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ケモノの正体

 キャラ作りって、やめ時が肝心なのかもね。


 帝は今回の御所襲撃を機会に、マロとおじゃるという言葉を使うのをやめた。

 バレてしまったからという理由もあるけど、正直やめられるならやめたかったというのも、本音ではある気がする。

 まあこれに関しては、昔からアイドルがよく言われてる話だけど。

 アイドルはトイレに行かないとか、地球とは違う星から来ましたとか。

 盲信的なファンはそれが可愛いとか言ったりするんだけども、普通に考えたらバケモノだよね。

 トイレ行かないとか言ってるのは、身体の作りが人間じゃないって言ってるようなものだし、何とか星から来た的な人はもはや地球人ですらない。

 冷静なツッコミをするとファンにガチギレされるのは分かっているんだけど、ひねくれてる僕はそういうのを口に出してしまうんだよね。


 その点で言うと帝は、良いタイミングでやめられたんじゃないかな?

 オケツと帝に否定的な奴は全員去ってしまったし、今は彼等に好意的な人しか居ないんだから。

 そもそもマロとかおじゃるなんて、日本でだって言わないし。

 こっちの人だって、何だそれって思ってたんじゃないかな。

 そう考えると普通の話し方に変わった帝は、トキドやウケフジ達からしたら、今までの遠い存在から親近感のある人へと変わったんだと思う。

 帝も帝で、今まで深く接してこなかった騎士とも近くで話せるようになるし、これはこれで良い方向に進みそうな気がする。


 しかしそうなると、魔王ももう少し微妙な存在として扱ってほしいかな。

 僕達は素で話してるつもりだけど、安土の連中だけじゃなく領主達も僕達が凄いと勘違いしている。

 等身大の僕達が微妙だと分かっているのは、結局ハクトと蘭丸くらいなんだよなぁ。

 味方に本当の自分を知ってもらえたっていう点では、帝がちょっと羨ましいと思えますな。










 ケモノの宿し方を教える。

 やり方は知らないけど、僕達はムサシの件で、間近で似たような事は見ていた。

 だけどアレは特殊パターンだったみたいだし、全く参考にはならなかった。

 それにムサシも、騎士王国の人間である。

 じゃあ他国の人間、ましてや魔族である僕達が教わったところで、出来るのだろうか?



「興味持ちましたね?」


「そりゃあ面白そうだし、出来るならやってみたいじゃない」


 騎士がケモノを宿すと、鎧の色が変わったり武器が変化したりする。

 シッチなんかは翼が生えて、飛べるようになるしね。


 そこで気になるのは、僕達のような鎧も着ていない人はどうなるのか?

 ましてや僕が教わったとしたら、この人形でもケモノは宿せるのか?

 考えるだけでもいくつも疑問があって、興味は尽きない。



「そしたら魔族援軍の件は了承してもらえるって事で、よろしいですか?」


「う、うーむ・・・」


 まいったな。

 僕の中では即OKを出して、すぐにでも教えてもらいたいんだけど。

 ここで下手に許可を出そうものなら、後で何を言われるのか分からない。

 太田やゴリアテ、蘭丸達なら特に何も言わないだろう。

 だけど領主達は違う。

 魔王と僕を立ててはいるけど、彼等は独立している。

 だから一益や長秀に派遣してもらうわけにはいかないし、越前国や越中国はその領主すら不在である。

 ドワーフと妖精族、妖怪に人を借りるわけにはいかないし、結局安土の人間を派遣するしかなくなるんだよなぁ。

 となると、やっぱり官兵衛の許可が必要になるか。



「官兵衛に聞いてからで良い?」


「今すぐに返事を下さい」


「え・・・。いや数分で済むから」


「すぐに返事を」


 こ、コイツ!

 官兵衛に言ったら止められそうだと思って、僕にプレッシャー掛けてきやがった!



「官兵衛に」


「ノー。ナウ返事プリーズ」


「何でカタコトなんだよ!」


「ワタシ、外国人ですから」


 この世界で言葉の壁なんかあるかい!

 ムカついた。

 意地でも電話してやる。



「あっ!」


 僕は空へ上がると、すぐさま電話を掛けた。

 トキドも慌てて国江の背に乗って飛んできたけど、もう遅い。



「もしもし、官兵衛」


「ちょっと!」


「あのさ〜、こういう理由で騎士王国が人を貸してほしいって言ってるんだけど」


 僕が説明をし終えると、トキドは分かりやすいくらい肩をガックリと落とした。

 確実に拒否されると思っていたんだろう。

 でも彼の返事は、予想外にOKという即答だった。



「え?どうして?」


 僕が聞き返した事で、反応が予想とは違うとトキドがこっちを見てくる。



「どちらにしても騎士王国は、手を貸さないといけない相手なんです。彼等の力はこちらから借りるつもりだったので、向こうからそのような条件を出してくれるなら、喜んで貸しましょう」


 トキドにはこの会話は聞こえていない。

 だから彼の目は、怖いくらいに目が光っていた。



「分かった。じゃあそう伝えておくよ。ありがとう」


 僕は電話を切ると、さっきの反応から一縷の望みがあると感じたトキドは、期待半分怖さ半分といった表情で見てくる。



「というわけで、力を貸せる事になりました〜!」


「おっしゃー!」









「え・・・騎士王国までわざわざ行くの?」


「ウケフジ領なんで、そんなに遠くないから」


 地上に降りて手を貸す事を話した僕は、トキドから騎士王国までの同行を頼まれた。

 最初は御所だと思ったから面倒だなと思ったけど、ウケフジ領は越前国からも近い。

 二人で国江に乗っていっても、そんなに時間は掛からないだろう。



「魔王様、ケモノを手に入れるのを期待してお待ちしています」


「秀吉軍との戦いもあるからな。しっかりと手に入れてこいよ」


「任せてよ!」


 二人からの期待を背に、僕はケモノの力を手に入れてみせる!

 というより、あの特訓から離れられたのが本当に嬉しい。

 気分転換にもなるしね。



「しっかりと捕まってて下さいよ」


「おっほー!意外と速いな」


 国江は羽ばたくと、そのまま西へ進路を取った。






「本当に速いな!」


 ある程度の高度まで上がった国江は、一気にスピードを上げた。

 速さで言ってしまうと、ツムジやコルニクスの方が速いと思う。

 言ってしまえばこの二人は別扱いだし、当たり前とも言える。

 だけどフライトライクと比較すれば、明らかに国江の方が速いだろう。

 こりゃ又左や太田が苦戦した理由も、分かった気がする。



「到着しましたよ」


「ここがウケフジ領か」


 やはり東側に近い土地だからか、寒い方なんだろうな。

 皆、上着を着ている。

 まあ僕は人形の姿なので、サッパリ分からないんだけど。



「トキド殿!戻ってきてくれたか。それで、どうだった?」


「この通りです」


「え・・・人形?」


 コイツ、あからさまに嫌そうな顔しやがったぞ。

 まあ中身が本物の魔王だなんて、思っていないんだろうな。



「代わりに僕が聞くから。人形だと思って嘘の情報与えたら、次は無いよ?」


「うわっ!魔王様っぽい言い方。気持ち悪いな」


「気持ち悪いは余計だ!」


 僕が太ももにパンチすると、かなり痛かったみたいだ。

 ミスリルの塊がぶつかったのと同じだから、そりゃ痛いよね。



「それで、ケモノの宿し方っていうのは?」


「ちょっと声が大きい!こちらへ来て下さい」


 トキドと別れてオケツについていくと、そこは小さな部屋だった。

 どうやら密室のようだ。



「ウケフジ殿に頼んで、誰にも聞かれない部屋を用意してもらいました」


「本当に内緒なんだね」


「ハッキリ言って、騎士の中でも選ばれた人しか教えないんです。魔王様も同じように、教えるなら人を選んで下さいね」


 教えても問題は無いんだ。

 てっきり僕以外は駄目なのかと思っていたのに。

 黙ってるよと言わないで正解だった。



「まず最初に、ケモノについて教えます。ケモノと呼んでいますが、実際には獣ではありません」


「えっ!?」


 ちょ、ちょっと待って。

 いきなり核心的な部分から始まったぞ。


 僕はてっきり、虎や龍、麒麟に獅子といった言葉が使われているから、てっきり獣が関係しているのだと思っていたのに。

 ケモノが獣じゃないとなると・・・。



「ケモノは化物。つまり、バケモノだと思って下さい」


「そうなるよね」


 獣じゃないと言われて、すぐにそれが頭に浮かんだ。

 紅虎や蒼虎。

 白龍や麒麟のような言葉は、勘違いさせる為の引っ掛けなのかもしれない。



「そしてケモノは、獣の形だけとは限りません」


「え?じゃあ刀や槍みたいな、道具の場合もあるの?」


「違います。もっと低級な犬や猫。雀や鳩、ネズミなんかも居ます」


 なんだか急に身近になったな。

 この辺なら簡単に宿せそうな気もする。

 と思ったら、急に怖い事を言われたりもした。



「動物に限らず、人の姿をしている場合もあります」


「・・・は?」


「人の姿をしたケモノも居るのです」


「・・・それ、幽霊じゃね?」


「そうとも言いますね」


 オイィィィィ!!

 それって何だ?

 コイツ等がやってる事って、もしかして降霊術か何か?

 宿れ何とか!って叫んでるけど、それって幽霊が身体の中に入ってくるって事?

 おいおい、国全体でオカルトが流行ってるのかよ!



「気持ちは分かりますよ。今、完全にバカにしてますよね?」


「そ、そんな事無いですよ。僕が馬鹿にした事なんて、ほとんど無いですよ」


「ほとんどって言ってるくらいだから、今回は馬鹿にしてるんでしょ?」


「馬鹿にはしていないから。ただちょっと、コイツ何言ってんだくらいにしか思ってないから」


「それを馬鹿にしてるって言ってるんです!こういう反応が返ってくるのも分かるから、秘密にしてるのもあるんですよ」


 そりゃそうだ。

 オケツは自分でも分かってるみたいだけど、こんなのオバケを信じない人からしたら、馬鹿にされるのが当然な話である。

 僕も言ってしまえば、そっち寄りの考えに近いし。



「ちなみにケモノを身体に宿して、異常があったりしないの?」


「力を使い過ぎると、あったり無かったり」


「それ、身体を乗っ取られる的な?」


「そういうのも居ます。でも大半は、身体から出ていくだけですね」


 居るのかよ!

 というか、ヒト族の身で人外の力を手に入れるんだ。

 それくらいのリスクがあるのは、当然かもしれないな。



「それで、僕はどうやってケモノを宿せば良いんだ?」


「やり方は教えます。しかしケモノは自分で探して下さい」


「・・・は?」


「騎士王国内のケモノは、私達が宿しています。まだ残っているケモノも居るとは思いますが、それは他の騎士が挑む存在なので」


 コイツ、情報だけ売って後はご自由にって考えか!



「いやいや!何処に居るか分からないから」


「魔族には無いんですか?怪談話とか、学校の七不思議みたいな話」







「それって僕に、心霊スポット巡りでもやれって言ってるの?そういうのは好きじゃないんだけど」

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