表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1077/1299

代わりの剣

 帝もオケツも、意外と皆を信用してるんだな。

 少し微妙な気持ちになった。


 二人はトキドをネオ熊本城へ向かわせると、彼なら熊本城を陥落させられると信じて疑っていなかった。

 トキドは騎士王国でも、最強と呼ばれる存在である。

 それこそ騎士王であるオケツよりも、強いんじゃないかと言われるくらいだ。

 そんなトキドのライバルと称されているのがウケフジなのだが、二人には奇妙な共通点があった。

 それは二人とも、親が偉大だったという点だ。

 トキドとウケフジの先代の領主は、それはもう凄かったらしい。

 僕も直接会った事が無いので聞いた話だけど、ボブハガーが戦いたくないと距離を置いたレベルだという話だ。

 だが今は、そんな偉大な親を二人は超えたんじゃないかと僕は思っている。

 そうじゃなければ、トキド達がこんなに帝やオケツが信頼するはずが無い。

 その証拠に彼等は、相手が誰だろうとトキドなら倒せると思って、熊本城へ向かわせたのだから。


 どんな相手でも倒してくれるはず。

 熊本城が対空攻撃を持っていても、城主がどれだけ強かろうが勝てると踏んでいたはずだ。

 そして二人の考えを理解した時、僕の場合は誰なんだろうと考えてみた。

 そこでパッと頭の中に思いついたのが、又左だった。

 又左ならやってくれる。

 たまにやらかす事はあるけど、真っ先に向かわせるなら又左だと僕は思った。

 佐藤さんや沖田、慶次も強いんだけど、三人とも共通して言える事がある。

 それは個の力が突出しているのであって、部隊を率いるとなると又左には及ばないという点だ。

 だから又左が、パッと浮かんだのかもしれない。


 二人はトキドがやられたと知って、凄く動揺していた。

 そして僕も同じだ。

 又左が秀吉側についたと知って、どうしようもない気持ちになった。

 二人にはその件で、最初にちょっと馬鹿にされたけど、やっぱりそれだけ信用しているんだと思うと、僕も怒らずに動揺するその気持ちが理解出来たのだった。










 太刀が折られた。

 トキドの持つ太刀は、それなりの業物だったと思われる。

 しかしそんな立派な業物も、清正の剣の前では打刀同然の扱いだったらしい。



「トキド殿、だったら直してもらいますか?」


「そういえばマオは、コバ殿の所から来たんだよな。だったらトキド様の太刀を渡せば、直してもらえそうだな」


 太田の提案を聞いたトキドは一瞬頭を上げた。

 しかしすぐに落ち込み、また項垂れてしまった。



「どうした?金なら別に要らないぞ」


 トキドが金を持っていないと言っているわけじゃない。

 今回は特別。

 越前国と騎士王国は同盟を結んだし、同盟相手には活躍してもらわないと困る。

 その為には一番の騎士であるトキドが必要だと、僕は思っていた。



「駄目だ。この刀を直したところで、奴の剣には勝てない」


「どうして?」


「俺の剣は、奴の剣に斬られたのだ。見てみろ。って、俺の剣は何処だ?」


「そういえば、どうされたんですかね?」


「誰か回収したっけ?」


 落下してきたトキドを助けた際、折れた太刀の先の方を二人は拾っていなかった。

 トキドが握ったまま落ちてきたので、半分はある。

 しかし残りの半分をどうしたのか、誰も知らなかった。



「もしかして、熊本城の前に落としたままだったりして」


「うおぉぉ!!俺の国江があぁぁ!!」


「国江って、ワイバーンの名前じゃないの?」


「あの太刀も国江って言うの!うわあぁぁ!!」


 トキドが頭を抱えて叫んでいる。

 愛刀が無くなった。

 騎士にとってそれは、命の次に大事な物だと後から知った。



「ど、どうしますか?先っぽ探しに行きます?」


「敵の城の前かぁ。探してる間に、絶対攻撃されますよね」


 太田が申し訳無さそうに探そうと言うと、蘭丸が至極当然な事を言った。

 結論は一つ。

 今は諦めるしかない。



「俺の太刀が・・・。剣が無いと俺、戦えないぞ」


「だったら越前国の剣を使えば良いんじゃないですか?」


 トキドは顎に手を当てて考えると、やはり何か問題があるのか、首を横に振った。



「駄目だな。普通の剣だと俺の風林火山に耐えられない」


「なるほど。一理ありますね」


 二人ともトキドのとんでもない戦闘力は知っている。

 だから耐えられないという意味も、すんなり受け入れられた。



「しかしそうなると、代替用の剣は無いですよ」


「トキド様の力に耐えられる剣ねぇ」


 トキドの太刀は騎士王国製である。

 帝国や王国が使う両刃の剣とは、製造方法も違う。

 そして越前国の妖怪達はあまり武器を使わないので、そこまで質の良い剣は無いのだ。

 そんな物あったら、お市も言ってくるだろうし。

 無い物は無い。

 考えても思い当たらないので、諦めるしかないかと思っていたところ、何故か視線を感じる。

 誰かが僕を見ているのかと見回すと、蘭丸が僕を見ていた。



「どうしたの?」


「んー、ちょっと気になったんだが、お前の剣は駄目なのか?」


「僕の剣?」


 あぁ、コレか。

 正確には僕のではなく、兄の剣である。

 持つ部分がバットのグリップになっている特注品だ。

 そういえば、コレも改良されてたんだっけ?



「それが剣?」


 トキドも見た目が奇妙だからか、蘭丸から剣だと言われて興味を持ったらしい。



「見てみる?」


「良いんですか!?」


「うん、まあ・・・」


 良いんですかって、それだけ食い入るように見られたら、そう言うしかないでしょ。

 僕は腰からバット剣を抜くと、トキドは更に近付いて身始める。



「へぇ、短いけど太刀と同じで片刃なんですね。へぇ、ほぉ、ふぅん」


「さ、触ってみる?」


「良いんですか!?いやぁ、悪いなぁ」


 コイツ、絶対わざとだろ。

 僕の周りを回りながら、へぇとかほぉとか言って、持ってみたいオーラが凄い出てたじゃん。

 悪いなんて、1ミリも思ってない気がする。



「うん?なんかちょっと違うような。ちょっと振ってみても良いですか?」


「だったら外に行こう」


 トキドが試し斬りならぬ試し振りをしたいと言うので、鈍った身体を動かす意味でも外に出る事にした。



 太田と蘭丸の視線を浴びながら、トキドはバット剣を構えた。

 やっぱり握る部分に違和感があるようで、首を何度か傾げている。



「なんとなく振りづらい気がする・・・」


 トキドは剣を振るように上から何度か振り下ろすものの、しっくりこない様子。

 すると頭の中で、ため息が聞こえた。



【フゥ。違うんだよなぁ。そんな甘い振りじゃあ、三振だぜ】


 剣だから三振とか無いから。



【ちょっと変わって。俺が見本を見せてやる】









「トキド。構えが違うんだよ。そうやって真正面に持つんじゃないんだよ。正眼の構え?そういう剣の持ち方とは違うんだ」


 俺はトキドから剣を一旦返してもらうと、見本となる構えを見せた。



「これが基本ね」


「野球の構えじゃねーか」


 蘭丸からツッコミが入ったが、まさにその通り。

 俺は剣は上手くないけど、野球なら誰にも負けない自信がある。

 不得意な分野で勝負するよりも、自分が持ってる得意な技術をそれに活かした方が良いと、俺は判断したまでだ。



「そ、そんな構えで、どうやって斬るんですか?」


「こうやって振るんだ。そうだな、例えばこの大木も斬れるぞ」


「は?そんな短い刃で?」


 トキドの奴、俺を疑ってるな?

 まあバット剣の長さを見れば、そう思うのも無理は無い。

 百聞は一見にしかず。

 見りゃ分かるだろう。



「行くぞ。・・・フン!」


 俺がバット剣を振ると、直径2メートル近い木がスッパリと切れた。

 アッパースイング気味に振ったからか、斜めに切れた大木は俺が少し押すと、ゆっくりとずり落ちていく。



「なっ?こんな感じよ」


「凄い!」


「フフフ、やってみるかね?」


「良いんですか!?」


「良いとも良いとも」


 なんか気分が良い。

 そういえば最近、野球関連で凄いと言われた記憶が無いな。

 剣を振ってるから野球ではないんだけど、バットを振った感覚と同じだから、ちょっとそういう錯覚をしてしまった。



「えっと、こんな感じだったかな?」


「な、何!?」


「マオと構えが少し違うな」


 トキドは肩の力を抜いて、全身がリラックスしたような形でバットを持っていた。

 俺の構えとは違い、やっぱり正眼の構えに似ている。



「そんでもって、こう!」


「へ?」


 トキドが剣を振った。

 残っていた大木の一部に当たったように見えたが、木は切れた様子は無い。

 ように見えた。



「トキド様、空振りですか?」


「うーん、当たった気がしたんだけどな」


「当たってるよ。ほら」


 俺が木の上の部分を押すと、1センチ程だろうか。

 薄くスライスされた丸太が、ズレて現れた。



「ぜ、全然見えなかった!」


「マジかよ!神主打法の構えだぞ!」


「神主打法?何ですか、それ?」


「バットコントロールの天才じゃないと難しい、とんでもないバッティングフォームだ」


 神主打法は、かつて三冠王を三回も獲った偉大な選手が使っていた。

 俺もマネくらいはしたけど、やっぱり全然当たらなかったんだよなぁ。

 まさかトキドが使えるなんて。

 いや、マグレの可能性もある。



「もう一回同じ事出来る?」


「ちょっと時間をもらっても良いですか?」


「構わないけど」


 何か納得がいかなかったのか、一人でブツブツと喋りながらスイングを確かめている。

 その風格はもう、一流のバッターにしか見えない。

 納得が出来たのか、再び神主打法で構えるトキド。



「行きます!」


 フッと力が抜けた瞬間、トキドが神速のバッティングを見せる。



「トキド様、凄いですよ!さっきよりも薄いです!」


「ワタクシには出来ない芸当です。これはとんでもない事ですよ」


 蘭丸と太田が手放しに誉めると、トキドは満更でもない顔をしてこちらを見てくる。

 どうやら俺の感想が欲しいらしい。



「いや、まあ凄いと思うよ」


 たった二振りで、異次元のバッティングセンスを見せつけられた気分だ。

 コイツは狙って丸太を薄切りにした。

 そのコントロールがあれば、動く球も当てられると思う。

 野球を始めて半年とかで、甲子園に出場しました。

 そう言われてもおかしくないレベルだろう。



「きんもち良い〜!コレ、良いですね。めちゃくちゃ斬れ味も良いし」


「・・・あげないよ?」


 トキドはバット剣と俺を交互にチラチラと見ながら、コレは良いアレが良いと称賛している。

 だから俺はもう一度言った。



「それは俺の剣だから。あげないよ?」


「良いじゃん。お前、最近は鉄球か素手ばかりだし。別にトキド様に貸したところで、問題無いだろ」


「バカ!使う相手がたまたま居なかっただけで、接近戦やるなら使うっての!」


「しかし、キャプテン。トキド殿の戦力は大きいですぞ」


「うぅ、それは分かるんだけど」


 二人には、貸さない俺が悪者みたいになっている。

 確かに言いたい事は分かるし、仕方ない気もするんだけど。

 でも・・・うーん。



「じゃあ、今回だけ・・・」


「やった!お前の名前は、真・国江だ。これから頑張ろう」








「あげないよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ