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秀吉の攻撃

 全て後手に回っている。

 そんな気がしてならない。


 ヨアヒムのおかげで、ようやく全てのクリスタルを解除する事が出来た。

 僕に関する封印が解けた今、長秀も元通りになったのだが、その直後に阿形と吽形がやられてしまった。

 しかもそれは猫田さんによる凶行で、彼が秀吉の仲間だったと知り、僕達のショックはかなり大きかった。

 兄は猫田さんの件でショックをまだ引きずっているが、僕はそれもあるが別の件でもショックがあった。

 それが彼等の計画の用意周到さである。


 まず最初に秀吉が行動を起こしたのは、ヨアヒムとの戦いが終わり、気が緩んだ瞬間だった。

 しかもあの時は関ヶ原に、多くの敵味方が集結していた。

 それをまとめて、僕の敵に仕立て上げたのだ。

 おそらく僕達に逃げられないように、完全なる包囲網を作ったつもりなんだろう。

 誤算だったのは、帝国が持っていた反魔石。

 これは多分ヨアヒムが魔法に目覚めて、秀吉の手綱が効かなくなった事で、彼にも知られなかったんだと思う。

 おかげで逃げ切れたのだが、それも秀吉的にはまだ計算内だったんだろう。

 だからクリスタルが解除されるのも予定に入れておいて、今回のように同士討ちを狙ったんだと思う。


 おそらくだけど、秀吉はまだ何かを隠している。

 それが何かは分からないけど、ここからは僕のような凡人では見当もつかない。

 だから僕は、思った。

 秀吉の頭に唯一対抗出来る人物。

 官兵衛が鍵になるんじゃないかと。

 だから彼は以前、官兵衛を狙ったんじゃないかと読んでいる。

 となると、官兵衛はまだ狙われる可能性が高い。

 今後は官兵衛の護衛を増やさないと、この戦いには勝てない予感がした。









 仲間との合流。

 長秀は少し不満そうだが、僕としてはこれが最優先になる。

 秀吉の記憶封印の魔法を解いてくれた皆と、早く会いたいという気持ちも大きい。



「でも合流するにしても、集合する場所なんか決めてないぞ」


「それに関しては、問題ありません。一つはこの帝都。そしてもう一つは、越前国と決めてあります」


「越前国?どうして越前国なんだ?」


「クリスタルは大きく分けて、南北に分かれます。なので北側を担当した人物は帝都へ。南側を担当した方々は、越前国に集まってもらうように指示をしました」


 なるほど。

 南側の連中は、南で集まった方が安全かもしれない。

 下手に各自行動されると、個別撃破もされかねないし、何より洗脳される可能性も高くなる。



「となると、ここには慶次とイッシー」


「あとは佐藤さんと沖田が戻ってくるね」


「滝川様とタケシ殿。そして太田殿とゴリアテ殿に加え、蘭丸殿とハクト殿が水嶋殿を連れて、越前国に集結するはずです」


 蘭丸とハクトとすぐに会えないのは残念だが、光が消えて魔法が解除されたという事は、二人は爺さんに勝ったという事になる。

 あのジジイ、意外としぶといからな。

 二人とも怪我無く、無事で居てくれると助かるんだけど。



「とりあえずは皆が戻ってくるまで、休養にしよう。俺達も帰ってきて、休んでいないだろう?」


「丹羽殿もくつろいでくれ。帝国の食事が口に合うか分からんが、休むのも領主の仕事だと思うぞ」


「陛下、ありがとうございます」


 戦った二人がこうやって話しているのを見ると、ちょっと変な気もするけど。

 遺恨は無いみたいだし、またヒト族と揉める火種が出来なくて良かった。









 帝国に戻ってから二日経った。

 帝国の情報網はなかなかに優秀で、ある情報が僕達のところへ入ってきた。



「越中国が燃えた!?」


「そ、それはあの大樹が燃えたという事ですか!?」


 僕も官兵衛も、これには驚きを隠せなかった。



 ギュンターから入ってきた一番最初の情報は、越中国が陥落した事。

 帝国領から最も近い魔族領、それが越中国である。

 だから一番早く越中国の情報が回ってきたのだが、これには官兵衛ですら予想していなかったらしい。



「鳥人族は無事なの?」


「避難していた方々は、保護しています。しかし戦士と呼べる者は、戦いを挑んで・・・」


 言葉を途切らせて、下を向くギュンター。


 最悪だ。

 越中国はベティが秀吉に消し去られて、率いる人物が居ない。

 一時は集団戦において強みを見せるまでなった鳥人族も、率いる人が居なければ烏合の衆と変わらない。

 おそらくバラバラに戦って、敗北したのだろう。



「しかし越中国は、大木の上に街があるはず。敵は上の街に手を出すのは、難しいと思うんだけど。どうやって落としたんだ?」


「それもそうだね。フライトライクとかあるなら別だけど、あの街に入るのは鳥人族以外は難しいよ」


 ワイバーン隊の可能性もあるが、記憶が戻った彼等が越中国を落とす理由は無い。

 そしてギュンターに全員が目をやると、彼は目を泳がせ言葉に詰まらせた。



「何?言いづらい?」


「えっと・・・」


「ええい!貸せ!」


 兄がギュンターから報告書をぶん取ると、それに目をやりカッと見開いた。



「読めん」


 全員がコケると、それを横に居た長秀に渡した。

 すると長秀も報告書を見るなり、口に手を当てて絶句する。



「どうした?」


「こ、この報告書は真実ですか?」


「間違っていないはずです」


「そうですか・・・。魔王様、怒らないで聞いて下さいね」


 長秀が念を押してきた。

 これは僕達が関係しているのか?



「越中国はフライトライク及び、飛行機の急襲により壊滅。残党狩りまでしているとの事です」


「ハァ!?ふざけんな!」


 兄が椅子を倒して立ち上がると、長秀はその迫力にビクッと反応する。



「落ち着け!だから最初に丹羽殿は、怒らないでくれと言ったのであろう」


「落ち着いていられるか!だってフライトライクが使われてるんだぞ!じゃあ可能性が高いのは、又左やイッシー達じゃないか!」


 兄の言葉にヨアヒムは黙ってしまったが、官兵衛がそこでフォローを口にする。



「待って下さい。フライトライクが使われただけであって、我々の誰かとは決まっておりません」


「でもフライトライクを、秀吉が持ってるって言うのか?」


「そうです。思い出して下さい。安土からオイラ達が離れた後、あの街に残っていたのは誰ですか?コバ殿です」


「あぁ、なるほど。僕達の味方だと知られないように、提供した可能性もあるのか」


「あっ!それもあるのか。納得した」


 ようやく怒りが収まった兄だが、あくまでその可能性があるという事。

 秀吉達に接収されたかもしれないし、誰かが裏切って動いた可能性もある。



「逃げ延びた者達は、何処に?」


「越中国に近い町や村に、避難民として滞在してもらってます」


「よし!帝都の兵を召喚者も入れて、そこに派遣しろ」


「既に準備は進めております」


 ニヤリと笑うギュンター。

 悪路を走ったりしなければ、有能だと思える言動だ。

 ヨアヒムもそれが当然という感じで、褒めるような事はしない。



「ヨアヒム、魔族の為にサンキューな」


「う、うむ。当然の事をしているまでだ」


 兄が素直にお礼を述べると、照れ臭いのかそっぽを向いて喋るヨアヒム。



 すると緊急の情報が入ってきた。



「沖田殿が戻ってきました」









「無事だったか!」


「いやあ、結構やられちゃいましたよ」


 頭を掻きながら説明する沖田だが、そこまで大きな怪我をしているようには見えない。

 そして後ろに居る男の方が、はるかに大怪我をしていて、そっちの方に目が行ってしまった。



「お前が俺の前でそれ言うか?嫌味にしか聞こえないぜ」


「佐藤さん、無事だったんですね」


「うーん、コレで無事と言うなら、無事なんだけど」


 複雑そうな顔をする佐藤。

 だが普通に会話が出来ているだけで、僕としては嬉しかった。



「他の連中は?」


「まだ分かりません」


「最初に帰ってきたのは、お前達だからな」


「なるほど。俺が一番最初にボコボコにされたから、戻るのも早かったのかな?」


 冗談なのか本気なのか分からん事を言う。

 まあ記憶の封印魔法が解除されてからの移動だろうし、佐藤さんの話は冗談だと思うが。



「それと俺が気になってるのは、イッシー殿なんだけど。あの人は、俺達みたいに記憶を失ってなかったんだな」


「それに関しては説明は受けた?」


「聞いたよ。まさか、あの仮面のおかげで助かるなんて」


 気持ち悪い仮面だけど、初めて役に立ったと思える。

 誰もそれを口にしないが、心の中では皆そう思ってるんだろう。



「でもイッシー達も遅いな。何をやってるんだろう?」


「沖田と違ってトライクだろう?だったら向こうの方が、早く戻ってこれそうだけど」


 途中で会話が途切れると、少し不安になってきた。

 もしかして、イッシーの身に何かあったのか?



「ほ、報告します!石仮面の男と前田慶次利益殿が、木下勢と思われる魔族一行に連行されました!」


「なぁにぃ!?」


 兄が歌舞伎役者みたいな声を出すと、思わず僕もそれに乗りそうになった。

 やっちまったなぁと思いつつ、官兵衛を見る。



「ここは助けるしかないでしょう。急ぐ必要があるので、精鋭部隊で行きます」


「だったら俺達だな。それと沖田、行けるか?」


「人使いが荒いですね。近藤さんよりも酷いですよ」


「帰ったら、俺がたらふくメシを奢ってやるよ」


 兄が沖田を指名する。

 正直な話、ヨアヒムが来てくれれば早いのだが、官兵衛を見る限りやめた方が良いと首を横に振られた。

 流石に一国の王を、何回も連れ回すわけにはいかないか。



「私も行きますよ!」


「丹羽様は、身体は大丈夫なのですか?」


「私は毒を受けただけで、そこまで怪我はしていないので」


 しかも自分が持ってきていた毒だったので、薬も用意してあり後遺症も全く無いという話だった。



「じゃあ沖田はやめて、長秀に変更。沖田は佐藤さんと一緒に身体を休めてくれ」


「え?僕行きますよ?」


 何故か行く気満々の沖田。

 コイツ、扱いが酷いとか言っておきながら、戦いがある方に行きたがる気がする。



「じゃあ四人で、ん?電話だ。蘭丸だな」


「もしかして、南は全員集まったのかな?北側より優秀だね」


「僕達だって早かったと思いますけどね。イッシー殿達が捕まらなければ、こっちも同じくらいでしたよ」


 口を尖らせて言う沖田に、長秀は肩を叩いて慰める。

 そんな中電話に出た兄は、蘭丸の大きな声で受話器から耳を離した。



「な、何だ?落ち着いて、もう一回言ってくれ」









「だから、越前国が襲撃を受けている!あの大きな壁を破壊する為の物もあるみたいだ。俺とハクト、ジジイの三人は中に居るが、まだタケシ殿と太田殿は来ていない。このままだと越前国は、陥落するぞ!」

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