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奪われたヒール

 オケツの親戚であるシャマトフセ。

 ムッちゃんからはサマと呼ばれる男は、意外にもそこそこ強かった。


 ケモノを宿す騎士は、騎士王国の中でも選ばれた人間だけだ。

 中には例外として、ムサシのような人物も居るが、ほとんどはエリートと言っても過言ではない。

 サマはその中でもかなり若い部類に入り、エリート中のエリートなんだと思う。

 ただし、力を使いこなしているかと言われたら、そうじゃないと思われる。


 本来なら雷鳥と呼ばれる鳥は、名前とは違い普通の鳥だ。

 多分サマが関係しているのは、雷鳥ではなくサンダーバードの方だろう。

 サンダーバードはアメリカ先住民の人達の伝説にある、雷の精霊になる。

 雷を自由自在に操り、敵に雷を落として倒す事も出来るらしい。

 しかしサマは、そこまでの事は出来ていない。

 もしそんな事が出来るのであれば、おそらく領主である滝川一益すら、倒せると思われる。

 今彼が出来るのは、攻撃を電気に変換して跳ね返す事くらいなんだろう。

 まだまだ未熟という事だ。


 奇妙な共通点として、オケツとサマは二人揃って電気に関連するケモノを宿している。

 血筋が電気関連のケモノと、相性が良いのかもしれない。

 でもそれと相まって、変な事に気付いた。

 電気が共通点なのは特に問題無い。

 でも二人とも、どうして技の発動に時間が掛かるんだろうか。

 オケツは避け続けて帯電しないと、全力を発揮出来ないし。

 サマは逆に攻撃を食らわないと、電気に変換出来ない。

 ハッキリ言って、とても使いづらい。

 格ゲーだったらほぼ間違いなく、玄人しか使わないレベルのキャラだと思った。

 サマも変な所で似たもんだよ。









 せめてもう一人。

 もう一人くらいデビルイッチー軍団に欲しいな。

 サマは四天王で最弱なのは確定として、やっぱりそこそこ強い人が欲しい。

 ・・・やっぱり思い浮かぶのは鬼のおっさんか。

 可能性は低いが、戻ってきたら勧誘するしかない。

 まあ戻ってきたら、その前に姐さんが引き入れてくれるかな。



「デビルイッチー軍団。弱いな。片腹痛いわ!」


「んだと!サマを葬ったくらいで、調子に乗るなよ!」


「わ、私、死んでないです・・・」


 サマが目を覚ましたらしい。

 気絶していたのは一瞬で、俺達の声は聞こえていたみたいだ。



「サマ、起きたのか!」


「最弱ですいませんね。どちらにしろ弱いから、私は動けませんから。うっ!」


 ジト目で文句を言ってくる辺り余裕があると思ったが、やせ我慢だったみたいだ。

 叩かれた脇腹は鎧にヒビが入っている。

 もしかしたら肋骨も、折れているのかもしれない。



「打撃は電気に変えられないのか?」


「キャパオーバーでした。それくらいあの一撃は、強かったです」


 大きな金属の鎚を、フルスイングでぶっ叩かれたのだ。

 サマの言う事は、分からんでもない。



「なんだ、動けんのか。だったらトドメを刺してやろう」


 おっさんは大鎚を大砲の形に変えると、サマに狙いを定めた。



「大砲モード、発射!」


「コイツ!」


 俺はサマを庇うように背を向けて立つと、背中に太いレーザー砲がぶち当たった。

 かなり熱いが、我慢出来なくはない。



「タケシ殿!早く逃げて下さい!」


「だからキラームトゥーだっての。俺はお前を守る義務があるから」


「義務?」


「俺が騎士王国に行かなければ、お前はこの戦いに巻き込まれる事は無かった。色々と世話になっているし、お前を無事に騎士王国に戻す義務が、俺にはあるんだよ。だから!」


 俺は地面を強く蹴り込む。

 地面が割れて、土煙が舞った。



「よし!走るぞ!」









 レーザーが土煙によって弱まると、俺達はその隙に木の陰に隠れた。



「土煙で光線が弱まるなんて、よく知ってましたね」


 ん?

 褒められてるのか、バカにされているのか。

 どっちなんだ?



「まあな。ちょっと前にコウちゃん、魔王様にそういう話を聞いたんだよ」


「なるほど。魔王様は小さいのに博識というのは、本当みたいですね」


 小さいとか誰に聞いたんだろう?

 若い兄ちゃんに小さいとか言われてると本人が知ったら、怒って直接文句言いに行きそうな気もする。



「誰に聞いたの?」


「キチミテの兄さんです」


「あ、そう・・・」


 キチミテって、騎士王の名前だったような?

 あの人裏では、色々言ってそうだな。

 ウチの陛下も、偉そうだとか言われてそう。



「タケシ殿!」


「むぎゅっ!」


 サマが俺の頭を掴んで下に押し込んだ。

 文句を言おうとした途端、頭の上を鎚が通過していく。



「見つけたぞ」


「おっさん!」


 まさかこんなに早く見つかるとは。

 おっさんの足の速さなら、しばらくは見つからないと読んでいたのに。



「まずは若造、貴様からだ」


「サマ!」


 サマの周りには、小型のハンマーが沢山浮いていた。

 日本でよく見る金槌と、同じくらいのサイズだ。



「死ね!」


「チィ!」


 俺はサマを押して弾き飛ばそうとしたが、彼は首を横に振った。

 諦めている顔じゃない。

 だから押すのをやめると、サマは頭を下げて身体を丸める。

 すると浮かんでいた金槌から、無数のビームがサマに向かって飛んでいった。



「大丈夫なのか!?」


「ガハハハ!死ねぃ!」


 トドメとばかりに大砲まで構えるおっさん。

 俺はそっちだけはダメだろうと、おっさんに立ち向かっていった。



「やらせねーよ!」


「むぅ、邪魔をするな!」


 おっさんが大鎚に変化させると、俺の肩に叩きつけてくる。


 意外とキツイな。

 力だけなら、太田さんやオーガのゴリアテさんの方が強い。

 だけどこの大鎚という武器は、身体の内側まで響いてくる。

 叩かれ過ぎると、内臓破壊までされそうな勢いだ。



「もういっちょ!」


 おっさんの

 叩きつけが俺の左肩にまた入ると、俺は思わず膝をついた。



「ゴホッ!おえっ!」


 痛みは我慢出来る。

 だけど内臓のダメージは我慢出来ない。

 俺は口の中に酸っぱいものが込み上げると、そのまま吐いてしまった。

 幸い食べ物は消化されていて胃液だけだったが、今の攻撃で俺もおっさんも気付いてしまった。


 俺にこの武器は通用すると。



 顔を殴られても剣で腕を斬り落とされても、俺ならすぐに回復する。

 そういう能力だからだ。

 しかしこの大鎚という武器は、外と中の破壊を同時に行なってくる。

 中のダメージも回復はするのだが、おそらくその過程で急激な変化を伴うからか、気持ち悪さが尋常じゃないみたいだ。

 だから俺は立っていられなくて、吐き気に負けてしまった。

 ぶっちゃけ武器としては、天敵とも言えなくもない。



「ククク。タケシも若造も、同時に仕留められそうだな」


 そうだ!

 俺もヤバイが、サマの方がもっとヤバイ。

 俺は振り返ると、サマはまだ丸まっていた。

 鎧はかなりの熱を持っているのか、赤黒くなっている。



「そろそろ若造は耐えられまい。終わりだな」


「それは私のセリフです」


 サマの声はまだ元気がある。

 それが予想外だったのか、おっさんが驚いている。

 だけどそれ以上に驚いたのが、その後のサマの攻撃だった。



「ゴー、クリティカルポイント。オールリフレクション!」


「ゴー何?オールオッケー?」


 コイツ、何で急に英語?

 しかも発音が上手いし。

 サマが何かよく分からない事を言うと、サマの身体から光が発せられた。



「何と!」


 サマが一気に身体を大きく広げると、全方位に電撃が飛ばされたのだ。

 飛んでいた金槌は全て落とされ、おっさんにも電撃が飛んでいく。

 そして勿論全方位なので、俺にも飛んできた。



「ぐあぁぁぁ!!」


「オォォォォ!!」


 マジかよ。

 かなり痛いのだが。

 低周波マッサージ器をMAXまで上げて、皮膚の薄い部分に当てられた時の痛みに似ている。



「ハアッ!」


 全ての電撃を放出し終わったのか、サマは四つん這いになった。

 息も荒く、かなり消耗している。



「お前、俺にも当たるなら先に言えよ。かなり痛かったぞ」


「私の最大の攻撃を食らっておいて、痛かったで済ませる貴方に言われると、自信が無くなるんですけど・・・」


「俺はタフだから」


「滝川殿のビームを食らって身体に穴が空かない時点で、おかしいとは思ってますけどね」


 言われてみれば、妖怪達は貫通してたんだよな。

 俺は赤くなったくらいなのに。

 俺の身体、熱に強いんだろう。



「き、貴様」


 おっさんも立っているくらいの体力はあるみたいだ。

 ただ俺とは違い、ダメージは残っている。

 しかし回復薬を持っているらしく、それを飲み干すと多少は元気を取り戻していた。



「まさか、二人とも堪えられるなんて」


「サマ、歩けるか?」


「走るくらいは出来ますよ。戦うのはキツイですけど」


 息を整えたのか、立ち上がるとその場で足踏みを始める。

 動く事が出来るなら、話は早い。



「お前、ここからちょっと離脱しろ。悪いが足手まといだ」


「足手まといって・・・。分かりました」


 お?

 意外だな。

 俺の意図に気付いてくれたみたいだ。



「みすみす逃がすと思うか?」


「思うね。それにアンタ、やってる事がかなり悪どいぞ」


「悪どいとは何だ?」


「弱っている奴から倒しに行ったり、ダウンしてても攻撃したり。・・・ん?」


 待てよ。

 おっさんがやってる事って、ホントはヒールの俺がやる事じゃないのか?

 待て待て待て!

 俺よりもヒールで目立たれるのは困る!



「サマ、行け!」


「あとはお願いします!」


 サマはある方向に走っていく。

 おっさんが大砲をサマに構えたが、俺はその大砲を金棒で、下からカチ上げた。



「邪魔をするな!」


「何だ?足手まといが一緒に居ないと、俺に勝てる気がしないのか?」


「ワシの大鎚が貴様に効く事は、既に分かっておる。いくら強靭な肉体を持つ貴様でも、ワシの大鎚の敵ではないわ!」


 カチ上げた大鎚を力を込めて引き戻すと、おっさんは俺に向かって大砲をぶっ放した。

 今までとは違い威力を上げているのか、範囲が広がっている。



「チッ!」


 このまま直撃すれば、目が焼かれてしまう。

 そうなると目の回復まで時間が掛かり、下手をすればサマを追い掛けられてしまう可能性がある。

 俺は渋々顔を下げてガードすると、身体全体を高熱のビームが通り過ぎていった。



「アレを耐えるのか!?」


 やはり威力を上げていたらしい。

 おっさんの驚いた声が聞こえるが、目が渇いてシパシパするので何も見えない。



「でも熱かったぞ」


「熱いで済ませるな!」


 虎柄装備が無い場所は、かなり熱かった。

 ん?

 待てよ。









「身体は熱かったけど、頭ってどうなってるんだ?もしかしてコレ、チリチリになってないか?俺の頭、もしかしてパンチパーマみたいになってないか?おい!このスタイル、カミナリ様じゃねーか!」

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