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江戸城潜入

 やっぱり完全なものなんて無いよね。


 武市は御所に潜入する為、ヒト族の姿をしたアンデッドとして蘇っていた。

 しかもアンデッドだとバレないように生気のある顔をしており、一週間近く前から潜入していたのにも関わらず、誰も見抜けなかったという怪盗様もビックリな潜入ぶりだった。

 まさか種族の壁を超えて復活するとか。

 そんなの誰が予想出来るよ。

 僕は話を聞いた時、てっきり変装しているかなくらいにしか思っていなかったのに。


 しかしこうも思う。

 ダイナソーからヒト族へ。

 もしこれを坂本がやっていたら、どうなっていただろうか?

 彼の夢は商売人になる事だった。

 武市のようにヒト族になっていたら、もしかしたらそのまま逃亡して・・・。

 と思ったけど、やっぱりそれは仮定の話。

 武市も同じだったけど、使い慣れた身体だから出来る事もある。

 商人の場合、盗賊に襲われたりする事もあり得る。

 だけど坂本が武市のように、元の身体と勘違いして爪を伸ばす仕草をしたが為に、斬り殺されるというのも無いわけではない。

 こう言うと怒られるかもしれないけど、ダイナソーからヒト族の身体になるのは、大幅なグレードダウンと言っても過言ではない。

 坂本がそこまで、自分の新しい身体を許容出来るかと言えば、無理だった気もする。

 武市が近衛騎士にあっさり斬り殺されたように、物凄く弱くなるからね。


 そう考えると、秀長もかなり酷いと思える。

 武市に潜入をさせたのは、あわよくば帝を暗殺出来ればラッキーくらいの考えだったんじゃないだろうか?

 じゃなければヒト族の身体は騎士に勝てないと、武市に伝えておいても良かったはず。

 それをしなかったという事は、元から見捨てる気だったんだろうな。

 ただ武市に関して、一つだけ疑問がある。

 意志のあるアンデッドは、何かしらの強い思いが無いと無理なんだけど。

 武市はどんな思いを、持っていたんだろうか?

 今になって聞けないし、少しモヤモヤするものが残ってしまった。









 サネドゥの提案は、彼等を割ってしまった。



 やはり籠城がベストだと考える帝、オケツ派。

 サネドゥの考えに賛同する、トキド、サネドゥ派である。


 人数的には前者の方が、圧倒的に多い。

 帝とオケツの二人以外に、ウケフジと太田ゴリアテコンビにお市と蘭丸、こちらの考え方である。

 それに対して攻めたいと考えているのは、トキドとサネドゥ以外に、タツザマと慶次が当てはめられた。

 ちなみにタケシもこちらの考えだが、動けない男に発言権は無く、彼は頭数に入っていない。



「攻めるのは危険です。まずは守りませんか?」


「守っていても埒があかない。消耗させられていると分かっているのに、何故ずっと守るんだ?」


「それに今だから攻められると言える。逆に言えば、今しか勝機は無い!」


 トキドとサネドゥに押される太田。

 温厚な性格の太田では、こうなるのは目に見えている。

 そこでゴリアテは、二人に対して反論を開始する。



「まずいつまでというのは、私にも分からん。だが、勝機が無いというのはあり得ない。何故なら、裏で魔王様が動いているからだ」


「そ、そうですよ!魔王様が今、江戸城へ潜入しようとしています。しかもハクト殿と沖田殿も一緒ですよ。負けるはずが無い」


「沖田!?あの天才沖田総司か!?」


「帝は沖田殿を知っているんですか?」


 思わず知っている名前が出て、声が出てしまった帝。

 しかし彼が知っているのは史実の沖田総司であり、この世界の沖田ではなかった。



「面識は無いが、沖田の名を冠するなら、強いんだろうというのは分かる」


「その通りです。彼は若いですが、ハッキリ言って我々と同等以上に強いですよ」


「太田殿と同等以上!?それは凄いですね」


「私の考えでは、超回復という能力ありきで考えても、タケシ殿と良い勝負が出来る強さです」


「そこまで言うなら、戦ってみたいなぁ。今なら瞬殺されるけど」


 タケシは沖田と本気で戦ってみたいと言う。

 更に太田とゴリアテがここまで推しているのを聞いて、少し考えを改めた。



「そこまで言うなら、様子を見ようか」


「いや、待ってほしい」


「トキド殿、何か?」


「期限を決めないか?」


 サネドゥが自分の意見を曲げた中、トキドはまだ攻める事を諦めなかった。



「三日だ。三日待っても敵の侵攻が止まらなければ、俺とサネドゥ殿は攻めるぞ」


「三日ですか」


「やはり消耗戦を狙っているのは、分かっているわけで。俺は相手が狙っている事に対して何も対応しないというのは、俺は違うと思うんだが」


 トキドの言い分を聞いた帝達は、それを了承した。

 やはり彼等も、やられっぱなしでいるのは騎士として我慢ならないという考えのようだ。



 彼等が意見をまとめると、そこに再びアンデッドが向かっているという報告が入る。



「やはり間髪入れずに来るか」


「こうなったら、倒す事より疲弊しない事を重視しよう」


「若輩者の意見ですけど、マオはやってくれますよ。皆さん、絶対に生き残りましょう!」


「分かった。魔王様を一番知っている蘭丸殿が言うのであれば、信じてみよう」


「一番知っているのは、ワタクシ。ワタクシ、太田ですから。勘違いなさらぬようにお願い・・・」


 誰も太田の話は聞いていなかった。









 守備重視。

 怪我人を減らして、継戦能力を高めようという考えにまとまった一行。

 しかし彼等は、この三日の猶予がどれだけ厳しい事なのか。

 それをまだ知らない。



「な、なんかアンデッドの姿が変わっていないか?」


「倒しても倒しても、また姿を変えて立ち上がってくるぞ!」


 トキド達がキョートから出た直後、前線に居た騎士達は異形の姿をしたアンデッド達を見て、少し萎縮していた。

 一言で言えば、気持ち悪い。

 前日戦っていた連中とは違い、人の姿からかけ離れていたからだ。



「うへぇ。凄いな」


 シッチは空から、先行させたアンデッドの様子を観察していた。

 前日と違い、更に動きがバラバラだが、その驚異的な回復力の前に騎士達が押されているのが分かる。

 しばらく見ていた後、地上に降りてボブハガーに様子を伝えると、彼は目を細めた。



「石田という男、とんでもないモノを作り出したものだ」


「お館様、我々も投与した方が良いのでしょうか?」


 異形の姿を見たニラは、自分もあのような姿になるのかと戦々恐々している。

 しかしそれを見たボブハガーは、一喝した。



「あのような薬は必要無い!わし等はわし等で戦うのだ」


「ニラよ。お前の心配も分かるが、シッチとワシはお前があんなモノ使わなくても強いと知っている。だから必要なんて無いぞ」


「タコガマ殿の言う通りです」


「シッチ殿、タコガマ殿・・・」


 感無量といった感じのニラだが、そんな空気を読む事無く、ボブハガーは指示を出す。



「シッチ、キチミテがどのような布陣を敷いたか。もう一度確かめろ」


「御意」


 シッチが真上に飛んでいくと、ボブハガーは呟いた。



「消耗戦を読んでいるか、いないか。奴の騎士王としての器、見せてもらおうか」









 さてと、江戸城にどうやって潜入するかな。

 沖田の話によると、なかなか強固な守りをしているらしい。


 僕が知っている江戸城というと、やはり皇居周りの堀があるくらいかな。

 あとは半蔵門とか。

 言ってしまうと僕は皇居に行った事が無いので、外側に堀があるくらいしか知らないんだよね。



「何処が難所?」


「問題は堀ですね。堀を空から越えようとすれば、見つかります」


「弓持ちと銃持ちが、沢山居るね。あれじゃ空からトライクで越えるのは難しいよ」


 空から潜入は、二人とも反対みたいだな。

 となると、水中から入るしかないんだけど。



「二手に分かれませんか?」


「それは駄目。山田が居たら危険だから」


「そうなると、八方塞がりですよ」


 むう。

 あまり濡れたくないけど、この手しか方法は無いな。



「夜間に水中から潜入する。二人とも泳げるよね?」


「僕は大丈夫だよ」


「・・・」


「沖田くん?」


 沖田が顔を背けた。

 まさかコイツ、泳げないのか!?



「お、泳げますよ!でもつい最近、溺れかけたので。あんまり水の中に入るのはちょっと・・・」


「頑張って!」


「・・・はい」


 心底嫌なんだろうな。

 声に全く元気が無い。

 でも水の中は我慢してもらって、後から暴れてもらうとしようか。





 夜になった。

 やはり向こうの視線は、空に向いている。

 だから僕は、コバからもらったアレを使う事にした。



「何これ?」


「ドローンだ。僕もあんまり操るのは上手くないけど、飛ばせば向こうはそっちばかり気にするでしょ」


「なるほど。これが飛んでいる間に、水の中へ入るというわけですね」


「その通り。とは言っても、短時間の目眩しだから」


 飛ばす練習はしたものの、夜間飛行なんかしてないし。

 上手い人なら矢でも鉄砲でも避けられるんだろうけど、僕は無理だろうな。

 だから本当に短い時間しか稼げないと思われる。



「二人とも、準備は良いね?」


「い、良いんですけど」


「この格好、恥ずかしくない?」


「いやいや!イカしてるよ」


 二人が着ているのは、僕が以前小人族に作ってもらった服。

 ・・・服なのか?

 そう、それはレオタードである!



「三人での怪盗って言ったら、コレだよね。お姉さん!美人!可愛い!」


「お姉さんって、僕達男だよ」


「そこは気にしない」


 ちなみに今回、僕はどの色を着るのか非常に迷った。

 僕は司令塔という役割的に長女のような気がするのだが、妖艶でクールな感じで言うと、沖田の方が似合っている気がした。


 そして僕は悩んだ末に、沖田に長女の紫色っぽいレオタードを手渡す事にした。

 ハクトはすぐに三女のオレンジだと決まったけど、これは本当に悩んだ。

 この案は佐藤さんやイッシーにも相談したのだが、やはり意見は割れた。

 それくらい難しい選択だった。

 それを見ていたコバには、鼻で笑われたけどね。



「行くわよ、貴女達!」


「マオくん、そういう感じで行くの?」


「そうよ!沖田もやりなさい!」


「・・・分かったわ」


 おおう!

 吹っ切ったのか、沖田はなりきってくれてるぞ。

 しかも説明してないのに、ちゃんとクールキャラだ。



「アタシがドローンを飛ばしたら、二人は騒ぎに乗じてゆっくりと水の中に入って」


「分かった」


「ノンノン。分かったわ」


「わ、分かったわ」


 よし。

 ハクトにもやってもらう。



「行くわよ。それ!」


 暗闇の中でドローンを空に飛ばすと、プロペラの音に気付いた見張りが騒ぎ始めた。

 それに合わせて、二人は水の中に入っていく。



「アタシも行くわよ。あっ!」


 コントローラーを持ちながらゆっくりと下に降りるのは、やはり無理があった。

 コントローラーを水中に落とすと、ドローンは真っ逆さまに落ちていく。



「敵襲!敵襲!」


 ドローンが江戸城にぶつかった。

 魔力で動かしているから炎上とかしなかったけど、遠距離攻撃だと思われたらしい。



「魔王様、今ので良かったのですか?」








「・・・狙い通りよ!」

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