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村での生活

 この村にやってきて一週間。

 かなり快適である。

 特に魚と果物以外の食事には、軽く涙したほどだ。


 村長である前田さんに、エルフの村からやってきたと村人に紹介してもらったので、すんなりと受け入れてもらえたのも大きかったのかもしれないな。

 余所者扱いもされず、皆良い人ばかりである。


 ちなみにこの村、能登村というらしい。

 加賀村じゃないのかよ!

 なんて思ってるのは僕だけらしく、信長命名の村という事で、誰も文句は無いみたいだ。

 というより主君に命名してもらった事を、誇りにしている。


 そんな僕が、この村で何をしているのかというと。


「おーい!阿久野~!寺子屋遅れるぞ~!」


「後から追いかけるから先行ってて~!」


 というわけで、寺子屋通ってます!

 某頭脳は大人な少年探偵みたいにね!

 まあこの年で寺子屋に通わないというのはおかしいようで、村長の勧めで転入?という形になった。



「阿久野くん、また遅刻ギリギリですね。あまり感心しませんよ」


 怒られてしまった・・・。

 二十歳を超えて寺子屋というか、学校で怒られるとは。


 しかしこんな小さい子の勉強なんか、今更することなんか無いよ。

 と思いきや、ところがどっこい!

 そんな事はございません。

 というより、めっちゃ大変なんだけど!

 だって字が読めないんだもの・・・。

 一応ね、日本語らしいんだけど。

 昔の字なんだよね・・・。

 日本語なんだけども、ほぼ暗号。

 理系の人間に古典をガッツリやってたかと聞かれて、ハイ自信あります!なんて人はほとんど居ない。

 むしろ此処には居ない。


【俺、あのへにょへにょな字を見て、これは無理だなと思って諦めたもん】


「そういうと思ったから、僕が頑張ってるんじゃないか!」


【頭使うのはお任せします。俺は体育専門で】


 全く!こっちは自分に興味ある事しかやろうとしないしさ。


 ただそんな勉強の中でも、二人とも興味津々で学ぶ教科もある。

 それが魔法の勉強だ。

 創造魔法しか使えないと思っていたのだが、どうやらそれは間違いらしい。

 魔法は各属性による適正があれば、大抵は使えるとのこと。

 適正さえ合えば、苦手であっても使用する事が出来て、合わなければどれだけ修練を積んでも駄目らしい。

 よく言われる火水土風という属性は何かしら一つは使えて、四つ全部使える人も中には

 存在する。

 むしろ特殊な属性である光や闇、精霊魔法等の適正はほとんど見つからない。

 そして特殊属性の適正を見つけ出す方法がまだ確立されていないので、これまた使える人を探す段階で一苦労みたいだ。


 そんな魔法の勉強だが、座学もあるが実技もあるのだ。

 兄も魔法の教習だけは、座学でも真面目である。


【何が書いてあるか分からないけど、話を聞いてるだけで面白いからな。実際に魔法使う事になったら役に立つ知識も多そうだし】


 というわけで、興味がある事に関してだけは真面目な、兄の言葉でした。

 そんな魔法だけど、実は基本の四属性は全て適正があった。

 適正はあったんだけど、これがまたよく分からない事態が起きたのである。

 まず詠唱をして、最後に魔法名を唱える。

 そうすると適正さえあれば、威力効力にばらつきがあるものの発現はするのだが。


 同じ魔法でも、兄が使う火球と僕が唱える火球では、威力が異なったのだ。

 同じ身体で同じ魔法使ってるのに、何で?

 ちなみに僕の方が威力は大きい。


【オォォイ!!何でお前が使った方が強そうなんだよ!俺だって、もっとこう魔法使ってる!!感を出したいんだよ!】


 兄の火球は、球は球でもビー玉サイズだった。

 野球部なのに投げる球はビー玉・・・。

 そりゃ納得いかないだろう。

 ちなみに僕は全力で作ると、直径2メートルくらいはある。

 これは結構凄いみたいで、先生からもお褒めの言葉を頂いた。

 ただ兄と交互に練習してるからか、ビー玉と2メートルの交互なので、真面目にやりなさい!とも言われている。

 二人とも大真面目なんだけどね。


 魔法に関しては完全に僕の方が上手い。

 なんて思ってたんだけど、そうでもなかった。

 魔族全員に使える身体強化の魔法。

 これだけは兄が凄かった。

 というより、規格外だった。

 例えば同じくらいの年齢の子が使うと、握力ならリンゴが握り潰せるくらいにはなる。

 獣人の子でリンゴなのに、兄は鉄球を握り潰すレベルだ。

 身体能力以外に五感も上がるらしく、視力も5倍以上になる事が出来る。

 兄の身体強化を中で体験していると、正直気持ち悪い。

 暴走した車に乗ってる気分になる。

 吐けるなら多分吐いてるね。

 それでも兄は、俺はもっとファンタジーな魔法が使えるようになりたいと、贅沢な悩みを言っている。

 鉄球握り潰すとか、既にファンタジーだっつーの。



 そんな寺子屋生活の中で、僕等にも仲の良い友人が出来た。

 ウサギの獣人の因幡くんだ。

 因幡くんはウサギの獣人なので、足が速く跳躍力も凄い。

 と言いたいのだが、そうでもない。

 身体強化もそこまで得意ではなく、何故か風魔法等の方が得意だった。

 そのせいか軽くマイナス思考で、あまり明るい方ではない。

 しかし信長の話とかに詳しかったので、話をしていたら僕等には心を開いてくれている感じがする。

 そんな因幡家も実は信長命名らしい。

『ほう、ウサギか。お前は因幡じゃ!因幡の白兎じゃ!』と、白くないのに白ウサギと言われて、困惑したという記録が残っているらしい。


 ちなみに因幡くんはイケメンらしく、女子の獣人からは人気がある。

 獣人のイケメンとか見ても分からんけど。

 陰キャのイケメンとか、少女漫画なら人気ありそうだよね。


 僕もエルフ系の顔立ちだからね。

 人気はあるよ。

 男からは。

 女子はほとんど話しかけてこない。

 これはアレだな、照れてるんだ。

 これも迸る色気があり過ぎるからだな。

 もっと来てもいいんだよ?

 女子はエブリバディ受け付けているよ?

 まあ別にいいけどね!

 僕等ホントは二十歳超えてるからね!

 こんな子達を相手にしてたら、ロリコン扱いされちゃうもんね。

 うん、言ってて悲しい。


 唯一女子の話題になった時は、陰でビー玉の阿久野と呼ばれたり呼ばれなかったり。

 ビー玉は僕じゃないのに、ガチへこみだよ。

 兄さんなんか、しばらく実技に出てこなくなったよ。

 子供って残酷だよね・・・。



 まあそんな生活も新鮮で毎日が楽しいんだけど。

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