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小物ドラゴン

 この青いドラゴン、大きさからエクス程の脅威は無いと思ってたけど、考えが甘かったわ。

 ウォータージェットって、ダイヤモンドや熱で切断出来ない物を加工するんだったよな?

 そんな高等技術を使ってくるなんて、普通は思わないでしょ。

 もっと単純に、水の塊をぶつけてくるとか水流で吹き飛ばすとか、そんな攻撃だと思ってたのに。

 しかも攻撃云々の前に、水蒸気を使って姿を隠すとか、ドラゴンって頭良いのね。


 ただ、その頭の良さに腹が立った。

 あまり絡んでいないとはいえ、仲良くなったエクスの悪口を、ボロクソに言われたらね。

 僕よりも兄が激怒してたけど、それもスカッとする出来事が起きた。

 まさかのまねき猫に招かれてやって来たのは、当の本人であるエクスだった。

 何か謝ろうとしてた青いドラゴンに、有無を言わせずに攻撃を浴びせていた。

 色々と自分で言ってたけど、何処から聞いていたんだろう?

 殺しかねないその攻撃を止めると、青いドラゴンは僕達にすぐさま寄ってきた。

 さっきまで見ていた気位の高そうな姿は、爆発と共に消え去った姿だったけど。






 何だろう。

 ボロボロの姿を見る限り、本当にドラゴン?と聞きたくなってしまった。

 ボロボロだし涙目だし、悲壮感が半端ない。



「お前ぇ!誰に断って我が友に近付いている!」


「ヒイィィィ!」


「ちょっと!戦艦が誘爆するからやめて!」


「うむ。だがしかし、其奴は」


「謝りなさい」


 僕の言葉にエクスは躊躇したが、やはり許せないらしい。

 エクスの前には火球くらいの大きさの炎が、何個も浮かんでいた。

 大きさはほとんど変わらないけど、爆発力は僕の比ではない。


 そんな炎にビクビクしながら、青いドラゴンは海面に何度も頭を叩きつけて謝った。



「すいません!本当にすいません!旦那の事だと知らなかったんです!」


「コラァ!お前が頭を海面に打ちつけるから、波が起きて戦艦が転覆しちゃうでしょうが!」


「すいません!坊ちゃん、本当にすいません!」


 さっきまでの威厳は何処へ行った?

 貴様とか人間如きとか言ってたのに、今はすいませんしか聞こえない。



「一旦落ち着こう。エクスもいきなり、殺そうとしないでほしい」


 二頭のドラゴンは、ようやく静かになったのだった。



 エクスも落ち着いたとはいえ、空でずっと翼を羽ばたかせている。

 風が強くて仕方ない。



「二人とも、違うか。二頭とも?どっちだろ?戦艦の甲板に乗れるくらいに、小さくなれる?」


「我は容易い」


「わ、私もなれますけど。小さくなるだけで良いんですか?」


「小さくなる以外に、何かあるの?」


「そりゃ、人化も可能ですけど。仙人とか知らないです?」



 えっ!?

 ドラゴンって、人化出来るの?

 そんな話、初めて知ったぞ。

 エクスを見ると、顔を逸らされた。

 コイツ、知ってやがったな。



「エクス!」


「う、うむ。仕方ないな」


「人化してもらって、話を聞かせてもらいたい」


 二頭は小さくなると、甲板の上に降り立った。





 甲板に現れたのは、小さな男の子と大怪我をした青年。

 小さな男の子は赤い髪をしていて、少し日焼けしたような肌をしている。

 目元の黒子がセクシーだけど、子供だからかこれからイケメンになるんだろうなって思わせる顔だ。

 お坊ちゃんと呼ばれてもおかしくない雰囲気で、貴族のような風格があった。


 対して青い髪の青年は、既に身体も服もボロボロである。

 頭は爆発の影響なのか、それとも天パなのか。

 ボンバーヘッドだった。

 こっちは赤い髪の男の子と違い、目つきは悪くて貴族とは思えない。

 バットを持っていたら、野球じゃなくて喧嘩に使うんだろと言いたくなるタイプだった。



「普通に考えたら、こっちがエクスで良いんだよね?」


「・・・うむ」


「どうして子供?」


「我は人化が苦手なのだ。仕方ないだろ!人間になる機会なんか無かったし、なる必要も無かったのだ」


 仕方ないって、別に責めてるわけでもないんだが。



「お前は・・・名前無いと呼びづらいな」


「青いからブルーで良いんじゃね?」


「そんな安直な!?」


「文句があるのか?」


「ハイ!ありませんです!アイアムブルー。エブリバディ、コールミーブルー」


 何故に英語で言い始めた?

 背筋を伸ばして、めちゃくちゃ叫んでる。

 なんか軍人っぽい。



「さて、じゃあ最初にエクスから」


「我?」


「どうしてここに来たの?僕達が居るって、知ってた?」


 まさかの質問に、皆も興味津々だ。

 エクスが来なかったら、下手したら戦艦は中破もしくは大破していたかもしれない。

 運良く追い返せても、航行は続行不可能だったと思う。



「たまたまだ。火柱が見えて、何やら戦闘をしているような気配を感じたのでな。海上でそのような派手な戦闘をしているのは、誰かと興味を持った」


 エクスからジト目で見られたブルーは、すぐに姿勢を正して言う。



「ヘイ!私です!」


「その話だと、まねき猫はブルーじゃなくて、エクスが招かれたんだね」


「まねき猫と契約しておるのか?これまた珍しいな。しかし、再会した理由もそれなら納得出来る」


 まねき猫は、ドラゴンといえど及ばない力が働くらしい。

 永い年月の中で、まねき猫に会ったのは二度しか無いと言っていた。



「オイ、そろそろこっちの男の話を聞かないか?」


「それならオイラも聞かせて下さい」


 兄の言葉で、ブルーへの質問に行こうとすると、官兵衛と長谷部が大仏くんに乗り、そして太田も官兵衛の護衛としてやって来た。



「うむ。久しいな」


「ん?エクス殿と官兵衛殿は、知り合いでござるか?」


 マズーイ!

 このままだと、官兵衛=半兵衛がバレてしまう。

 慶次、そういう事に目敏いのはやめてほしい。



「エクスくん、ちょっとこちらへ」


「何だ?」


 エクスの手を僕と兄が引っ張っていくと、何故か後ろから優しい目で見られているのが分かった。

 子供二人が人形持ってるとか、そういう感じなんだろう。

 でも中身は、魔王二人とドラゴンだけどね。



「あっちの足が不自由な方は、正体を伏せてるから。初対面って事で通して」


「太田も会ってたよな?だから、太田に久しぶりって言ったって事で」


「うん?そういう事なら理解したが、それよりも気になる事がある」


「何?」


「お主等、何故二人に分かれておるのだ?」


 今更!?

 でも、前回はそういう話をしなかった気がする。

 僕等はエクスに色々と説明をすると、神様と繋がっている理由等に納得がいったらしい。



「なるほどな。そういう事なら、極力は協力しよう」


「マジでか!?おぉ、エクス良い奴」


「それよりも、戻った方が良いのではないか?」


 確かに。



「ミノタウロスの戦士よ。久しいな」


「この子があの時のドラゴンですか?これはご丁寧にどうも。太田と申します。以後お見知り置きを」


 どうやら誤魔化せたようだ。

 官兵衛を筆頭に、他の者達ははじめましてと言って自己紹介をした。



「私、そろそろお話しした方が良いですか?」


「おぅ!忘れてた!すまんな」


 人の姿になったからか、どうにもドラゴンという感じがしない。

 それとエクスにボコられてから、小物感が出てきて雑に扱うようになってしまった。



「何故、此奴等を襲ったのだ?」


「その前に聞きますが、旦那は人間に話し掛けられてませんか?」


「人間に?いや、会ったのは魔王が最後だな」


「そうですか。実は私、何度か人間に襲われてまして」


「はぁ!?ドラゴンに挑む人間なんか居るのか?」


 ブルーの答えに、蘭丸は思わず突っ込んだ。



 確かにおかしな話だ。

 ドラゴンなんか、災害と同じような扱いだと聞いたのに、自ら災害に首を突っ込む理由は無い。

 だが、事実だと彼は言った。



「それって、魔族だったの?それともヒト族?」


「分からないんですよね。お恥ずかしい事に、人間の区別がつかないものでして」


 そういえば、人と人形すら区別が分からん男だった。

 ヒト族と魔族なんて、尚更分からんだろう。


 すると佐藤さんが、更に質問を始めた。



「そういえば俺達を攻撃してきた時、取り込もうとしてたって言ってましたよね?」


「そうです。話があると言って、奴等は近付いてきました」


「それで、話は聞いたんですか?」


「いや、それがその・・・」


 何か言いづらそうな感じだ。

 目が泳いでるのだが、エクスが笑顔で手のひらに炎を出すと、ペラペラと続きを話し始めた。



「人間に命令されるなど不愉快極まりないと、攻撃してしまいました・・・」


 チラッとエクスを見るブルー。

 しかしエクスは、ブルーの言葉に怒りは見せなかった。

 安堵するブルーに、エクスは言った。



「お前の反応は、間違っていない。我はこうやって魔王とは肩を並べているが、他の者なら滅していたと思うぞ。それに話を聞けと言われて、取り込まれそうになったのだ。魔王達も攻撃を仕掛けられても、仕方のない事だな」


「そ、そうですよね!?良かった」


 話を聞くと、確かにそうだよな。

 人間不信になってもおかしくないか。



「それで、相手は倒したのでござるか?」


「三回ほど来ましたが、最後の一回は逃げられましたね。奴は小賢しい事に、私に精神魔法を使用してきたので、粉微塵にしてやろうと思ったのですが」


「精神魔法だって!?魔法を使えるという事は、魔族?」


 この事実には、僕達全員がどよめいた。

 安土と離れて暮らす魔族は多々居るが、ドラゴンを手懐けようとする存在は知らない。

 それに精神魔法の使い手ともなると、尚更だ。



「それって、俺達が帝国で見た事ある奴かもしれなくないですか?」


「そうだ!長谷部の言う通り、帝国には精神魔法の使い手が居る。ソイツなら、魔族でも帝国に協力してる奴だろ」


「なるほど。その可能性もあったな。という事は、現状では魔族と帝国のどちらから来たかは不明だね」



 これは面倒な事になった。

 ブルーには敵ではないと言いたいが、もし相手が魔族なら、僕達も信用してもらえない可能性が高い。

 それに帝国だとしても、エクスやブルー以外のドラゴンと協力体制を敷かれていたら、大問題になる。



「他のドラゴンって知ってる?その連中は人間と手を組む可能性はあるかな?」


「我が会った事があるドラゴンは、コイツの他に大陸のドラゴンだな。我よりも大きいぞ。だが奴は、面倒くさがりだからな。動かんだろう」


「私は旦那以外だと、白いドラゴンですかね。旦那や私より小さいですけど、とにかく速いですよ。普段から空を飛び回ってるのは、面白い事を探す為とか言ってたから、もしかしたら可能性はありますね」


 ブルー、何気に有力情報持ってるじゃないの!

 白いドラゴンには警戒が必要って事だな。

 覚えておこう。



「それじゃ、二人とも先に言っておくよ。僕達に協力してとは言わない。二人の力は強大過ぎる。ただ、静観しててほしいかな。こっちからは手伝ってくれとか言わないようにするから、出来れば他の誰からも、そういう話を受けないでほしい」


「それは当たり前だな」


「私も同様です。利用されるなんて、死んでもごめんなので」


「だったら嬉しい。他のドラゴンに会ったら、同じような事を言っておいて」


「分かった。それは任せておけ」


「私も了解しました。ただ、他のドラゴンに強制は出来ないので、そこはご了承を。白いドラゴンは退屈しのぎに、協力しそうですけどね」


 あぁ、それは困る。

 勝てる気がしないぞ。



「だったら我等が出張れば良い。ドラゴンはドラゴンが相手をするのが道理。お前、白い奴を叩き落とせるよな?」


「えっ!?ど、どうでしょう?相当速いですよ」


「叩き落とせるよな?」


 エクスの指から炎が現れていく。

 人差し指から順に灯っていく火を見たブルーは、慌てて言った。






「ま、任せて下さい!絶対貫通を誇る我が必殺の水砲で、奴の翼を貫いてやりますよ。それとも絶対切断を誇る、水絶断刀の方がよろしいですか?真っ二つに出来ますよ。あは、あはは。当たればだけど・・・」

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