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反撃の狼煙

 改めて考えると、僕達って謎の存在だな。


 コバによって課されていた難題は、ようやく全てクリアとなった。

 特訓と銘打った難題だったが、それも全てガイストという存在によってクリアしたと言っても過言では無い。

 ただコバから出されたテストで、そのガイストでも扱う事が出来なかったモノがあった。

 それが創造魔法である。

 てっきり僕は、彼なら扱えるものだとばかり思っていた。

 こう言っては微妙だが、ガイストは相手の頭の中を読み取る事が出来る。

 それは僕達でも例外ではなく、彼は普段兄にも見せない僕の心の内でさえも言い当てていた。

 まあ僕達は例外ではないが、官兵衛という例外は居るんだけどね。


 それはさておき、どうして使う事が出来なかったのか?

 僕も兄もほとんど変わらないと思うが、創造魔法で何かを作り出す時には、具体的にその物を思い浮かべるだけなのだ。

 兄の場合はそれが鉄球とバット、それと剣くらいしか作れないのだが、僕は家や他の物もある程度は作れる。

 それこそ盾なんて簡易的な作りなら、簡単なものだった。

 そんな簡単な物をガイストが読み取れば、作る事なんて造作も無いと思ったのだが、これが敗北の原因になってしまうとはね。

 そうなると創造魔法によって形を変えるには、僕がやらなくてはならないという事になる。

 まあそれはそこまで難しい事ではないんだけど、問題もある。

 例えば両手を動かす事から、両足を動かす事に意識をシフトする。

 それだけで創造魔法によって作り変えるのは可能だと思うのだが、問題は意識をシフトした後だ。

 両足に意識を向けている間に、両手を使う事が出来ますか?

 これはリフティングしている間に、けん玉が出来るかという話に戻るわけなんだけど。

 まあ僕にそんな事は出来やしないわけで。

 要は意識をシフトした瞬間、両手は動かなくなるのと同じである。

 だからもしバラバラのままそれを行えば、魔王人形のパーツの一部はただ宙に浮いているか、その瞬間に地面に落ちると思われる。

 もしそれを行うのであれば、それこそ僕が作り出した盾の後ろに回り込んで、その間に形状を変化させたりするしかないだろう。

 要は、欠点もやっぱりあるんだなという事だ。


 それにしても、創造魔法って何なんだろう?

 今更ながら本当に魔王しか使えないんだなと、実感してしまった。









 ホントのダメ出しで、本気で凹んでしまった。

 言われてる事は分かるんだけど、それは後で一人になった時に言ってくれても良かったんじゃないかな?



「それ言ったら俺もあるよ」


「あるの!?」


 おいおい。

 ここに来てイッシーまであるんかい。

 しかし、こういう格言もある。

 怒られてるうちが華だってね。

 言われなくなったら、それはもう見捨てられたも同然だし。



「どんとこい!」


「テストだと思って、手を抜き過ぎ」


「うぐっ!」


「あぁ、それは俺も感じたかも。短剣の動きに目が行って、あんまりこっちに集中してなかった感はある」


「そそそそんな事無いですよ!俺はいつだって本気モードさ」


 マジか!

 そこまで見られてるんだ。



「動揺してるぞ」


「あれれ〜?おかしいぞ〜」


「あんまり可愛くないな」


「その指摘はやめて!」


 クソー!

 誤魔化そうと思って、弟が言ってる時みたいにやったのに。

 やはり弟のように、羞恥心というヤツを捨てないとダメなのか。

 クッ!

 俺には出来ない!



「アンタ、人が居ない所でディスってんじゃないよー!」


「アタッ!」


 しまった!

 心の声がダダ漏れだったか。



「それで、お前の方は話は終わったのか?」


「あからさまに話を逸らしに来たな。まあ良いけど。とりあえず、言われた欠点は自覚した。次はもう実戦になるけど、問題は無いと思う」


「そうか。だったらいよいよ、反撃の狼煙を上げる時が来たってわけだな?」


 俺が官兵衛を見ると、あんまり反応はよろしくなかった。

 でも何かをしようという気持ちはあるみたいで、ちょっと考えている様子だ。



「何か懸念がある?」


「そうですね。秀吉配下の中で、唯一一人だけ動きが無い人物が居るんです」


「佐和山城に居ると言われている、石田三成であるな」


「コバ、石田ミチナリだよ」


「名前が違ったのであったな。まあ本人も居ないし、別に問題無かろう」


 ふむ。

 誰だろう?

 そんな奴、居たっけ?



「官兵衛は何が気になるの?」


「若狭国は回復薬の産地です。今後の戦いを考えると、取り戻すのは早いに越した事はないのですが。しかし若狭国は一切の情報が出回ってきません」


「それなんだよなぁ」


 そういうスパイ的な仕事は、ほとんどが猫田さんがこなしてくれていた。

 でもその猫田さんが、今では敵なんだよね・・・。

 今でも思い出すと、まだショックなんだけど。



「長秀は調べてないかな?」


「一度確認したところ、詳しくは分からなかったみたいです。どうやら石田に協力する者も居るみたいでして」


「妖精族の中に!?」


 マジか。

 長秀に不満がある連中かな?

 そんな奴、居るのか?

 てっきりアイツは、そういうところはしっかりしてると思ったんだけど。



「官兵衛的には、取り戻した方が良いと思ってるんだよね?」


「そうですね。上野国はもはや、復興しなければ難しいです。しかし若狭国だけは、一度壊されると時間が掛かりますから」


「そうだよなぁ。薬草をイチから作り直すってなると、難しいよね」


 弟も官兵衛の意見には賛成みたいだな。


「だからこそ、極力無傷で取り戻したいのです」


 ふむふむ。

 官兵衛も熱く言っているし、俺も同感だ。

 特に回復薬が手に入れば、やっぱり戦いに迷いが無くなるはず。



「ここはいっちょ、若狭国を取り戻しますか!」









 アレ?

 俺、何か間違った事言ったかな。

 反応が無くて困るんだけど。



「そうは言うけど、何も分からないから怖いんだよ」


「分からないからって止まったままじゃあ、先に進めないぞ。アレだ。オケツを掘らずんば、ナニを得ずってヤツだ」


「それは・・・まあLGBTの方々は、そう思ったりするかもしれないけど」


 ん?

 何か間違ったか?



「それを言うなら、虎穴に入らずんば虎子を得ずだから」


「そう言ったでしょ?」


「魔王様の場合は、虎の子は手に入らないけど、ゲイの人が手に入る仕様だな」


「・・・それでも良いんじゃない?」


 良くはない。

 分かってはいるが、間違いを認めるのも恥ずかしい。

 ここは話を逸らすに限る。



「と、とにかくだ。どちらにしても行かなきゃ、取り戻す事なんか出来ない。動かなきゃ何も始まらないんだから」


「それに関しては、俺も賛成。いつまでもこの小さい砦に閉じ籠もっていたって、何も始まらない。むしろ向こうは着々と力を付けている可能性だってある」


 おぉ!

 イッシーは俺に賛成してくれた。

 反応が無かっただけに、嬉しい。

 でも、イッシーが賛成しても官兵衛はまだ悩んでいるようだ。

 だったらこうしよう。



「人数が割けないなら、少人数で行こう。俺とイッシーで行く」


「えっ!?」


「勿論、コイツも一緒だ」


 弟の腕を取り持ち上げると、驚いたような反応を見せる。

 でも実戦投入するなら、早い方が良いと俺は思ってる。



「き、危険です!若狭国は、入るまでが至難の業。少人数で迷いでもしたら、どうするんですか?」


「・・・だったら迷わないようにしよう」


「出来るの?」


 弟なら迷わずに入れるのか?

 右顧左眄の森は、そう簡単には抜けられない。

 難しい気がする。



「出来ると思う。多分だけど、長秀なら抜け道を知ってるんじゃないかな?」


「なるほど!領主なんだから、秘密の通路くらい知ってそうだ」


 弟の意見を聞いた官兵衛が、再び悩み始めた。

 少し待っていると、彼は電話を取り出した。



「丹羽様と合流出来る場所を探しましょう」








「決まりました」


 電話を掛けてから10分くらい経ったところで、官兵衛が電話を切った。

 どうやら話がまとまったらしい。



「朗報です。この作戦に滝川様も参加してくれます」


「マジか!領主二人は心強いな」


 少人数という話だったからか、イッシーは本気で喜んでいる。

 俺とイッシーだけじゃ、心細いから仕方ない。

 でもちょっとだけ、あんまり信用されてないんだなって複雑な気持ちもあったりする。



「合流は若狭国付近でお願いしました」


「現地集合ってワケね。分かった」


「ちょっと!俺じゃダメなの!?」


 佐藤さん?

 振り返るとずっと蚊帳の外だった佐藤さんが、情けない顔で立っていた。



(情けないとか言っちゃ駄目だよ。慶次が居なくなって、イッシーと佐藤さんが頑張ってくれてたんだから)


 おおう。

 いきなりこっちで話し掛けられると、ビックリするな。

 まあ公に声に出しては、言いづらい話題ではあるけどな。



「佐藤、俺の代わりに行くか?」


「俺でも大丈夫?」


 佐藤さん、最近出番少なかったからなぁ。

 活躍したいんだろうなぁ。



「官兵衛、どうなの?」


「佐藤殿、お願い出来ますか?」


「よっしゃ!」


 ガッツポーズしてる。

 結構危険な作戦なんだけど、やる気満々だな。









『ほほう。これがトライク。やはり違う世界から来た者の考えは、本当に興味深いな』


 最近は皆慣れちゃってるけど、そういえばコレも元々はこの世界に無かったんだよな。

 こういう反応が新鮮に思えるわ。



「しかし阿久野くんや」


「何?」


「キミ、規格外のレベルに磨きが掛かったね」


 規格外?

 俺達、そんなに変わってないよな?



(アレだよ)


「あぁ、アレね」


 俺と佐藤さんは一緒にトライク乗ってるけど、その上空には魔王人形の一部がクルクル回っている。

 空を飛んでるのはガイストなのだが、俺が気配を感じたと思った瞬間、それを読み取ってるのかほぼ一瞬でビームが飛んでいくのだ。

 俺もそれを見た瞬間に吹き出したのだが、トライクでビームが飛んでいった場所に行くと、魔物が倒れていた。



「コレ、自動でやってるんでしょ?」


「自動ではないかな。ガイストがやってるから」


「そう!そのガイストくん、ガイストさん?見てみたいんだけど」


 うーん、さっきからこればっかり。

 これが面倒なんだよ。

 佐藤さん怖いの苦手だと思ってたんだけど、実際にそういうのがあるって分かると、興味の方が勝っちゃうみたい。



「今は俺達の為に、見守り?見回り?でも俺が察知してるから、見回ってるわけじゃないから。うーん・・・」


「ダメなの?」


 ど、どうなの?



(・・・そこまで求めてるなら、会わせてあげようじゃないの)


 でもガイストを戻したら、面倒じゃない?



(だから、後で会わせる。佐藤さんには見回りもあるから、長秀達と合流してからとでも伝えてよ。そしてドッキリで今日会わせよう。そう、真夜中にね・・・)


 グフフ、オヌシも悪よのう。









「佐藤さ〜ん!長秀達と合流したら会わせるよ。ほら、そっちの方がちゃんと会えるし。それまで待っててよ。うん、そっちの方が良いよ・・・」

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