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騎士王国、開戦

 ロックのおかげでもあり、ロックのせいでもある。


 僕達に情報を渡す為に電話してきたロックだが、そのせいで彼は秀吉達から二重スパイをしていた事がバレてしまった。

 バレてしまったと言ったが、いつかはこうなるとは分かっていた事なんだよね。

 どっちにも良い顔して情報を流すなんて、いつかはバレるに決まっている。

 そのタイミングが今だったというだけだ。

 まあバレてしまったのは残念だが、そのおかげで騎士王国が、秀長達アンデッド軍団の奇襲を受けずに済んだのは大きい。


 しかし、バレてしまったせいで面倒な事態にもなった。

 それは秀長達の攻撃が、予定よりも早まった事だ。

 あくまでも官兵衛の予想だが、結果はその通りだった。

 問題なのは、それに対して騎士王国が対応しきれるかという点だ。

 僕達は人数が少ないし、すぐに動けるからそこまで問題ではない。

 越前国とも連携は取れているし、向こうもすぐに出発すると行っていた。

 だけど、当の騎士王国はどうだか分からない。

 いかんせん求心力の無いオケツが、トップなのだ。

 そして正反対にカリスマ性のあるボブハガーが、死人のはずなのにめっちゃ騎士王っぽい。

 そのせいで騎士王国の一部の騎士は、秀吉軍の方へと寝返るという事態が起きてしまった。

 とは言っても、騎士達が秀長に従うとは思えない。

 あくまでも、ボブハガーを騎士王として立てている感じなんだと思う。

 だから向こうも、一枚岩ではないはずなんだよね。

 もしそれでも団結力があるとしたら、それはもう秀長がボブハガーの勢力に飲み込まれたんだと思われる。


 現状では、勝てるか分からない。

 官兵衛もすぐに出ようと言った際、勝てるとは言わなかった。

 早く出ようと言ったのは、時間が勝敗に左右するからか?

 もしそうだとしたら、僕達が遅れたせいで敗北したと言われかねない。

 この戦い、違う意味でもプレッシャーが大きいかもしれない・・・。









 山田牛一。

 その男は、凄く変わった能力の持ち主である。

 そして僕が想像する、最強の盾とも言える。

 だってそのスタディーワールドとかいう能力、問題が解けなければずっと閉じ込められたままかもしれないからね。

 もし城を守ったりするなら、スタディーワールドを発動させてしまえば良いわけだし。

 山田をスタディーワールド内で殺しても、確実に出てこられるという確信は無いという。

 最悪の場合、馬鹿が相手ならずっとそのままかもしれないのだ。



 しかしそんな事を知らないハクトは、やはり不満そうである。



「僕じゃ無理なの?」


「寺子屋で教わる範囲は、せいぜい中学レベル。塾を経営していたみたいだけど、難関高校や大学レベルだとしたら、ほぼほぼ無理だね」


 もしここに官兵衛が居ても、おそらく難しいと思う。

 ある意味コバが、山田相手には通用するかもしれない。

 ただし、文系問題だと厳しそうだけど。



「ちなみにもし僕がその男と一対一になってしまったら、他の二人はハクトに任せたい」


「分かった。頑張るよ!」


 まあその時は、兄も戦ってもらうけど。



【俺はお前と一緒じゃなくて良いのか?】


 ・・・随分と勉強に自信がありそうな言い方ですね。

 戦いじゃなくて勉強で勝負をするのに、兄さんが僕と一緒にやって、勝てると思ってるの?



【ふむ。足を引っ張る姿しか思い浮かばない。俺もハクトと一緒に、山田と戦っていた方が良さそうだ】


 分かってくれて嬉しいよ。



「それでは魔王様、江戸城へ向かいましょうか」










「どどどどどうする!?いきなりあんな事言われても、こっちはまだ集まりきってないよ!?」


「キーくん、落ち着けよ。もう戦うしかないんだ」


 慌てるオケツに、帝は肩を叩いて言った。



「大丈夫。私達以外の騎士も、すぐに駆けつけますよ」


「そうなの?」


「拙者とウケフジ殿が、東西の騎士達に声を掛けてあります」


 用心深かったウケフジは、東は自分が。

 そして西の騎士はタツザマに任せて、戦場に集まるようにと連絡済みだった。



「しかし、やっぱり先手は取られちまったけどな」


「それは仕方ないでしょう。奇襲を受けなかっただけ、良かったと思う事です」



 トキドが言う先手。

 それは秀長達によって、騎士王国内の一部に砦を築かれた事だった。

 向こうも本来ならキョートまで攻め込むはずが、ロックの密告でバレている。

 その為急遽動いた秀長率いるアンデッド軍だったが、やはりキョートに行くまでには時間が足りないと判断し、彼等はキョートの北部に簡素な砦を築いていた。



「問題は山だな。・・・ん?どうした?」


「帝は戦場に出た事無いんですよね?」


 帝がポツリと呟くと、トキドがその言葉を聞いて不思議そうに尋ねた。



「無いけど、どうしてだ?」


「いや、よく分かっていらっしゃると思って」


「そうですね。帝はよく見えていらっしゃる」


 トキドとウケフジから褒められて、照れる帝。

 オケツはそれを見て、少し不満そうにこう言った。



「いやいや、分かるって。みっちゃんだって馬鹿じゃない。キョートと砦の間にある山間部が問題なのは、誰でも分かる事だよ」


「そうは言うけど、帝は騎士じゃないんだぜ」


「トキド殿の言う通りです。もう少し考えて発言して下さい」


「はい、すいません・・・」


 騎士王撃沈。

 オケツは口を尖らせながら謝ると、そんな彼を無視して会議が始まる。



「山間部の戦いか。俺はあんまり活躍出来ないかもな」


「トキド殿に本気を出されると、我々も被害が大きくなりそうですね」


「その点、ウケフジ殿の白龍は効果が大きいかと」


「俺もそう思う。霧の中山を歩くのは、かなり難しいからな」


 トキド達が話し合っていると、チラチラと見ながら会話に入りたがるオケツ。

 しかし無視をされて、タイミングが掴めずに居た。



「トキド殿は今回、キョートの守りの方が良いのか?」


「そうですね。私もそう思います」


 トキドは山間部で炎が使えないから、後方待機。

 三人の中でそう決まりそうになった時、オケツはチャンスが来たと思った。



「はい!」


「オケツ殿、何か?」


「トキド殿には、別の仕事があると思うんだけど」


「何ですか?」


「ワイバーン隊を率いて、空を制圧する事」



 三人は顔を見合わせた。

 空からトキドによる一点突破かと思われたが、オケツは空の制圧だと言った。



「砦を強襲するわけではなく?」


「そう。トキド殿には、空を押さえてもらうという仕事があるんですよ。実は向こうにもね、空が飛べる人が居るから」


「あっ!シッチ殿か!」


「ご名答!」


 朱雀の力で空が飛べる男。

 彼が単独でキョートを襲うとは考えづらいが、その可能性は否定出来ない。

 そして威力偵察を含め、こちらがどのように動いているのか、空から把握されるのも危険だった。



「オケツ殿!冴えてる!」


「そういえば、彼もボブハガー殿の配下でしたね」


「ハッシマーの件以降、元ボブハガー配下の連中は、埋もれてしまったからなぁ」


「とは言っても、お館様の配下として活躍した方々なので。あまり馬鹿には出来ないんですけどね」


 シッチ以外にも、寝返った連中も有能。

 あまり表に出てこなくなったものの、彼等も強い騎士であるというのは、間違いなかった。



「報告します。砦から敵が出撃したと、連絡がありました」


「分かった」


 とうとう動いた。

 各々が緊張した面持ちを見せる中、オケツは立ち上がり声を上げる。



「行こうか」







 外には有名無名様々な騎士が待っていた。

 すると代表して、帝が前に出た。



「皆、知っている人も多いと思うが、私は無能と呼ばれてもおかしくない男である。だって騎士王を任命する以外は、ほとんど何もしていなかったのだから」


 思わぬカミングアウトに、騎士達に動揺が走る。

 しかし帝は話を続けた。



「そんな私だが、それでもまだ国の代表だと自負している。魔王との連携を取り付け、今越前国から魔族が共に戦わんとして、こちらに向かっている」


 するとオケツが、小声でウケフジに確認を取った。



「直接砦に向かっているんじゃないんですか?」


「代表者はこちらに来ます」


「代表って誰?」


「お市の方です」


「何!?ブリザードクイーンが!」


 トキドが思わず大きな声を出すと、騎士達もそれを聞いて歓声が沸いた。



「オホン!やっぱりお市の方は人気があるね。というか、帝国でも有名な強い人だし、当然と言えば当然か」


 突然口調を変えた帝。

 急に軽くなった話し方に、騎士達も少し動揺した。



「所詮俺は、飾りなんだよね。だからこの国の命運は、騎士王であるオケツを筆頭に、君達の力に懸かっている。俺が嫌いでも構わない。でもこの国を守る為に、皆には頑張ってほしい。それが薄っぺらなこの国の代表である俺の、騎士達へのお願いだ」


 話終えると、騎士に向かって頭を下げる帝。

 今までマロやらおじゃると言って、偉そうな態度しか見せなかった男の、心からの行動だった。

 それを見たオケツ達は、粛々と行動を開始する。



「ウケフジ隊及びそれに連なる隊は、正面山間部へ突入。相手は死人である。見つけ次第、滅ぼせ!」


「トキドワイバーン隊に命じる。シッチ及び飛行する物体は、撃墜しろ!」


「タツザマ隊は後方予備隊」


「え?」


 オケツの言葉に耳を疑うタツザマ。

 まさかの予備隊とあって、本人はおろか隊員達も納得がいっていない。

 しかしオケツは、ちゃんと理由も説明した。



「タツザマ殿の部隊は、いきなり山間部に入るのは勿体無いと思うんですよね。せっかく騎士王国随一の機動力があっても、山の中では活かせない。だったら後方で待機しておいて、危険な場所に駆けつける役割の方が、活きると思うんですよ」


「なるほど。確かにその通りかもしれない」


「それにタツザマ殿は、ある意味最終防衛ラインです。私も帝を守る為にここに居ますけど、貴方が抜かれたらほぼ詰みだから。それだけ重要だという事ですよ」


「・・・御意!」


 帝を守る最後の盾。

 まさかの期待値に、不満顔が一転して頬が緩むタツザマ。

 しかし責任重大な事案から、すぐに気を引き締めた。



 そんな中、再び新たな報告が入ってくる。



「報告です。空から魔王様の部隊がよく乗っているトライクの部隊が現れました」


「味方か?」


「先頭で率いるのは、騎士だと思われます」


「シッチだな」


 トキドは部隊の準備を急がせる。

 そんな中トキドは、オケツに最後の確認を取った。



「騎士王」


「どうしました?」


「かつての仲間だけど、良いんだな?」


「・・・騎士王国の存続には、情は必要無いです」









「分かった。トキド隊!シッチ・ヌリメソが率いる部隊を殲滅させる。どうせ討ったところで、アンデッドとして蘇るんだろうがな。出るぞ!」

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