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沖田絶叫

 いつかはやってみたかった。

 三人で忍び込むなら、やっぱりアレしかないと。


 名探偵と手品が得意な怪盗。

 これはかつて真似した経験がある。

 まあ真似したけど、全く上手くいかなかった。

 だが、仲間が居たらどうだろうか?

 凄腕ガンマンと剣の達人を仲間に持つ三代目。

 子供の頃から見てるけど、やっぱりカッコイイ。

 でも三人でやるなら、レオタードで色気のある方が好きなんだよね。

 沖田とハクトなら、沖田が剣の達人でもあるから、前者の方が良いのかもしれない。

 でもハクトが凄腕ガンマンかと言われたら、それは違うと言うしかない。

 もし水嶋の爺さんかイッシーなら、ちょっと考えたかもしれない。

 でも二人ともあの渋さが出せるかと言われたら、ちょっと違うんだよなぁ。

 すぐに死ねって言って発砲する爺さんと、石の仮面を着けた気持ちの悪いおっさんだもん。

 無理でしょ。

 だから三代目一行は、諦めるしかなかった。


 それに沖田とハクトでやるなら、レオタードの三人姉妹の方が合っていると思った。

 理由は簡単。

 顔が整っているから。

 そして僕の勘は当たった。

 見る人が見れば、鼻血が出るだろう。

 特に腐った女の子にはね。

 勿論、僕も似合っていると自負している。

 物語のメイン主人公である次女は、やっぱり僕しかいない。

 ただし基本的に、全て僕が担当する気がするけど。

 長女のような司令塔も兼ねるし、三女のようにコンピューターや機械に強いのも僕。

 その辺はちょっと違うけど、でも沖田とハクトにはビジュアルだけでもかなり大きなインパクトがあるから。

 決して僕に華が無いから、二人に頼りきりってわけではないよ。


 そして僕達はこれから、三人姉妹で伝説を作る。

 たった三人で江戸城を陥落させたという伝説を!

 行くわよ!









 ドローンが江戸城に激突したおかげで、皆は城の方に警戒が偏っている。

 どうせだから使い物にならなくなったコントローラーも、明後日の方向に投げておこう。



「あっちからも音がしたぞ!」


 よし、狙い通り。

 コントローラーを投げた僕は、音を立てないように堀の中に入った。



「水の中に入ったは良いですが、これからどうするのです?」


「水中には、城と繋がる出入口があるのが相場よ。そこから侵入するわ」


「マオくん、いつまでその喋り方なの?」


「ハク子!喋り方って何!ちゃんとアタシの真似しなさい。沖子もよ」


「沖子・・・。そこは普通、総子じゃないですか?」


 むむ。

 言われてみればそうだった。

 しかし総子よりも沖子の方が言いやすい。



「貴女は沖子よ。分かったわね?」


「・・・分かったわ」


「沖田くん!?」


「ハク子も良いかしら?」


「・・・ハク子も良いわ」


 沖子は少し吹っ切れたかしら?

 ハク子は・・・無表情ね。



「潜るわよ。ついてらっしゃい」


 僕は水の中に潜った。

 だが思った以上に、この堀が深い。

 僕の泳ぎでは、一番下まで行けなかった。



「ぶはっ!」


「魔王様、入口が見当たりませんわ」


「ノンノン、マオ子よ。でもちょっと予想外だったわ」


「マオ子、どうするつもり?」


 沖子は意外と乗ってくれている。

 た、楽しい!

 だけど肝心の入口が見つからないのは、かなり厄介ね。



「分かったわ。マオ子、バージョンアップするから。ちょっと待ってて」








「マオ子、バージョンアップ!」


「声がデカイわよ!」


「あ、わりいわりい」


 弟は俺に入口の捜索を頼んできたので、交代する事になった。

 正直なところ、俺は三代目一行でやりたかったけど、これはこれで面白い。



「二人とも、アタシについて来れるかしら?」


「さっきくらいの深さなら、アタシ余裕よ」


「アタシも」


「さっきまでのアタシと、一緒にしないでちょうだい!」


 ・・・なんだろう?

 自分で言ってて、二人とは違ってオカマ口調に聞こえる。

 二人はまだ女性っぽいんだけどなぁ。

 もう少し二人を参考にして、真似してみるか。



「行くわよ」


 俺は水に潜ると、少し辺りを観察してみた。

 何処か水が引き込まれたり、押し出されたりする場所があるはず。

 その辺りを探れば、必ず排水とかしている場所があると思うんだけど。



 すると沖子が、俺の・・・じゃないな。

 アタシの肩をポンポン叩いてきた。

 左を指差している。

 どうやら水の流れが違う場所が、あっちにあるみたい。


 沖子に従って泳いでいくと、石垣に見せかけた排水口が見つかった。

 フフン。

 アタシ達三人姉妹にかかれば、こんなカモフラージュは意味無いわね。


 そしてアタシ達は、そのまま排水口を抜けると、ようやく城の中に潜入する事が出来た。








 ようやく城の中に入ると、アタシ達は鉄格子を外して水の中から上がった。



「沖子、やるじゃない」


「凄いわ、沖子姉様」


「ハク子は妹キャラで行くのね?」


「ちょっと無理してキャラを作らないと、やってられないわ」


 ハク子、無理してるのかしら?

 でもやってられないという事は、キャラを作ればやれるという意味よね。

 だったらキャラを作って、楽しんでもらわないと。



「ハク子は三女、アタシは次女。沖子は長女よ」


「アタシが長女なの!?」


「そうよ。今の仕事ぶりを評価して、長女にしてあげる」


「う、嬉しいわ」


 全く嬉しくなさそうね。

 顔も引きつってるし。

 でももう決めたから、変更はしないわ。



「この後は何処へ行くのかしら?」


「上よ。最上階よ」


「どうして?」


「どうして?どうしてって聞かれると・・・。悪い奴と馬鹿な奴は、高い所に居るっていうのが、相場なのよ」


 良いんだよね?

 昔、お前に言われた言葉な気がするんだけど。



(馬鹿と煙は高い所が好きってね。悪い奴も大概はそうだし、あながち間違ってないと思うよ)



「じゃあ、上へ向かうわね」





 城の中を見てみると、意外と広いわね。

 建物の大きさは安土と変わらない気がするけど、中はずっと広いわ。

 これは石田の能力かしら?

 でもこれだけ広いと、敵と遭遇する確率も低いはずよ。



「むっ!?て、敵?違う!変態だ!変態が出たぞー!」


 あっさり見つかったわ。

 どういう事よ!



「沖子姉様、やりなさい」


「任せて」


 沖子は剣を抜くと、男の首を一瞬で斬り落とした。

 これだけの広さよ。

 あの一瞬なら、聞こえてないはず。

 そして今回はフリではなく、本当に聞こえてなかった。



「変態とか失礼しちゃうわ」


「そ、そうよね。お姉様達もそう思うわよね?」


「ハク子、改めて聞かないでほしいわ」


 ハッキリ言って、変態よ。

 どれだけ顔が良くても、貴女達はそこそこガタイは良いのよ。

 二丁目で働いててもおかしくない、アンバランスさだわ。



「お、お姉様。アタシが索敵するわ」


「流石はハク子ね」


 ハク子の耳にかかれば、敵が近付いてきてもすぐに分かるわ。

 絶対に見つからない安心感があるわね。

 と思ったんだけど、よく見たらこの城、ハイテクじゃないの。



「待って。防犯カメラまであるわね。アレは危険だわ」


「カメラ!?それは危険だわ!アタシ達の醜態が、間違えた。美貌が映っちゃう!」


「ハク子、貴女ちょっとダメね。映っても良いのよ」


 沖子はモデルばりのウォーキングを始めると、カメラの前へ歩いていく。

 堂々としたその姿は、パリコレも真っ青なステージだったわ。



「せい!これで問題無いわ」


「え・・・。壊したら異常があるって、勘付かれないかしら?」


 沖子は無言になった。

 アタシも同じ考えだったけど、言われてみればそうだわ。

 沖子の奴、沖田と違ってちょっとバカね。

 アタシは変わらないけど。



「この際だから、アタシがカメラを見つけたら鉄球で順次壊すわ」


「それで良いのかしら?」


 本当ならカメラをハッキングとかして、偽の映像を流したりするんだろうけど。

 アタシには無理。

 弟にも聞いたけど、そこまでの専門知識はコバしか持ってないって言われたわ。

 だったらもう壊しちゃったし、一台壊すのも十台壊すのも変わらないという結論に至ったのよね。



「ノープロブレムよ。カメラを破壊しながら、階段近くの敵は沖子が奇襲。ハク子は耳に全力を傾けて」


「分かったわ」


「任せて」



 あら、思ったよりなかなか良いチームワークじゃない?

 気付けば地下から地上まで、バレずに上がってきてるじゃない。

 沖子とハク子の力、相性良さそうね。



「ちょっと待って!敵が近付いてきてる」


 ハク子の合図で一度立ち止まったアタシ達。

 すると沖子の雰囲気が変わった。



「マオ子、今回の敵は普通じゃない。もしかしたらアタシ達、隠れているのがバレているかもしれないわよ」


「沖子、やれるわね?」


「・・・任せて」


 沖子は剣に手を置いた。

 足音が段々と、近付いてくるのが聞こえる。

 やはり居場所がバレているのかしら?

 沖子の右手に力が入った。



「殺るわ!」


 沖子が通路の角から出た。

 すると剣を受け止められたのか、剣戟の音が聞こえた。



「誰だ!?」


「・・・いやあぁぁぁぁ!!」


 沖子の悲鳴!

 もしかして、痴漢!?



「そこまでよ!この痴漢!」


「ち、痴漢!?誰が!」


「マオ子姉様、アタシこの人見た事あるわ」


 男は痴漢じゃないと否定した。

 ハク子も知っているみたいだけど、アタシは知らない。

 いや、これは知ってるのかもしれない。

 だって向こうの格好、アタシも見た事あるもの。



「お、沖田!?お前、何という格好をしているんだ!?」


「斎藤さん!」


「斎藤?斎藤一?」


「ほう、そっちの変態も知っているとは」


 へ、変態!

 他人から言われると、腹立つわ!



「沖子、やっておしまい!」


「言われずとも!」


 沖子が沖子を忘れて、完全に沖田に戻った。

 沖田の剣と斎藤の爪が、激しい金属音を掻き鳴らす。



「沖田、お前!」


「皆まで言うな!」


「ぐふっ!」


 沖田は剣を、斎藤の爪に巻き上げられた。

 しかしそれは沖田の罠であり、その瞬間に沖田の爪が斎藤の喉元を突き刺していた。

 斎藤が怯むと、沖田は斎藤の全身を切り刻み、斎藤は最期の言葉すら残せずに砕けて散っていく。



「沖子姉様は、それで良かったのかしら?」


「当たり前じゃない!今のは忘却の彼方へ行ってもらわないと、アタシが困るわ」


「そうなの?」


 ハク子は沖子に対して、かつての仲間に話も聞かずに倒してしまって良かったのかと、彼女に聞いた。

 すると沖子は、真顔でこう言ったわ。








「ハク子、貴女は今の姿を仲の良い人に見られても平気かしら?貴女の場合は、蘭丸殿ね。アタシは壬生狼の仲間にこの姿を見られるとは、予想していなかった。もしこの姿を見られたとして、それを言いふらされても困る。だから斎藤さんには悪いけど、またすぐに黄泉へ旅立ってもらったわ」

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