ただ、当たらないだけです」


「それを言ったら、こっちも同じだよ。相手は俺よりも階級が上でね。スピードでは勝っても、パワーで負けてるんだわ」


「えっ!?そうなの?」


「魔王様、お見苦しくて申し訳ありません」


 オイオイ、俺には謝らないのに弟には謝るの?

 おかしいでしょ。



「ふーん、そっか。なるほどなるほど」


「お前、ボロボロだな」


「佐藤さん、僕で魔法防いでたからね。自分から身を投げ出してたのもあるけど、主には佐藤さんが僕を振り回してた」


「それ、ちょっと怖いな」


「そうだよ。目の前に魔法が迫ってくるんだから。しかも自分の意思とは関係無くね」


 普通に言ってるけど、コイツも結構無茶してるなぁ。

 人形の時の戦い方が、かなり無謀な気がする。



「それよりも、良い事を思いついたよ」


「何だ?」


 また悪巧みか?

 声色で企んでいるのが分かる。

 とは言うものの、この二人に勝つ方法なんだろうけど。



「それにはまず、二人がどう思ってるかなんだけどね」


「太田と佐藤さんか?相手も合流した事で、ちょっと話をしているし。聞くなら今がチャンスだろ」


「だよね」


「何です?」

「何かな?」


「二人とも、自分の偽者に拘りはある?」







 僕が二人に聞きたかったのは、自分が苦戦している偽者を、どうしても自分の手で倒したいかという事だった。

 二人は顔を見合わせてから、こっちを見た。

 さて、どう答えるのか?



「ワタクシは別にどちらでも構いませんよ」


「俺もだな」


「えっ!?」


 聞いておいてなんだけど、絶対に自分の手で葬る!的なノリかと思っていた。

 意外だな。



「同じバルデッシュという武器を持っているだけで、種族も違うので。同じ武器を使っているだけで偽者と言われても、ピンと来ません」


「俺は当然の話だが、奴とは階級が違い過ぎる。確かにこの世界では、階級なんか関係無いんだけどさ。普通に戦うなら未だしも、魔法で牽制されたところを狙われると、ちょっとキツイんだわ」


「ふむふむ。じゃあさ、対戦相手を交換しよう」


「交換、ですか?」


 不思議そうな顔をする太田だが、これにはメリットがある。



 まず佐藤さんは、相手が自分とほぼ同じくらいの太田イエローに変更される。

 力負けするという事は、あまり考えられない。


 太田の方はもっと簡単だ。

 相手を見る限り、太田の攻撃は一切当たっていないのだろう。

 しかし僕が見た偽佐藤さんなら、太田のスピードでも当たると思われる。



 ただ、デメリットが無いわけでもない。

 一つは、お互いにどんな相手かまだ分かっていない。

 バルデッシュを使うにしても、佐藤さんと同じ体格だ。

 太田とは戦い方が違うと思う。

 太田の方も同じで、佐藤さんのようなアウトボクサーではなく、直進してくるファイタータイプのボクサーは初めてだろう。


 二人とも最初は、戸惑うかもしれないな。



「全然良いよ!むしろ助かる」


「ワタクシも同意ですね。あんなチマチマやられるなら、相手を変えてほしいです」


「お前等、もっと自分の偽者を倒すって気概は無いのか!」


「兄さんうるさい」


「だって、悔しくないのかよ」


「だから良いのかって、理由を聞いたんじゃないか。佐藤さんの理由なんか、凄い正しいからね。体重差があれば、耐久力も違うしパンチ力なんか話にならない」


「う、うーん・・・。でも」


 この男、面倒だな。

 僕達の偽者じゃないんだから、別に良いじゃないか。

 あ、良い事を思いついた。



「これはね、敬遠なんだよ」


「敬遠?」


「良いかい?夏の甲子園決勝、一点差の九回ツーアウト二塁。次の打席に打率四割近い四番バッターが入るとする。しかし五番バッターは、パワーヒッターだけど打率は二割だ。兄さんならどうする?」


「う・・・む。そりゃハッキリとは敬遠しないまでも、勝負はしないかな」


「そう!敢えて勝負は避けるでしょ。それって悪い事なの?」


「え、いや、敬遠は悪くは・・・無いかなぁ」


 この男、自分の事になるとハッキリ言わんのな。



「悪くは無い!だからこそ、二人も同じ事をする。ピッチャー交代したら、代打を送る事だってあるだろ?」


「それな!あーなるほど。太田の代打が佐藤さんで、佐藤さんの代打が太田になるのね」


 敬遠は駄目で、代打は良いのか。

 よく分からんけど、兄も納得したようだ。



「というわけで、二人は相手を交換してもらいます」


「OKだ」

「ワタクシも問題無いです」


 二人は僕が兄と話している間に、多少はお互いの相手を教え合っていた。

 これならデメリットも無くなる。



「バッター太田に代わりまして、佐藤ぉ、佐藤ぉ。バッター佐藤に代わりまして、太田ぁ、太田ぁ」


「うるさいよ!紛らわしい挙句、相手に聞こえたらバレちゃうでしょうが!」






「あ、もっと良い例えがあった。ピッチャー佐藤に代わりまして、太田ぁ、太田ぁ。太田の守備位置だったレフトに、そのまま佐藤が入ります。どうよ!え?うるさい?あ、ハイ。すいませんでした」

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