表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1257/1299

勝手に改造

 合う人と合わない人って居るよね。


 今回は中央に、アンデッドではなくハイタイガーとブックベアーが現れた。

 その影響から、中央にはこちらも長秀と阿吽だけという布陣で臨むこととなった。

 それに対して右軍をタツザマ隊だけでなく、イッシー隊も送る事にしたんだけど。

 当初はトキドを送ろうかという案もあった。

 でもここで浮き彫りになったのが、相性である。

 トキドとワイバーン隊は、どちらかというと大味な攻撃が多い。

 トキドは言わずもがな、ワイバーンの炎もそうだが、広範囲に渡る攻撃が多いのだ。

 その点タツザマはスピードが生命線であり、統率された部隊の動きが鍵となってくる。

 そう考えるとトキドとタツザマは、二人だけならまだしも、お互いが部隊を率いて戦うとなると、メリットよりもデメリットの方が大きいという判断になった。


 そこで考えてみたのだが、じゃあこの二つの部隊は誰が合うのか?

 ちなみにイッシー隊は、どちらとも協力して戦った経験がある。

 どちらも普通にサポート出来るという、特異な部隊であるとも言えるので、ここで例に挙げるのはやめておこう。

 となると他の部隊になるんだけど、タツザマ隊であれば意外と蘭丸が合う気がする。

 彼は周りを見ていて、他人に合わせようとしてくれる。

 タツザマ隊の動きに慣れれば、蘭丸のサポートはかなり強いと思った。

 では逆に、トキド隊はどうなのか?

 ここで思ったのが、合う部隊って居なくない?

 トキド隊には部隊での援護よりも、個人の援護の方が強いんじゃないかって思うんだよ。

 その最たる例が、水嶋の爺さんだと思う。

 彼なら遠くから、トキドやワイバーンを狙う敵を的確に撃ち抜いてくれる。

 要はトキド達が気持ち良く戦える、最高のサポートキャラになれるんじゃないかって話だ。

 まあそれを言ってしまうと、水嶋の爺さんは誰とでも合うという話なんだけど。

 彼の他だと、意外に佐藤さんもアリかなと思ったりしている。

 あの自由自在に素早く動ける佐藤さんなら、ワイバーンの炎やトキドの攻撃も避けられると思えるからね。

 ただし地上戦に限るけど。


 公には仕事でぶつかり合う二人でも、仕事が終わったら一緒に飲みに行く仲。

 トキドとタツザマって、そんなイメージかもしれない。








「ふむ。福島がそう言うのは珍しいな」


「すいません。生意気な事を言ってしまって」


 目の前に居る秀吉に、頻りに頭を下げる福島。

 だが秀吉は福島の反応を見る限り、それがあながち間違っていないと、藤堂と加藤の様子を盗み見していたので分かっていた。



「帰ってきたら、殴っても良いと思う」


「え?それはやったら怒られますよ」


「許す。二人ともゲンコツを落としてやれ」


 ニヤニヤしながら言う秀吉に、福島は恐縮しながらも了承する。



「それでは私もそろそろ、出撃の準備をさせていただきます」


「油断するなよ」


「お任せを」


 福島は立ち上がると、日本号を持って出ていった。



「福島正則、さてさて何処まで強くなれるやら」


「盗み見は良くないな、博士」


 福島と入れ替わりで入ってくる、頭が爆発もとい、天然パーマでアフロのようになった男。

 彼がコバがライバルと認めた、M博士だった。



「博士は何をしに?」


「実は、藤堂と加藤が面白い事をしていたのでね。ちょっと私も、参加してみようかと思いまして」


「例の三機目か。博士の事だ。何か勝手に手を加えたのだろう?」


 秀吉は楽しそうに言うと、M博士は薄く笑った。



「仕方ないでしょう。彼等は確かに、城造りには長けている。でも兵器という面では、全くの初心者だ」


「見かねて手を貸そうと?」


「いえいえ、手を貸すつもりはありませんよ。私ならもっと上手くやれると思うんでね」


「ハッハッハ!そのまま強奪しようというのか。やはり貴方は、私と考えが合う」


 秀吉は立ち上がると、博士と共に部屋を出る。

 そして藤堂達が共同で作り上げた、三機目の機体の前に移動をした。

 秀吉はその姿を見ると、彼に詳細を尋ねる。



「これは?」


「ナパーム弾です。丹羽長秀は森魔法という植物を操る魔法を使うと聞いている。厄介なら燃やしてしまえば良いんですよ。人ごとね」


「こっちは?」


「電磁ネットです。古武術で奇妙な動きをするという話ですから。だったら動けないようにしてから、刺し殺せば早いでしょう?」


「ククク、人を効率良く殺す事しか考えていないな。やっぱりアンタは素晴らしいよ」


 秀吉が博士を褒めると、彼はキョトンとした顔をする。

 秀吉もそのような顔をされるとは思わなかったのか、誤魔化すように咳をした。



「そんなに不思議な事ですかね。私はやりたいから、やっているだけなんですけど。神に叛逆したい秀吉様も同じでしょう?」


「う、うーん?同じと言って良いのか?」


「まあ秀吉様がどう思おうが、別に興味ありませんがね。私は私のやりたい事をする。そのパトロンとなってくれる貴方が、私には必要だという事です」


「・・・まあ良い。私は藤堂達を見てくる。博士も頑張りたまえ」


 秀吉はそそくさとその場を離れた。

 少し離れた場所から振り返り博士の様子を見てみると、彼は何事も無かったかのように武器を増設していく。



「マッドサイエンティストって、本当に居るんだな」









 ハイタイガーとブックベアーは、藤堂達が思っていた以上に苦戦をしていた。

 その理由は、やはり阿吽が指摘した通りだった。



 ハイタイガーやブックベアーには全方位にカメラが設置されていて、死角が無いように目の位置に関係無く見回す事が出来る。

 しかしそれは、後方や足下等を見る事が出来るモニターがあるだけで、一斉に確認する事は出来ない。

 それと同じ理由で、藤堂と加藤はハイタイガーとブックベアーを動かす事は出来るが、その動きに合わせて武器を上手く操る事が出来なかったのだ。

 ブックベアーのロングソードは、まだマシである。

 すれ違い様にその刃で斬る事が出来るから。


 だがハイタイガーのビーム砲は違う。

 相手の動きに合わせて砲口の位置を微調整し、止まった瞬間を狙って撃たなければならない。

 それをやるには目も手も何もかもが足りず、二人にとって新たな武装は、ただの宝の持ち腐れだったのだ。



「昨日より弱くなっていませんか?」


「勝てそうだな」


 阿吽と長秀は油断はしていない。

 ただ事実を述べていた。



「ええい!加藤、やるぞ!」


「この状態でか?」


「そうだ。俺に合わせてくれ」


 藤堂は覚悟を決めて、ただ阿吽に突撃していく。

 それに合わせて加藤も、長秀に突っ込んでいった。

 長秀と阿吽は並んでおり、二人は顔を見合わせて、ただの玉砕戦法だと思った。



「そろそろ仕留めましょうかね」


「今だ!」


 ハイタイガーとブックベアーは獣形態から人型へと変形する。

 そして前へと飛びつくように、二人に抱きついた。



「な、何をする!?」


「まさか、自爆!?」


 長秀は先日魔王から、倒せないと思ったら自爆するロボットも居ると聞いていた。

 彼等の行動がそれにそっくりだった為、このままではマズイと慌て始めたのだ。



「いや、そんな事はしない。まだ勝ち目はあるからな」


「来い、ナゴヤオルカス!」


 加藤が叫ぶと、空から猛スピードで何かが飛来してくる。

 それを見た長秀と阿吽は、まさかまだ出てくるとは思わなかったのか、唖然としていた。



「マズイですよ!このまま攻撃をされたら、逃げ場がありません」


「待て待て、それは無いだろう。今私達を攻撃すれば、この二人にも攻撃が当たるぞ。味方を巻き添えにしたりは、流石の木下軍でもしないだろう」


 ガッチリと捕えられた二人は、何とかこの拘束から抜け出そうと力を入れている。

 しかし長秀と阿吽よりも力が強い、ハイタイガーとブックベアー。

 彼等はモーターをフル稼働させて二人の抵抗を阻止していた。

 優勢な藤堂達は、さぞ仲間の登場に喜んでいるかと思われた。

 だが実際は、二人も混乱していたのだった。



「藤堂、お前がやったのか?」


「ち、違う!基本設計は加藤だっただろ。名古屋城に合わせて鯱鉾から取って、鯱をコンセプトにしていたのは知っているからな」


「じゃあどうして、見た目が鯱から鳥になってるんだよ!」


 二人が混乱していた理由、それは自分達が知らない機体が飛んできたからだった。










「おっと、呼ばれたか。予定より早いが、まあ良い」


 博士は機内で改造を施していると、何やら信号をキャッチした事に気付く。

 外装や武装のチェックは終わっている。

 満を持していたわけではないが、博士はそのまま操縦桿を握った。



「行け、イグレット!」


 カタパルトから飛び出していく機体。

 それは加藤が作り上げた鯱の形ではなく、鳥の形をしていた。

 単純に身体の左右に翼を取り付けただけなのだが、安定感はまるで違う。

 人が乗る事を前提で考えていなかった加藤は、余計なパーツを排除していたからだった。



「居た居た。ふむ、なるほど。だったら丁度良いな」


 博士はハイタイガーとブックベアーの上空までやって来ると、何も言わずにあるボタンを押した。



「お、おい。何か落ちてくるぞ?」


「藤堂、お前何か取り付けたのか!?」


「ち、違う!俺じゃない!」


 藤堂と加藤のやり取りは、最早通信機を使っていなかった。

 その為長秀と阿吽にも、それが想定外の出来事だと分かった。



「どういう事ですかね?」


「分からない。だが今が好機というのは間違いないだろう」


 二人は拘束を振り解こうと、両腕に力を入れる。

 だが二人は、上空から落ちてきた物により、それどころではなくなってしまった。




「うわあぁぁ!!熱いぃぃ!!」


「クッ!考えが甘かった!」


 ハイタイガーに命中した落下物は、当たると辺りを巻き込んで炎上し始めた。

 それはハイタイガーが掴んで離さない長秀だけでなく、隣の阿吽と味方であるはずのブックベアーまで巻き込んでいた。



「なっ!?誰かが操っているな!」


「おい、お前達。二人ともこの手を放さなければ、お前達も焼け死ぬぞ?」


 阿吽の燃焼範囲は大きい。

 ハイタイガーに当たって散った物を、一番被ってしまったからだ。

 今すぐにでも助けなければならない長秀は、冷静を装って藤堂と交渉を始める。

 だが彼は、全く聞く耳を持たなかった。



「馬鹿め。俺達の装甲がこの程度の炎で負けるものか」


「・・・チッ!ならば、土壁!」


 長秀が土壁を作ると、ハイタイガーに身体を預けるようにして、土壁を蹴り飛ばす。

 すると土壁が阿吽に降りかかり、炎が少し弱まった。

 更にその土は、運良くブックベアーの肘関節のアクチュエーターに異常をきたし、阿吽は弱まったブックベアーの腕から脱出した。



「クソッ!」


 その手を振り解いた阿吽は、すぐさまハイタイガーの頭をスティレットで貫く。



「うわっ!」


 ハイタイガーが逃れた長秀は、阿吽と共に大きく飛び退いた。

 そして二人は、上空を飛ぶ物体に目をやる。



「アレは一体?」


「分からない。しかし向こうも戸惑っているようだ」


 追撃をしてこない様子から、藤堂達も予想外の攻撃だったようだ。

 そして加藤は、怒りをぶちまけながら叫んでいた。






「おいコラ!俺のナゴヤオルカに乗ってる奴、早く降りてこい!俺の鯱を勝手に鳥に変えやがって。許さんぞ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ