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空間を貫く

 こう言っては怒られるかもしれないけど、ハッキリ言ってあんまり強そうに思えない。


 僕達は最上階で、藤堂高虎と福島正則。

 そして石田三成改め、石田通成の三人と対峙した。

 三人とも秀吉に、僕達が知らない裏で見出された人物である。

 しかしながら僕はこう思ってしまった。

 あんまり強そうじゃない。

 と言うよりも、戦闘に特化していないという気がする。

 特に藤堂と石田に関しては、元々が裏方仕事の方が得意なタイプに思える。

 その証拠に藤堂は多数の城を築いているし、石田もよく分からない薬を作り出していた。

 この二人は僕が思うに、既に結果を出していると言っても良い。

 特に藤堂は、多数の城を築いている。

 それってかなり大きな功績じゃなかろうか?

 もし僕が藤堂の主君だったら、よくやったと手放しに褒めている気がする。

 だって城だよ?

 沢山作ればいいものじゃないけど、このおかげで帝国や連合、王国にも牽制出来ているわけだ。

 城が近くにあるってだけで、圧力があるからね。

 そこを拠点に攻めてくるんじゃないかとか。

 連合とかはリュミエールが取るに足らないとか言いそうだけど、周りはそうじゃないし。

 帝国や王国だって自分の領地の近くに城が建てられたら、面白くないだろうしね。

 そう考えると、藤堂も仕事はしている。

 そして石田も変な薬を完成させていた。

 まだ何処で使うかは分からないけど、おおよその予想は出来ている。

 アレは厄介な気がする。


 それに対して最後に残った福島正則だけど、彼は何故選ばれたんだ?

 ハッキリ言って戦闘力も微妙だし、特殊な能力が無ければただの二流って感じなのだが。

 ジャパーン!って叫ぶと槍が伸びるだけ。

 明らかに弱い。

 僕が甘く見過ぎなのだろうか?


 能ある鷹は爪を隠す。

 もしかしたら僕達が騙されているのかもしれないけど、そうじゃない気もする。

 アイツ等、相当鋭い爪でも持ってるのかなぁ?









 あの沖田をこうやって封じるか。

 一人に対して複数で戦う。

 まあ弱い立場ならそれも考えられるけど、まさか秀吉の部下がこういう手を使ってくるとはね。


 俺はてっきりプライドが高くて、あんまり連携とかしてこないだろうなって思ったんだけど。

 特に石田の一言で、藤堂と福島は上手くやっていた。

 コイツ等、意外と俺達の考え方に近いのか?



「魔王様、ちょっとこれは面倒ですね」


「素直に厳しいと言っても良いのよ?」


 むしろ沖田の方が、プライドが高いかな?

 面倒という言葉で誤魔化しているけど、明らかに今のはヤバかったし。



「マオくん、あの三人は確かに面倒だよ」


「うーむ。どうするか」


 こっちも連携を取って、3vs3という形にするか。

 もしくは全員をバラバラにして、1vs1を3組作るか。

 向こうの狙いが前者なのは分かっている。

 だからそれに乗っかって戦うのもアリなのだが、ちょっと俺には懸念があった。

 沖田と俺が、上手く立ち回れるかという点だ。


 ハッキリ言うと、俺が沖田の動きに合わせられる自信が無い。

 出来るかもしれないけど、ほとんどそっちに集中してしまい、あんまり上手く立ち回れない気がするのだ。



「大丈夫。僕が何とかしますから」


「沖田くん!」


 まさかまた一人で突っ込むとは。

 あまり賢いやり方じゃないけど、悔しかったのかな。



「石田、また来たぞ」


「懲りない人だね」


 石田は両手を上げると、指揮者のように動かした。

 すると沖田は透明な壁にぶつかり、再び水責めに遭わされている。

 ただし、沖田も馬鹿じゃない。



「また同じ事を!」


「す、凄い」


 狭い空間内に閉じ込められた沖田は、透明な壁を四方触って把握する。

 大きさを把握した沖田は、三角飛びの要領で上へ向かっていった。

 もしかして、上からの脱出を考えている?



「無駄だよ。この空間は、上にも下にも影響がある。逃げ場は無いからね」


「別に構わないよ。でも、僕だけに構っていられるほど、余裕あるかな?」


「しまった!」


 なるほど!

 沖田は自ら囮になったのか!

 俺が感心している間に、ハクトは勘付いていたようで、既に藤堂に向かって矢を放っていた。

 連射するハクトは、とにかく魔法を使わせないように、藤堂を狙い続ける。



「うわっ!」


「藤堂、今助ける!ジュァパーン!!」


 藤堂に向かっていく矢を、ネオ日本号で叩き落とす福島。

 だから俺は、それに混じって鉄球を投げつけた。



「おごっ!腕があぁぁぁ!!」


「マジかよ・・・」


 福島って本当に強いのか?

 まさかあんな簡単に当たるとは。

 ハクトの矢にばかり集中していたせいか、混じっていた鉄球を左肩に食らって、悶絶している。

 ボキッ!という派手な音がしたので、骨が折れたか肩が外れたかはしたはずだ。



「痛いぃぃ!」


「福島、またか。お前、一旦成長しろよ」


「うぅ、分かった」


 藤堂に怒られた福島は、肩を押さえながら後ろに下がっていく。

 これで人数も有利になるぞ!



「沖田、俺がまた壁を破壊するから。今のうちに石田を倒すぞ」


「分かりました!」


 沖田は相当高くまで上がっている。

 沖田の下は人が足を伸ばして入れるくらいの透明な風呂のような場所に、水が5メートル以上溜まっていた。

 俺がパンチで破壊すると、そこから大量の水が外へ溢れてきた。



「形勢逆転!俺達の勝ちだな」


「僕が藤堂を抑える。二人は石田をお願い」


 ハクトが藤堂を抑えている間に、二人がかりで石田を倒す。

 そうすれば、この謎に広い空間ともおさらばだ。

 俺達は優位に立ったからか、心に余裕が出来た。

 だけど、向こうは不利だからといって慌てる様子が見受けられない。

 これは何かを狙っているのか?



「藤堂、分かっているな?」


「あぁ」


 二人は何かをしようとしている。

 俺と沖田はそれを察して、二人で石田に向かった。



「行くぞ!」


 俺は石田に向かって走り出した。









 おかしい。

 全く距離が縮まらない。

 遠くもなく近くもない。

 ずっと一定の距離を保ちつつ、石田は手を広げていた。



「魔王様、魔法はダメですか?」


「その前に鉄球だ」


 走りながら投げても遠くまで届かない。

 俺は一旦足を緩めると、外野手がバックホームを狙うように二歩三歩ステップを踏んで投げた。



「行け!」


「無駄だよ」


 な、何だ!?

 鉄球は物凄い勢いで、飛んでいるように見える。

 だが実際には、俺の数メートル前をずっと浮いているだけなのだ。

 しばらくすると勢いが無くなり、鉄球は徐々に落ちていき、最後は地面を転がった。



「ダメだ。届かん」


「魔法もダメなんですか?」


「魔法を放っても構わないよ。でも、絶対に届かないけどね」


 クソー。

 その余裕が腹立つわー。


 しかも俺と沖田、走っても走っても周りの景色が変わらない。

 同じ所をずっと走っているのを見ると、ランニングマシンを外で使ってるかのような感覚に陥ってくるぞ。



(あのさ、ちょっとずつ足を緩めて、途中から歩いてみてよ)


 うん?

 よく分からんけど近付けていないし、それでも良いかな。



「え?」


「アレ?」


 俺は歩き始めたのだが、隣では沖田は走っている。

 しかし二人とも目は合う。

 どういう事?



(理屈は分かった。どうやらコレ、石田との距離を一定に保つようになっているらしい。だから二人とも、後ろには普通に下がれるはずだよ)


 だからさっき、沖田がジャンプしてきた時は普通に戻ってきたのか。

 でもそれって、攻略のしようが無いんじゃないか?



(と思うじゃん?一つだけ試したい事がある)









「ま、魔王様?」


 沖田はかなり戸惑っているようだ。

 僕が完全に立ち止まっているのに、沖田と同じ場所で目を見ているから。

 いよいよ沖田も観念したのか、足を止めた。



「フフン。魔王と言えど、僕の空間能力には敵わないようだね」


「一つ聞いても良い?」


「何?」


「この空間、限度はあるの?」


「無いよ。多分ね」


 本人も知らないのか。

 しかし気前よく簡単に話してくれたな。

 やっぱりプライドが高いって考えは、間違っていなかったようだ。

 僕が下手に聞いても良いって言っただけで、すぐに話すし。

 これがもし、教えろというような高圧的な態度だと、喋らなかったと思う。


 それに限度は無いと言ったけど、アレはある言い方だな。

 本当はあるけど、プライドがそれを許さないって感じか。

 コイツ、以前は高学歴のボンボン系な気がする。

 もしくは勉強命の友達少ない系。



「さあて、じゃあ僕の実験に付き合ってもらおうか」


「魔法かい?無駄だと思うけどね」


「そう?リュミエールっていう白いドラゴンの得意技を、模した魔法なんだけど」


「リュミエール?」


 コイツは他人に興味が無いのかな。

 ドラゴンなんて最大レベルの脅威を、知らないなんて有り得ない。



「魔王様、届くんですか?」


「多分ね。行くよ!光魔法、レイヨン・デ・リュミエール!」


 両手を前に出すと、その手のひらから腕と同等の太さの光線が発射された。

 ちなみに名前の由来は、フランス語で光線という意味だ。



「ば、馬鹿な!?」


「石田!」


 やっぱりね。

 空間を貫いた僕の光線は、石田の左頬辺りを通っていった。

 頬の肉が焼けたようで、地面を転げ回っている。



「アッハッハ!余裕ぶっておいて、コレだよ。やっぱり天才様は違うよねぇ」


「魔王様、性格悪いですね。土方さんみたいですよ」


「え?そう?」


 土方と同じなら、褒め言葉として受け取っておかないと。



「それにしても、何をしたんですか?」


「別に何もしてないよ。光というのは、一秒間に30万キロ進むと言われている。じゃあその一秒間に進む距離と石田の空間、どっちの方が長いと思う?」


「な、なるほど?」


 あまりに壮大なスケールだからか、沖田もあんまり分かっていない。



 だけどこれも、ちょっとした賭けでもあった。

 空間を操れるなら、空間を歪曲する事も出来ると思う。

 もし空間を曲げられるのなら、光は屈折して明後日の方向に進む可能性もあった。

 まあ本当は出来たのかもしれないけど、それをしなかったのは奴の驕りだろうね。



「お、お前ぇ!」


「もう一発、レイヨン・デ・リュミエール」


「ぐあぁぁぁ!!」


 よし!

 今度は左足に当たった。

 太腿を貫いているし、威力も申し分無い。



「勝ったな」


「マオくん。それどころじゃないよ」


 え?

 ちょっと決めてる最中にそういう事言われると、僕がダサいじゃないか。



「何が?」







「後ろを見てないの?福島って人、もうすぐ出てきちゃうよ」

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