表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/1299

襲撃

 此処での生活にも慣れてきた今日この頃。

 懸念だった帝国も来ていない。


【へいへい、帝国ビビってるぅ!】


 やめて。フラグ立つからやめて。


 そして寺子屋での勉強で、四属性の魔法はほぼ使いこなせるまでになった。

 詠唱短縮も全てではないにしろ出来るようになってきたり、以前と比べてもだいぶ違いがありますよ。

 そして一番大きな変化。

 僕の身長も伸びた!と、言いたかった。

 はい伸びてません。

 もう伸びる様子も無いので諦めてます。

 ダークエルフって、成長遅いのかね?

 話が反れてしまった。


 大きな変化、それは特殊魔法の習得である。

 あまり使い手が居ないので、教わるにも教えてくれる人が居ないのだ。

 では、どうやって習得したのか?


 理由は簡単、独学だ。

 後世に伝えるためだったのだろうか、寺子屋にある図書室にいくつかの伝書があった。

 何故そんな物を見つけたかというと、実は罰として図書室の掃除を命じられた際にたまたまだったりする。

 部屋の奥で山積みにされた書籍の中に、数冊眠っていたのだ。


 一つ目は毒魔法。

 毒といっても、身体に悪い方だけではなかった。

 毒を以て毒を制すという言葉があるように、解毒に関する魔法もあったのだ。

 これによって薬草が無くても、特殊な解毒も可能となるらしい。

 らしいという疑問形の理由は、実際に解毒していないから。

 試したいから毒を食らってください!、なんて言えるわけもなく。

 多分使えるんじゃないかなという感じ。


 二つ目は召喚魔法。

 これはよくゲームにも出てくる魔法だ。

 ファンタジー要素満載で使いたいと思っていた。

 伝書によると、精霊を呼び出すか遭遇した時に契約を結ぶと使えるようになるらしい。

 しかし精霊はほとんど姿を現さないので、やはり昔の召喚魔法師もあまり強力な精霊と契約したという記録は無い。

 というわけで、自分も未だに契約出来ていないから使えない魔法だ。


 三つ目が一番特殊だと思われる。

 それは精神魔法と呼ばれるもので、昔から忌避されている魔法のようだ。

 軽いもので催眠、強力なもので洗脳。

 そして契約と呪縛だ。

 両方ともほとんど使い道は同じだが、破った時の反動がかなり違う。

 契約であれば激しい痛み程度で済むみたいだが、呪縛は相手を死に至らしめるほど厳しいらしい。

 こんな魔法誰が使うか!って思うくらいなので、やはり過去に使えた人達も自ら秘匿していたようだ。

 伝書の作者は、領主から頼まれた時だけ使っていたと記しているが。

 これは封印する以外に無いと思われる。


 というわけで、せっかく覚えたこの魔法。

 ぜーんぶ使えなかった。

 そのうち役に立つと思いたいね。



 そして、一緒に来た因幡くんもね。

 大幅に変わったよ。この町に来てからね・・・。

 まず背が伸びただけでなく、変声期を迎え声がちょっと低くなった。

 イケボというヤツである。

 おかげでモテる年齢層が幅広くなり、この町のアイドル的存在になりつつある。

 その理由の一つが、蘭丸との絡み!


 蘭丸もワイルド系エルフとして、モテまくりなのだ。

 因幡くんと蘭丸は揃うと、とにかく凄い。

 軽く人だかりが出来る。

 そりゃこの二人の親友である僕ですから、いつも一緒に居るわけで。


 因幡と蘭丸with阿久野


 って感じなんだけど。

 扱いがね・・・。


「ちょっとチビ邪魔よ!」

「アンタ、カレーの福神漬け以下なんだから、自重しなさい」

「居てもいいけど息するな」


 等々、それはもうお優しい言葉を掛けられております。

 彼女等の中で扱いは、「因幡・蘭丸」の・の部分とか、「因幡くんと蘭丸くん。」の。が僕らしい。

 そろそろマネージャーに回るかもしれません。



 さてそんな人気者の僕ですが、今は戦闘訓練として町外で魔物を狩りに来てます。

 一班六人編成で、いつもの三人に加えて教官兼前衛としてアマゾネスさん。

 それとクジ引きで狩った女子エルフ二人という班だ。

 基本的に僕とアマゾネスさんが前衛、因幡くんと女子二人が後衛で蘭丸が両方をこなす感じ。

 実際は僕の方が全般こなせるが、それでは訓練にならないのでこういった形となった。


「そろそろ日も高くなってきたな。昼食の休憩を取ろう」


 アマゾネスさんの一言で狩った魔物を切り分けて、焼く準備をする。

 この町に来た当初は家事全般何も出来なかった因幡くんだが、今では料理に関してはこの中で一番手際が良い。

 オリーブオイルを掛ける様は、某キッチンの人にも勝るとも劣らない。

 その様子を惚けた様子で見てる女子。

 仕事しろよ!って言ったら、後が怖いので何も言わないんだけどね・・・。


 完成した食事は、猪系の魔物であるビッグボアの肉オリーブオイル丸焼きと森で採取した野草にオリーブオイルを掛けたサラダだ。

 オリーブオイルだらけだな。

 コイツ、もこでも目指してるのか?



 食事を終えて、訓練を再開しようとしたところ、突然ある獣人がこちらに駆けてきた。

 リスの獣人の出浦さんだ。

 彼は代々、森家に仕える士官として働いている。

 しかし、何故急いで蘭丸の所に来たのだろうか?


「蘭丸様!急ぎ、この土地をお離れ下さい!帝国と思われる兵が町に攻めてきました!」


「何!?では町に戻り、母の手助けをしなくては!」


 帝国がとうとう攻めてきたようだ。

 最近は戦線が小康状態だと思っていたんだけど。

 蘭丸としては母が守っている町が攻められているのだから、気が気でないはず。

 早く戻るべきだろう。


「お待ちください!兵は町民の約三倍。助勢に向かっても間に合うとは思えません!」


「では町の皆を見捨てろというのか!森家の血を引く者として、それは断じて出来ん!」


 出浦さんは、蘭丸だけは助けたいと思っているようだ。

 それは分からなくもない。


「蘭丸。ここは戦士団の一人として、森家の人間に問う。お前はどうしたい?」


「ここは一刻も早く助けに向かうべきだ!」


 アマゾネスさんは、蘭丸を守るという役目もあるのだろう。

 もう子供ではない蘭丸の意見を取り入れてくれている。


「よし!急いで戻るぞ!女子は出浦と町の近くで待機。因幡は後方から支援してくれ」


 蘭丸の指示で町へ戻る。


 一時間足らずで戻った町では、戦士団と帝国兵が戦っていた。

 帝国兵はヒト族なので魔法を使えないが、数が多い。

 一人一人の戦力で勝っても、数の暴力には勝てなかった。

 町民も獣人が身体強化で応戦はしているものの、やはり一般人。

 じわじわと押され、斬られていく。

 帝国兵はトドメを刺そうと剣を振り上げる。


【俺達は日本に居た時から、戦争というものを見た事が無い。ニュースとかで聞いたりしても、やはりどこか他人事だった。これが戦争。これが・・・】


 剣を振り上げる帝国兵に向かって、弓を射る蘭丸。

 かろうじて腕に当たり、敵の意識をこちらに向けることが出来た。


「なんだお前等。お前等もわざわざ死にに来たのか」


 矢は当たったものの鎧に阻まれたようで、そのまま剣を振り下ろす帝国兵。


「やめろおぉぉぉ!!!」


 肩から腰にかけて袈裟斬りにされるのを見た僕は、意識もせずに叫んでいた。

 ニヤニヤした態度でこちらを一瞥する。


 あの獣人の事は、詳しくは何も知らない。

 もしかしたら、町の何処かですれ違ったくらいはあるかもしれない。

 でも同じ町に住む仲間で、同じ町に住む人を守ろうとした戦士だ。

 そう思うと、心の中で何かが渦巻いてくる。


【お前、ちょっと代われ。少し落ち着け。俺がやる!】




「因幡くん。あの人まだ息がある。今から助けるから、回復魔法の詠唱をしといてくれ」


 俺は因幡くんに指示を出すと、近くにあった鍬で殴りかかる。


「お前、やったらやり返されるって事も考えてるよな」


 身体強化で目の前まで移動し、全力で鍬を振る。


「ぐえあぁ!!」


 砕け散る鍬と一緒に飛んでいく帝国兵。

 鎧は頑丈なのか、凹みすらしない。


(兄さん、木製じゃ駄目だ。せめて鉄製じゃないと)


 俺の知らぬ間に鉄の棒が手の中にある。


「やめろ!やめてくれ!」


 息苦しそうに胸を押さえながら、叫んでいる。

 自分が殺るのはよくても、殺られるのは嫌だとな。

 そんな理不尽が通用するわけがない。

 逃げようと這いずる帝国兵の頭に向かって、フルスイングした。

 ゴキッ!という派手な音と共に270°くらい首が曲がってピクリとも動かなくなった。

 俺はひしゃげた鉄棒を見た。

 しかし鉄の棒か。てっきり金属バットを出されたかと思ったんだが。


(金属バットは嫌がると思ってね。普通に鉄棒にしたんだ。それとも手に馴染みのあるバットの方が良かった?)


「いや、助かった。もしバットで人を殴り殺したなんてなったら、俺は野球選手、ましてプロの選手なんて名乗れなくなるところだった。ありがとな」


 照れ臭いのか弟からの反応は無い。

 落ち着いたようで良かった。


「俺はあんまり頭が良い方ではないからさ。国のお偉いさんが戦争をするって決めても、戦場に行く兵士は嫌々なんだと思ってたんだよ。でも実際に見たら違った」


(そっか。僕は、お互いに譲れないものの為に争うのが戦争だと思ってた。宗教上の理由とかね。今でも中東は争ってるし、日本だって島原の乱が宗教と絡んでるって言われてる。でもこれは、僕等が想像していたのと違う。コイツ等は楽しんでやってるよね。何を考えてやってるか分からないけど、僕はこんな事を許したくはない)


「頭が良いお前が分からないんだから、俺が分かるはずが無いな。でも一つだけ言える。俺もコイツ等がやってる事を認めない。ハッキリ言えば、こんな奴等死ねばいいと思う」


(それは僕もだ)


「おい、お前独りで何言ってんだ?」


 蘭丸が俺等の会話を怪しんでいる。

 そういえば口に出してたから、怪しいと言えば怪しいか。


「あぁ、初めて戦争なんか見たから、驚いたんだ。しかし皆、何故そんなに落ち着いてるんだ?」


「落ち着いてるわけじゃない。俺だってこれを見て怒りを覚えるさ。ただ、やられるのは仕方ない。それは弱肉強食の世界だからな。人じゃなく魔物が不意打ちを仕掛けてきて殺されても、文句言うだけ無駄だろう?それは人にだって同じ事言えるさ」


(なんというか達観した意見だな)


 達観の意味が分からんが、そんな考えの連中は日本には居ないわな。


「阿久野くん、この人なんとか意識を取り戻したよ」


「よし!女子二人は、この人を連れて隠れる事。俺達は長可さんの所に向かおう。多分あの一番人が集まっている所だ」



 帝国兵の人ごみの近くまで行くと、公民館のような建物を囲んでいるのが分かった。

 中心では、長可さんが弓で応戦しているのが見える。

 なんかドラマで見た本能寺の変の信長みたいだ。


(あ、それ僕も思った。僕等より信長っぽいよね)


 こんな事を考えられるのも、心に余裕が出来た証拠かもしれない。

 蘭丸の一言が無ければ、ここまでの余裕は生まれなかったかもな。

 心の中で蘭丸には感謝しておこう。


「蘭丸、助けられる人は助けよう。弱肉強食といえど、見捨てるのは違うだろ?」


「当たり前だ!あそこに戦えない連中が立て籠もっているんだろう。だからあそこに兵が集中しているんだと思う」


「俺も同じ意見だが、その前に周辺で倒れている人達から助けたい。倒れてはいるが皆重傷で動けないだけのようだ。治療すれば戦力になるはずだ」


 倒れている者はほとんどが戦士だ。

 おそらく戦力低下を狙って無力化させた後、町民を襲うつもりだったのだろう。


「では因幡以外の三人で、倒れている者の救助に当たろう」


「いや、重傷者の救助は二人でやってくれ。俺は長可さんの方を助ける」


「無茶な事言うな!あの人数に突っ込んでも、死ぬだけだぞ!」


 アマゾネスさんの言葉に蘭丸も頷く。

 別に無理をしようというわけではない。


「外から遠距離で攻撃するだけだ。こちらに気が向けば、長可さん達がその分楽になる。守っている戦力が落ちれば、中の人達も危険だからな」


「なるほど。分かった。無茶だけはするなよ!」


 別に死ぬつもりはないのだが、釘を刺されてしまった。

 さっきの慌てぶりが原因かもしれないな。

 というわけで、魔法で攻撃するならお前に交代した方が良いだろう。


(ちょっと待った!詠唱短縮で使っても、多分そのうち接近戦になると思う。だから違う手を使う。このままで大丈夫)


 あまり分からないが、そう言うならそうなんだろう。


(鍬で殴った時に思ったんだけど、あの鎧は鉄とか鋼製じゃない。身体強化してるのに鎧が凹まないって、余程だよ?でも中の人は痛がっていたから、衝撃には耐えられないんだと思う。だから、こうするんだよ!)


 言い終えると同時に、右手には鉄球が創造されていく。

 なるほど!これで吹き飛ばしていく作戦か!

 しかし、いきなり本気で投げると肩を壊すからな。

 まずは肩作りで投げていこう。

 俺の手のサイズに合わせてあるから、結構持ちやすい。

 硬球サイズだったら、多分大き過ぎてすっぽ抜けたかもしれない。

 まずは第一球。


 バシュッ!ゴガァァァン!!!!


(・・・え?)


 鉄球を食らった兵が、10メートルくらい吹っ飛んだ。

 思ってた以上に威力あるみたい。


(いやいや!今の150キロくらい出てなかった?だってバッティングセンターの最高速で見た球より速かったよ!?)


 うーん?分かんね。でもまだ肩慣らしだから、もっと早く投げられるぞ?


(もう既にかなりの攻撃力だよ!その証拠に当てたヤツ、ピクリとも動かないし!)


 あ、ホントだ。よし、どんどん投げ込もう。

 投げる事に集中するから、鉄球作りは任せた。


(分かった。味方に当てないようにくれぐれも気を付けて)


 投球モーションに入ると、右手の中には鉄球が作られていく。

 とにかく投球モーションに入ると、自動で球が手の中にある。

 ピッチングマシーンにでもなった気分だ。


 ガアァァァン!!!

 ドガァァァァン!!!

 ボキッ!!


「ギャアァァァ!!!」

「なんだ!?何かが飛んでくる!?」

「足が!足がぁぁぁ!!」


 帝国兵達は味方が飛んできた何かに当たり吹っ飛んでいく様子を見て、狼狽していく。

 中には当たり所が悪く、鎧に覆われていない膝関節等に当たり膝から下が一回転したり、膝から下が千切れた兵も居た。

 得体のしれない物が飛んでくる恐怖から、建物を囲んでいる比較的外側の兵は徐々に輪から離れていく。


「よし!なかなかいいぞ!」


 半分くらいの兵が鉄球の餌食となり、ピクリとも動かない。

 頭に当たった人も居たけど、ありゃ死んだな。

 まあ戦争をしているわけだから、文句は無いはずだ。

 流石に半分も減れば、帝国兵も異変に気付く。

 周りを見渡しているが、投げているのが離れた所に居るこんなガキだとは思うまい。


(兄さん、そろそろ長可さんの方に向かおう。近付けば、ピッチャーみたいに投げる必要無いでしょ?)


 内野手みたいに投げれば大丈夫だとは思うが、やった事無いポジションだから制球は良くないかもしれないぞ。

 まあ近付けば当たるとは思うけど。


 建物の方に走りながら、チラッと蘭丸達の様子を窺った。

 怪我人が多数因幡くんの近くに運ばれて、治った連中はまた戦場に向かって行くのが見えた。

 アマゾネスさんも比較的軽傷な人達に回復魔法をかけて、治療をしている。

 おそらくは大丈夫だろう。


 既に走って近付いている姿を帝国兵に視認されたが、此処まで来たら関係無い。

 どんどん鉄球を投げていく。

 悲鳴を上げながら吹っ飛んでいき、とうとう隊長らしき人物の近くまで来た。


「お前が得体のしれない攻撃をしていたのか!」


(そんなの素直に答えるわけないじゃ・・・)


「そうだ!」


(答えるのかよ!)


 あれ?答えたらまずかった?

 でも言っちゃったものはしょうがない。


(あまり手の内晒すのもどうかと思うよ。まだ残存兵の殲滅も終わってないし)


 なるほど。俺やらかしちゃった系だな。

 でも此処に居る連中さえ倒しちゃえば・・・


「動くな!!」


 その声に振り返ると、一人の兵が子供に剣を突き付けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ