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タツザマとイッシー

 自然破壊反対!

 せっかく空気も綺麗な世界なのに。


 藤堂高虎は河童達の船を妨害する為、川に重油を流し込んだ。

 ドロドロの重油が流れ出すと火をつけられ、川は辺り一帯火の海と化した。

 川なのに火の海とは、これ如何に!

 なんて、トンチみたいな事を言ってる場合ではない。

 ニュースでも流れているが、タンカーが衝突や座礁をして、船底から油が漏れたりする時間がたまにある。

 その油まみれによって、海の生物は死を迎える事が多い。

 それが居眠り運転や確認を怠って起きたような人為的ミスなら許せないけど、故障でぶつかったりしたら仕方ないとも思える。

 そもそも僕達だって石油や灯油を使うし、ガソリンや軽油が無ければ車も動かない。

 だからそういう事故を見ても、あんまり非難ばかりするのはどうかと思ったりしている。


 でもね、この世界でそれをやっちゃいかんでしょ。

 そもそも魔法が発達して車や飛行機、船なんか無かった世界だ。

 地球と違って汚染されているわけじゃないのに、自分勝手な判断で自然破壊をするなんて、許される話じゃない。

 僕達だってトライクを作ったり、トラックを作ったりしたよ。

 それでも自然環境に影響を与えない為にも、動力源は魔法にしたさ。

 コバが居れば、石油を精製する事だって出来ただろう。

 そうすれば魔力が無いイッシーや佐藤さんだって、もっと早くトライクに乗れたとは思う。

 しかし!

 この世界にはこの世界のルールがある。

 今まで車や飛行機なんて無かったし、冷蔵庫やエアコンだって無い。

 排気ガスも出なければ、フロンガスだって出るはずが無い。


 僕達はこの世界にとって、異分子に近い存在だ。

 もし世界を汚すだけの存在になるのであれば、僕達は害虫と同じで神様から消されてもおかしくないと思う。

 まあその神様がやらかしてるから、何も言われない可能性もあるんだけど。

 しかも行方不明だし・・・。

 何にせよ僕としては、藤堂高虎の行為は許せるものではないと考えている。

 願わくば、僕の手で罰を与えたい。










 河童達は沖田の顔を見て、恐怖した。

 知らない名前だが、話を聞く限り身内だろう。

 その身内を斬りたいという男。



「ジイ様、あんまり関わらない方が良さそうだな」


「うむ。触らぬ神に祟りなし。向こうから何か言われん限り、放っておこう」


「あの」


「はうっ!」


「はう?」


 艦長は不意に声を掛けられて、変な声を出した。

 その後取り繕うものの、やはり沖田を意識してしまっている。



「な、何かな?」


「どれくらいで騎士王国の人達と合流する予定ですか?」


「そ、そうだなぁ。急げば二日後には着くだろうが、問題は通常よりも遅い事だな。真っ直ぐに進まねえんだわ」


「なるほど。分かりました。おとなしく休んで、回復に努めようと思います」


「それが良い。ゲストルームに案内しろ」


 沖田は他の河童に連れられて、操舵室から出ていった。

 艦長とジイ様はどっと疲れが出たのか、顔の汗を拭いた。



「なんだよ。味方として見てないと、あんなに怖い奴なのかよ」


「魔王様も、凄いのを連れてるのう。いや、あの人は変なのと凄いのしか連れてなかったか。まああの人自体、変だから仕方ない」


「ジイ様、サラッと魔王様の悪口入れたよな」


「大丈夫。ワシと一緒に覗き見をした仲じゃ。スケベなのは間違っていない」


「それもどうかと思うけど」


 艦長とジイ様は椅子に深く腰掛けると、ようやく落ち着いたのだった。










「イッシー殿!よく来てくれた!」


「久しぶりだな」


 タツザマは両手を広げて、イッシー隊を迎え入れた。



「まさか援軍に来てくれるとは」


「騎士王国には、何がなんでも勝ってもらわないといけないからな。俺なんかで良かったら、手伝うよ」


「イッシー隊の強さは、拙者がよく知っている。本当にありがとうございます」


 タツザマはイッシーに手を差し出すと、彼も快く握り返した。

 そしてイッシーは辺りを見回すと、タツザマ軍の様子が様変わりしている事に気付く。



「タツザマ殿、馬はどうした?数が少なく感じるけど」


「やはり気付くのが早いですな。今回は奇襲もかねて、空からの攻撃も想定しているのでな」


「もしかして、ワイバーンか!?」


「フフフ。拙者達もトキド殿に負けてはいられない。だからワイバーンの実戦投入に踏み込んだ!」


 よく見ると、馬とは離れた場所にワイバーンが固まっていた。

 数もそれなりに多く、実験隊とは違い本格的に投入しているのが分かる。



「凄いじゃないか!トキド殿のお株を奪うつもりだな?」


「経験の差で、まだまだ敵いませんよ」


「とは言っても、ここに連れてくるくらいだ。やれると信じているのだろう?それで、敵は誰なのか分かるのか?」


 イッシーの声のトーンが変わると、タツザマも今までのニコニコした顔から、険しい表情へと一変する。



「城の名は名古屋城。今あの城の主人として君臨しているのは、福島正則という男です」


「福島正則!賤ヶ岳の七本槍か!」


「奴の槍を見た事あるんですか!?凄いですよ。槍とは言えない武器です」


「え?」


 イッシーは凄い槍と言われ、ふとある槍の名前がよぎった。

 しかしそれは、本当であれば福島正則の手には残っていないはず。

 頭の中でグルグルと苦しそうに考えていると、それを見たタツザマが心配をして声を掛けた。



「何か気になる事でも?」


「いやぁ、福島正則の槍が気になって。もしかして槍の名前、日本号とか言わない?」


「どうしてそれを!イッシー殿は奴と、戦った事があるんですか!?」


「持ってるのかよ!」


「ど、どういう意味ですか?」


 イッシーは大きなため息を吐いた後、天下三名槍と呼ばれる槍の事を話した。



「御手杵、蜻蛉切、そして日本号。これが凄い槍として有名なんだ」


「では、福島正則が日本号の持ち主なんですね」


「それがなぁ・・・」


 史実では日本号は、酒癖の悪い福島正則が母里という黒田官兵衛の家臣と、酒の飲み比べをして奪われている。

 勝手に絡んで、自分より沢山飲んだら好きな物をやると言われ、見事に敗北。

 武士に二言は無いと言い、母里に日本号をあげてしまったのだった。



「福島正則は馬鹿なんですか?」


「いや、まあ・・・。酒癖が悪過ぎて、酔いが覚めてから後悔するタイプって感じ?」


「やはり馬鹿だ。しかしその話を聞く限り、日本号は母里という人物の持ち物になったはず。何故彼の手元に残っているんでしょう?」


「一番考えられるのは、黒田官兵衛が魔王様の下に居るから。母里友信は居ないし、奪われなかった設定なのかもしれない」


 イッシーの話を聞いたタツザマは、少しだけ福島正則を残念な男だと思った。

 しかし逆にイッシーは、福島に対する警戒心を強める事となった。



「危険だな」


「確かに強かったですが、頭が弱い事は分かりました」


「いやいや!さっきも言ったけど、酒が絡まなかったら凄い人だったみたいだから。それに奴は、賤ヶ岳の七本槍の中でも、一番首を獲った人物でもある。それだけの槍の腕前があるんだ」


「な、なるほど。槍の名手が凄い槍を持った。確かに危険ですね」


 イッシーの意見を聞き、評価を改めたタツザマ。

 だが緊張するタツザマを見て、イッシーはそれを和らげようとした。



「でも所詮は槍。ワイバーン隊みたいに空から一方的に攻撃出来れば、余裕じゃない?」


「その考えは甘いですね。あの槍、飛ぶんですよ」


「槍が飛ぶ?投げるの間違いではなく?」


 首を横に振るタツザマ。

 すると話の途中で、敵発見の笛の音が鳴り響いた。



「名古屋城から敵が出ました!フライトライクです!」


「何だと!?俺達の所から盗んだヤツだな。よし、俺達が出る!」


「イッシー殿!」


「大丈夫だ。日本号には警戒するさ。イッシー隊、出るぞ!」


 イッシーの声に隊員は、一矢乱れぬ動きでトライクに搭乗していく。

 空を見ると、確かにフライトライクが飛んでいた。



「気を付けて下さい!分裂しますから!」


 タツザマの声に、イッシーは左手を軽く挙げて対応した。








「まさか又左殿以外の奴と、フライトライクで戦うとは」


 名古屋城から空を飛んできたフライトライクは、そこまで数は多くない。

 しかし隊列を組み、乗っているだけでなくしっかりと戦えるように見えた。



「先手必勝。銃構え。狙い撃て!」


 後部座席に座っている連中が、一斉に銃の引き金を引いた。

 銃弾の壁のように、面となって弾が飛んでいくと、福島隊は四方に分かれた。



「ふむ。ライダーの腕は悪くない。俺達よりは下だけど」


 イッシーは敵の操縦を、今の攻撃だけで判断した。

 イッシー隊であれば、銃弾の雨を潜り抜けて敵に近付いていく。

 そこまでではないにしろ、向こうもマトモな運転は出来るのだと分かり、イッシーは次なる一手に出た。



「次、鉄砲隊に弓隊加え!」


 前方のトライクは銃を、後方のトライクには弓を準備させるイッシー。

 すると今度は銃弾の面攻撃だけでなく、弓矢を使ったもっと立体的な攻撃を仕掛ける事にした。

 しかし弓は上に構えさせている。



「矢、放て!・・・銃撃てー!」


 矢を射らせた後、数拍の間を置いてから銃を撃たせるイッシー。

 すると銃弾が福島隊に届くと同時に、その更に上から矢の雨が降ってきた。



「さあ、どう対応する?」


 福島隊の反応を、ある意味楽しみに見ているイッシー。

 すると福島隊は、その場で下降してから上に向かって魔法を放った。



「風魔法が使えるのかよ!」


 風魔法で強い風を起こした福島隊。

 矢は風とぶつかり、福島隊を避けて地上へ落下していく。

 攻撃を受けきった福島隊は、急上昇してイッシー隊の前へ到着する。

 そして後方から、怒鳴り声を上げて近付いてくる男が現れた。



「テメー!」


「アンタが福島正則か?」


 背はあまり高くないが、筋肉質な体型をしている。

 イッシーは彼が妖精族だと、すぐに気付いた。



「そうだ!テメー、人が近付いてきてるんだから、まず話くらい聞けよ!」


「どうせ戦うんだから、別に良いでしょ。さっさとくたばってくれたら、こっちは楽だし」


「こんの!だったらお前にも、同じような事してやるよ」


「同じような事?」


 イッシーがしたのは、銃と弓の攻撃だけ。

 それと同じような事となると、遠距離攻撃くらいしか思いつかない。

 しかし福島隊には、弓を持っている者は居ても、銃を所持している奴は見当たらない。



「魔法か?」


「違うな。唸れ日本号!」


 福島は槍を前に突き出した。

 イッシーはそれを見て警戒する。



「ん〜、ジャパーン!!」


「は?えっ!?」


 福島が叫ぶと、槍の先端が飛び出した。

 そしてその槍の先端が、一気に分裂してイッシー隊へと襲い掛かる。









「全員、回避!本当に分裂するとは。しかも数が多い!それよりもあの脱力するような掛け声。腹立つ!」

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