再会
光を目指し真っ直ぐ進んだ俺は、ようやく光が何なのか分かった。
分かったというか読めた。
『おいでやす』
なんだこれ?
非常口の案内板みたいな形で、緑色ではなく朱色っぽい色に光っている。
扉に向かって歩いているのではなく、扉を開けて手招きしているような感じだ。
うーん、これはあの世にようこそ的な意味なのか?
少し躊躇した俺は、軽くノックしてみた。
「すいませ~ん」
・・・やはり反応は無いか。
扉の先に誰も居ないのか、それとも敢えての無視なのか。
ええい!迷っても仕方ない!
「し、失礼しま~す」
扉を恐る恐る開けると、そこは椅子が一脚だけある真っ白な部屋だった。
中に入ると、椅子の上に一言だけ書いてある紙が置いてある。
『こちらでお待ちください』
こんな物が用意してあるという事は、自分以外に誰か居るってことだよな?
とりあえず此処以外に行く場所も無いので、しばらく待ってみよう。
事故を起こした僕は、真っ暗な中に居た。
周囲に誰も居ない事を確認し、歩いてみると遠くに明かりが見えたので向かった。
『おいでやす』
なんだこれ?
非常口のパクリか?
つーか何故に京都弁?
ここに居る人って関西人なのかな?
変な看板を見たせいで頭が混乱していたが、とりあえずノックをしてから入ってみることにした。
「失礼します」
扉を開けて入ると、椅子に座っている人の後ろ姿が見えた。
「誰?」
「兄さん!?」
椅子に座ってから五分弱経っただろうか。
あまりに暇だったので筋トレでもしちゃおうかなぁって考えて立ち上がろうとしたら、扉をノックする音が!
「失礼します」
そう聞こえた俺は、すかさずま姿勢を正した。
筋トレとかしようとしてないよ?
ずっとここで待ってましたよ?
そんな雰囲気を醸し出しつつ、緊張した面持ちで中に入ってくる人を待った。
扉が開く音を確認し振り返ると、そこには先程まで一緒だった弟の姿があった。
同じ扉から入ってきたのに、何故会わなかったんだ?
そんな事を疑問に抱いていたら、弟から声をかけられた。
「兄さん!無事だったんだね!」
「お前も怪我が無さそうで良かった!」
「そうなんだよね。ガードレールに突っ込んだはずなのに、これはおかしいと思う」
「擦り傷とかも無いからなぁ。やっぱり俺等、死んじゃったのかな・・・?」
縁起でもない事を自分で言っていると思いつつ、怪我の無い姿が見れて安心出来た。
ちょっとした話をしていると、コウが変わった事に気付いた。
「ねえ、あんな所に扉あったっけ?」
「扉?俺が部屋に入った時、ここの扉しか・・・って増えてるぅぅぅぅ!!!!」
扉増えてるよ!
ナニコレ!怖い!
「じゃあ兄さん、行こうか」
「え?お前何そんな簡単に受け入れちゃってんの?今まで無かったんだよ?そんな所に、じゃあ兄さん行こうかって、おかしくない?」
「だって行くしかないじゃん。こっちの入ってきた扉開けたって、また暗い道に出るだけだよ」
「いやいや!分かるよ!進めば何かありそうって分かるけれども、もしかしたら他に誰か来るかもしれないじゃない」
「来なかったら待ち損だけどね」
「そうだけど!そうだけれども!もう少し躊躇というか、危機管理をだね・・・」
「チッ!このビビりうっさいな・・・」
「舌打ちされた挙句にビビり呼ばわりされた・・・。親父にも言われたことないのに!」
「だって僕達の父さん死んじゃってるじゃない」
「それ言われちゃうと何も言えない・・・」
「じゃあ兄さんは行かないということで。僕は先に行くから」
「兄さんは全力でついていくであります!」